転生後モブ令嬢になりました、もう一度やり直したいです

月兎

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「とにかく、その話は余りしない方がいいかな、良からぬ事を考えていると勘違いされかねない事だしね、でもイリアーナ、本当にそれだけ?」

え?とイリアーナが顔を上げると

「今までのイリアーナと様子が全く違うんだ、本当に理由はそれだけなのか気になるだろう、あれだけ毎日、殿下、殿下と追いかけ回していたのに」

じーっとイリアーナを見つめる

ビクッ!
お父様譲りの瞳に見透かされている気分になり肩が震えてしまう、お兄様は優しいし頼りになる…

記憶にある事、全部話してしまいたい
1人で考えても、どうしたらいいか分からないのお願い助けて!まだ死にたくないの!って…言えたらどんなに楽だろう

大丈夫だよってお兄様にハグしてもらいたい

息を吸って声を出そうとするけど
声にならなかった
誰が信じてくれるんだろう、こんな話
優しくて、暖かくて、大好きで大切な家族
だからこそ信じてもらえなかったら?
拒絶されてしまったら?

怖い…

何か声にしなければと必死に声を出そうとした
「あっ」

「あ?」

「あのですね…」どうしよう

「うん?」

「私、クラスを替わりたいです」

「んん????」
突然の突拍子で意味の分からない発言にお兄様の目も丸くなる
そうだろう、意味わからないだろう
私も分からない

イヤ、分からないでもない
とりあえず何か言わなくてはと思って出た言葉だとしても
替わりたいなと言う気持ちには別に嘘はない

「ちょっと待って、何故クラス替え?」

「歌を…」

「うた?」

「先日、Bクラスの授業で…歌を歌っていたんです、それがとても綺麗で、のびのびしていて、楽しそうで…
いいなって…それで…その…」

「自分も歌ってみたいと思ったの?」

「…はい」

自分が何を言っているのかもわかっている
優秀、品行旺盛全て兼ね備えて、堂々とした振る舞い
Sクラス入学を目指して、色々と努力で身につけてきた、イリアーナとしての看板、更には家の評判も下げかねない
叱られて、呆れられるかもしれない
そんな想いで声がどんどん小さくなる

「楽器を演奏したりするのじゃダメなの?」

「…出来たら歌いたいです」
歌うの好きだし、大きい声で歌うとスッキリするし…

「家で習うのではダメなの?」

「………」
学園で気楽に生きたいのでそれではダメだとも言えない…

「うーん…歌か…それならBクラスに…って事になるよね?それは僕だけではどうにもならないかな?まずはお父様に相談してみよう」

‼︎
大反対して叱られると思っていたのに、お兄様は意外な反応に次はイリアーナがビックリする

「どうしたの?叱られると思ったの?」
と言われて思わずハイと頷いてしまう

「本来ならそうしないときっと駄目だよね、でもイリアーナの気持ち少し僕にもわかるんだ
それにイリアーナは小さな頃から我儘も言わずに、沢山努力していて、辛くて悲しい想いもしてきたはず
高熱を出して寝込んでしまって…
僕はあの時、イリアーナがこのまま居なくなってしまうんでは無いかってとても不安だったんだ」

本当にとても心配してくれてたのがその表情から伝わってくる
お兄様が、イリアーナに近くに膝末ついて、暖かい手を優しく重ねてきた

「歌が歌いたいって言うのは、よくわからないにしても、今こうしていてくれるだけでも嬉しいし、イリアーナの可愛いお願い位叶えてあげたいなと思っているよ」

微笑みながら、頭を撫でてくれた


お兄様……
お兄様が本当にモブでいいのか⁉︎

「とりあえずお父様には、僕から先に話しておくから少し待っててくれるかな?」

「お兄様…ありがとうございます」
イリアーナはお兄様の優しさにホッとして涙汲んだ

先が見えない中、少しでもシナリオから外れられるかも知れないと、希望してみた事を受け入れてもらえた
叶うかどうかはまだ分からないけど
それでも、受け入れてもらえた事がとても嬉しい

お兄様がニコニコしていてイリアーナもニコニコし返す

「で?イリアーナは、レオン殿下のことが嫌いになったの?」

ギクゥ‼︎
ストレートに触れてくるスタイル…

どこを好きになればいいのですか?
と言いたくなるけれどもそれは流石に不味い

「いっいえ!そんな恐れ多い事ですわ!」
声が上擦りそうになるのを上手くカバーして返事ができた…

「ふぅん…」

いけない!背中に変な汗が出てくる!

「ただ」

「ただ?」

「レオン殿下と私、とても相性が悪いんだと思いますの」

「…うーん…」

なんだうーんって
今までのイリアーナとレオン様見てきて誰でもわかることなのに…

お兄様って、いつも鋭く見透かしてくるイメージだったけど、鈍感な所もあるのねぇ

恋愛した事のない私が言うのも何だけど
お勉強やお仕事が出来て、恋愛関係に鈍感な人っているものねぇ

気の毒そうな顔をしてお兄様を見ると、何故かお兄様も同じように気の毒そうな顔をしていた

お兄様とのお話も終わり、クラスの事はまた別の日にお父様を交えて、話し合うことになった





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