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16・え、婚約破棄? その言葉を待っていました!【全3話】

02それは寂しい。

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「おまえの相手は侯爵家だからまだいいかもしれないけどさ、僕の相手は一般の暮らしをしているから……、わりと僕は勘当かんどうまであるんだよな」

「なんで他所様の侍女になんてれたのよ……、ただでさえあの人たちにとっては寝耳に水な電撃破局になるのに」

 実際問題身分の違いというのは、この国においてまたまだ根深ねぶかい問題である。

 私たちが婚約破棄はきを両親にげても反対されるのは目に見えているが、サイモンの場合は反対される大義名分たいぎめいぶんをこっちから用意しているようなものだ。

「なんでって……、じゃあおまえはブロック・バルカードが侯爵家の人間だかられたのかよ」

「まあ、そうじゃないけど……、うん。そうじゃないね別に関係ないわ、ごめん」

 サイモンの指摘してきに私は素直に謝る。

 確かに私はブロックを家柄で好きになったわけじゃあない。
 なんで好きになったかなんてのろけ話は割愛かつあいするけど、少なくともそれは関係のないことだった。

「じゃあ私から破棄はきを申し出たことにして、あんたは私に振られて貴族の女が嫌になったみたいな感じにする?」

「馬鹿言え、それだったら僕が悪者になるようにしとけよ。変な悪役令嬢のイメージなんかついたらブロック・バルカードに振られちまうぞ」

 こいつは昔っから私と一緒に怒られる時は決まって自分を悪者にする。
 そして私もそれを良しとしたことがない。

「じゃあやっぱ折衷案せっちゅうあんで正直に二人とも別に恋人ができたって言うしかないね」

「だなあ、婚約破棄はきも二人のことだしな、二人で怒られよう」

 そうなるとタイミングはいつにするか。

「あ、じゃあ今度の私の誕生日パーティーの時に言えばあんたの両親もうちの両親もいるし一気に片付くんじゃない?」

「馬鹿言え、おまえの誕生日パーティーなんてめでたい席で婚約破棄はきなんてこと言えるわけないだろ、今回サプラ……、とにかくダメだろ誕生日は」

 え、こいつ今サプライズをバラさなかった? まあいいか、毎回なんかしらあるし、どうせ今年もこいつがなにかやるんだろう。今年も楽しみにしておいてやろう。

 まあしかし、言う通りだ。
 せっかく楽しい気持ちで集まったところでわざわざ落とすようなことをしなくてもいい。

「だったら、誕生日パーティーが終わってからタイミング合わせて各々が各々の両親に伝えるって感じにする……?」

「いやおまえが伝える時は僕も行くよ、一緒に怒られようって言っただろ」

 確かに、二人のことだから二人で怒られるって決めた。
 なら私もこいつが伝える時は一緒に行こう。多分こいつの方怒られるし、一緒に怒られてやらないと平等じゃないというか、二人のことじゃないみたいだ。

「つーか誕生日パーティー前でも別にいいんじゃねえか?」

 と、さらっと凄いこと言ってくる。

「え? だってあんたサプライズ用意してるんでしょ? 来ないつもりなの、私の誕生日パーティー」

「いや別に婚約破棄はきしても、別に僕たちの関係性ってなんか変わるのか? うちの親はおまえの親たちと仲良いし、おまえのことも大好きだから誕生日祝いに行くだろうし、僕も普通に祝いたいし、さみしいだろ」

 いや確かに、それはさみしい。

 何となく婚約破棄したらこいつとのえん自体も無くなるイメージをしていたが冷静に考えたら元々恋愛関係にあったわけでもないし嫌いになったわけでもないので、別に私たちの関係がなにか急に変わるなんてことはないのか。

「でも怒られ方によっては誕生日パーティー自体中止もありえるかもしれないわ……、したらあんたのサプライズ無駄になるね」

「まあそりゃ仕方ねーだろ、中止になったらケーキでも食いに行こうぜ、おごってやるから」

 まあそれならいっか、一番高いやつ頼んでやろう。
 昔からこいつは私が落ち込んだりするとケーキをご馳走する、ダイエットに失敗して落ち込んでる時にもケーキを食べに行こうとした時は流石に殴った。食べたけど。

「つーかやっぱどのくらい怒られるかは伝え方によるんだよなあ、どう伝えたもんかな……」

「正直に真摯しんしに話すしかないんじゃない? 後は私もあんたも傷ついてたり悲しんだりはしてないってところを理解してもらうしかないんじゃないかな」

 だって最初から恋じゃなかったし、お互いに他の人を好きになったんだからそれ以外に言いようがない。

「だなあ、じゃあまずはおまえん家から言いに行くか? 自分の親を先に済ませた方がおまえも気が楽だろ」

「いやいやだったらあんたのとこ先に行きましょうよ、あんたもそっちの方が気が楽でしょ?」

 こいつはここまでの会話でも節々ふしぶしに出てくるが、二人でいる時に自然に自分の方にウェイトが寄るように調整したがる。
 ありがたいし、たよりがいもあるけど、私だってたまにはちょっとくらい身をていしてもいいでしょう。
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