婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう

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婚約破棄されましたが王子様も助けに来ます

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 その時、騒然とする会場の扉が、重々しく開かれた。

「国王陛下、ご入場!」

 堂々たるファンファーレと共に、声が響いた。

 リタール王国国王、ダイオス三世。
 そして、その後ろには王妃と、整った顔立ちに知性を宿した瞳を持つ、第一王子ディモア・リタールの姿があった。

「父上……そして兄上?」

 クラウディアが一瞬だけ、表情を強ばらせる。

 国王が到着したことで、会場の雰囲気は一気に緊張感を増した。
 王国の最高権力者が現れたことで、貴族たちはもはや騒ぐこともできず、大広間は静粛に包まれた。

「クラウディアよ、説明しておくれ。なぜ、帝国の皇太子殿下が、ご不快そうにこちらを睨みつけていらっしゃるのだ?」

 国王は険しい表情で、クラウディア王女を見据えた。

 クラウディアの横にいたフィリップは、ガタガタと震えながら言い訳の言葉を探していたが、クラウディアが先に、軽々しく口を開いた。

「父上、これは帝国の横暴ですわ!」

 自信満々の態度で彼女は続ける。

「ライマン皇太子殿下は、リタールの貿易利権を奪うために、リタール王国に圧力をかけようとしています!」

 クラウディアの力強い口調に、レント侯爵が横から言葉を添えた。

「我々の独立を守るためには、帝国の圧力に屈するべきではありません!」

ハーディ伯爵も便乗する。

「陛下、帝国の内政干渉です」

「その通りです!」

 ボルドンの勇ましい相槌に、フィリップも遅れてはならじと、慌てて言葉を紡いだ。

「リタール王国の貴族一同、帝国の支配に屈するつもりは決してありません!」

 それを聞いたディモア王子は、鋭い視線をフィリップに向けた。

「フィリップ、貴様は何を言っているんだ?」

 その低い声には、静かながらも強烈な怒気がこもっていた。


「何を言っているんだ、と聞いている」

 ディモア王子がゆっくりと歩を進め、フィリップの前に立つ。

「お前がいま吐いた言葉は、本当にこの国のためになると思っての発言か?」

「も、もちろんです!」

 フィリップは焦ったように、また新たな言い訳を探す。

「私は、リタールの未来のためを思って……」

 バキッ!

 突然、鈍い音が響き渡った。

 ディモア王子の右の拳が、フィリップの顔面を殴りつけたのだ。

 フィリップの身体は吹き飛び、床に叩きつけられた。
 会場の貴族たちが息を呑む。

「ぐはっ……!」

 口の中に広がる鉄の味。
 フィリップは衝撃に耐えながら、よろよろと起き上がった。

「な、何をなさる?」

 ディモア王子の目は怒りに満ちていた。

「過去五年間、既に公爵家には、帝国から莫大な利権提供があっただろう。まさか、それを自分の実力で得たものだと、自惚れていたのか? すべては、婚約者だった彼女のおかげで、与えられていたのだ。にもかかわらず、私も知らぬ間に、お前は勝手に婚約を破棄して、彼女を捨てた」

「そ、それは……」

「そして今、お前が言ったことは何だ?」

 ディモア王子は、フィリップの胸ぐらをつかんだ。

「帝国の圧力に屈しない、だと?」

 彼は鼻で笑う。

「馬鹿者が。我が国は、貿易立国。経済は国の生命線だ。お前がやろうとしていることは、帝国との貿易協定をもて遊び、リタールを孤立させて、亡国へと導く反乱行為そのものだ!」

 貴族たちは次第に不安そうな顔を見せ始める。

「そんなつもりでは……」

 フィリップが言葉を失っている間に、ディモア王子は次の標的に向かった。

「クラウディア!」

 クラウディアの美しい顔が、恐怖に歪んだ。

「な、何かしら?」

 彼女は気丈に振る舞おうとした。

「私は正しいことをしているのよ。兄上は、私の自由を尊重するべきだわ!」

「自由?」

 ディモアはゆっくり近づくと、その厳しい目つきで彼女を見据え、金縛りにした。

「お前の自由とは、リタールを滅ぼすことか?」

 クラウディアは、兄のあまりの剣幕に、もはや何も反論を思いつくことができなかった。

「お前たち二人は、口を開けば、この国の独立のためなどと美辞麗句を吐く。だが実際には、ただ自分の野心のために、貴族たちを煽っただけだろうが!」

「違う、違う!」

「違わない」

 ディモア王子は冷然とした表情で告げた。

「たとえ妹であろうと、王族の務めを投げ捨てた者は許さん」

「兄上……」

「その場に、ひざまづけ!」

 その言葉に、クラウディアは震える。

 しかし、彼女は抗おうとした。

「私が……この私が、膝をつくなどできません!」

「ならば、つかせるまでだ」

 ディモア王子は、彼女の肩をつかんで、床に押しつけた。

 ゴンッ!
 
 鈍い音が、大広間に響いた。ディモアはさらにクラウディアの頭を後ろから押して、彼女の額を床に強く擦りつけたのだった。

 こうして、リタールの王女クラウディアは、オーヴェストのライマン皇太子とソフィア皇女に対し、土下座させられた。

「父上」

 ディモア王子は国王のほうを振り返った。

 王は深々とため息をつくと、威厳ある声で宣言した。

「オルバリー公爵家フィリップ公子、そしてクラウディア・リタール王女」

 クラウディアが、額から血を流しながら、顔を上げる。

「……はい」

 ディモアに先ほど殴られて前歯を失ったフィリップが、震えながら答える。

「お前たちを、国家への反逆、および、友好国であるオーヴェスト帝国との外交関係を傷つけた疑いにより、逮捕する。」

 その言葉に、会場がどよめいた。

「逮捕⁉」

「拘束されるのか……」

 クラウディアは信じられないという顔をした。

「父上、待ってください! 私はリタール王国の王女ですよ!」

「王女であろうと、国を破壊する者は極刑に処せねばならぬ」

 国王の言葉は冷徹だった。

「即刻、二人を連行しろ!」

 兵士たちが動き出す。

「ま、待て! 私は悪くない! すべては帝国の陰謀なんだ!」

 フィリップが必死に叫んで悪あがきを試みたが、もはや、誰も彼に賛同しようとはしなかった。

 クラウディアも暴れて抵抗しようとしたが、最終的に兵士たちによって両手両足を捕まえられ、担いで運ばれた。

 リタールの王族・貴族たちは、誰一人として声を上げられなかった。

 こうして、フィリップとクラウディアは、ついに投獄された。
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