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6・神に祈るのも飽きたので、聖女が脱走計画を企てました。【全4話】
03抜かった。
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心配で心配で考えないでいることが出来ない。一連の流れで質屋から散髪屋と洋服店にたどり着いたように語ったが、この時点で既にリディア様が居なくなってから五日が経過しているのだ。
心配で夜も眠れないとはこのことだ。
すぐに国外への移動を始めるだろうか、それとも事前に知識を得るために図書館に向かうだろうか、いや一旦娯楽を楽しむために本当に劇場に行くことだって考えられる。
幾つかの可能性を精査して、私が導き出したのは国外への移動の筋だった。
国内に居ては見つかってしまうのは明白である、ならば国外へ行くしかない。
国外へ行くのであればこの国の図書館でこの国の情報を得ても仕方がない。
娯楽を楽しむ筋も悩んだが、もう既にリディア様は洋服の買い物や散髪など十分に楽しんでいらっしゃる。
ならば、この国はさっさと出てしまった方が良いと判断するはずだ。
だが国外へ出る方法はどうするのだろうか、移動手段として徒歩というのは考えにくい。馬車を借りたか乗り合いの移動馬車に同乗した可能性だってある。
とにかく私は国内外に通じる門で手当り次第に聞き込みを行い、聞き込みで得た容姿の女性が通ってないかを聞いたが情報は得られず。
併せて、乗り合い馬車の乗車履歴や馬車と行者を貸し出す店にも聞き込んだが収穫はなかった。
どちらにしてもかなりの高額な費用となる、質屋で作った資金をここに注ぎ込むことになるだろう。
予想を外したか。
リディア様が居なくなって早くも一月が経過したが、まさかまだ国内に留まっているのだろうか。
もう少し資金を貯めるために画策している可能性もある。
そちらの筋で考えを改めようと、飲食店にて昼食を取っていると。
近くに座った商人らしき方々の会話が耳に入る。
最近儲かっているかだとか、どこどこの店の女の子が可愛いだとか、そんな世間話の中に一つ聞き飛ばせない内容があった。
行商に出る寸前に乗せた女から貰った服が思った以上に高値で売れた。という話だった。
すぐに私はその商人に詰め寄り、詳細を聞き込む。
しまった、抜かった。
質屋の後に服を着替えたのであれば、着替える前に着ていた服をどうしたのかも考えるべきだった。
行き先を指定して、その為に人を動かし馬車を手配するより、既に行商の行き先が決まっている馬車に同乗した方が絶対に安上がりだ。
更に教会が用意した聖女の衣装は、高級な生地に丁寧な仕立てを施した、美しい衣装だ。
見るものが見れば、その価値を見出すことは出来るし、何か訳アリの雰囲気を感じ取っても異国で売ってしまうならなんら問題は無い。
商人からリディア様の行き先を聞き出したが、その商人は一ヶ月の行商を経てこの国へ戻って来たと言う。
つまりリディア様は教会を抜け出して直ぐに、この国を出ていたのだ。
聖女の幸運を侮っていた。
そこまでトントン拍子に物事が進むなんて。
私はすぐに教会へ行き先を報告し、馬車を手配して異国へと旅立った。
一ヶ月も遅れを取ってしまった。
焦りと不安が身体中を駆け巡る。
そこからも、同じように到着した異国でリディア様の動向を追った。
酒場で歌を歌っていたこと。
子供たちに勉強を教えていたこと。
商人たちに経済について論争をしていたこと。
その商人たちと仲良くなり、更に異国へと旅立ったこと。
その異国で出会った薬剤師をしている奥さんと料理人として店を持つご主人の夫婦の元でしばらくお世話になり、薬の作り方や裁縫や料理などを習っていたこと。
リディア様の軌跡を追体験するような形で追い続けて。
二年が経過した。
心配で夜も眠れないとはこのことだ。
すぐに国外への移動を始めるだろうか、それとも事前に知識を得るために図書館に向かうだろうか、いや一旦娯楽を楽しむために本当に劇場に行くことだって考えられる。
幾つかの可能性を精査して、私が導き出したのは国外への移動の筋だった。
国内に居ては見つかってしまうのは明白である、ならば国外へ行くしかない。
国外へ行くのであればこの国の図書館でこの国の情報を得ても仕方がない。
娯楽を楽しむ筋も悩んだが、もう既にリディア様は洋服の買い物や散髪など十分に楽しんでいらっしゃる。
ならば、この国はさっさと出てしまった方が良いと判断するはずだ。
だが国外へ出る方法はどうするのだろうか、移動手段として徒歩というのは考えにくい。馬車を借りたか乗り合いの移動馬車に同乗した可能性だってある。
とにかく私は国内外に通じる門で手当り次第に聞き込みを行い、聞き込みで得た容姿の女性が通ってないかを聞いたが情報は得られず。
併せて、乗り合い馬車の乗車履歴や馬車と行者を貸し出す店にも聞き込んだが収穫はなかった。
どちらにしてもかなりの高額な費用となる、質屋で作った資金をここに注ぎ込むことになるだろう。
予想を外したか。
リディア様が居なくなって早くも一月が経過したが、まさかまだ国内に留まっているのだろうか。
もう少し資金を貯めるために画策している可能性もある。
そちらの筋で考えを改めようと、飲食店にて昼食を取っていると。
近くに座った商人らしき方々の会話が耳に入る。
最近儲かっているかだとか、どこどこの店の女の子が可愛いだとか、そんな世間話の中に一つ聞き飛ばせない内容があった。
行商に出る寸前に乗せた女から貰った服が思った以上に高値で売れた。という話だった。
すぐに私はその商人に詰め寄り、詳細を聞き込む。
しまった、抜かった。
質屋の後に服を着替えたのであれば、着替える前に着ていた服をどうしたのかも考えるべきだった。
行き先を指定して、その為に人を動かし馬車を手配するより、既に行商の行き先が決まっている馬車に同乗した方が絶対に安上がりだ。
更に教会が用意した聖女の衣装は、高級な生地に丁寧な仕立てを施した、美しい衣装だ。
見るものが見れば、その価値を見出すことは出来るし、何か訳アリの雰囲気を感じ取っても異国で売ってしまうならなんら問題は無い。
商人からリディア様の行き先を聞き出したが、その商人は一ヶ月の行商を経てこの国へ戻って来たと言う。
つまりリディア様は教会を抜け出して直ぐに、この国を出ていたのだ。
聖女の幸運を侮っていた。
そこまでトントン拍子に物事が進むなんて。
私はすぐに教会へ行き先を報告し、馬車を手配して異国へと旅立った。
一ヶ月も遅れを取ってしまった。
焦りと不安が身体中を駆け巡る。
そこからも、同じように到着した異国でリディア様の動向を追った。
酒場で歌を歌っていたこと。
子供たちに勉強を教えていたこと。
商人たちに経済について論争をしていたこと。
その商人たちと仲良くなり、更に異国へと旅立ったこと。
その異国で出会った薬剤師をしている奥さんと料理人として店を持つご主人の夫婦の元でしばらくお世話になり、薬の作り方や裁縫や料理などを習っていたこと。
リディア様の軌跡を追体験するような形で追い続けて。
二年が経過した。
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