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「イリアーナ様!!如何されたのですか!?」
小雨に濡れて涙でぐちゃぐちゃになったイリアーナをアリアが見つける
「アリア様……」
周りから隠すようにしてイリアーナを控え室に連れて行き
タオルを取り1枚は私に渡して
もう1枚のタオルで優しく体を拭いてくれた
本当に優しい子だな…
アリア様の恋上手くいくといいな…
………
相手はヘルプ伯爵様だけど…
いやいいんだけど……
「レオン様とお話に行かれてこの様な姿で戻って来られるなんて…
レオン様はイリアーナ様を大切に思われていると思っていたのですが…
レオン殿下と何かあったのですか?」
大切に思われている…
アリア貴方はどこを見てるんだ
でもあんな風にキスされて恥ずかしくて何があったのかなんて人に言えない…
「大切に…………なんて…」
他の女性には優しいのに、視線も合わせず、いつも怒鳴って意地悪で怒ってばかりで最近は凄い突っかかって来るし…たまに変な時もあったけど…
「そんな!レオン様はお優しい方ですよ?」
それは………貴方が……
少しチリッと胸に何かが焼き付いた
「私はヒロインでは無いもの…」
「ヒロイン?」
聴きなれない言葉に眉間にシワを寄せ
それでもイリアーナの事を真っ直ぐ見つめてくるアリアの瞳に負けてしまって
ゆっくり瞳を閉じた
アリアが悪い訳ではないのに
モブ令嬢にしかなれない、先の見えない私
ヒロインで幸せが約束された様な彼女に今嫌な感情を持ってしまった
これじゃあ嫉妬に狂う他の女子達と何も変わらないわ…
「イリアーナ様……」
涙を優しく拭ってくれる
突然外から慌ただしく物音が聞こえて来るとその音にアリアが気づいた
「何か騒がしいですね…
イリアーナ様こちらで少しゆっくりしてらしてください!私様子をみて参ります!」
そう言われてタオルで顔を隠しながらゆっくり頷いた
それを確認したアリアは外に出て行った
1人になった控え室に静寂が訪れる
暫く溢れる涙を拭いていたが、ふと窓の外を眺める
先ほどまで外が騒がしかったのに、今は外からも何も物音が聞こえない事に気づいた
アリアも戻ってこない
………何かあったのかしら?
外の様子が気になり、もう外に出ようと
その前に鏡の前に立って身嗜みを整えようとした
これは…酷いわね
髪の毛を簡単に整え直して
メイクも直す、晴れた目はごまかせないけど仕方ない
その時窓の外から異音が聞こえてきた
その瞬間身体がビクリと反応した
ドクン
何……今の…
何この感じ…
ドクンドクンドクン…
激しく胸を打ち付ける音と共に、自分の中に感じる嫌な感じ
治る事のない鼓動と嫌な予感
行ってたら駄目だという感情と、今すぐ行かなきゃという感情が鬩ぎ合う
駄目!ここにいてってアリアに言われたんだからここにいれば良い!それで良い!
また異音が聞こえて来る
鼓動が更に早まるのがわかる
その瞬間イリアーナは部屋から飛び出してしまった
嫌な予感が止まらないのに、身体を止められない
急げ、急げ、間に合わなくなる
急いで!急いで!私!
私の中にあるイリアーナが急かし続ける
外に出るとはっきりと聞こえて来る
獣の声
何故ここに獣が現れるの!?
話が違っている!?
逃げよう、巻き込まれたくない
後退り反対方向に逃げようとした時
「キャァァァァァ!!」
!!アリア様の声
その瞬間気づけば身体を翻して獣の声が聞こえる方に向かって走り抜けた
急いで!急いで!
間に合わなくなる!!
何に?
そう思った瞬間
草木を抜け少し広まった所に出た
駄目!!
そう思った瞬間、レオン様と獣の間に飛び出していた
「イリアーナ!!」
突然現れたイリアーナに気づき
目を大きくして驚くレオン様に抱きつくような姿勢になった瞬間
イリアーナは獣に大きく背中を切りつけられた
「イリアーナ!!イリアーナ!!」
背中から大量に出血しているイリアーナをレオン様が抱きとめる
「イリアーナ様!!」
慌てたアリアの声
クラウドの声
お兄様の声
痛い
背中に焼ける様な痛みが走る
息が上手くできない、声にならない
ゲームの中のイリアーナ良くあんな長台詞言えたわね…
「何故私の前に出た!?」
レオン様が涙目になりながら、怒鳴る
何故……何だろう
自分でもわからない
きっとイリアーナの中にあるレオン様への想いに私が負けたのかな?
