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転生悪役令嬢、推し避けなのに推しに追いかけられて困ってます!
第4話「私の推しは私だけの王太子様」
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王立学院の庭園で一人佇んでいた。 原作では今日この場所で婚約破棄が行われるはずだった。ライオネル様がクレアへの想いを告白し、私は醜い嫉妬を見せて国外追放――。
「やっぱり、ここにいたんですね」
振り向くとクレアが立っていた。
「フロリア様、お話があります」
(ここで私から婚約破棄を切り出そうか……)そう考えていた矢先。
「ライオネル様は本当にフロリア様のことをお想いなんですね」
「え?」
「私……気付いていたんです。最初は王太子様に好意を持っていました。でも、お二人を見ていて分かったんです。私の想いなんて、比べものにならないくらい、深い絆で結ばれているって」
涙目になりながら、クレアは続ける。
「だから、もう決めました。諦めます。フロリア様の方こそ、自分の気持ちに素直になってください!」
「クレア……」
彼女の言葉が最後の理性の糸を断ち切った。 そうよ。私はライオネル様を愛してる。 もう、推しキャラとしてじゃない。私だけの、大切な人として。
「ありがとう」心からの言葉を伝えると、クレアは満面の笑みを浮かべた。
その時――。
「フロリア!」
ライオネル様が走ってきた。
「やっと見つけた。重要な話がある」
「私も……お話があります」
観客が集まってきている。原作通りなら、ここで修羅場になるはずだった。 でも――。
「ライオネル様、私は……っ!」
言葉を発する前に強く抱きしめられた。
「もう逃がさない」
「え?」
「ずっと気付いていたんだ。君が何かを我慢して、自分を抑え込んでいることに。でも、もう充分だ」
顔を上げると、真っ直ぐな紫紺の瞳が私を見つめていた。
「フロリア、君は誰かの決めた脚本通りに生きる必要なんてない。君の人生は君だけのものだ」
(私の……人生)
そうだ。これは前世のゲームじゃない。 現実の、私だけの物語。
「私……ライオネル様が好きです。推しキャラとしてじゃなくて、目の前にいるライオネル様そのものが……大好きです!」
周囲からどよめきが起こる。 でも、もう怖くない。
「推しキャラ?」首を傾げるライオネル様に思わず笑みがこぼれる。
「いつか、ちゃんとお話しします。私の、ちょっと変わった転生物語を」
「ふふ、楽しみにしているよ」優しく額にキスをされ、頬が熱くなる。
「では、ここで正式に」ライオネル様が、片膝をつく。
「フロリア・スターリング。君を愛している。永遠の伴侶として、私の隣で幸せになってほしい」
観衆から歓声が上がる。 私は涙を浮かべながら答えた。
「はい! 喜んで!」
こうして原作とは全く違う結末を迎えた。 最初は推しキャラとの関わりを避けようとした私だけど、結局は恋に落ちて、婚約者から本物の恋人になってしまった。
数ヶ月後、王宮の書斎で。
「それで、推しキャラってなんだい?」
私の転生話を聞いたライオネル様が興味深そうに尋ねてきた。
「えっと、それは……大好きなキャラクターのことで……」説明しながら、頬を赤らめる私。
「つまり、私のことを一方的に愛していた、と?」意地悪な笑みを浮かべられもじもじする。
「も、もう昔の話です! 今は目の前のライオネル様しか見えません!」
「そうか。でも――」すっと顔を近づけられ。
「これからは、一方的じゃない、二人だけの愛を育んでいこう」
「はい!」
ゲームの中の推しキャラは確かに素敵だった。 でも、現実の彼はもっと素敵で、温かくて愛おしい。
私の推し避け生活は失敗に終わったけれど、その代わりに手に入れたのは最高の恋。
これからは誰かの決めた脚本なんて気にせず、二人で新しい物語を紡いでいこう。
そう誓い合った、幸せな結末の日々でした。
「やっぱり、ここにいたんですね」
振り向くとクレアが立っていた。
「フロリア様、お話があります」
(ここで私から婚約破棄を切り出そうか……)そう考えていた矢先。
「ライオネル様は本当にフロリア様のことをお想いなんですね」
「え?」
「私……気付いていたんです。最初は王太子様に好意を持っていました。でも、お二人を見ていて分かったんです。私の想いなんて、比べものにならないくらい、深い絆で結ばれているって」
涙目になりながら、クレアは続ける。
「だから、もう決めました。諦めます。フロリア様の方こそ、自分の気持ちに素直になってください!」
「クレア……」
彼女の言葉が最後の理性の糸を断ち切った。 そうよ。私はライオネル様を愛してる。 もう、推しキャラとしてじゃない。私だけの、大切な人として。
「ありがとう」心からの言葉を伝えると、クレアは満面の笑みを浮かべた。
その時――。
「フロリア!」
ライオネル様が走ってきた。
「やっと見つけた。重要な話がある」
「私も……お話があります」
観客が集まってきている。原作通りなら、ここで修羅場になるはずだった。 でも――。
「ライオネル様、私は……っ!」
言葉を発する前に強く抱きしめられた。
「もう逃がさない」
「え?」
「ずっと気付いていたんだ。君が何かを我慢して、自分を抑え込んでいることに。でも、もう充分だ」
顔を上げると、真っ直ぐな紫紺の瞳が私を見つめていた。
「フロリア、君は誰かの決めた脚本通りに生きる必要なんてない。君の人生は君だけのものだ」
(私の……人生)
そうだ。これは前世のゲームじゃない。 現実の、私だけの物語。
「私……ライオネル様が好きです。推しキャラとしてじゃなくて、目の前にいるライオネル様そのものが……大好きです!」
周囲からどよめきが起こる。 でも、もう怖くない。
「推しキャラ?」首を傾げるライオネル様に思わず笑みがこぼれる。
「いつか、ちゃんとお話しします。私の、ちょっと変わった転生物語を」
「ふふ、楽しみにしているよ」優しく額にキスをされ、頬が熱くなる。
「では、ここで正式に」ライオネル様が、片膝をつく。
「フロリア・スターリング。君を愛している。永遠の伴侶として、私の隣で幸せになってほしい」
観衆から歓声が上がる。 私は涙を浮かべながら答えた。
「はい! 喜んで!」
こうして原作とは全く違う結末を迎えた。 最初は推しキャラとの関わりを避けようとした私だけど、結局は恋に落ちて、婚約者から本物の恋人になってしまった。
数ヶ月後、王宮の書斎で。
「それで、推しキャラってなんだい?」
私の転生話を聞いたライオネル様が興味深そうに尋ねてきた。
「えっと、それは……大好きなキャラクターのことで……」説明しながら、頬を赤らめる私。
「つまり、私のことを一方的に愛していた、と?」意地悪な笑みを浮かべられもじもじする。
「も、もう昔の話です! 今は目の前のライオネル様しか見えません!」
「そうか。でも――」すっと顔を近づけられ。
「これからは、一方的じゃない、二人だけの愛を育んでいこう」
「はい!」
ゲームの中の推しキャラは確かに素敵だった。 でも、現実の彼はもっと素敵で、温かくて愛おしい。
私の推し避け生活は失敗に終わったけれど、その代わりに手に入れたのは最高の恋。
これからは誰かの決めた脚本なんて気にせず、二人で新しい物語を紡いでいこう。
そう誓い合った、幸せな結末の日々でした。
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