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第四章 新たなる展開
4-16 連邦政府の対応
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「私は彼に全てを話し、理解を求めました。
彼は、忙しい中にあって、この記者会見の模様を生中継で見ているはずです。」
ナタリーは記者団背後のテレビカメラを掌で示した。
記者団が一斉に振り返ると、そこにはいつ入ってきたのか、連邦政府のカレック大鷲のマークがついたカメラを回している二人のチームがいた。
非常に異例な出来事である。
「そうして、彼はこの記者会見の後、五時間以内に連邦政府の見解を記者会見で発表すると申しております。
どのような内容か、私は存知ません。
しかしながら、私は彼を信じており、連邦政府の善き長であることを示していただけるものと確信しております。」
爆弾発言である。
会場は大騒ぎになった。
だが、マイケルがマイクの前に立つと、静かになった。
「では、記者団の質問を受けたいと思います。
ただし、時間の都合上、質問は1時間だけに限らせていただきます。
質問がある方は挙手願います。
その中から、私が指名します。
質問は一人一問に限らせていただきます。
では、どうぞ。」
全員の手が一斉に上がった。
「では、NNSのボースさんどうぞ。」
ボースは唖然とした。
一面識も無いはずなのにいきなり名前を言われたからである。
「どうして、僕の名を?」
「本件に関わらない質問にはお答えしません。
次の方?」
「ちょっと待ってくれ。」
ボースは慌てて言ったが遅かった。
「はい、ではKASのバリマンさん。」
バリマンも当惑したが、質問を飛ばされては敵わない。
「ディルカ帝国の宝物の在り場所を、秘密にする理由は何でしょうか?」
「盗掘を防止するためです。
次の方?
はい、ディリー・カレックのシェリーさん。」
「今後、報道陣に発掘場所を公開する予定はございますか。
また、それらの財宝をどう処分しますか。」
「冒頭に申し上げた様に、質問は一人一問にお願いします。
最初の質問にだけお答えします。
仮に報道陣に公開する場合、連邦政府その他関連する団体等とも協議して行います。」
このようにマイケルは簡潔明瞭に説明をしてゆく。
しかも二度とは同じ人には当てない。
回答はマイケルが一手に引き受けていた。
30分が過ぎて、何らの切っ掛けも見つからない報道陣は動揺し、焦り、戦術を変えた。
発見者若しくは団体としての五人への質問を止め、名指しでミアラを指名した質問が集中した。
だが、ミアラは毅然としてマイケルと同じように簡潔明瞭に説明してゆく。
結局、マイケルは、ほぼ質問に立った記者全員の所属と名を言ったのである。
約束の時間に後少しであった。
最後の質問に立った男はカール・メイガン。
「ミアラさんにお伺いしたいが、貴方が仮に全ての宝物の所有者になった場合、貴方はそれらの宝物をどうされるおつもりか。」
「おそらくそのような事態にならないと存じますが、仮にそうなった場合、私はフォーリーブスの方々の意思を引き継ぎ、先住民族のために役立てることを考えたいと思っています。」
記者会見は終了し、記者団は引き上げて行った。
彼らが本当に聴きたいと思ったことは聞けないか或いははぐらかされた。
だが、記事や原稿を書くのに十分な情報は得られていた。
これから4時間以内に発表されるであろう政府見解によってはまた進展があり、変化が生ずる。
必要ならばその時に聞けばいい。
彼らはそう思っていた。
時間は午後四時少し前であった。
ナタリー弁護士と5人の若者は、二台の車に分乗し、バーリントンの警察署を訪れた。
有名人の訪問に警察署は浮き脚立ったが、訪問理由を聞いて処置に困った。
警察署の担当は上司に上げ、その上司も同様にしたので警察署長に話が上がった。
署長は止む無く上部機関への打診を行い、最終的に1時間経って返答が来た。
その間、6人は警察署内で待たされた。
署長が直々にやってきて告げた。
「大変お待たせしてしまって申し訳ございません。
何せ、この手のお話は初めてのことでしたもので、上部機関との調整に手間取りました。
結論から申し上げれば、お望みの拾得物の届出については、受理できません。
警察が扱う拾得物処理制度はあくまで現存する人物が所有しているであろう事を想定して作られております。
従って、はるか過去になくなられたであろう人物が残された遺品について扱う権限を与えられてはおりません。
特に所有権或いは相続権などについての民事に介入することは警察行政では避けることが望ましく、従って、拾得物の届出は受理できません。」
ナタリー弁護士は、丁重に、しかし、断固として言った。
「あなた方はその結論を出すのに1時間以上も私達を待たせたのですか?
法律を扱っている割には随分とお粗末ですね。
説明理由としては至って不満がありますけれど、まぁ、結論が同じであればよいでしょう。
でも、私達は現に届出を出そうとした。
その事実を証明する書類が必要なの。
署長さん。
この届出書面に不受理と記載し、貴方の職名と名前、それに今日の日付を記載して私共に返してください。
そうすればそのペーパーが証拠になります。」
「あの、・・・。
これで警察を相手に訴訟など起こされるということは・・・。」
「そんな下らないことで時間を取るほど私達は暇ではありません。
これは単なる予防策です。
余程のことが無い限り、この書類が表に出ることはありません。
間もなく夕刊が来るでしょうから、それで勉強なさい。」
ナタリー弁護士から一喝されて、署長は言われた記載を急いで行い、ナタリー弁護士に手渡した。
書類を素早く見て言った。
「さ、ホテルへ戻りましょ。」
ホテルへ戻り、金庫に宝物を保管してもらって、6人はマイケルの部屋に集まった。
「ナタリーさん、ありがとうございます。
ミアラの弁護士をお引き受けくださっただけではなく、まさか大統領までも動かされておしまいになるとは思いませんでした。」
「嘘、おっしゃい。
あなた方の読みには本当に呆れるわ。
すっかり私のことを調べてから依頼に来たのでしょう?」
「はぁ、確かにナタリーさんのお仕事振りなどは事前に調べさせていただきました。
でもそれは依頼する際に当然すべきことかと存じますが。」
「普通はそうするでしょうね。
でも、あなた方は、探索行に出る前にはあの判例を調べていたのでしょう。
余程、法曹界に詳しいものでもあの判例は出てこない。
確かに最高裁まで上がった判例だから判例集には出てくる。
でも少なくとも判例検索で出てくるのは表題と、どの判例に乗っているかだけ。
しかも、300年以上も前の判例は参考にしないだろうということで、その他の項目にしか出てこないものよ。
よほど特化した研究でも行わない限りは出ては来ないでしょうね。
一体どうやって調べたの?」
「偶然目にしたと言っても信用なさらない?」
「当たり前よ。
二千五百年以上も前の黄金伝説をミアラの部族のわらべ歌だけを聞いただけで、僅か三日で見つけてくるなんてとても常識では考えられない。
その常識で考えられないようなことがもうひとつ重なれば、これは偶然では片付けられないわ。
本来なら背後に悪意があると勘繰るところなのだけれど、残念ながら、私は、貴方達5人がすっかり気に入ってしまったわ。
あれほど執拗な記者団相手に何の恐れもせずに簡潔明瞭に答弁してゆくなんて、とんでもない人たちだわ。
どう、貴方達商売換えしない?
貴方達なら優秀な弁護士になれると思うけれど。」
「いえ、今のところはもう少し今の稼業を続けたいもので。」
「ところで、実際の価値はどの程度あるの?
ハワードがきっと上手くお膳立てはしてくれると思うけれど、仮に訴訟とでもなればこちらにも心積もりが必要よ。」
「ウーン、正確なところはわかりません。
おそらくは数百万個単位の代物ですし、私達も正確な計測などしている時間がありませんでしたので、良くわからないんです。
ただ、密度と1立方フォルの数を目勘定で数えたら一つの山が少なくとも100ケレンスを下回ることはないと思われました。
金の価格は、現在1モレンスで40ドレルほどですから、骨董価値を除いて少なくとも一山40億ドレルでしょうね。
それが32ありましたので、それだけで1300億ドル程度。
ただ、紅白金と思われる山も二つほどありました。
仮に二山全部が紅白金であれば、1モレンス600ドレルほどのはずですから、骨董価値を除いて一山の額は600億ドレルほど、ですから32の山全部で2400億ドレル以上になるとは思うのですが、こればかりは実際に計りでも持っていって計測しないと分かりません。」
「何で、写真の一つも取ってこなかったの?」
「写真を撮ったところで意味はありません。
返って保管場所が分かってしまいます。」
「それは、まぁ、・・・・そうね。
何処にあるかは知らないけれど3200ケレンスもの重量の金やら紅白金どうやって運ぶつもりなの?
