9 / 18
宇宙人、ド天然女子が気になって仕方ない
第4話「星空のプロミス」
しおりを挟む
「僕は地球で生きることを選びます」
その瞬間、体の中の何かが消えていくのを感じた。宇宙人としての能力が次々と失われていく。でも不思議と寂しくない。
「本当に…いいんですか?」詩織の声が震えている。
「ええ」初めて計算なしの自然な笑顔が浮かぶ。
「僕にとって詩織さんといることの方が大切だから」
彼女が飛び込んでくる。抱きしめる腕の力が少しずつ弱くなっているのを感じる。でも、この温もりはどんな能力よりも価値がある。
それから1ヶ月が経った。
「宙太郎くん、また忘れ物!」教室で詩織が僕の机まで駆けてくる。
「申し訳ありません…」完璧だった記憶力も、今では普通の人間レベルになっている。
「もう、謝らなくていいってば!」彼女が笑う。
「むしろ、こういう抜けてるところも可愛いと思うな~」
「か、可愛いですか!?」思わず声が上ずる。
「うん!特に慌てる姿が素敵!」
顔が熱くなる。感情のコントロールができなくなった代わりに、こんな風に素直に喜びや恥ずかしさを感じられるようになった。
「あ、そうだ!」詩織が突然思い出したように言う。
「今夜、流星群が見えるんだって。一緒に見に行かない?」
「はい!」即答する。「場所は――」
「もちろん、初めてプラネタリウムに行った公園!」
あの日から僕たちにとって特別な場所になった公園。夜になり、2人で芝生に座る。
「懐かしいですね」僕が言う。
「あの日、詩織さんは僕の母星の方角を言い当てました」
「えへへ」彼女が得意げに笑う。
「私、宙太郎くんのこと、本当によく見てたから」
「今でも見てくれていますか?」
「うん、もちろん!」彼女が真剣な表情になる。
「だから分かるの。宙太郎くんが時々寂しそうな顔をすること」
図星だった。能力を失い、母星との繋がりも消えた今、確かに時折切なくなることがある。
「でも」詩織が続ける。
「そんな時はいつでも私が側にいるからね?約束する!」
彼女の言葉に、喜びがこみ上げてくる。
「詩織さん」
ポケットから小さな箱を取り出す。中には母星の鉱石で作った指輪。最後の力を使って作ったたった一つの宝物。
「人間の習慣ではこういう時にするものだと聞きました」緊張で声が震える。「僕と付き合ってください」
詩織の目が大きく見開かれる。
その時、空に最初の流星が走った。 続いて2つ、3つ……。僕たちを祝福するように、夜空が光の雨に包まれる。
「はい!」詩織の返事と共に、またひとつ大きな流れ星が空を横切った。
指輪をはめる彼女の手が小刻みに震えている。僕も同じくらい緊張していた。
「ねぇ」彼女が囁く。
「宇宙人と人間のカップルって、前例あるのかな?」
「さあ」僕は空を見上げながら答えた。
「でも、僕たちで作ればいい。前例を」
詩織が僕の肩に頭を預ける。
「宙太郎くんはもう宇宙人じゃないよ」彼女が優しく言う。「私の大切な、大切なダーリン!」
そうか。僕はもう宇宙人じゃない。 だけど、それでいい。
なぜなら、こうして隣で笑う詩織がいる。 母星での完璧な生活より、彼女との不完全な毎日の方がどれだけ愛おしいか。
流星群が描く光の軌跡の下、僕たちは寄り添っていた。 きっと母星の誰もが理解できないだろう。 でも、それは人間の、いや、恋する者だけが知っている幸せ。
実験ノートはもう必要ない。 その代わりに詩織との思い出をこの胸に刻んでいこう。
永遠に。
その瞬間、体の中の何かが消えていくのを感じた。宇宙人としての能力が次々と失われていく。でも不思議と寂しくない。
「本当に…いいんですか?」詩織の声が震えている。
「ええ」初めて計算なしの自然な笑顔が浮かぶ。
「僕にとって詩織さんといることの方が大切だから」
彼女が飛び込んでくる。抱きしめる腕の力が少しずつ弱くなっているのを感じる。でも、この温もりはどんな能力よりも価値がある。
それから1ヶ月が経った。
「宙太郎くん、また忘れ物!」教室で詩織が僕の机まで駆けてくる。
「申し訳ありません…」完璧だった記憶力も、今では普通の人間レベルになっている。
「もう、謝らなくていいってば!」彼女が笑う。
「むしろ、こういう抜けてるところも可愛いと思うな~」
「か、可愛いですか!?」思わず声が上ずる。
「うん!特に慌てる姿が素敵!」
顔が熱くなる。感情のコントロールができなくなった代わりに、こんな風に素直に喜びや恥ずかしさを感じられるようになった。
「あ、そうだ!」詩織が突然思い出したように言う。
「今夜、流星群が見えるんだって。一緒に見に行かない?」
「はい!」即答する。「場所は――」
「もちろん、初めてプラネタリウムに行った公園!」
あの日から僕たちにとって特別な場所になった公園。夜になり、2人で芝生に座る。
「懐かしいですね」僕が言う。
「あの日、詩織さんは僕の母星の方角を言い当てました」
「えへへ」彼女が得意げに笑う。
「私、宙太郎くんのこと、本当によく見てたから」
「今でも見てくれていますか?」
「うん、もちろん!」彼女が真剣な表情になる。
「だから分かるの。宙太郎くんが時々寂しそうな顔をすること」
図星だった。能力を失い、母星との繋がりも消えた今、確かに時折切なくなることがある。
「でも」詩織が続ける。
「そんな時はいつでも私が側にいるからね?約束する!」
彼女の言葉に、喜びがこみ上げてくる。
「詩織さん」
ポケットから小さな箱を取り出す。中には母星の鉱石で作った指輪。最後の力を使って作ったたった一つの宝物。
「人間の習慣ではこういう時にするものだと聞きました」緊張で声が震える。「僕と付き合ってください」
詩織の目が大きく見開かれる。
その時、空に最初の流星が走った。 続いて2つ、3つ……。僕たちを祝福するように、夜空が光の雨に包まれる。
「はい!」詩織の返事と共に、またひとつ大きな流れ星が空を横切った。
指輪をはめる彼女の手が小刻みに震えている。僕も同じくらい緊張していた。
「ねぇ」彼女が囁く。
「宇宙人と人間のカップルって、前例あるのかな?」
「さあ」僕は空を見上げながら答えた。
「でも、僕たちで作ればいい。前例を」
詩織が僕の肩に頭を預ける。
「宙太郎くんはもう宇宙人じゃないよ」彼女が優しく言う。「私の大切な、大切なダーリン!」
そうか。僕はもう宇宙人じゃない。 だけど、それでいい。
なぜなら、こうして隣で笑う詩織がいる。 母星での完璧な生活より、彼女との不完全な毎日の方がどれだけ愛おしいか。
流星群が描く光の軌跡の下、僕たちは寄り添っていた。 きっと母星の誰もが理解できないだろう。 でも、それは人間の、いや、恋する者だけが知っている幸せ。
実験ノートはもう必要ない。 その代わりに詩織との思い出をこの胸に刻んでいこう。
永遠に。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる