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第八章 対独参戦
8-5 会議の行方 その二
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ソ連代表が質問に立った。
「我が国はドイツ軍の侵攻により多大の被害を蒙った。
その補償は日本がしてくれるのか。」
「ソ連代表に申し上げる。
先ほども申し上げたとおり被災国には相応の援助を与えることを我が国は約束した。
この約束は守られるだろう。
だが、一方でソ連はドイツと共謀してポーランド侵攻を図った。
ソ連政府はポーランドに対して何らかの補償をするつもりがあるのですか?」
「あれは正当な戦争の結果であり、我が国がポーランドに補償すべき根拠は無い。」
「ならば、ドイツ軍によって蒙った被害も貴国のいう正当な戦争の結果ではないのか。
それでいながら、補償を求めるのはおかしいではないですかな。
貴国のポーランド侵攻とドイツ軍の貴国侵攻の違いがあればご教示願いたい。」
「我々は戦勝国だ。
ポーランドについてもしかり、戦勝国が敗戦国に補償するなど常識はずれである。」
「ドイツは貴国に降伏したわけではない。
その事実は貴国も承知のはず。
いかにもこの場は戦勝国の会議の場であり、戦後処理をめぐっての会議である。
だが、同時に人道に対する罪を論ずる場所でもある。
戦勝国と謂えど、人道に対する罪を行っていることが判明すれば、それを断罪することも厭わないでことになるでしょう。
貴国については、何かと問題がある。
今ここで詳細に申し上げるつもりは無いが、貴国で残虐な人道に対する罪が行われていることも承知している。
だが、それを論じる場ではないから敢えて申し上げないでおく。」
「これは異なことを言われる。
我が国で非道な行為が行われているとはどういうことか。
我が国を誹謗中傷する言葉は絶対に許せない。
是非とも納得の行く説明を願いたい。」
「ソ連代表はテロの語源をご存知だろうか。
フランス革命において生まれた言葉であり、本来は恐怖政治を意味する。
すなわち敵対する勢力を根絶やしにするために国家反逆罪を乱発して処刑した革命政府のやり方をいうのですが、希代の蛮行として知られているはず。
ソ連代表はどう思われますかな。」
「フランス革命においては、確かに臨時革命政府の名によって多くの市民が犠牲になっていると聞いており、その大半は無実の罪によりギロチンにかけられたと聞いている。
それが、我が国と何の関係がある。」
「モロゾフ代表もご存知でしたか、・・・。
ならば、貴国でも同じ轍が踏まれているようだが、其の点は如何様に考えておられるのか。」
「何のことか、ツァー一族につながる者を処刑したことは断じて誤りではない。
門外漢の日本代表にとやかく言われることではない。」
「革命前後の混乱期に多少の事件が起こるのは止むを得ないことかもしれない。
だが、貴国では今でも多数の政治犯と呼ばれる人たちが秘密裏に処刑されているはず。
しかも、なんら裁判を受けることなく処刑されている事実をあなたはどう釈明されるのか。
また、ポーランド侵攻において多数のポーランド人捕虜を故なく殺害した事実をどう釈明されるのか。
モロゾフ代表の説明を伺いたい。」
「何のことか、私には分からない。
そのようなありもしない疑惑をかけられてまで、この会議に臨む必要性は認められない。
我が国は退席する。」
「お待ちなさい。
モロゾフ代表。
我が国は中傷誹謗でありもしない嫌疑を貴国にかけているわけではない。
必要ならばいつでも其の証拠を公表する用意がある。
モロゾフ代表はそれをお望みか。」
「でっち上げの証拠など見たくも無い。
いずれにせよ。
ドイツの処理について我が国にとって何らの利益も見出せないこの会議に参加する理由はない。
わが代表団は即時帰国することにする。」
「再度お伺いする。
モロゾフ代表がでっちあげと称された証拠を公表しても差し支えないということでしょうか?」
モロゾフは振り向きもせずに会場を後にした。
日本側代表団のその日の記者会見は長いものになった。
新たな国際機関憲章草案が日本代表団により公表され、その趣旨説明がなされたからであり、さらにはソ連国内で起きている虐殺の実態が証拠写真多数とともに呈示されたからである。
