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第三章 始動
3-10 女子高生&演奏会最終日
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翌日9時前にリンクに行くと件の女生徒三人が待っていた。
そうして恥ずかしそうに聞いた。
「あの、皆さんって、フォーリーブスの四人なんですか?」
「うん、まぁ、そうだけれど、ここはステージじゃないでしょう。
だから普通の男と女だよ。」
「でも、そんな方に教えてもらってもいいんでしょうか?」
「何か、大会規則でいけないというのがあるのかな?」
「いえ、そうではなくて、皆さんお忙しい方でしょうから、私達が余り迷惑をかけちゃいけないと思って・・・。」
「そうだね、余り無理を言われてもできないことはできない。
でも君達に約束したことは守るよ。
さぁて、二時間しごいちゃうけれど覚悟はいいかな?」
三人は、目を輝かして「はい」と言った
昨日と同じく、イスメルにはヘンリーとサラが、カトリーヌにはマイケルが、モイラにはメリンダがついて指導が始まった。
彼らは個別の音楽を持ってきていたので三箇所に分かれてそれぞれの指導をする。
二時間経った頃、三人は規定のダンス全てを演じることができるようになっていた。
全部が終了して三人はお礼を言ったが、更に何か言いたげだった。
「どうしたの?」
メリンダが問いかけた。
暫くもじもじしていたが、やがて代表格のイスメルが言った。
「あのう、記念に皆さんのサインを貰えないでしょうか?」
「なぁんだ、そんなこと気にしていたの。
いいわよ。
何かサインができるものとペンがあるかしら?」
「ちょっと待ってください。」
三人は飛ぶようにリンクサイドに向かい、カバンから色紙とサインペンを持ってきた。
三人がお願いしますと出したのは三枚の色紙である。
「どんな風に書けばいいの?」
「あのぉ、私達それぞれの名前を書いて、日付とフォーリーブスのお名前と、それに皆さんのお名前を一人ずつ書いてもらいたいんです。」
メリンダは、<フォーリーブスからイスメルへ>と記載し、四隅に四葉のクローバーを書き、さらに、日付と自分の名を書き込んだ。
それをマイケルに渡し、カトリーヌとモイラの分も作って順次サインをした。
四人全員が書き終える頃には貸切時間が終わり、客も徐々に入ってきていた。
三人は笑顔で引き上げていった。
その夜シュターゲン国際ホテルの大ホールでは最後のステージとあって、本当に鈴なりの聴衆が四人を待ち受けていた。
その中で、用意された楽器全てを駆使し、フォーリーブスは昨晩とも異なるステージを披露した。
演目の組み立ても違っていた。
歌曲と楽器演奏を交互にこなしてゆくのである。
歌曲ではラッター二台を伴奏に地元でも有名なカントリーソングを披露し、楽器演奏ではポラノック二台を弾きこ なし、更には、二名一組、二台の連弾すら披露した。
彼らのステージは見事であると同時に非常に楽しい雰囲気を持っていた。
聴衆は涙し、歓喜し、大きな感動を貰ってステージが終了した。
だが、四人が消えても拍手が一向に鳴り止まないばかりか、客が一人として帰らない。
ホテル側は困って何とかアンコールをとお願いし、二分後再度四人はステージに上がり、演奏を披露した。
全く誰も知らない曲であったが、深い感銘を与えて終わった。
再度、拍手が鳴り止まなかったが、ホテルの支配人が出てきて、本日の公演はこれにて完全に終了しますと宣言した。
フォーリーブス初の予期せぬ海外公演はこうして終わったが、翌日にはMLSに多数の公演依頼が殺到したのはいうまでも無い。
後に集計したところでは、公演依頼だけで実に89カ国250箇所以上があり、これを休み無しに行ったとしても、移動に要する時間を考慮すると数年分のスケジュールが全て埋まる計算になった。
