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季節が過ぎ、気づけば年を越して
チラチラと雪が舞う季節になっていた
暖炉の薪がパチパチとたてる音を聞きながらソファにはお兄様とイリアーナが居る
お兄様は、冷えた手をティーカップで温めながら、人払いをさせて2人向き合っていた
「イリアーナ……先日…光属性の力をもつ少女が現れた」
そう告げると、お兄様はイリアーナの顔色を伺うようにチラリとイリアーナの方をみた
悲しいような、儚げに少しだけ微笑み
「…そぅ、ですか」
ゲームシナリオが始まるまで、あと数ヶ月
やはりヒロインは現れた
きっと学園に編入してくるだろう
それまでに私は何か自分の運命を変えるだけの事が出来ていたのか
何も確証もないまま
ただ窓の外の降り積もる雪を眺めた
********************************************
冷たい土の中眠っていた草花が芽吹き、色をつけ始める季節が来た
新年度の式の日を迎え
朝食事を済ませて、部屋に戻って鏡の前に立っていた
イリアーナは、緊張の色が隠せずキュと唇を噛み締める
ついに始まる時が来た
ヒロインであるアリアは、貧しい子爵家の令嬢で、魔力はずっと無いと思われていて
クリスフォード侯爵家で見習いの侍女をして子爵家の家系を支えていた
仕事休みのある朝、寒い森の中に入って行ったところ最近王都に現れていた獣に襲われそうになり、その時初めて魔力を発動させて
辺り一面に光の渦が生まれた
クラスフォード家は、見習い侍女として預かっていた事を良い事にそのまま
養女として迎えて、元々素地が良かったアリアは学力なども伸ばして
無事に学園に編入が決まる
流れに変化は見られなかった
「やってみるしか無いわね…」
部屋の扉がコンコンとノックが聞こえてきた
「どうぞ」
「イリアーナ支度はできたかい?」
「お兄様、…はい…」
お兄様の表情も決して明るくは無い
そんなお兄様に微笑み
「そんな顔なさらないで、私新しいクラスとても楽しみなんです」
「そうだね、イリアーナが楽しく学園生活送ってくれる事がなによりだよ!
それにあと少ししたらパーティーもあるしね!イリアーナのエスコートを楽しみにしているよ!
それに、来年の今頃はデビュタントだってあるだろう?
今年一足先にボクだけれど、イリアーナのデビュタントのドレスもそろそろ用意しなきゃね!」
と明るく振る舞って、前向きな言葉を沢山話す
デビュタント…
そうか、イリアーナは今をどうするかしか考えていなかったので、無事生きれた後の事まで頭が回らなかった
「そうね!お母様に沢山相談しなくちゃ!」
「あぁ、お母様に相談してドレスを作ろう!きっと来年のデビュタントで1番綺麗なのはイリアーナで決まりだよ!」
「そんな事にはならないけど…そうね!すっごく綺麗なドレス用意しなくちゃね!」
そう笑顔で話すイリアーナの頭をお兄様は優しく撫でる
「さぁ、行こうか、今頃先にロイが馬車で待ってるよ」
「はい!お兄様!」
差し伸べられた手を取り、ロイが待つ馬車へと向かった
「お兄様、お姉様も遅いです!」
待ちくたびれていたロイが、口を尖らせて抗議してきた
「ごめんねロイ!待たせちゃって!」
と謝るとすぐ笑顔になる
「2人で何話していたのですか?」
「そんな大した事話てないわよ?」
「!もしかして、噂の光属性の御令嬢の話ですか!?お姉様と同じ学年に入学されるのですよね!?」
ビクッとしてしまうが、そこは上手く表情を崩さずに
「その話はしてないけれど、そのお噂は耳にした事があるわ、どの様な方か存じ上げないけれど」
とニコニコ貼り付け笑顔で答える
「そうなんですかー?クリスフォード侯爵家とは余り馴染みが無いですしね、お兄様とお姉様はどんな方か学園でみれるんでしょう?いいなー!」
無邪気なロイの言葉に、心境は複雑になるけど仕方がない…
この子は何も知らないんだから
上手く話を合わせながら和やかに過ごして、先に降りるロイを見送て、高等部へと向かった
すると馬車から降りる門の前で、何やら揉めている
学園前の門の馬車も面倒なところがあり、位が上位なものが優先される
何があったのかと、少し窓から覗くと
そこにはヒロインであるアリアと、他家の令嬢が揉めていた
どうやらクリスフォード侯爵家の馬車が割り込んできて止めてしまった様だ…
その状況をみて
「クリスフォード侯爵家の事だ、強い光属性の令嬢がいると言う事で強気なんだろうな」
でもこんなシーンあったけ?
