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2・女はただ、騎士として生きたかっただけなのに。
4.竜が来る。
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だが見た目はどう見ても人だった。
人に化ける魔物もいるらしいが、魔物なら私を助けるような真似はしない。
角や翼も無く、肌も瞳も我々と変わらないので魔族でもない。
まさか本当に……、神だというのか?
神はあらゆる生物の頂点であり、最終到達点だと言われている。
例えば魔物が魔物を超えて魔族という種となったように、魔族が魔族の枠を超え魔族を統べる魔王となり、魔王がさらにあらゆる面で魔王を超えた時に魔神となる。
人であれば勇者が、魔物であれば竜が、最も神に近いとされる。
でも伝説上の話だ。
神は実際に存在はするらしいが……。
いや、待てよ……?
山が信仰により山自体が神になったとしたら……?
この村は長年、山を神聖視してきた。
山自体が神となり、我々に干渉するべく人の形を模して顕現したとしたら。
ある程度の納得がいく。
「一応、村長に相談しておくか……」
私は後日、山で起こった出来事と仮説を村長へと伝えた。
村長も判断しかねていたが、可能性はないわけじゃあないとのこと。
あの山はそれほどまでに何が起こってもおかしくはない特異点なんだと、仰られていた。
でもやはり断定は出来ないし、前例もない為にもう少し慎重に判断をしようという結論に落ち着いた。
私もそれには概ね同意だったが、結局この話は村の中で噂になってしまい周知されるところになった。
とりあえず、今のところは村に害のある存在ではないが経過観察は必要だろう。
まあ観察するには山の中に入るしかないのが…………。
「…………強くなるしかないか」
私はシンプルな答えを呟いて、謎の男についての考察を一旦終えた。
そこから私は少しずつ山に挑戦する日を増やした。
安全地帯から少しずつ山に入り、山に慣れることから始めた。
弓の精度を高め、単純な私の対応力を上げることに努めた。
さらに、山に渦巻く魔力に負けないように魔力を圧縮した魔法を放てるように訓練をした。
そんな日々の中でごく稀に、あの山の男と出会うことがあった。
神という可能性が過ぎってしまったからなのかもしれないが、男はあまりにも綺麗すぎる気がした。
服は汚れているし、かなりボロボロというか上半身は何も着ていない、露出した肌は焼けていたり傷などもない。長く山で暮らしているはずなのに髭も蓄えておらず、不自然な程に清潔感がある。
やはり言葉は通じないようで、こちらからの問いかけに答えは返ってこなかった。
そこから様々なことがあった。
大型魔物の討伐に出た冒険者や軍の敗残兵が大規模な野盗となり村を襲撃しにきた。
絶望的な状況に颯爽と現れた男は、野盗を徒手空拳で薙ぎ払い。
野盗の服や短刀を取って、何も言わずに山へ帰っていたり。
過激で苛烈で圧倒的な男の姿を目撃した村人たちは、男を山の神と呼び、祠を造って様々な物を供えた。
男はたまに祠から供えた物を持っていくと山の超級や災害級の魔物の死体、それも核である魔石も入った状態のものを村の前に置いてあったりした。
山と共に生きてきた村の民からすれば、恵みをもたらすその男は、村の民が考える山そのものだった。
そんな日々が続き。
ごく稀に起こる魔物の大量発生現象、【氾濫】が山で起こった際にも。
竜の残り香を纏う村に暴走した魔物が侵入することが懸念されたが。
男は山の中で、たった一人で特異点で起こった歴史上最悪の【氾濫】を押さえ込んだ。
次の日には災害級の、ほぼ口伝でしか伝わっていない魔物の死体を何体も村の前に置いていった。
凄まじい価値の素材によって村はさらに潤い、その資金で祠をより良いものへと作り替えていった。
やがて、男が姿を現してから十年近くの月日が経ち。
私を含めて村に、男を山の神だと疑う者が居なくなった頃。
村長が言った。
「竜が来る」
人に化ける魔物もいるらしいが、魔物なら私を助けるような真似はしない。
角や翼も無く、肌も瞳も我々と変わらないので魔族でもない。
まさか本当に……、神だというのか?