ボーカルグループであるフォーリーブスは結成して三ヶ月、デビューして僅かに一ヶ月余りで世界の音楽会に新たな道を踏み出したのである。
そうして恥ずかしそうに聞いた。
「あの、皆さんって、フォーリーブスの四人なんですか?」
「うん、まぁ、そうだけれど、ここはステージじゃないでしょう。
だから普通の男と女だよ。」
「でも、そんな方に教えてもらってもいいんでしょうか?」
「何か、大会規則でいけないというのがあるのかな?」
「いえ、そうではなくて、皆さんお忙しい方でしょうから、私達が余り迷惑をかけちゃいけないと思って・・・。」
「そうだね、余り無理を言われてもできないことはできない。
でも君達に約束したことは守るよ。
さぁて、二時間しごいちゃうけれど覚悟はいいかな?」
三人は、目を輝かして「はい」と言った
昨日と同じく、イスメルにはヘンリーとサラが、カトリーヌにはマイケルが、モイラにはメリンダがついて指導が始まった。
彼らは個別の音楽を持ってきていたので三箇所に分かれてそれぞれの指導をする。
二時間経った頃、三人は規定のダンス全てを演じることができるようになっていた。
全部が終了して三人はお礼を言ったが、更に何か言いたげだった。
「どうしたの?」
メリンダが問いかけた。
暫くもじもじしていたが、やがて代表格のイスメルが言った。
「あのう、記念に皆さんのサインを貰えないでしょうか?」
「なぁんだ、そんなこと気にしていたの。
いいわよ。
何かサインができるものとペンがあるかしら?」
「ちょっと待ってください。」
三人は飛ぶようにリンクサイドに向かい、カバンから色紙とサインペンを持ってきた。
三人がお願いしますと出したのは三枚の色紙である。
「どんな風に書けばいいの?」
「あのぉ、私達それぞれの名前を書いて、日付とフォーリーブスのお名前と、それに皆さんのお名前を一人ずつ書いてもらいたいんです。」
メリンダは、<フォーリーブスからイスメルへ>と記載し、四隅に四葉のクローバーを書き、さらに、日付と自分の名を書き込んだ。
それをマイケルに渡し、カトリーヌとモイラの分も作って順次サインをした。
四人全員が書き終える頃には貸切時間が終わり、客も徐々に入ってきていた。
三人は笑顔で引き上げていった。
その夜シュターゲン国際ホテルの大ホールでは最後のステージとあって、本当に鈴なりの聴衆が四人を待ち受けていた。
その中で、用意された楽器全てを駆使し、フォーリーブスは昨晩とも異なるステージを披露した。
演目の組み立ても違っていた。
歌曲と楽器演奏を交互にこなしてゆくのである。
歌曲ではラッター二台を伴奏に地元でも有名なカントリーソングを披露し、楽器演奏ではポラノック二台を弾きこ なし、更には、二名一組、二台の連弾すら披露した。
彼らのステージは見事であると同時に非常に楽しい雰囲気を持っていた。
聴衆は涙し、歓喜し、大きな感動を貰ってステージが終了した。
だが、四人が消えても拍手が一向に鳴り止まないばかりか、客が一人として帰らない。
ホテル側は困って何とかアンコールをとお願いし、二分後再度四人はステージに上がり、演奏を披露した。
全く誰も知らない曲であったが、深い感銘を与えて終わった。
再度、拍手が鳴り止まなかったが、ホテルの支配人が出てきて、本日の公演はこれにて完全に終了しますと宣言した。
フォーリーブス初の予期せぬ海外公演はこうして終わったが、翌日にはMLSに多数の公演依頼が殺到したのはいうまでも無い。
後に集計したところでは、公演依頼だけで実に89カ国250箇所以上があり、これを休み無しに行ったとしても、移動に要する時間を考慮すると数年分のスケジュールが全て埋まる計算になった。
ボーカルグループであるフォーリーブスは結成して三ヶ月、デビューして僅かに一ヶ月余りで世界の音楽会に新たな道を踏み出したのである。
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