89 / 132
23・学園を追放され僻地に追いやられたので、この世界を滅ぼします。【全4話】
04仲間入り。
しおりを挟む
あれ、この女たしか……、パウンダー伯爵家の令嬢じゃなかったか……? そんなに関わりは無かったが、同じ中立派の貴族派閥に属する家だったので社交界で何度か挨拶したことがある。
まあ、今の俺には全く関係の無い世界の話だ。
俺の愚かさが故に、手放した世界の話だ。
「貴方も災難だったね、王妃が仕組んだエンデスヘルツ令嬢追放のシナリオに巻き込まれてこんなところまで飛ばされるなんて」
「…………はい? ……………………、今、なんて言った?」
今、王妃が仕組んだと言ったの…………か?
「あれは王妃が送り込んだ平民に扮した工作員に第一王子を篭絡させて、不正の証拠を捏造させて婚約破棄を目論んだの。と、いうかここ数年の主要貴族の婚約破棄騒ぎは国のバランス調整の為に王妃が仕組んだものよ」
私の追放も含めてね。と、パウンダー伯爵令嬢は付け加える。
じゃあなんだ。
騎士として王家を守るように幼き頃から教えられ、鍛錬を続けてきた俺は、王家の陰謀に巻き込まれて、踊らされて、僻地に追いやられたっていうのか。
そんな。
じゃあ、そんなものに尽くして、そんな国家を守ることを矜持とする騎士とはなんなんだ。
騎士道とは、バルカード侯爵家とは、俺の人生とは。
「私たちはそんな腐りきったこの国を滅ぼす為に活動をする魔王軍のトップと幹部なのよ」
「まあ魔王の俺とケリーの二人しかいねぇから軍でもなんでもないんだけどな、滅ぼすのは造作もねぇんだが下準備としてその竜の女王を回収しときたかったんだ。不用意に敵に回すと厄介すぎるんだそいつ」
またよくわからん荒唐無稽なことを言うが、そのくらい荒唐無稽な理由があるならここ数分の常軌を逸した現象の数々に納得はできる。
そして、納得した俺は落ち着いた。
落ち着いて、今の状況を受け入れたら自然と、さもありなんと俺は彼らにこう言った。
「俺もこの国滅ぼしたい、仲間にいれてくれないか」
馬鹿で頭が悪い俺が悪い、でも悪いけど馬鹿だから怒りのぶつけどころもわからねぇんだ。
さて、俺がこの国を滅ぼす為に魔王軍に仲間入りを志願したところで俺の初恋の失敗談と、それによって俺がこの国を滅ぼしたくなる話はおおよそおしまいである。
この後のことを強いて語るなら、魔王が。
「へえ、いいぜ、おもしれえ俺は悪を尽くして善行を潰す魔を統べる魔王だ。頭の悪いやつも自分が悪いと思ってるやつも基本的に嫌いじゃあねえ」
と、快く了承を得たが。
「ただし、雑魚は要らねえ。とりあえず坊主、おまえはそこそこ才能あるからとりあえず人の域を超える程度には強くなってもらうぞ」
とのこと。
「願ったり叶ったりだ、俺はニィラを守れるくらいに強くならなくてはならない」
俺は誰かに言われて誰かを信じたり、何かを守ることは、やめた。
俺が守りたいものを守り、信じたいものを信じる。
だったら最初はニィラを守りたい。
俺の答えに魔王は笑い。
「竜を守るとはおもしれえ、いいね、頭が悪い」
こうして、俺は騎士見習い、僻地勤務の兵士を経て国を滅ぼす一団の仲間入りを果たすのであった。
まあ、ここから地獄のような鍛錬と修練と訓練を重ねて重ねて重ね続けることになり、俺の後悔は留まることをしらない状態になるのだが。
自分勝手に誰かを守れる。
これはこれで、今は楽しいのだ。
まあ、今の俺には全く関係の無い世界の話だ。
俺の愚かさが故に、手放した世界の話だ。
「貴方も災難だったね、王妃が仕組んだエンデスヘルツ令嬢追放のシナリオに巻き込まれてこんなところまで飛ばされるなんて」
「…………はい? ……………………、今、なんて言った?」
今、王妃が仕組んだと言ったの…………か?
「あれは王妃が送り込んだ平民に扮した工作員に第一王子を篭絡させて、不正の証拠を捏造させて婚約破棄を目論んだの。と、いうかここ数年の主要貴族の婚約破棄騒ぎは国のバランス調整の為に王妃が仕組んだものよ」
私の追放も含めてね。と、パウンダー伯爵令嬢は付け加える。
じゃあなんだ。
騎士として王家を守るように幼き頃から教えられ、鍛錬を続けてきた俺は、王家の陰謀に巻き込まれて、踊らされて、僻地に追いやられたっていうのか。
そんな。
じゃあ、そんなものに尽くして、そんな国家を守ることを矜持とする騎士とはなんなんだ。
騎士道とは、バルカード侯爵家とは、俺の人生とは。
「私たちはそんな腐りきったこの国を滅ぼす為に活動をする魔王軍のトップと幹部なのよ」
「まあ魔王の俺とケリーの二人しかいねぇから軍でもなんでもないんだけどな、滅ぼすのは造作もねぇんだが下準備としてその竜の女王を回収しときたかったんだ。不用意に敵に回すと厄介すぎるんだそいつ」
またよくわからん荒唐無稽なことを言うが、そのくらい荒唐無稽な理由があるならここ数分の常軌を逸した現象の数々に納得はできる。
そして、納得した俺は落ち着いた。
落ち着いて、今の状況を受け入れたら自然と、さもありなんと俺は彼らにこう言った。
「俺もこの国滅ぼしたい、仲間にいれてくれないか」
馬鹿で頭が悪い俺が悪い、でも悪いけど馬鹿だから怒りのぶつけどころもわからねぇんだ。
さて、俺がこの国を滅ぼす為に魔王軍に仲間入りを志願したところで俺の初恋の失敗談と、それによって俺がこの国を滅ぼしたくなる話はおおよそおしまいである。
この後のことを強いて語るなら、魔王が。
「へえ、いいぜ、おもしれえ俺は悪を尽くして善行を潰す魔を統べる魔王だ。頭の悪いやつも自分が悪いと思ってるやつも基本的に嫌いじゃあねえ」
と、快く了承を得たが。
「ただし、雑魚は要らねえ。とりあえず坊主、おまえはそこそこ才能あるからとりあえず人の域を超える程度には強くなってもらうぞ」
とのこと。
「願ったり叶ったりだ、俺はニィラを守れるくらいに強くならなくてはならない」
俺は誰かに言われて誰かを信じたり、何かを守ることは、やめた。
俺が守りたいものを守り、信じたいものを信じる。
だったら最初はニィラを守りたい。
俺の答えに魔王は笑い。
「竜を守るとはおもしれえ、いいね、頭が悪い」
こうして、俺は騎士見習い、僻地勤務の兵士を経て国を滅ぼす一団の仲間入りを果たすのであった。
まあ、ここから地獄のような鍛錬と修練と訓練を重ねて重ねて重ね続けることになり、俺の後悔は留まることをしらない状態になるのだが。
自分勝手に誰かを守れる。
これはこれで、今は楽しいのだ。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
奪われたものは、もう返さなくていいです
gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)
青空一夏
恋愛
従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。
だったら、婚約破棄はやめましょう。
ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!
悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる