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3・聖女の私が婚約破棄で追放? そんなこともあろうかと、爆弾を仕掛けておきましたわ。【全3話】
02信心深いのですね。
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一瞬の静寂の後に、ざわめき出す貴族や王族達。
「……何を、言ってるんだ……?」
ざわめきの中、真摯にこちらを見つめて一人の貴族が問いかける。
式典などで何度か挨拶を交わしたことがある、確かエンデスヘルツ公爵だ。
「爆弾を仕掛けたのですよ公爵。まあ信じて貰えないのも当然ですので、とりあえず」
私はそうエンデスヘルツ公爵に返し、ブレスレットの装飾に見立てられたスイッチを一つ押す。
すると、壁が震えるほど低くて音というより空気の振動の塊を全身で浴びたような衝撃と共に、窓から見えていた城の南棟の屋根が弾け飛んだ。
「ではもう一つ」
続けて私は更にブレスレットのスイッチを押す。
今度は音は微かではあったが、窓から綺麗に見える山肌から見事なほどに爆煙と共に土煙が吹き出したのが見えた。
「もう一つお見せいたしますか?」
「いや! もういい‼ 十分だ、わかったから、やめなさい」
私の問いに、エンデスヘルツ公爵は慌てて答える。
「信じて頂けたでしょうか」
私が彼にした頼み事とは、私が自由に起爆することの出来る爆弾を仕掛けてもらうことであった。
「ちなみに、私を取り押さえるのはお止めになった方が良いですよ。簡単な動作で全ての爆弾を起爆することは可能ですので、取り押さえる前にこの国は滅びます。今から探しに行くのは自由ですよ。まあ、一年以上も前から準備をして爆発するまで仕掛けられていることに気付けもしなかったものを、一日やそこらで見つけられるとはおもえませんが」
そんな牽制に対し。
「何が目的なんだ? 何故こんなこと……!」
エンデスヘルツ公爵の問いに。
「目的、でしょうか。目的と言うのは少し違いますが、私は皆様に再度認識を改めていただければと思ったのです」
私はそう答える。
「認識を改めるだと……?」
すると国王も私の話を聞く姿勢を見せる。
「はい、聖女はこの国の安寧と幸福を祈る存在です。つまり、聖女がいなくなるのであればこの国の安寧と幸福は崩壊して然りなのです」
そのまま私は続ける。
「今の爆発も私が聖女であれば起こらなかったものです。しかし、私が聖女でなくなることで爆発は起きました。まあ今の二つに関しては人的被害が極力出ない場所での爆発ですので、まだ安寧と幸福が崩壊したとはいえませんが」
私の説明にエンデスヘルツ公爵も、国王も、その他貴族たちも総じて言葉を失っていた。
「私を棄てると、次は……そうですね、病院か学校、孤児院や貴族の屋敷、このお城というのも出来ますが、さて、何処にいたしましょうか」
言葉を失った貴族や王族たちに問いかける。
「そんなことをしたら……、どれだけの人間が死ぬと思っているんだ、君は人の命の重さというものをわかっているのか」
と、エンデスヘルツ公爵は口を開く。
「エンデスヘルツ公爵は教会に住まい神の教えに殉じ、聖人として生きてきた者に対して、死や命の重さを語れるというのですか」
余程信心深いのですね。と、付け加えると公爵は黙った。
「ジュリアナ・ロックハート、貴方は勘違いをしている、我々は聖女を追放したいのではなく、解放したいのだよ」
国王は毅然な態度で、私にそれを伝える。
「その通りだ。私達は君を、ずっとあの教会に縛り付けるのをやめたいんだ。君も人間だ、人間は誰だって自由に幸せを求めていいんだ」
と、公爵が続く。
私は彼らの言い分を暫く黙って聞いてみることにした。
「もうあんなところに一人で生きてなくていいんだ」
とか。
「色んな勉強をしてみんなで暮らせるようになろう」
「普通の暮らしでもいいし、普通以上の暮らしでもいい」
など。
「少しずつでいい、色々なことがわかるようになろう」
「君を自由にしたいんだ」
なんてことも。
「婚約だって君の本意じゃないはずだ。だから一度破棄しようということであって、君の気持ちを尊重したいだけなんだ」
「君はまだ若い上に、閉鎖的な環境で育ったんだから」
はいはい。
「君が本当にジャレッド王子を好きならもちろんそれに超したことはないけれど、君は恋を知らないだろう」
「恋を知ってから、また王子のことを考えてくれればいいんだ」
そうですね。