大型トラックでも少なくとも160台以上必要になるじゃない?」
「多分、人力で二ヶ月ほども掛ければ運べるのじゃないでしょうか。」
「呆れた。
二千五百年前じゃないのよ。
文明の利器があるならそれを使えばいいじゃない。」
「まぁ、その辺は多分連邦政府、財務省、考古学研究学会などと相談することになるでしょう。
ねぇ、ミアラ。」
「ええ、文明の利器は余り使わない方がいいかもしれませんね。
程々に使わないと自然が破壊されますし・・・。」
それから間もなく大統領官邸から広報担当バーナード補佐官が特別声明を出した。
「先ほど入った情報によれば、ガレセット高原若しくはその近傍でディルカ帝国の遺跡若しくは財宝と思われるものが5名の若者によって発見されたとのことであり、その価値は今のところ詳細には判明していないが、仮に情報が真実であれば相当規模の金額に上るものと推測される。
連邦政府としては、過去の判例を尊重し、なおかつ、ディルカ帝国の末裔たる先住民族の一員が発見者であること、他の四人の若者がその発見者としての特権を公式に放棄した事実に鑑み、蛮人保護法が廃止されて以来502年経過してなお、極めて低い社会的地位に置かれ、耐乏生活に甘んじている先住民族の苦境を救うため、全ての財宝の管理権を第一発見者たるミアラ嬢に委ね、同人の保佐人として同じく発見に多大の功績のあったマイケル・ブレディ氏、ヘンリー・ウォーレン氏、メリンダ・ブレディ嬢、サラ・ウォーレン嬢の四名を選ぶことを条件に、全ての財宝の相続権を先住民族に認めることとした。
この条件を受け入れない先住民族については、連邦政府もその相続権を認めないこととする。
なお、先住民族への配分その他について、管理権を有するミアラ嬢に一任するための大統領特別令を速やかに発出する予定である。
これにより、財宝の価格に応じた所得税として、全量の20%を国庫に収納することとし、同時に、全部の財宝の保管場所として今後20年間に渡り連邦施設であるフォート・モレスの無料使用権を特別に認めることとする。
なお、本件財宝の発掘、輸送、管理、所得税の徴収方法については、財宝管理者たるミアラ嬢、四人の保佐人及び 彼らが選定する弁護士との協議を通じて決定することとする。
また財宝の発掘の際に必要な警備として陸軍第二予備軍を出動せしめ、カレック連邦考古学学会の支援を特別に要請するものである。」
異例の政府声明により、大騒ぎになったが、この政府声明は概ね国民に支持され、ハワード大統領の支持率が数パーセント上昇した。
彼は、忙しい中にあって、この記者会見の模様を生中継で見ているはずです。」
ナタリーは記者団背後のテレビカメラを掌で示した。
記者団が一斉に振り返ると、そこにはいつ入ってきたのか、連邦政府のカレック大鷲のマークがついたカメラを回している二人のチームがいた。
非常に異例な出来事である。
「そうして、彼はこの記者会見の後、五時間以内に連邦政府の見解を記者会見で発表すると申しております。
どのような内容か、私は存知ません。
しかしながら、私は彼を信じており、連邦政府の善き長であることを示していただけるものと確信しております。」
爆弾発言である。
会場は大騒ぎになった。
だが、マイケルがマイクの前に立つと、静かになった。
「では、記者団の質問を受けたいと思います。
ただし、時間の都合上、質問は1時間だけに限らせていただきます。
質問がある方は挙手願います。
その中から、私が指名します。
質問は一人一問に限らせていただきます。
では、どうぞ。」
全員の手が一斉に上がった。
「では、NNSのボースさんどうぞ。」
ボースは唖然とした。
一面識も無いはずなのにいきなり名前を言われたからである。
「どうして、僕の名を?」
「本件に関わらない質問にはお答えしません。
次の方?」
「ちょっと待ってくれ。」
ボースは慌てて言ったが遅かった。
「はい、ではKASのバリマンさん。」
バリマンも当惑したが、質問を飛ばされては敵わない。
「ディルカ帝国の宝物の在り場所を、秘密にする理由は何でしょうか?」
「盗掘を防止するためです。
次の方?
はい、ディリー・カレックのシェリーさん。」
「今後、報道陣に発掘場所を公開する予定はございますか。
また、それらの財宝をどう処分しますか。」
「冒頭に申し上げた様に、質問は一人一問にお願いします。
最初の質問にだけお答えします。
仮に報道陣に公開する場合、連邦政府その他関連する団体等とも協議して行います。」
このようにマイケルは簡潔明瞭に説明をしてゆく。
しかも二度とは同じ人には当てない。
回答はマイケルが一手に引き受けていた。
30分が過ぎて、何らの切っ掛けも見つからない報道陣は動揺し、焦り、戦術を変えた。
発見者若しくは団体としての五人への質問を止め、名指しでミアラを指名した質問が集中した。
だが、ミアラは毅然としてマイケルと同じように簡潔明瞭に説明してゆく。
結局、マイケルは、ほぼ質問に立った記者全員の所属と名を言ったのである。
約束の時間に後少しであった。
最後の質問に立った男はカール・メイガン。
「ミアラさんにお伺いしたいが、貴方が仮に全ての宝物の所有者になった場合、貴方はそれらの宝物をどうされるおつもりか。」
「おそらくそのような事態にならないと存じますが、仮にそうなった場合、私はフォーリーブスの方々の意思を引き継ぎ、先住民族のために役立てることを考えたいと思っています。」
記者会見は終了し、記者団は引き上げて行った。
彼らが本当に聴きたいと思ったことは聞けないか或いははぐらかされた。
だが、記事や原稿を書くのに十分な情報は得られていた。
これから4時間以内に発表されるであろう政府見解によってはまた進展があり、変化が生ずる。
必要ならばその時に聞けばいい。
彼らはそう思っていた。
時間は午後四時少し前であった。
ナタリー弁護士と5人の若者は、二台の車に分乗し、バーリントンの警察署を訪れた。
有名人の訪問に警察署は浮き脚立ったが、訪問理由を聞いて処置に困った。
警察署の担当は上司に上げ、その上司も同様にしたので警察署長に話が上がった。
署長は止む無く上部機関への打診を行い、最終的に1時間経って返答が来た。
その間、6人は警察署内で待たされた。
署長が直々にやってきて告げた。
「大変お待たせしてしまって申し訳ございません。
何せ、この手のお話は初めてのことでしたもので、上部機関との調整に手間取りました。
結論から申し上げれば、お望みの拾得物の届出については、受理できません。
警察が扱う拾得物処理制度はあくまで現存する人物が所有しているであろう事を想定して作られております。
従って、はるか過去になくなられたであろう人物が残された遺品について扱う権限を与えられてはおりません。
特に所有権或いは相続権などについての民事に介入することは警察行政では避けることが望ましく、従って、拾得物の届出は受理できません。」
ナタリー弁護士は、丁重に、しかし、断固として言った。
「あなた方はその結論を出すのに1時間以上も私達を待たせたのですか?
法律を扱っている割には随分とお粗末ですね。
説明理由としては至って不満がありますけれど、まぁ、結論が同じであればよいでしょう。
でも、私達は現に届出を出そうとした。
その事実を証明する書類が必要なの。
署長さん。
この届出書面に不受理と記載し、貴方の職名と名前、それに今日の日付を記載して私共に返してください。
そうすればそのペーパーが証拠になります。」
「あの、・・・。
これで警察を相手に訴訟など起こされるということは・・・。」
「そんな下らないことで時間を取るほど私達は暇ではありません。
これは単なる予防策です。
余程のことが無い限り、この書類が表に出ることはありません。
間もなく夕刊が来るでしょうから、それで勉強なさい。」
ナタリー弁護士から一喝されて、署長は言われた記載を急いで行い、ナタリー弁護士に手渡した。
書類を素早く見て言った。
「さ、ホテルへ戻りましょ。」
ホテルへ戻り、金庫に宝物を保管してもらって、6人はマイケルの部屋に集まった。
「ナタリーさん、ありがとうございます。
ミアラの弁護士をお引き受けくださっただけではなく、まさか大統領までも動かされておしまいになるとは思いませんでした。」
「嘘、おっしゃい。
あなた方の読みには本当に呆れるわ。
すっかり私のことを調べてから依頼に来たのでしょう?」
「はぁ、確かにナタリーさんのお仕事振りなどは事前に調べさせていただきました。
でもそれは依頼する際に当然すべきことかと存じますが。」
「普通はそうするでしょうね。
でも、あなた方は、探索行に出る前にはあの判例を調べていたのでしょう。
余程、法曹界に詳しいものでもあの判例は出てこない。
確かに最高裁まで上がった判例だから判例集には出てくる。
でも少なくとも判例検索で出てくるのは表題と、どの判例に乗っているかだけ。
しかも、300年以上も前の判例は参考にしないだろうということで、その他の項目にしか出てこないものよ。
よほど特化した研究でも行わない限りは出ては来ないでしょうね。
一体どうやって調べたの?」
「偶然目にしたと言っても信用なさらない?」
「当たり前よ。
二千五百年以上も前の黄金伝説をミアラの部族のわらべ歌だけを聞いただけで、僅か三日で見つけてくるなんてとても常識では考えられない。
その常識で考えられないようなことがもうひとつ重なれば、これは偶然では片付けられないわ。
本来なら背後に悪意があると勘繰るところなのだけれど、残念ながら、私は、貴方達5人がすっかり気に入ってしまったわ。
あれほど執拗な記者団相手に何の恐れもせずに簡潔明瞭に答弁してゆくなんて、とんでもない人たちだわ。
どう、貴方達商売換えしない?
