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転生悪役令嬢、推し避けなのに推しに追いかけられて困ってます!
第3話「推しキャラへの想いVS予期せぬ恋心」
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結局、ライオネル様の誘いを断れずに王都デートに来てしまった。
「ほら、あそこの店でお茶にしよう」
私の手を自然に取り、人気の紅茶専門店へと導くライオネル様。変装とはいえ銀髪を黒く染め、普段の軍服姿から平民の服装になった姿も素敵で……って、いけない! また萌え観察モードに入りそう。
「ライオネル様、なぜ私をお誘いになったのですか?」 意を決して尋ねてみる。
「君が本当の笑顔を見せてくれないからさ」
「え?」思わず固まる私にライオネル様は優しく微笑んだ。
「周りの目を気にして、いつも仮面を被っているだろう? たまには素直になっていいんだよ」
(バレてる!?)
「私は常に等身大の――」
「嘘だね。君は誰かの期待する役を演じている。まるで、誰かから与えられた脚本通りに動こうとしているみたいだ」
ズキンと胸が痛む。その通りなのだ。原作通りの悪役令嬢を演じようとしている私を、完全に見抜かれていた。
「でも、時々見せる素直な表情はとても愛らしくて」
「!!」突然の告白に顔が真っ赤になる。
「あ、あの!トイレに行ってきます!」
慌てて席を立ち、店の中へと逃げ込む。鏡に映る自分の顔は予想以上に上気していて、心臓は爆発しそうなほど激しく鼓動していた。
(どうしよう……私、ライオネル様のことを推しキャラじゃなくて、一人の男性として意識し始めてる)
現実の彼はゲームで見ていた以上に魅力的だった。優しさの中にある芯の強さ、時折見せる茶目っ気、そして何より、私のことを本気で見てくれている真摯な眼差し。
全てが想像以上で――愛おしい。
(でも、これじゃ原作と真逆の展開になっちゃう!)
悩みながら席に戻ると、ライオネル様が心配そうな顔で待っていた。
「大丈夫か?」
「は、はい。申し訳ありません」
「それより、これを見てほしい」
差し出されたのは一冊の物語の本。
「君が図書室でいつも読んでいる作家の新作だ。一緒に読まないか?」
(私の読書の趣味まで覚えていてくれたの!?)
嬉しさと戸惑いが入り混じる中、隣に座ったライオネル様と一緒に本を読み始める。 肩が触れ合う距離で、同じページを共有する時間。
気付けばすっかり日が傾いていた。
「楽しかったか?」
「はい……とても」思わず本音が漏れる。
「良かった。君の素直な笑顔が見られて、私も嬉しいよ」
その言葉に、もう抑えきれなくなった。
「どうして……私なんかに? 私は高慢で意地悪な婚約者のはずです。ライオネル様は、もっと相応しい方と……」
「誰が決めた基準だ?」真剣な眼差しで私の言葉を遮る。
「私が決めるのは私の気持ちだ。フロリア、君は本当は優しい心の持ち主だ。なのに、どうして自分を抑え込もうとする?」
「それは……」原作通りに、と言えるはずもない。
「私には分からない。君が何かに縛られているのは確かだ。でも、それは君の本当の想いじゃないはずだ」
帰り道、馬車の中で考え込む。 このまま原作を無視して、ライオネル様との恋を実らせていいのだろうか。
でも、推しキャラへの一方的な想いと、現実の彼との温かな時間。 その差はあまりにも大きすぎた。
「私の本当の想いは……」
心の奥で何かが音を立てて崩れていく。 積み上げてきた計画も、推しへの憧れも、全てが彼との出会いによって覆されていく。
こうして私は転生したことで得た"脚本"から、少しずつ逸れ始めていった――。
「ほら、あそこの店でお茶にしよう」
私の手を自然に取り、人気の紅茶専門店へと導くライオネル様。変装とはいえ銀髪を黒く染め、普段の軍服姿から平民の服装になった姿も素敵で……って、いけない! また萌え観察モードに入りそう。
「ライオネル様、なぜ私をお誘いになったのですか?」 意を決して尋ねてみる。
「君が本当の笑顔を見せてくれないからさ」
「え?」思わず固まる私にライオネル様は優しく微笑んだ。
「周りの目を気にして、いつも仮面を被っているだろう? たまには素直になっていいんだよ」
(バレてる!?)
「私は常に等身大の――」
「嘘だね。君は誰かの期待する役を演じている。まるで、誰かから与えられた脚本通りに動こうとしているみたいだ」
ズキンと胸が痛む。その通りなのだ。原作通りの悪役令嬢を演じようとしている私を、完全に見抜かれていた。
「でも、時々見せる素直な表情はとても愛らしくて」
「!!」突然の告白に顔が真っ赤になる。
「あ、あの!トイレに行ってきます!」
慌てて席を立ち、店の中へと逃げ込む。鏡に映る自分の顔は予想以上に上気していて、心臓は爆発しそうなほど激しく鼓動していた。
(どうしよう……私、ライオネル様のことを推しキャラじゃなくて、一人の男性として意識し始めてる)
現実の彼はゲームで見ていた以上に魅力的だった。優しさの中にある芯の強さ、時折見せる茶目っ気、そして何より、私のことを本気で見てくれている真摯な眼差し。
全てが想像以上で――愛おしい。
(でも、これじゃ原作と真逆の展開になっちゃう!)
悩みながら席に戻ると、ライオネル様が心配そうな顔で待っていた。
「大丈夫か?」
「は、はい。申し訳ありません」
「それより、これを見てほしい」
差し出されたのは一冊の物語の本。
「君が図書室でいつも読んでいる作家の新作だ。一緒に読まないか?」
(私の読書の趣味まで覚えていてくれたの!?)
嬉しさと戸惑いが入り混じる中、隣に座ったライオネル様と一緒に本を読み始める。 肩が触れ合う距離で、同じページを共有する時間。
気付けばすっかり日が傾いていた。
「楽しかったか?」
「はい……とても」思わず本音が漏れる。
「良かった。君の素直な笑顔が見られて、私も嬉しいよ」
その言葉に、もう抑えきれなくなった。
「どうして……私なんかに? 私は高慢で意地悪な婚約者のはずです。ライオネル様は、もっと相応しい方と……」
「誰が決めた基準だ?」真剣な眼差しで私の言葉を遮る。
「私が決めるのは私の気持ちだ。フロリア、君は本当は優しい心の持ち主だ。なのに、どうして自分を抑え込もうとする?」
「それは……」原作通りに、と言えるはずもない。
「私には分からない。君が何かに縛られているのは確かだ。でも、それは君の本当の想いじゃないはずだ」
帰り道、馬車の中で考え込む。 このまま原作を無視して、ライオネル様との恋を実らせていいのだろうか。
でも、推しキャラへの一方的な想いと、現実の彼との温かな時間。 その差はあまりにも大きすぎた。
「私の本当の想いは……」
心の奥で何かが音を立てて崩れていく。 積み上げてきた計画も、推しへの憧れも、全てが彼との出会いによって覆されていく。
こうして私は転生したことで得た"脚本"から、少しずつ逸れ始めていった――。
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