神はあらゆる生物の頂点であり、最終到達点だと言われている。
例えば魔物が魔物を超えて魔族という種となったように、魔族が魔族の枠を超え魔族を統べる魔王となり、魔王がさらにあらゆる面で魔王を超えた時に魔神となる。
人であれば勇者が、魔物であれば竜が、最も神に近いとされる。
でも伝説上の話だ。
神は実際に存在はするらしいが……。
いや、待てよ……?
山が信仰により山自体が神になったとしたら……?
この村は長年、山を神聖視してきた。
山自体が神となり、我々に干渉するべく人の形を模して顕現したとしたら。
ある程度の納得がいく。
「一応、村長に相談しておくか……」
私は後日、山で起こった出来事と仮説を村長へと伝えた。
村長も判断しかねていたが、可能性はないわけじゃあないとのこと。
あの山はそれほどまでに何が起こってもおかしくはない特異点なんだと、仰られていた。
でもやはり断定は出来ないし、前例もない為にもう少し慎重に判断をしようという結論に落ち着いた。
私もそれには概ね同意だったが、結局この話は村の中で噂になってしまい周知されるところになった。
とりあえず、今のところは村に害のある存在ではないが経過観察は必要だろう。
まあ観察するには山の中に入るしかないのが…………。
「…………強くなるしかないか」
私はシンプルな答えを呟いて、謎の男についての考察を一旦終えた。
そこから私は少しずつ山に挑戦する日を増やした。
安全地帯から少しずつ山に入り、山に慣れることから始めた。
弓の精度を高め、単純な私の対応力を上げることに努めた。
さらに、山に渦巻く魔力に負けないように魔力を圧縮した魔法を放てるように訓練をした。
そんな日々の中でごく稀に、あの山の男と出会うことがあった。
神という可能性が過ぎってしまったからなのかもしれないが、男はあまりにも綺麗すぎる気がした。
服は汚れているし、かなりボロボロというか上半身は何も着ていない、露出した肌は焼けていたり傷などもない。長く山で暮らしているはずなのに髭も蓄えておらず、不自然な程に清潔感がある。
やはり言葉は通じないようで、こちらからの問いかけに答えは返ってこなかった。
そこから様々なことがあった。
大型魔物の討伐に出た冒険者や軍の敗残兵が大規模な野盗となり村を襲撃しにきた。
絶望的な状況に颯爽と現れた男は、野盗を徒手空拳で薙ぎ払い。
野盗の服や短刀を取って、何も言わずに山へ帰っていたり。
過激で苛烈で圧倒的な男の姿を目撃した村人たちは、男を山の神と呼び、祠を造って様々な物を供えた。
男はたまに祠から供えた物を持っていくと山の超級や災害級の魔物の死体、それも核である魔石も入った状態のものを村の前に置いてあったりした。
山と共に生きてきた村の民からすれば、恵みをもたらすその男は、村の民が考える山そのものだった。
そんな日々が続き。
ごく稀に起こる魔物の大量発生現象、【氾濫】が山で起こった際にも。
竜の残り香を纏う村に暴走した魔物が侵入することが懸念されたが。
男は山の中で、たった一人で特異点で起こった歴史上最悪の【氾濫】を押さえ込んだ。
次の日には災害級の、ほぼ口伝でしか伝わっていない魔物の死体を何体も村の前に置いていった。
凄まじい価値の素材によって村はさらに潤い、その資金で祠をより良いものへと作り替えていった。
やがて、男が姿を現してから十年近くの月日が経ち。
私を含めて村に、男を山の神だと疑う者が居なくなった頃。
村長が言った。
「竜が来る」
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