上 下
38 / 132
11・冤罪裁判で婚約破棄された不幸のどん底の私は、祈りで民を幸せに導く聖女に文句を言いに行きました。【全4話】

02問題だらけですよ。

しおりを挟む
 そりゃそうだ。
 こんな教会のてっぺんで閉じこもっているような私とそれほど歳の変わらぬ少女にそんなことできるはずもない。

 私はその答えを聞いて、床へとへたり込む。

「じゃあ……、なんで私はこうなったのよ……」

 と、誰に問うわけでもなくつぶやいた。

 すると。

「アンジェラ・ステイモス、いくつかの『何故』については私でよろしければ説明いたしましょう……、まあ具体的な要因よういんの特定まではいたれないでしょうがその参考にはなると思います」

 思いもよらぬ回答を得る。

「……やってみなさいよ。教会に引きこもってるあんたに、私の何が説明できるか聞いてやりますわよ」

 私は聖女に向けて敵意を隠さずにそう言うと、聖女は少し目を閉じた後に説明を始めた。

「この国には数多くの役割やある程度ていどの地位を持ついわゆる貴族がいます。王族をのぞいたその貴族の中で最上位の爵位を持つのが三つの公爵家である、エンデスヘルツ家、リングストン家、そして貴女の婚約者であったゴールドマン家です」

 そんなことは知っている。しかし私は邪魔はせずに聖女の話を聞く、育ちの良さが出てしまう。

「三つの公爵家には特色とくしょくがあります。エンデスヘルツ家はこの国の文明的な発展や向上をはかろうとしている傾向けいこうにあります。対してリングストン家は文化や伝統でんとうを重んじ、発展ではなく維持いじを優先する傾向にあり教会との親交しんこう信仰しんこうも最も厚いです。そしてゴールドマン家はその両家のまさに中立的な立場で教会の式典があれば寄付を行い、文明発展への投資もいとわない、まさに両家の中間といえる傾向けいこうにあり、

 これも、なんとなく知っているが……、これはなんの話なんだ?

「そして、貴女の生まれたステイモス侯爵家はご存知ぞんじの通り教会との親交が深く、

 ここで聖女の言いたいことを察した私は口を開く。

「別の派閥はばつに嫁ぐことになったからそれを邪魔されたとおっしゃりたいの? しかしエンデスヘルツ派閥はばつに嫁ぐのならまだしも中立であるゴールドマン公爵家に私が嫁ぐことに何も問題はないはずでしょう」

 私の主張に聖女はすぐに。

「問題だらけですよ」

 と、答えて説明を続ける。

「ステイモス侯爵家は五爵の中で公爵に次いで上から二番目に位置します。つまり、リングストン派閥はばつ内でいえばかなり影響力のある家だと言えます。そんなステイモス家が中立であるゴールドマン公爵家に嫁ぎ密接みっせつな付き合いが出来るのを阻止したいと思う人は少なくないでしょう」

 私はその言葉に、はっとして。

「つまり私は、?」

「いいえ、そうとは限らないのですよ」

 と、私の気づきを即座に否定して続ける。

「ゴールドマン公爵家は中立であるからゆえに、エンデスヘルツ家との親交も深い。このたびの聖女退任案もエンデスヘルツ公爵だけではなくゴールドマン公爵の力添ちからぞえもあったと聞きます」

「え、あなた聖女やめるの?」

 さらっと出てきた国をるがすビッグニュースについ飛びついてしまう。

「やめませんよ」

 その件はもう解決済みですよ。と、そのまま説明を続ける。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?

サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

処理中です...