アリアも叱られまくって泣きそうな顔になっている
でもそこで揉められると馬車が全く進まない
「ここでいいわ、お兄様私先に降りますね」
と言うと
「私もここでいい」
と言って一緒に降りてきた
門の前に近づくと、更に良くはっきりと声が聞こえてくる
あぁ、この面倒くさい状況、出来たら首突っ込みたく無いけど…
ほっといていいものでもなさそうな…
と思っていると
「そこで何してるの?」
とお兄様が揉めて、周りの野次馬に囲まれている2人に声かけた
すると叱っていた令嬢はすぐに気づき
「…!!ガブリエラ公爵家の!ごきげんよう、イエ!この者が、突然馬車を割り込ませて来まして今注意をしていましたの」
やっぱりか…
でもな
「そうでしたのね、でも後ろを良くご覧になって、沢山の馬車が進めずに困っておいでですよ?それも決して良い事では無いのではなくて?」
やっと後続の馬車の行列に目がいったのか令嬢は慌てた様子で
「大変申し訳ございません!今すぐ馬車を動かします!」
と言って御者に指示を出して、進ませてやっと行列になっていたのが進み始めた
「理解していただけて良かったわ、それでは失礼するわね」
と言って一応公爵令嬢としての役割だけは果たしてそそくさと去ろうとした
「あっあの!」
……
振り向くと、涙目のアリアがいた
「ありがとうございます!」
と元気にお礼を言われた
「いいのよ、でも割り込みも良く無いわそれは心得てね」
「はっはい!」
次こそ、そのまま勢いよくその場から離れた
「イリアーナ、大丈夫か?あんな風に話しかけて…」
「わからないです、あんなシーン無かったので…」
「そうなの!?」
「はい…」
それから、後ろを振り返り2人で様子を伺うと
丁度、第一王子とアリアが鉢合わせてぶつかってしまう所だった
見覚えがある
game start
チラチラと雪が舞う季節になっていた
暖炉の薪がパチパチとたてる音を聞きながらソファにはお兄様とイリアーナが居る
お兄様は、冷えた手をティーカップで温めながら、人払いをさせて2人向き合っていた
「イリアーナ……先日…光属性の力をもつ少女が現れた」
そう告げると、お兄様はイリアーナの顔色を伺うようにチラリとイリアーナの方をみた
悲しいような、儚げに少しだけ微笑み
「…そぅ、ですか」
ゲームシナリオが始まるまで、あと数ヶ月
やはりヒロインは現れた
きっと学園に編入してくるだろう
それまでに私は何か自分の運命を変えるだけの事が出来ていたのか
何も確証もないまま
ただ窓の外の降り積もる雪を眺めた
********************************************
冷たい土の中眠っていた草花が芽吹き、色をつけ始める季節が来た
新年度の式の日を迎え
朝食事を済ませて、部屋に戻って鏡の前に立っていた
イリアーナは、緊張の色が隠せずキュと唇を噛み締める
ついに始まる時が来た
ヒロインであるアリアは、貧しい子爵家の令嬢で、魔力はずっと無いと思われていて
クリスフォード侯爵家で見習いの侍女をして子爵家の家系を支えていた
仕事休みのある朝、寒い森の中に入って行ったところ最近王都に現れていた獣に襲われそうになり、その時初めて魔力を発動させて
辺り一面に光の渦が生まれた
クラスフォード家は、見習い侍女として預かっていた事を良い事にそのまま
養女として迎えて、元々素地が良かったアリアは学力なども伸ばして
無事に学園に編入が決まる
流れに変化は見られなかった
「やってみるしか無いわね…」
部屋の扉がコンコンとノックが聞こえてきた
「どうぞ」
「イリアーナ支度はできたかい?」
「お兄様、…はい…」
お兄様の表情も決して明るくは無い
そんなお兄様に微笑み
「そんな顔なさらないで、私新しいクラスとても楽しみなんです」
「そうだね、イリアーナが楽しく学園生活送ってくれる事がなによりだよ!
