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6・神に祈るのも飽きたので、聖女が脱走計画を企てました。【全4話】
02今すぐ探しましょう。
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後悔しながら何か行き先の手がかりがないかどうか『脱走計画書』を読み込む。
だが、『ショーシャンク案』や『ラプンツェル案』であったり、私には解読できない単語が多く、聖女の考えを理解することはできなかった。
さらにインデックスを見ると『脱走後の行動について』という項目があったので書かれているはずの場所を見たが、破り取られていて確認することは叶わなかった。
すぐさま教会内で司祭などの主要な神官、エンデスヘルツ家やリングストン家などの主要貴族、国を守る騎士団長、王子、国王などの王族までも集結し会議が行われた。
おそらく私はこの会議において、五百回は「今すぐに探しましょう」と言っただろう。
しかし、それよりも重要な議題として挙げられていたのは「如何にして聖女の空位を作らないか」というものであった。
一時的な代理を立てるのか、それともリディア様として別の聖女を用意するのか、それともまだかなり早いが新しく聖女を任命するのか、などが話し合われていた。
私の意見は無視されるわけでは無いのだが、一番の重要事項はやはり、聖女の安否よりも、聖女の不在に関しての方だったのだ。
私は更にもう五百回「今すぐ探しましょう」と意見を述べると。
「レイチェル・カーデリーニ、とりあえずもうここは良いから君は探しに行きなさい。必要な資金や荷物は用意するから」
と、ようやく私の待ち望んだ返事を頂くことができた。
私は急ぎ旅支度を終えて、街へと繰り出した。
娯楽に飢えていた様子であったリディア様が向かうであろう場所は劇場や大衆向けの本のある図書館などが考えられたが、よく考えたらリディア様はお金すら持っていないのだ。
そういえば教会の装飾品や、ハードカバーの本が持ち去られていた。
まずはそれらを売り払って、資金を作るのではないかと私は片っ端から質屋の類いを周り、少し離れた街で、装飾品が売られているのを見つけて店主に売りに来た人物について問いただした。
店主はその時のことをかなり明確に覚えていた。
身綺麗な格好に美しく伸びた髪の毛をしていて最初は貴族様でも来たのかと思ったが、ギリギリまで値段を釣り上げられた挙句この国地理や、他国に旅行に行くなら何処がいいかなどの質問攻めにあい、かなりの時間を要したとのこと。
その際に店主が旅行先に答えた国々を教えてもらいしっかりと控えておく。
恐らく、これらの国には向かっていない。
『脱走計画書』の綿密さや、それらを実行する大胆さを思うと、こんなにベタなヒントを残して行くとは思えないのだ。
これでもリディア様とは十年以上の付き合いなのだ。
前世の記憶が戻ろうとも、基本的な人格が変わるとは思えない。
リディア様は賢く、物事を徹底し追求が出来るお方だ。
生まれてこの方神に祈るという行為を続けて、ただ祈るだけではなく何を祈るべきなのかを常に考えていたお方なのだ。
お金を手にしたリディア様が行うべきことを考える。
店主が言っていた「貴族様が来たのかと思った」という情報に着目する。
そう思ったのであれば、恐らくリディア様はそう思われたことに気づいたはずだ。
あの質屋に至るまでも奇異の目で見られていたことだろう。
ならば、散髪と服装を変えたはずだ。
そう思い、近辺の散髪屋や洋服店から聞き込みをした。
この予想も的中し、今のリディア様のおおよその容姿を把握することができた。
お金を手に入れて容姿を変えた聖女は、次にどうする。
私は必死に考える。
だが、『ショーシャンク案』や『ラプンツェル案』であったり、私には解読できない単語が多く、聖女の考えを理解することはできなかった。
さらにインデックスを見ると『脱走後の行動について』という項目があったので書かれているはずの場所を見たが、破り取られていて確認することは叶わなかった。
すぐさま教会内で司祭などの主要な神官、エンデスヘルツ家やリングストン家などの主要貴族、国を守る騎士団長、王子、国王などの王族までも集結し会議が行われた。
おそらく私はこの会議において、五百回は「今すぐに探しましょう」と言っただろう。
しかし、それよりも重要な議題として挙げられていたのは「如何にして聖女の空位を作らないか」というものであった。
一時的な代理を立てるのか、それともリディア様として別の聖女を用意するのか、それともまだかなり早いが新しく聖女を任命するのか、などが話し合われていた。
私の意見は無視されるわけでは無いのだが、一番の重要事項はやはり、聖女の安否よりも、聖女の不在に関しての方だったのだ。
私は更にもう五百回「今すぐ探しましょう」と意見を述べると。
「レイチェル・カーデリーニ、とりあえずもうここは良いから君は探しに行きなさい。必要な資金や荷物は用意するから」
と、ようやく私の待ち望んだ返事を頂くことができた。
私は急ぎ旅支度を終えて、街へと繰り出した。
娯楽に飢えていた様子であったリディア様が向かうであろう場所は劇場や大衆向けの本のある図書館などが考えられたが、よく考えたらリディア様はお金すら持っていないのだ。
そういえば教会の装飾品や、ハードカバーの本が持ち去られていた。
まずはそれらを売り払って、資金を作るのではないかと私は片っ端から質屋の類いを周り、少し離れた街で、装飾品が売られているのを見つけて店主に売りに来た人物について問いただした。
店主はその時のことをかなり明確に覚えていた。
身綺麗な格好に美しく伸びた髪の毛をしていて最初は貴族様でも来たのかと思ったが、ギリギリまで値段を釣り上げられた挙句この国地理や、他国に旅行に行くなら何処がいいかなどの質問攻めにあい、かなりの時間を要したとのこと。
その際に店主が旅行先に答えた国々を教えてもらいしっかりと控えておく。
恐らく、これらの国には向かっていない。
『脱走計画書』の綿密さや、それらを実行する大胆さを思うと、こんなにベタなヒントを残して行くとは思えないのだ。
これでもリディア様とは十年以上の付き合いなのだ。
前世の記憶が戻ろうとも、基本的な人格が変わるとは思えない。
リディア様は賢く、物事を徹底し追求が出来るお方だ。
生まれてこの方神に祈るという行為を続けて、ただ祈るだけではなく何を祈るべきなのかを常に考えていたお方なのだ。
お金を手にしたリディア様が行うべきことを考える。
店主が言っていた「貴族様が来たのかと思った」という情報に着目する。
そう思ったのであれば、恐らくリディア様はそう思われたことに気づいたはずだ。
あの質屋に至るまでも奇異の目で見られていたことだろう。
ならば、散髪と服装を変えたはずだ。
そう思い、近辺の散髪屋や洋服店から聞き込みをした。
この予想も的中し、今のリディア様のおおよその容姿を把握することができた。
お金を手に入れて容姿を変えた聖女は、次にどうする。
私は必死に考える。
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