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17・冤罪裁判で婚約破棄され学園を追放されたので、この世界を滅ぼします。【全4話】

03彼を抱きしめた。

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 この国の貴族の派閥はばつ争い、足の引っ張り合い、そんなことが繰り返されてきたこと、人をおちいれて相対的にしか自分を持ち上げられない人間たちがこの国を回していく。

 そんな腐ったこの国は滅びるべきだと、力説した。

 やがて私の言いたいことはおおむね伝え終わると、彼は。

「うーん、二千年前と対して変わってねえんだなあ……、相変わらず人間ってのは愚かだねえ」

 と、しみじみそんな感想を漏らした。

「だから! この国を滅ぼしましょうよ! こんな国滅びるべきだわ!」

 私は魔王に詰め寄る。

「待て待て待て、いやまあわかるよお嬢ちゃんの言いたいことは、確かに二千年もそんな馬鹿なこと繰り返してりゃ大した発展も発達もしねえわな」

 、とさらに魔王は続く。

? 

 ややすごみをかせて、魔王が言う。
 空気が一瞬にして、肌を刺すようにピリつく。

「お嬢ちゃん、俺は魔王だ。魔王、つまり悪をして善行ぜんこうつぶす、たわむれで混沌こんとんを生むにも矜持きょうじはある。善無ぜんなきものに対して、ほっときゃ滅びるようなものに対して、発揮はっきするような力は持ち合わせてねえんだよ」

 あきらめな、と最後に一言付け加えて話を終わらせ去ろうとする。

 

「ならシェリー・ラスゴーランにまた貴方を封じてもらうしかないわね」

「ハッタリは通じねえぞ、あの女が生きてるなら俺はとっくにまた封じられてる」

 く、なら次だ。

「私の身体を好きにしてもよろしいわよ。生娘きむすめですわよ、魔王は好きでしょう、生娘きむすめ

「いらねぇ、ガキを相手にする趣味はねーんだよ。つーかなんだその魔王像、王はいい女しか抱かねーよ、ちゃんと取っとけ」

 まだまだ。

「食事にしませんこと? 二千年も食べてなかったのならお腹も空いているでしょう。うちのシェフが腕によりをかけて最高のおもてなしをいたしますわよ」

「不死身だぞ俺、腹なんか減ったことねえよ。数える程度ていどしか食ったこともねえ」

 もう少し。

「もしかして、魔王とか言っといてこの国を滅ぼすなんて本当は出来ないんじゃないですの?」

挑発ちょうはつが安すぎるだろ、なんでお嬢ちゃんは出来ねえと思われるやつにたのみ倒してんだ。造作もないけど造作もしないんだよ、もう行くぞ俺、この二千年で世界がどうなってるか見てえし」

 ああ、駄目だ。
 行ってしまう、行かないで、せっかく本当に魔王が居たのに、この国を滅ぼせるのに。

「待って!」

 

「おいおい……、やめとけよ、こんなん俺にとっちゃなんの抵抗ていこうにもなりゃしないし、俺からすりゃお嬢ちゃんとちり紙に耐久性の差なんか無いんだぜ。死にたくなきゃ離せ」

 と、またもや空気が変わる。

 でも私は離さない、絶対に離せない。

「……、どうして、やっとこの国を滅ぼせると思ったのに、本の中にしか居なかった魔王がここにいるのに、どうして私はこのを滅ぼすことが出来ないの……」

 すがりつき、またもや涙があふれ出る。
 すると。

「おい、今……、なんて言った?」

 魔王の様子がおかしい。

「だからこの国を、このを……」



 と、魔王は言った。
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