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宇宙人、ド天然女子が気になって仕方ない

第4話「星空のプロミス」

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「僕は地球で生きることを選びます」

その瞬間、体の中の何かが消えていくのを感じた。宇宙人としての能力が次々と失われていく。でも不思議と寂しくない。

「本当に…いいんですか?」詩織の声が震えている。

「ええ」初めて計算なしの自然な笑顔が浮かぶ。

「僕にとって詩織さんといることの方が大切だから」

彼女が飛び込んでくる。抱きしめる腕の力が少しずつ弱くなっているのを感じる。でも、この温もりはどんな能力よりも価値がある。

それから1ヶ月が経った。

「宙太郎くん、また忘れ物!」教室で詩織が僕の机まで駆けてくる。

「申し訳ありません…」完璧だった記憶力も、今では普通の人間レベルになっている。

「もう、謝らなくていいってば!」彼女が笑う。

「むしろ、こういう抜けてるところも可愛いと思うな~」

「か、可愛いですか!?」思わず声が上ずる。

「うん!特に慌てる姿が素敵!」

顔が熱くなる。感情のコントロールができなくなった代わりに、こんな風に素直に喜びや恥ずかしさを感じられるようになった。

「あ、そうだ!」詩織が突然思い出したように言う。

「今夜、流星群が見えるんだって。一緒に見に行かない?」

「はい!」即答する。「場所は――」

「もちろん、初めてプラネタリウムに行った公園!」

あの日から僕たちにとって特別な場所になった公園。夜になり、2人で芝生に座る。

「懐かしいですね」僕が言う。

「あの日、詩織さんは僕の母星の方角を言い当てました」

「えへへ」彼女が得意げに笑う。

「私、宙太郎くんのこと、本当によく見てたから」

「今でも見てくれていますか?」

「うん、もちろん!」彼女が真剣な表情になる。

「だから分かるの。宙太郎くんが時々寂しそうな顔をすること」

図星だった。能力を失い、母星との繋がりも消えた今、確かに時折切なくなることがある。

「でも」詩織が続ける。

「そんな時はいつでも私が側にいるからね?約束する!」

彼女の言葉に、喜びがこみ上げてくる。

「詩織さん」

ポケットから小さな箱を取り出す。中には母星の鉱石で作った指輪。最後の力を使って作ったたった一つの宝物。

「人間の習慣ではこういう時にするものだと聞きました」緊張で声が震える。「僕と付き合ってください」

詩織の目が大きく見開かれる。

その時、空に最初の流星が走った。 続いて2つ、3つ……。僕たちを祝福するように、夜空が光の雨に包まれる。

「はい!」詩織の返事と共に、またひとつ大きな流れ星が空を横切った。

指輪をはめる彼女の手が小刻みに震えている。僕も同じくらい緊張していた。

「ねぇ」彼女が囁く。

「宇宙人と人間のカップルって、前例あるのかな?」

「さあ」僕は空を見上げながら答えた。

「でも、僕たちで作ればいい。前例を」

詩織が僕の肩に頭を預ける。

「宙太郎くんはもう宇宙人じゃないよ」彼女が優しく言う。「私の大切な、大切なダーリン!」

そうか。僕はもう宇宙人じゃない。 だけど、それでいい。

なぜなら、こうして隣で笑う詩織がいる。 母星での完璧な生活より、彼女との不完全な毎日の方がどれだけ愛おしいか。

流星群が描く光の軌跡の下、僕たちは寄り添っていた。 きっと母星の誰もが理解できないだろう。 でも、それは人間の、いや、恋する者だけが知っている幸せ。

実験ノートはもう必要ない。 その代わりに詩織との思い出をこの胸に刻んでいこう。

永遠に。
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