貴方達なら優秀な弁護士になれると思うけれど。」
「いえ、今のところはもう少し今の稼業を続けたいもので。」
「ところで、実際の価値はどの程度あるの?
ハワードがきっと上手くお膳立てはしてくれると思うけれど、仮に訴訟とでもなればこちらにも心積もりが必要よ。」
「ウーン、正確なところはわかりません。
おそらくは数百万個単位の代物ですし、私達も正確な計測などしている時間がありませんでしたので、良くわからないんです。
ただ、密度と1立方フォルの数を目勘定で数えたら一つの山が少なくとも100ケレンスを下回ることはないと思われました。
金の価格は、現在1モレンスで40ドレルほどですから、骨董価値を除いて少なくとも一山40億ドレルでしょうね。
それが32ありましたので、それだけで1300億ドル程度。
ただ、紅白金と思われる山も二つほどありました。
仮に二山全部が紅白金であれば、1モレンス600ドレルほどのはずですから、骨董価値を除いて一山の額は600億ドレルほど、ですから32の山全部で2400億ドレル以上になるとは思うのですが、こればかりは実際に計りでも持っていって計測しないと分かりません。」
「何で、写真の一つも取ってこなかったの?」
「写真を撮ったところで意味はありません。
返って保管場所が分かってしまいます。」
「それは、まぁ、・・・・そうね。
何処にあるかは知らないけれど3200ケレンスもの重量の金やら紅白金どうやって運ぶつもりなの?
大型トラックでも少なくとも160台以上必要になるじゃない?」
「多分、人力で二ヶ月ほども掛ければ運べるのじゃないでしょうか。」
「呆れた。
二千五百年前じゃないのよ。
文明の利器があるならそれを使えばいいじゃない。」
「まぁ、その辺は多分連邦政府、財務省、考古学研究学会などと相談することになるでしょう。
ねぇ、ミアラ。」
「ええ、文明の利器は余り使わない方がいいかもしれませんね。
程々に使わないと自然が破壊されますし・・・。」
それから間もなく大統領官邸から広報担当バーナード補佐官が特別声明を出した。
「先ほど入った情報によれば、ガレセット高原若しくはその近傍でディルカ帝国の遺跡若しくは財宝と思われるものが5名の若者によって発見されたとのことであり、その価値は今のところ詳細には判明していないが、仮に情報が真実であれば相当規模の金額に上るものと推測される。
連邦政府としては、過去の判例を尊重し、なおかつ、ディルカ帝国の末裔たる先住民族の一員が発見者であること、他の四人の若者がその発見者としての特権を公式に放棄した事実に鑑み、蛮人保護法が廃止されて以来502年経過してなお、極めて低い社会的地位に置かれ、耐乏生活に甘んじている先住民族の苦境を救うため、全ての財宝の管理権を第一発見者たるミアラ嬢に委ね、同人の保佐人として同じく発見に多大の功績のあったマイケル・ブレディ氏、ヘンリー・ウォーレン氏、メリンダ・ブレディ嬢、サラ・ウォーレン嬢の四名を選ぶことを条件に、全ての財宝の相続権を先住民族に認めることとした。
この条件を受け入れない先住民族については、連邦政府もその相続権を認めないこととする。
なお、先住民族への配分その他について、管理権を有するミアラ嬢に一任するための大統領特別令を速やかに発出する予定である。
これにより、財宝の価格に応じた所得税として、全量の20%を国庫に収納することとし、同時に、全部の財宝の保管場所として今後20年間に渡り連邦施設であるフォート・モレスの無料使用権を特別に認めることとする。
なお、本件財宝の発掘、輸送、管理、所得税の徴収方法については、財宝管理者たるミアラ嬢、四人の保佐人及び 彼らが選定する弁護士との協議を通じて決定することとする。
また財宝の発掘の際に必要な警備として陸軍第二予備軍を出動せしめ、カレック連邦考古学学会の支援を特別に要請するものである。」
異例の政府声明により、大騒ぎになったが、この政府声明は概ね国民に支持され、ハワード大統領の支持率が数パーセント上昇した。
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