翌日の欧州各国の新聞報道はこの二件が大きな見出しで取り上げられた。
「我が国はドイツ軍の侵攻により多大の被害を蒙った。
その補償は日本がしてくれるのか。」
「ソ連代表に申し上げる。
先ほども申し上げたとおり被災国には相応の援助を与えることを我が国は約束した。
この約束は守られるだろう。
だが、一方でソ連はドイツと共謀してポーランド侵攻を図った。
ソ連政府はポーランドに対して何らかの補償をするつもりがあるのですか?」
「あれは正当な戦争の結果であり、我が国がポーランドに補償すべき根拠は無い。」
「ならば、ドイツ軍によって蒙った被害も貴国のいう正当な戦争の結果ではないのか。
それでいながら、補償を求めるのはおかしいではないですかな。
貴国のポーランド侵攻とドイツ軍の貴国侵攻の違いがあればご教示願いたい。」
「我々は戦勝国だ。
ポーランドについてもしかり、戦勝国が敗戦国に補償するなど常識はずれである。」
「ドイツは貴国に降伏したわけではない。
その事実は貴国も承知のはず。
いかにもこの場は戦勝国の会議の場であり、戦後処理をめぐっての会議である。
だが、同時に人道に対する罪を論ずる場所でもある。
戦勝国と謂えど、人道に対する罪を行っていることが判明すれば、それを断罪することも厭わないでことになるでしょう。
貴国については、何かと問題がある。
今ここで詳細に申し上げるつもりは無いが、貴国で残虐な人道に対する罪が行われていることも承知している。
だが、それを論じる場ではないから敢えて申し上げないでおく。」
「これは異なことを言われる。
我が国で非道な行為が行われているとはどういうことか。
我が国を誹謗中傷する言葉は絶対に許せない。
是非とも納得の行く説明を願いたい。」
「ソ連代表はテロの語源をご存知だろうか。
フランス革命において生まれた言葉であり、本来は恐怖政治を意味する。
すなわち敵対する勢力を根絶やしにするために国家反逆罪を乱発して処刑した革命政府のやり方をいうのですが、希代の蛮行として知られているはず。
ソ連代表はどう思われますかな。」
「フランス革命においては、確かに臨時革命政府の名によって多くの市民が犠牲になっていると聞いており、その大半は無実の罪によりギロチンにかけられたと聞いている。
それが、我が国と何の関係がある。」
「モロゾフ代表もご存知でしたか、・・・。
ならば、貴国でも同じ轍が踏まれているようだが、其の点は如何様に考えておられるのか。」
「何のことか、ツァー一族につながる者を処刑したことは断じて誤りではない。
門外漢の日本代表にとやかく言われることではない。」
「革命前後の混乱期に多少の事件が起こるのは止むを得ないことかもしれない。
だが、貴国では今でも多数の政治犯と呼ばれる人たちが秘密裏に処刑されているはず。
しかも、なんら裁判を受けることなく処刑されている事実をあなたはどう釈明されるのか。
また、ポーランド侵攻において多数のポーランド人捕虜を故なく殺害した事実をどう釈明されるのか。
モロゾフ代表の説明を伺いたい。」
「何のことか、私には分からない。
そのようなありもしない疑惑をかけられてまで、この会議に臨む必要性は認められない。
我が国は退席する。」
「お待ちなさい。
モロゾフ代表。
我が国は中傷誹謗でありもしない嫌疑を貴国にかけているわけではない。
必要ならばいつでも其の証拠を公表する用意がある。
モロゾフ代表はそれをお望みか。」
「でっち上げの証拠など見たくも無い。
いずれにせよ。
ドイツの処理について我が国にとって何らの利益も見出せないこの会議に参加する理由はない。
わが代表団は即時帰国することにする。」
「再度お伺いする。
モロゾフ代表がでっちあげと称された証拠を公表しても差し支えないということでしょうか?」
モロゾフは振り向きもせずに会場を後にした。
日本側代表団のその日の記者会見は長いものになった。
新たな国際機関憲章草案が日本代表団により公表され、その趣旨説明がなされたからであり、さらにはソ連国内で起きている虐殺の実態が証拠写真多数とともに呈示されたからである。
翌日の欧州各国の新聞報道はこの二件が大きな見出しで取り上げられた。
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