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21・婚約破棄して別の人と生きる? どうぞ、後悔してください。【全4話】
02白紙に戻したい。
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「ジュリアナ・ロックハート! 貴女と話したいことがあ……」
ドアを開いた先の光景に、僕は言葉を途中で失う。
そこには、床にクッションを敷き座布団代わりにしてちゃぶ台を挟み、お茶とお菓子を広げて、友達とガールズトークと洒落こむ聖女の姿がそこにあった。
「……お話ししたいというのは良いのですが、貴方はどちら様でしょうか?」
「ちょ、ジュリアナ! ジャレッド王子だよ! 貴女の婚約者!」
と、婚約者の顔も認識していない聖女を友人らしき娘が僕を紹介してくれる。
「……ど、どうもありがとう、僕が貴女の婚約者のジャレッド・メルバリアです」
笑顔が引き攣る中、聖女の友人に感謝の意を示しつつ次期国王の僕は婚約者に自己紹介をした。
そこから僕もちゃぶ台の席に付いた。
床に座るなんて中々に久しぶりだなぁ……。
何やってんだろ、僕。
「ジャレッド王子、私はステイモス侯爵家のアンジェラ・ステイモスでございます」
遠い目をしていると、聖女の友人が僕に自己紹介をする。
「ステイモス家の……、ああ、思い出した。公爵家のシェーン・ゴールドマンの婚約者だね、一度王家のパーティーで一緒に挨拶に来てくれた」
「元婚約者ですよ。ジャレッド王子。アンジェラは学園にて冤罪裁判をかけられて婚約を破棄されました」
僕の返しに聖女がすぐに訂正を入れる。
えー、婚約破棄されちゃってんの? マジかよ、気まずすぎるだろう。僕も今からまさに婚約破棄の話を持ちかけなきゃいけないんだけど。
「じゅ、ジュリアナ? 別に気にしてないけど、人様に触れ回ることでもないんだからね」
「ですがアンジェラ……、未だにあんな男の婚約者をしていると思われるのは貴女も心外でしょう。新たに恋人も出来たというのに」
まあ確かにそっか。と言いながらアンジェラはお茶をすする。
僕は目の前で繰り広げられるガールズトークに面食らってしまう。
なんなんだこれは。
聖女とは、俗世から隔離され世の中から徹底的にズレている価値観を持ち、熱心に狂信と盲信を貫く、自らを人間扱いすらせず、神に祈るための装置だと自称するような感情のない人として壊れたシステムだったはずだ。
これじゃあまるで、ただのティーンエイジャーのようではないか。
面はくらったが、しかしてやることは同じだ。
僕は小さな口でお菓子を食べる聖女に向き直す。
「……、ジュリアナ、話したいことがあるんだけど、いいかい?」
「……はい、聞きましょう」
お菓子を飲み込み、僕にそう応える。
「ジュリアナ、君との婚約を白紙に戻したい。その話し合いをしに来たんだ」
「ええーっ⁉」
と、僕の婚約破棄宣言に良いリアクションをしたのは聖女ではなく、友人のアンジェラだった。
「あ、ごめんなさい。続けて続けて」
リアクションをとったアンジェラは僕らに話を続けるよう促す。
いや、邪魔だなぁこの子……。
まあ二人のガールズトーク空間に突然邪魔したのは僕の方だから我慢しますけども……。
「婚約の白紙ですか……、何故そのようなお話になるのでしょうか」
聖女ジュリアナは落ち着いた様子で僕に問う。
「何故って……、確かにずっと聖女は王族と結婚する習わしだけれども、そんな時代でもない。習わしどおりにするにしても流石に僕らの間に恋も愛も無さすぎる。完全に破綻しているんだよこの婚約は」
僕はわかりきった説明をする。
「私は愛していますよ。王子を愛するのが聖女ですから」
「いや君、僕の顔すら忘れてただろう……」
ジュリアナの白々しい返答についツッコミを入れてしまう。
「まあ君が仮に本当に愛していたとしても、今日初めてまともに話したくらいの関係だし、夫婦になってもそれが続くなら結婚する意味がないという話なんだ。結局僕は別の女性と子をもうけなくて行かなくてはならないんだぞ」