悔しい
何でこんな奴…
レオン様の瞳から涙が溢れそうになっているのを拭う
あぁ…
こんな奴の為に
せっかく転生したのに
結局何の為に転生したんだか…
もう一度やり直せたら今度こそ自分の好きにするのにな
「イリアーナ!!今すぐ治癒師がくるそれまで耐えろ!!」
レオン様は必死に繋ぎ止めようと声を掛け、抱きとめる腕はすでに血塗れになっているのに更に力を入れる
少しずつ、目の前の視界が暗く狭まっていく
聞こえてくる声もどんどん遠くなる
身体が寒い、あぁ
この感覚…
今日まだお兄様と約束のダンス踊ってなかったのに
クラスのみんなで歌うソロパート歌いたかったな
デビュタント出たかったな
マーガレット達が一生懸命着飾ってくれて
素敵な白いドレスを着て、お父様とお母様とお兄様とロイにおめでとうって言ってもらうの
もう一度…
「イリアーナ!!イリアーナ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
レオン様のその声も姿もイリアーナには届かない
感じていた痛みも
寒気も
もう何も無い
小雨に濡れて涙でぐちゃぐちゃになったイリアーナをアリアが見つける
「アリア様……」
周りから隠すようにしてイリアーナを控え室に連れて行き
タオルを取り1枚は私に渡して
もう1枚のタオルで優しく体を拭いてくれた
本当に優しい子だな…
アリア様の恋上手くいくといいな…
………
相手はヘルプ伯爵様だけど…
いやいいんだけど……
「レオン様とお話に行かれてこの様な姿で戻って来られるなんて…
レオン様はイリアーナ様を大切に思われていると思っていたのですが…
レオン殿下と何かあったのですか?」
大切に思われている…
アリア貴方はどこを見てるんだ
でもあんな風にキスされて恥ずかしくて何があったのかなんて人に言えない…
「大切に…………なんて…」
他の女性には優しいのに、視線も合わせず、いつも怒鳴って意地悪で怒ってばかりで最近は凄い突っかかって来るし…たまに変な時もあったけど…
「そんな!レオン様はお優しい方ですよ?」
それは………貴方が……
少しチリッと胸に何かが焼き付いた
「私はヒロインでは無いもの…」
「ヒロイン?」
聴きなれない言葉に眉間にシワを寄せ
それでもイリアーナの事を真っ直ぐ見つめてくるアリアの瞳に負けてしまって
ゆっくり瞳を閉じた
アリアが悪い訳ではないのに
モブ令嬢にしかなれない、先の見えない私
ヒロインで幸せが約束された様な彼女に今嫌な感情を持ってしまった
これじゃあ嫉妬に狂う他の女子達と何も変わらないわ…
「イリアーナ様……」
涙を優しく拭ってくれる
突然外から慌ただしく物音が聞こえて来るとその音にアリアが気づいた
「何か騒がしいですね…
イリアーナ様こちらで少しゆっくりしてらしてください!私様子をみて参ります!」
そう言われてタオルで顔を隠しながらゆっくり頷いた
それを確認したアリアは外に出て行った
1人になった控え室に静寂が訪れる
暫く溢れる涙を拭いていたが、ふと窓の外を眺める
先ほどまで外が騒がしかったのに、今は外からも何も物音が聞こえない事に気づいた
アリアも戻ってこない
………何かあったのかしら?
外の様子が気になり、もう外に出ようと
その前に鏡の前に立って身嗜みを整えようとした
これは…酷いわね
髪の毛を簡単に整え直して
メイクも直す、晴れた目はごまかせないけど仕方ない
その時窓の外から異音が聞こえてきた
その瞬間身体がビクリと反応した
ドクン
何……今の…
何この感じ…
ドクンドクンドクン…
激しく胸を打ち付ける音と共に、自分の中に感じる嫌な感じ
治る事のない鼓動と嫌な予感
行ってたら駄目だという感情と、今すぐ行かなきゃという感情が鬩ぎ合う
駄目!ここにいてってアリアに言われたんだからここにいれば良い!それで良い!
また異音が聞こえて来る
鼓動が更に早まるのがわかる
その瞬間イリアーナは部屋から飛び出してしまった
嫌な予感が止まらないのに、身体を止められない
急げ、急げ、間に合わなくなる
急いで!急いで!私!
私の中にあるイリアーナが急かし続ける
外に出るとはっきりと聞こえて来る
獣の声
何故ここに獣が現れるの!?
話が違っている!?
逃げよう、巻き込まれたくない
後退り反対方向に逃げようとした時
「キャァァァァァ!!」
!!アリア様の声
その瞬間気づけば身体を翻して獣の声が聞こえる方に向かって走り抜けた
急いで!急いで!
間に合わなくなる!!
何に?
そう思った瞬間
草木を抜け少し広まった所に出た
駄目!!
そう思った瞬間、レオン様と獣の間に飛び出していた
「イリアーナ!!」
突然現れたイリアーナに気づき
目を大きくして驚くレオン様に抱きつくような姿勢になった瞬間
イリアーナは獣に大きく背中を切りつけられた
「イリアーナ!!イリアーナ!!」
背中から大量に出血しているイリアーナをレオン様が抱きとめる
「イリアーナ様!!」
慌てたアリアの声
クラウドの声
お兄様の声
痛い
背中に焼ける様な痛みが走る
息が上手くできない、声にならない
ゲームの中のイリアーナ良くあんな長台詞言えたわね…
「何故私の前に出た!?」
レオン様が涙目になりながら、怒鳴る
何故……何だろう
自分でもわからない
きっとイリアーナの中にあるレオン様への想いに私が負けたのかな?
悔しい
何でこんな奴…
レオン様の瞳から涙が溢れそうになっているのを拭う
あぁ…
こんな奴の為に
せっかく転生したのに
結局何の為に転生したんだか…
もう一度やり直せたら今度こそ自分の好きにするのにな
「イリアーナ!!今すぐ治癒師がくるそれまで耐えろ!!」
レオン様は必死に繋ぎ止めようと声を掛け、抱きとめる腕はすでに血塗れになっているのに更に力を入れる
少しずつ、目の前の視界が暗く狭まっていく
聞こえてくる声もどんどん遠くなる
身体が寒い、あぁ
この感覚…
今日まだお兄様と約束のダンス踊ってなかったのに
クラスのみんなで歌うソロパート歌いたかったな
デビュタント出たかったな
マーガレット達が一生懸命着飾ってくれて
素敵な白いドレスを着て、お父様とお母様とお兄様とロイにおめでとうって言ってもらうの
もう一度…
「イリアーナ!!イリアーナ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
レオン様のその声も姿もイリアーナには届かない
感じていた痛みも
寒気も
もう何も無い
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