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13・貴族の学園でついに平民の私が標的にされたので、全力で相手してみました。【全4話】

03しばらくお粥も食えねぇと思え。

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 正直、がっかりだった。

 ここからこの貴族たちがなんかしらの武術で第二ラウンドが始まるきざしもない。
 期待していたほど、ホッケー部も使うやつらじゃなかった。
 やはり思い描いていた強者つわものはこの学園には居ないのだろうか。

 と、その時。

「――⁉」

 後ろから腰に手を回してがっちりと、組まれる。

 ――――。

 と、考える間もなくバックドロップで私はそのまま後頭部を地面に叩きつけられる。

 激痛と反動で転がりながら、見ると

「こんなこともあろうかと! まだ二人ひかえさせていたのですわ!」

 と、貴族たちが元気を取り戻す。

 くっそ、油断した。
 半年におよ安寧あんねいの日々で、私自身もにぶっていた。

 しかも結構デカいの貰った。
 視界がゆがむ。

 と、新たなホッケー部が木剣を振りかざす。
 けるために飛ぼうとするが、膝が抜ける。

 

 勢いよく振り下ろされた木剣をかろうじてガードするも腕に激痛が走る。

「いいわいいわ! やっておしまいなさい!」

 偉くご機嫌きげんに貴族たちがく。

 後でぜってー畳む。

 さらに続いて別のホッケー部に腹を蹴られて吹き飛び、木剣で脚を叩かれる。

「ぐっ……!」

 くっそ、貰いすぎてる。

 私の耐久値はプロレスラーの中では紙同然だ。
 ゆえにルチャリブレの道においてはかわして、流して、飛ぶ。

 だが、私もプロレスラーだ。

 試合が終わるまで、最後まで立ち続けるのを目的とした人間だ。

「はあああああああああああああああああああああああああああああ――――――――ッ、ハッ‼」

 気合いを入れてバク転から立ち上がる。

 くっそ、鼻血が止まらねぇ。
 バックドロップがきすぎてる。

 膝が笑ってステップが踏めない、飛ぶための流れに入れない。

 そこに容赦ようしゃなくホッケー部たちは木剣を振りかざす。

 終わりか。

 くやしい。
 敗北すること自体にじゃない。

 こんな訳のわからないやつらにルチャリブレの強さを証明できないのが、ただくやしい。

 くやしいが、歯を食いしばり、目を閉じる。

 ぎわさえも美しく、それが私のルチャリブレだ。

 …………? いくら待っても攻撃がこない。

 不審ふしんに思い目を開けると、そこには覆面ふくめんかぶり黒い革手袋をめた男が、ホッケー部の木剣をつかんで止めていた。

「なんかこそこそやってると思って見てりゃ……、これをグロリア嬢のせいにするつもりだったのかてめーら」

 と、木剣を止めながら覆面ふくめんの男は言う。

「しばらくお粥も食えねぇと思え」

 そう言うと覆面ふくめんの男は、木剣をホッケー部から引き抜いて思い切り膝を叩く。

 もう一人のホッケー部に思い切り金的をかまして倒れたところで顔のプロテクターを力任せにがして、そのままそのプロテクターでプロテクターが壊れて無くなるまでホッケー部の顔を叩いた。

 続けて、膝を叩かれのたうち回るホッケー部のプロテクターもがして今度は素手で「ごめんなさい!」とか「すみません!」という声が聞こえなくなってからもしばらく殴り続けた。

 私は合点がてんがいく。

 

 なんとなく、マスクということでレスラータイプの格闘者をイメージしていたが、違う。

 

 圧倒的な強さで、徹底的てっていてき過剰かじょうに相手を壊す。

 その姿を呆然あぜんながめていることしか出来なかった。
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