それにあと少ししたらパーティーもあるしね!イリアーナのエスコートを楽しみにしているよ!
それに、来年の今頃はデビュタントだってあるだろう?
今年一足先にボクだけれど、イリアーナのデビュタントのドレスもそろそろ用意しなきゃね!」
と明るく振る舞って、前向きな言葉を沢山話す
デビュタント…
そうか、イリアーナは今をどうするかしか考えていなかったので、無事生きれた後の事まで頭が回らなかった
「そうね!お母様に沢山相談しなくちゃ!」
「あぁ、お母様に相談してドレスを作ろう!きっと来年のデビュタントで1番綺麗なのはイリアーナで決まりだよ!」
「そんな事にはならないけど…そうね!すっごく綺麗なドレス用意しなくちゃね!」
そう笑顔で話すイリアーナの頭をお兄様は優しく撫でる
「さぁ、行こうか、今頃先にロイが馬車で待ってるよ」
「はい!お兄様!」
差し伸べられた手を取り、ロイが待つ馬車へと向かった
「お兄様、お姉様も遅いです!」
待ちくたびれていたロイが、口を尖らせて抗議してきた
「ごめんねロイ!待たせちゃって!」
と謝るとすぐ笑顔になる
「2人で何話していたのですか?」
「そんな大した事話てないわよ?」
「!もしかして、噂の光属性の御令嬢の話ですか!?お姉様と同じ学年に入学されるのですよね!?」
ビクッとしてしまうが、そこは上手く表情を崩さずに
「その話はしてないけれど、そのお噂は耳にした事があるわ、どの様な方か存じ上げないけれど」
とニコニコ貼り付け笑顔で答える
「そうなんですかー?クリスフォード侯爵家とは余り馴染みが無いですしね、お兄様とお姉様はどんな方か学園でみれるんでしょう?いいなー!」
無邪気なロイの言葉に、心境は複雑になるけど仕方がない…
この子は何も知らないんだから
上手く話を合わせながら和やかに過ごして、先に降りるロイを見送て、高等部へと向かった
すると馬車から降りる門の前で、何やら揉めている
学園前の門の馬車も面倒なところがあり、位が上位なものが優先される
何があったのかと、少し窓から覗くと
そこにはヒロインであるアリアと、他家の令嬢が揉めていた
どうやらクリスフォード侯爵家の馬車が割り込んできて止めてしまった様だ…
その状況をみて
「クリスフォード侯爵家の事だ、強い光属性の令嬢がいると言う事で強気なんだろうな」
でもこんなシーンあったけ?
アリアも叱られまくって泣きそうな顔になっている
でもそこで揉められると馬車が全く進まない
「ここでいいわ、お兄様私先に降りますね」
と言うと
「私もここでいい」
と言って一緒に降りてきた
門の前に近づくと、更に良くはっきりと声が聞こえてくる
あぁ、この面倒くさい状況、出来たら首突っ込みたく無いけど…
ほっといていいものでもなさそうな…
と思っていると
「そこで何してるの?」
とお兄様が揉めて、周りの野次馬に囲まれている2人に声かけた
すると叱っていた令嬢はすぐに気づき
「…!!ガブリエラ公爵家の!ごきげんよう、イエ!この者が、突然馬車を割り込ませて来まして今注意をしていましたの」
やっぱりか…
でもな
「そうでしたのね、でも後ろを良くご覧になって、沢山の馬車が進めずに困っておいでですよ?それも決して良い事では無いのではなくて?」
やっと後続の馬車の行列に目がいったのか令嬢は慌てた様子で
「大変申し訳ございません!今すぐ馬車を動かします!」
と言って御者に指示を出して、進ませてやっと行列になっていたのが進み始めた
「理解していただけて良かったわ、それでは失礼するわね」
と言って一応公爵令嬢としての役割だけは果たしてそそくさと去ろうとした
「あっあの!」
……
振り向くと、涙目のアリアがいた
「ありがとうございます!」
と元気にお礼を言われた
「いいのよ、でも割り込みも良く無いわそれは心得てね」
「はっはい!」
次こそ、そのまま勢いよくその場から離れた
「イリアーナ、大丈夫か?あんな風に話しかけて…」
「わからないです、あんなシーン無かったので…」
「そうなの!?」
「はい…」
それから、後ろを振り返り2人で様子を伺うと
丁度、第一王子とアリアが鉢合わせてぶつかってしまう所だった
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