僕らの婚姻がいかに破綻しているかを語り、淹れてもらったお茶に口をつける。
ドアを開いた先の光景に、僕は言葉を途中で失う。
そこには、床にクッションを敷き座布団代わりにしてちゃぶ台を挟み、お茶とお菓子を広げて、友達とガールズトークと洒落こむ聖女の姿がそこにあった。
「……お話ししたいというのは良いのですが、貴方はどちら様でしょうか?」
「ちょ、ジュリアナ! ジャレッド王子だよ! 貴女の婚約者!」
と、婚約者の顔も認識していない聖女を友人らしき娘が僕を紹介してくれる。
「……ど、どうもありがとう、僕が貴女の婚約者のジャレッド・メルバリアです」
笑顔が引き攣る中、聖女の友人に感謝の意を示しつつ次期国王の僕は婚約者に自己紹介をした。
そこから僕もちゃぶ台の席に付いた。
床に座るなんて中々に久しぶりだなぁ……。
何やってんだろ、僕。
「ジャレッド王子、私はステイモス侯爵家のアンジェラ・ステイモスでございます」
遠い目をしていると、聖女の友人が僕に自己紹介をする。
「ステイモス家の……、ああ、思い出した。公爵家のシェーン・ゴールドマンの婚約者だね、一度王家のパーティーで一緒に挨拶に来てくれた」
「元婚約者ですよ。ジャレッド王子。アンジェラは学園にて冤罪裁判をかけられて婚約を破棄されました」
僕の返しに聖女がすぐに訂正を入れる。
えー、婚約破棄されちゃってんの? マジかよ、気まずすぎるだろう。僕も今からまさに婚約破棄の話を持ちかけなきゃいけないんだけど。
「じゅ、ジュリアナ? 別に気にしてないけど、人様に触れ回ることでもないんだからね」
「ですがアンジェラ……、未だにあんな男の婚約者をしていると思われるのは貴女も心外でしょう。新たに恋人も出来たというのに」
まあ確かにそっか。と言いながらアンジェラはお茶をすする。
僕は目の前で繰り広げられるガールズトークに面食らってしまう。
なんなんだこれは。
聖女とは、俗世から隔離され世の中から徹底的にズレている価値観を持ち、熱心に狂信と盲信を貫く、自らを人間扱いすらせず、神に祈るための装置だと自称するような感情のない人として壊れたシステムだったはずだ。
これじゃあまるで、ただのティーンエイジャーのようではないか。
面はくらったが、しかしてやることは同じだ。
僕は小さな口でお菓子を食べる聖女に向き直す。
「……、ジュリアナ、話したいことがあるんだけど、いいかい?」
「……はい、聞きましょう」
お菓子を飲み込み、僕にそう応える。
「ジュリアナ、君との婚約を白紙に戻したい。その話し合いをしに来たんだ」
「ええーっ⁉」
と、僕の婚約破棄宣言に良いリアクションをしたのは聖女ではなく、友人のアンジェラだった。
「あ、ごめんなさい。続けて続けて」
リアクションをとったアンジェラは僕らに話を続けるよう促す。
いや、邪魔だなぁこの子……。
まあ二人のガールズトーク空間に突然邪魔したのは僕の方だから我慢しますけども……。
「婚約の白紙ですか……、何故そのようなお話になるのでしょうか」
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「何故って……、確かにずっと聖女は王族と結婚する習わしだけれども、そんな時代でもない。習わしどおりにするにしても流石に僕らの間に恋も愛も無さすぎる。完全に破綻しているんだよこの婚約は」
僕はわかりきった説明をする。
「私は愛していますよ。王子を愛するのが聖女ですから」
「いや君、僕の顔すら忘れてただろう……」
ジュリアナの白々しい返答についツッコミを入れてしまう。
「まあ君が仮に本当に愛していたとしても、今日初めてまともに話したくらいの関係だし、夫婦になってもそれが続くなら結婚する意味がないという話なんだ。結局僕は別の女性と子をもうけなくて行かなくてはならないんだぞ」
僕らの婚姻がいかに破綻しているかを語り、淹れてもらったお茶に口をつける。
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