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26・婚約破棄とか冤罪裁判とかにはもう飽きたので、普通に恋しようと思います。【全4話】

04ざまぁ。

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「アーチさん! 好きです! 貴方と一緒に幸せになりたいです!」

 彼を上手いこと呼び出した私は思いのたけをストレートにぶつける。

「………………え、僕か?」

 と、彼は今まで見せたことのない間の抜けた表情でおどろく。
 非常に可愛い。

 そこから彼は少し考えて、言葉を選び、落ち着いて私にこたえた。

「…………申し訳ございません、貴女は大変魅力的みりょくてき淑女しゅじょであることは承知しょうちしておりますが、貴女のご期待にはえません。僕は貴女が思うような誰かを幸せに出来るような人間ではないのです」

 と、断られてしまう。

 私はすぐに。

「そんなことないです! 貴方は――」

 と、私が知る限りの彼の素敵なところを語った。

 それを彼は申し訳なさそうに、時折ときおり下唇を噛みめて聞いてくれた。

 そして。

「……いや、ありがたい、ありがたいんだけどな」

 いつもの口調よりくだけた口調で切り出し、続けてこう言った。 

「僕は、グロリア嬢に幸せになってもらいたいんだ。僕は今それで大忙おおいそがしなんだよ」

 私はその答えに。

「あ…………、そっか」

 と、非常に納得をしてしまったのだった。

 さて、私の一世一代の告白が無惨むざんにも玉砕ぎょくさいしてしまったところで私の初恋と、その終わりの話はおおよそおしまいである。

 その後のこといて語るなら、私はその場を泣いてしまう前に去ってしまった。

 無論むろん、彼も私を引き止めたりはしなかった。

 大体虫の良すぎる話なのだ、王妃様からの指令で婚約破棄はき演出なんてことを散々続けてきた私が恋をしようなんて。

 そして今更それが、なんて非情でむごいことをしてきたのかを理解したのだ。

 でもそれよりも、彼が身分も違い婚約者がいる主であるグロリア嬢をが、たまらなく切なくて悲しくて美しいことのように思えた。

 まだきっとしばらく私は彼のことが好きなままだろう。

 腹いせにグロリア嬢の婚約破棄はきに再度挑戦してやろうとも思ったが、彼に免じてそれはやめておこうと思う。

 ただこれ以上私が誰かの恋を終わらせる前に、恋の終わりの辛さを知れて良かった。

 婚約破棄はき演出家が失恋をする。

 こんなざまぁないことはない。
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