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11・冤罪裁判で婚約破棄された不幸のどん底の私は、祈りで民を幸せに導く聖女に文句を言いに行きました。【全4話】
02問題だらけですよ。
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そりゃそうだ。
こんな教会のてっぺんで閉じこもっているような私とそれほど歳の変わらぬ少女にそんなことできるはずもない。
私はその答えを聞いて、床へとへたり込む。
「じゃあ……、なんで私はこうなったのよ……」
と、誰に問うわけでもなくつぶやいた。
すると。
「アンジェラ・ステイモス、いくつかの『何故』については私でよろしければ説明いたしましょう……、まあ具体的な要因の特定までは至れないでしょうがその参考にはなると思います」
思いもよらぬ回答を得る。
「……やってみなさいよ。教会に引きこもってるあんたに、私の何が説明できるか聞いてやりますわよ」
私は聖女に向けて敵意を隠さずにそう言うと、聖女は少し目を閉じた後に説明を始めた。
「この国には数多くの役割やある程度の地位を持ついわゆる貴族がいます。王族を除いたその貴族の中で最上位の爵位を持つのが三つの公爵家である、エンデスヘルツ家、リングストン家、そして貴女の婚約者であったゴールドマン家です」
そんなことは知っている。しかし私は邪魔はせずに聖女の話を聞く、育ちの良さが出てしまう。
「三つの公爵家には特色があります。エンデスヘルツ家はこの国の文明的な発展や向上をはかろうとしている傾向にあります。対してリングストン家は文化や伝統を重んじ、発展ではなく維持を優先する傾向にあり教会との親交も信仰も最も厚いです。そしてゴールドマン家はその両家のまさに中立的な立場で教会の式典があれば寄付を行い、文明発展への投資も厭わない、まさに両家の中間といえる傾向にあり、貴族間の派閥作りに多大な影響を及ぼしています」
これも、なんとなく知っているが……、これはなんの話なんだ?
「そして、貴女の生まれたステイモス侯爵家はご存知の通り教会との親交が深く、派閥で言えばリングストン派閥に属している貴族となります」
ここで聖女の言いたいことを察した私は口を開く。
「別の派閥に嫁ぐことになったからそれを邪魔されたと仰りたいの? しかしエンデスヘルツ派閥に嫁ぐのならまだしも中立であるゴールドマン公爵家に私が嫁ぐことに何も問題はないはずでしょう」
私の主張に聖女はすぐに。
「問題だらけですよ」
と、答えて説明を続ける。
「ステイモス侯爵家は五爵の中で公爵に次いで上から二番目に位置します。つまり、リングストン派閥内でいえばかなり影響力のある家だと言えます。そんなステイモス家が中立であるゴールドマン公爵家に嫁ぎ密接な付き合いが出来るのを阻止したいと思う人は少なくないでしょう」
私はその言葉に、はっとして。
「つまり私は、ゴールドマン公爵家をリングストン派閥に引き込ませない為に、エンデスヘルツ派閥の陰謀によって陥れられたと?」
「いいえ、そうとは限らないのですよ」
と、私の気づきを即座に否定して続ける。
「ゴールドマン公爵家は中立であるから故に、エンデスヘルツ家との親交も深い。この度の聖女退任案もエンデスヘルツ公爵だけではなくゴールドマン公爵の力添えもあったと聞きます」
「え、あなた聖女やめるの?」
さらっと出てきた国を揺るがすビッグニュースについ飛びついてしまう。
「やめませんよ」
その件はもう解決済みですよ。と、そのまま説明を続ける。
こんな教会のてっぺんで閉じこもっているような私とそれほど歳の変わらぬ少女にそんなことできるはずもない。
私はその答えを聞いて、床へとへたり込む。
「じゃあ……、なんで私はこうなったのよ……」
と、誰に問うわけでもなくつぶやいた。
すると。
「アンジェラ・ステイモス、いくつかの『何故』については私でよろしければ説明いたしましょう……、まあ具体的な要因の特定までは至れないでしょうがその参考にはなると思います」
思いもよらぬ回答を得る。
「……やってみなさいよ。教会に引きこもってるあんたに、私の何が説明できるか聞いてやりますわよ」
私は聖女に向けて敵意を隠さずにそう言うと、聖女は少し目を閉じた後に説明を始めた。
「この国には数多くの役割やある程度の地位を持ついわゆる貴族がいます。王族を除いたその貴族の中で最上位の爵位を持つのが三つの公爵家である、エンデスヘルツ家、リングストン家、そして貴女の婚約者であったゴールドマン家です」
そんなことは知っている。しかし私は邪魔はせずに聖女の話を聞く、育ちの良さが出てしまう。
「三つの公爵家には特色があります。エンデスヘルツ家はこの国の文明的な発展や向上をはかろうとしている傾向にあります。対してリングストン家は文化や伝統を重んじ、発展ではなく維持を優先する傾向にあり教会との親交も信仰も最も厚いです。そしてゴールドマン家はその両家のまさに中立的な立場で教会の式典があれば寄付を行い、文明発展への投資も厭わない、まさに両家の中間といえる傾向にあり、貴族間の派閥作りに多大な影響を及ぼしています」
これも、なんとなく知っているが……、これはなんの話なんだ?
「そして、貴女の生まれたステイモス侯爵家はご存知の通り教会との親交が深く、派閥で言えばリングストン派閥に属している貴族となります」
ここで聖女の言いたいことを察した私は口を開く。
「別の派閥に嫁ぐことになったからそれを邪魔されたと仰りたいの? しかしエンデスヘルツ派閥に嫁ぐのならまだしも中立であるゴールドマン公爵家に私が嫁ぐことに何も問題はないはずでしょう」
私の主張に聖女はすぐに。
「問題だらけですよ」
と、答えて説明を続ける。
「ステイモス侯爵家は五爵の中で公爵に次いで上から二番目に位置します。つまり、リングストン派閥内でいえばかなり影響力のある家だと言えます。そんなステイモス家が中立であるゴールドマン公爵家に嫁ぎ密接な付き合いが出来るのを阻止したいと思う人は少なくないでしょう」
私はその言葉に、はっとして。
「つまり私は、ゴールドマン公爵家をリングストン派閥に引き込ませない為に、エンデスヘルツ派閥の陰謀によって陥れられたと?」
「いいえ、そうとは限らないのですよ」
と、私の気づきを即座に否定して続ける。
「ゴールドマン公爵家は中立であるから故に、エンデスヘルツ家との親交も深い。この度の聖女退任案もエンデスヘルツ公爵だけではなくゴールドマン公爵の力添えもあったと聞きます」
「え、あなた聖女やめるの?」
さらっと出てきた国を揺るがすビッグニュースについ飛びついてしまう。
「やめませんよ」
その件はもう解決済みですよ。と、そのまま説明を続ける。
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