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7・聖女を殺せと送り込まれた暗殺者だけど、改心させられそうです。【全3話】

01聖女に問う。

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 僕、ナンバーナインはとある国の暗部にぞくする、いわゆる暗殺者である。

 この世に生まれた時から人を殺める為に教育を受け、大義たいぎの為に人を殺めることをいとわないように矯正され、強制されてきた。

 いつでも大義の為に人を殺め、その為に自分の命をもいとわないようにも矯正され、強制されてきた。

 僕は消耗品の殺人用自動人形のようなものだ。

 そうやって作られたのだ、そのことに対して僕は疑問や意見を持たない。

 それで何も問題はない。

 して今回の指令は、隣の国で聖女と呼ばれる存在であるウェンディ・ロックハートの暗殺だ。

 神の加護を受けて神の教えにじゅんじ祈りによって民に安寧あんねい秩序ちつじょをもたらす聖女が、他所の国のたかが暗殺者にサクッと殺されれば神など居ないということが証明されるということらしい。

 神の是非ぜひは知らないが、殺して死なない人間など居ない。

 つまり、神などいない。
 
 気配を殺し、影に潜み、音という音を消して、僕は教会へと忍び込む。

 あっという間に聖女の眠る部屋へと辿たどり着く。

 ベッドに横たわる聖女の横に立ち、その姿をながめる。

 これが聖女か、ただの女だ。
 絶対に殺せる。

 神の加護を受けるなど、この国を安寧あんねい秩序ちつじょみちびくなど、どんなやつかと思ったが。

 どうということもない。
 ただの容姿ようしととのった小娘だ。

 ながめてみたところで、そんなだいそれた存在にはとても思えない。

 もう殺そう。

 指令を実行にうつすために、ふところからナイフを抜く。

「……っ!」

 僕はつい声を漏らしかける。

 

 使い込んでいる武器だ、見えない金属疲労や負荷ふかもって壊れることもあるだろう。

 別にナイフが使えないからといって、この女を殺せない理由には全くならない。

 その細い首に手をかければ、めようが折ろうがどうにだって殺すことはできる。

 

 ナイフの刃がカーペットにかすかな音を立てて落ちる。

 驚愕驚愕していた。

 

「私は死にませんよ」

 と、横たわったまま目を開き、聖女は僕に向けて言う。

「神の意思でしか私は死ねないのです。

 人間と言うのか、この僕を。

「……、貴様かて人間だろう」

 聖女の言葉に、つい口を開いてしまう。
  
「私は人間ではありません。私は聖女です。聖女として生まれ、聖女として生きて、聖女としてちる、それが私であり聖女です」

「それなら僕も同じだ。人を殺す為に生まれて、人を殺す為に育った、壊れるまで使われるだけの暗殺用の道具や手段にすぎない、自動人形と変わらない存在だ」

 またもや、つい口を開いてしまう。
 こんなに無駄口を叩いたのは初めてだ。

 聖女は僕の言葉を聞き、考えることもなく、さらりと答える。

「いいえ、貴方は人間です。自動人形であればこんなに話をせずにとっくに私を殺しているでしょう。神も私の今際いまわきわだとしたなら、本当に自動人形を送り込んだことでしょう。

 それを聞き、僕はすぐに聖女の首に手をかける。
 これ以上聞くのはまずいと思った。
 この女の言葉には、よくわからない説得力のようなものを感じ初めていた。

「……、私の話で、らぎ、あせって……、行動にうつすような、者が、人形なわけ、ないでしょ……、う」

 首をめられながら聖女は語る。

「貴方は……、恐れ、て、迷った、それは……、これ以上なく、人間の……、もの、であり……、人間は、みちびか……、れるべき、な、のです」

 僕の目を真っ直ぐ見つめながら、続ける。

「……、私が……、人間を、貴方を……みちびきま、……、しょ……」

 青ざめて、言葉を失って行く聖女の首を、僕は気づいた時には

 身体を起こして、激しくき込む。

 息がととのうのを待ち、僕は聖女に問う。
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