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9・女神から聖女を育てるように言われたけど、なんか癪なので魔女として育てます。【全4話】
03不老長寿として。
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彼は吹き出したコーヒーを拭いて、私に向き直り、あのなぁ……、と前置きを入れて呆れ顔で答える。
「……、誰の為に僕は百五十年も生きながらえて来たと思うんだ……、良いに決まってるだろう、むしろ僕以外に頼ろうとするのなら、それを許さないぞ僕は」
その答えに、とりあえず久方ぶりにキスをして。
粉乳の作り方と、授乳方法と空気の吐かせた方、おしめの変え方を教えて私はぐっすりと眠った。
こうして、私とマリクとサム、三人の生活が始まった。
ああ、サムとは赤ん坊の名前だ。
サム・ラスゴーラン・ノア、命名はマリクだ。
私が育てていた一ヶ月の間には考える余裕すらなかったので、二人で案を出し合いマリクの案を採用する運びとなった。
二人の共同研究により、サムはすくすくと成長した。
言葉を覚えるのも早く、マリクよろしく計算も早く、私に似て原因解明も上手く育った。
そして時折、サムは明らかに人の領域を逸脱した現象を意図的に起こしていた。
手をかざして火の玉を出したり。
何もないところから水を出したり。
怪我が直ぐに治ったり。
宙に浮いて空を飛んだり。
一般的に奇跡と言っても過言ではない現象を起こしていた。
しかし、奇跡なんてのは聖女が起こすものであり、魔女が使うのは魔法である。
それに一般的には奇跡で終わるかもしれないが、ここにいるのは、真理に到達した研究者と物理現象を掌握し星を動かすに至った探求者なのだ。
たかが人の領域を逸脱した程度の現象に、奇跡なんて言葉は使わない。
サムの起こした現象全てを研究し、実証し、再現してみせて、サムに何故こうなったのかを逐一説明した。
なんか知らんけどこうなった、というのは奇跡かもしれないが。
何故こうなったかを把握して再現するのは科学であり、それを知識と自身の力で発揮できるのは魔法である。
私はサムを聖女ではなく魔女として育てる。
その為に、徹底してサムの起こす現象全てを証明した。
そんな日々が続き、二十余年の月日がたった。
サムは私とマリクの知識を吸収し、立派な魔女として成長を果たした。
知識の中で現象に理論を当てはめて、計算し、発揮する。
それらの現象を誰かの為でなく自分の為に使う。
そこが聖女ではなく魔女といえる、決定的な違いなのだ。
そしてこの頃になり、サムの肉体的な成長が完全に止まっていることに気づいた。
私やマリクと同じように、彼女もまた不老長寿の身体を持っているようだった。
まあ昔からその兆候はあった。
怪我をしてもすぐに治るところであったり。
月経周期が異様なほど長く、それが殆ど訪れなかった点であったり。
個人が長命になるということは、生物として種の繁殖が不要になるということなのだ。
私と同じように、サムもまた子を宿すことはないだろう。
不老長寿としての生き方を、不老長寿として生きている、不老長寿としての先輩である私からサムにしっかりと伝える。
「……、誰の為に僕は百五十年も生きながらえて来たと思うんだ……、良いに決まってるだろう、むしろ僕以外に頼ろうとするのなら、それを許さないぞ僕は」
その答えに、とりあえず久方ぶりにキスをして。
粉乳の作り方と、授乳方法と空気の吐かせた方、おしめの変え方を教えて私はぐっすりと眠った。
こうして、私とマリクとサム、三人の生活が始まった。
ああ、サムとは赤ん坊の名前だ。
サム・ラスゴーラン・ノア、命名はマリクだ。
私が育てていた一ヶ月の間には考える余裕すらなかったので、二人で案を出し合いマリクの案を採用する運びとなった。
二人の共同研究により、サムはすくすくと成長した。
言葉を覚えるのも早く、マリクよろしく計算も早く、私に似て原因解明も上手く育った。
そして時折、サムは明らかに人の領域を逸脱した現象を意図的に起こしていた。
手をかざして火の玉を出したり。
何もないところから水を出したり。
怪我が直ぐに治ったり。
宙に浮いて空を飛んだり。
一般的に奇跡と言っても過言ではない現象を起こしていた。
しかし、奇跡なんてのは聖女が起こすものであり、魔女が使うのは魔法である。
それに一般的には奇跡で終わるかもしれないが、ここにいるのは、真理に到達した研究者と物理現象を掌握し星を動かすに至った探求者なのだ。
たかが人の領域を逸脱した程度の現象に、奇跡なんて言葉は使わない。
サムの起こした現象全てを研究し、実証し、再現してみせて、サムに何故こうなったのかを逐一説明した。
なんか知らんけどこうなった、というのは奇跡かもしれないが。
何故こうなったかを把握して再現するのは科学であり、それを知識と自身の力で発揮できるのは魔法である。
私はサムを聖女ではなく魔女として育てる。
その為に、徹底してサムの起こす現象全てを証明した。
そんな日々が続き、二十余年の月日がたった。
サムは私とマリクの知識を吸収し、立派な魔女として成長を果たした。
知識の中で現象に理論を当てはめて、計算し、発揮する。
それらの現象を誰かの為でなく自分の為に使う。
そこが聖女ではなく魔女といえる、決定的な違いなのだ。
そしてこの頃になり、サムの肉体的な成長が完全に止まっていることに気づいた。
私やマリクと同じように、彼女もまた不老長寿の身体を持っているようだった。
まあ昔からその兆候はあった。
怪我をしてもすぐに治るところであったり。
月経周期が異様なほど長く、それが殆ど訪れなかった点であったり。
個人が長命になるということは、生物として種の繁殖が不要になるということなのだ。
私と同じように、サムもまた子を宿すことはないだろう。
不老長寿としての生き方を、不老長寿として生きている、不老長寿としての先輩である私からサムにしっかりと伝える。
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