「我々は君を追放したいんじゃない解放したいんだ、それだけは信じて欲しい」
と、概ね国王や公爵などの全ての言い分を聞けたところで。
私はブレスレットのスイッチを押す。
「……何を、言ってるんだ……?」
ざわめきの中、真摯にこちらを見つめて一人の貴族が問いかける。
式典などで何度か挨拶を交わしたことがある、確かエンデスヘルツ公爵だ。
「爆弾を仕掛けたのですよ公爵。まあ信じて貰えないのも当然ですので、とりあえず」
私はそうエンデスヘルツ公爵に返し、ブレスレットの装飾に見立てられたスイッチを一つ押す。
すると、壁が震えるほど低くて音というより空気の振動の塊を全身で浴びたような衝撃と共に、窓から見えていた城の南棟の屋根が弾け飛んだ。
「ではもう一つ」
続けて私は更にブレスレットのスイッチを押す。
今度は音は微かではあったが、窓から綺麗に見える山肌から見事なほどに爆煙と共に土煙が吹き出したのが見えた。
「もう一つお見せいたしますか?」
「いや! もういい‼ 十分だ、わかったから、やめなさい」
私の問いに、エンデスヘルツ公爵は慌てて答える。
「信じて頂けたでしょうか」
私が彼にした頼み事とは、私が自由に起爆することの出来る爆弾を仕掛けてもらうことであった。
「ちなみに、私を取り押さえるのはお止めになった方が良いですよ。簡単な動作で全ての爆弾を起爆することは可能ですので、取り押さえる前にこの国は滅びます。今から探しに行くのは自由ですよ。まあ、一年以上も前から準備をして爆発するまで仕掛けられていることに気付けもしなかったものを、一日やそこらで見つけられるとはおもえませんが」
そんな牽制に対し。
「何が目的なんだ? 何故こんなこと……!」
エンデスヘルツ公爵の問いに。
「目的、でしょうか。目的と言うのは少し違いますが、私は皆様に再度認識を改めていただければと思ったのです」
私はそう答える。
「認識を改めるだと……?」
すると国王も私の話を聞く姿勢を見せる。
「はい、聖女はこの国の安寧と幸福を祈る存在です。つまり、聖女がいなくなるのであればこの国の安寧と幸福は崩壊して然りなのです」
そのまま私は続ける。
「今の爆発も私が聖女であれば起こらなかったものです。しかし、私が聖女でなくなることで爆発は起きました。まあ今の二つに関しては人的被害が極力出ない場所での爆発ですので、まだ安寧と幸福が崩壊したとはいえませんが」
私の説明にエンデスヘルツ公爵も、国王も、その他貴族たちも総じて言葉を失っていた。
「私を棄てると、次は……そうですね、病院か学校、孤児院や貴族の屋敷、このお城というのも出来ますが、さて、何処にいたしましょうか」
言葉を失った貴族や王族たちに問いかける。
「そんなことをしたら……、どれだけの人間が死ぬと思っているんだ、君は人の命の重さというものをわかっているのか」
と、エンデスヘルツ公爵は口を開く。
「エンデスヘルツ公爵は教会に住まい神の教えに殉じ、聖人として生きてきた者に対して、死や命の重さを語れるというのですか」
余程信心深いのですね。と、付け加えると公爵は黙った。
「ジュリアナ・ロックハート、貴方は勘違いをしている、我々は聖女を追放したいのではなく、解放したいのだよ」
国王は毅然な態度で、私にそれを伝える。
「その通りだ。私達は君を、ずっとあの教会に縛り付けるのをやめたいんだ。君も人間だ、人間は誰だって自由に幸せを求めていいんだ」
と、公爵が続く。
私は彼らの言い分を暫く黙って聞いてみることにした。
「もうあんなところに一人で生きてなくていいんだ」
とか。
「色んな勉強をしてみんなで暮らせるようになろう」
「普通の暮らしでもいいし、普通以上の暮らしでもいい」
など。
「少しずつでいい、色々なことがわかるようになろう」
「君を自由にしたいんだ」
なんてことも。
「婚約だって君の本意じゃないはずだ。だから一度破棄しようということであって、君の気持ちを尊重したいだけなんだ」
「君はまだ若い上に、閉鎖的な環境で育ったんだから」
はいはい。
「君が本当にジャレッド王子を好きならもちろんそれに超したことはないけれど、君は恋を知らないだろう」
「恋を知ってから、また王子のことを考えてくれればいいんだ」
そうですね。
「我々は君を追放したいんじゃない解放したいんだ、それだけは信じて欲しい」
と、概ね国王や公爵などの全ての言い分を聞けたところで。
私はブレスレットのスイッチを押す。
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