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21・婚約破棄して別の人と生きる? どうぞ、後悔してください。【全4話】

01結婚したくない。

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 僕、ジャレッド・メルバリアはこのメルバリア王国の第二王子にして王位継承権けいしょうけんを持つ次期国王だ。

 第一王子である馬鹿で無能な兄上が平民の女に現を抜かして婚約破棄はきをした上に、その報復ほうふくにより大怪我を負わされて、王位継承権けいしょうけん剥奪はくだつされたことで急遽きゅうきょ繰り上がりで王位継承権けいしょうけんが僕へとうつった。

 とてつもなく厄介事やっかいごとを押し付けてくれたもんだ、愚か者だとは思っていたがここまで愚か者だとは思っていなかった、王になったら最初に処刑しょけいしてやろうかと思ったくらいだ。つーかそのままくたばっちまえば良かったんだあの馬鹿は。

 しかし、愚か者の兄上のおかげでとんでもない僥倖ぎょうこうが舞い込んだ。

 政治的なバランスの理由から、僕の婚約も破棄はきにする流れが生まれたのだ。

 兄上の元婚約者は、この国の文明開化派の筆頭ひっとうであるエンデスヘルツ家の令嬢であったがそれが無くなったことにより、僕の婚約者のぞくする派閥はばつ勢力図せいりょくずかたむきすぎる。

 

 この国の王族は、誰かしら聖女を妻にするしきたりがある。
 それが今回は僕だったわけだ。

 大昔に聖女が王族の不正を神の啓示けいじによって正したということから以来、王族が不正を行わぬように聖女をめとり、不正は行わない意思表示とするみたいな理由があるらしい。

 まあ理由はかくとして。

 このまま僕が国王となって、聖女が王妃となったらこの国の勢力図せいりょくずは教会派に大きくかたむいてしまうのだ。

 その為に国は聖女というシステムごと、廃止はいしにしようと目論もくろんだ。
 それに併せて、僕と聖女の婚約も白紙にするということになったのだ。

 これには大いに喜んだ。

 もう正直に言おう。

 

 理由としてはまず、僕は聖女とまともに会話すらしたことがない。

 政略結婚が未だに多いこの国でも、流石に一度もちゃんと話したことすらないなんてことは異常いじょうだ。

 それに聖女は基本的に教会にこもっているので、結婚したところでまともな夫婦生活にはならない。
 結局僕はめかけを作り、子をもうけなくてはならない。
 破綻はたんが約束された結婚なのだ。

 それと、

 愚か者の元婚約者である、キャロライン・エンデスヘルツ嬢である。

 僕は昔から彼女にあこがれを抱いていた。
 あの愚か者には勿体もったいないくらい、素敵な人だとずっと思って想ってきた。

 それが今や兄上は婚約破棄はきをして王位継承権けいしょうけんを失った。

 こんなチャンスは二度とない。

 俗世ぞくせから隔離かくりされて、教会に閉じ込められるような生活をしている聖女も自由を手にする。

 僕も破綻はたんした婚姻から解放されて、自由を手にすることが出来る。

 誰も不幸にならない最高の決断だ、この国もようやく前に進むんだと思った。

 しかし。

 姿

 そして主要貴族や王は、その拒否反応に折れて、聖女と婚約の継続という要求を飲んだ。

 具体的に聖女がどのような抵抗ていこうを行ったかはせられているのでわからないが、噂によれば聖女の不思議な力を持ってこの国のいたる所を爆発させたとか。

 真偽はわからないが、少なくとも国王が決定をくつがえ程度ていどの何かが起きたことは確からしい。

 いーや、もうそんなおっかないのと結婚とか普通に嫌なんだけど。

 だから僕は、その辺りをがっつり話し合う為に、

 かなりの反対を押し切り、教会側にも無理を通した謁見えっけんである。

 つーか婚約者だぞ一応、僕は。
 会いに行くくらい好きにさせろ。

 神官の案内され教会の一番上にある、過剰かじょうそどに閉ざされてとざされたドアの前に着く。

「失礼します」

 と、案内をした神官は一言残してさっさと下がってしまった。

 えー、僕第二王子というかこれでも次期国王なんだけど。

 別に不敬ふけいとは言わないけどさ……、まあ嫁の実家で不当なあつかいを受けるみたいなノリなのかもしれない。

 なんてことを考えて緊張をやわらげる。
 あからさまに物々しい雰囲気が肌を刺す。

「……ふーっ」

 意を決して、僕は聖女の部屋のドアを開いた。
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