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第八章 対独参戦
8-3 平和の維持のために
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ドイツの降伏後も戦後処理は続けられたが、ソ連軍がソ連領内のドイツ軍降伏に併せて、一気に東欧及びドイツになだれ込もうとしたところ、その動きを異形の兵士に止められた。
日本の旗を掲げたこの一群の兵士達は、ソ連軍の国境線侵攻を一切拒んだのである。
無理に通ろうとするならば、日本との戦争の意思ありとみなすとの脅しさえちらつかせていた。
一部のソ連軍司令官が機甲師団での強行突破を図ったが、ソ連の誇るT38大型戦車の一群を一撃で破壊するなどの荒療治を受け、ソ連の南下侵攻作戦は哀れにも潰えた。
戦車でさえ通れないものを生身の兵士が通過できるわけがないのである。
ソ連外交団は、一斉に連合国である英米に対して抗議をしたが、欧州における戦闘は終了しており、これ以上ソ連からの援軍は必要がないと一蹴された。
ドイツ占領政策には連合国であるソ連も参加すべきであるとの抗議も、それは大変に結構なことであり、来る8月12日からロンドンにおいてドイツの取り扱いについて協議するのでソ連も外交団を派遣されたしと応酬されたのみであった。
無論、日本に対しての厳重抗議も同様であった。
戦後のどさくさに紛れてドイツ占領下の東欧及びドイツ北部を占領しようとしていたスターリンの野望も完全に道を閉ざされた。
8月12日から始まったドイツの戦後処理についての国際協議には英、米、ソ連、日本、フランスなどの代表が参加して開催された。
フランス及びソ連は強硬にドイツに対する戦犯処理と戦時補償を求めたが、日本がそれに対して反論した。
日本代表団の随員である若い娘が完璧な英語で述べたのである。
「戦争犯罪者として国家の中枢にあった者に処罰を課すことにも若干の異論はあるものの、ナチスドイツの暴虐行為は目に余るものがあり、一定の処罰を与えることに我が国も敢えて反対はしない。
しかしながら、我が国は、各国に対して、ドイツに対する戦時補償請求を放棄するよう要請する。
今次戦争はもともと第一次世界大戦の後始末におけるベルサイユ体制でドイツに過重な賠償金を課したことに起因する。
この上更なる賠償金を加重すれば、10年後か20年後には再度欧州での大乱が起きるであろう。
国家が他国家の領土に対して羨望のまなざしを向けるときにこそ戦争の芽生えがある。
自らの国家に自信があれば他国領土への侵攻など考えないものである。
国家が軍備を拡大すれば周辺国家も軍備を拡大しなければならず、そのために必要な軍事費の増大によって国家経済は破綻し、あるいは国民生活の窮乏を招くことになるのはこれまでの歴史が教えてくれている。
ドイツの野望によって大きな被害を蒙った多数の国家及びその国民には深く同情するものであるが、同時にドイツ国民も大きな被害を蒙っていることを忘れてはならない。
国家責任を国民に転嫁するならば、怨恨のみが残る。
一方で戦争により甚大な被害をこうむった国家およびその国民を救済することは戦勝国となった国々はもちろん、中立国であった国家群の義務であると考えている。
人類全体の幸福を考えるならば、当然の責務であるとも言える。
ナチスドイツの妄想から始まった今回の戦争に限り、わが国は世界中の人々からの自発的寄付に基づく浄財により、被害者の救済に当てることを提案する。
このため、わが国では既に民間からの供出資金10億ドル、さらに被災国家の再興を促すために、被害程度に応じた経済協力資金として年間1億ドルを我が国の予算から今後10年に渡り拠出する用意がある。
また、荒廃した被害国民の心を支え、新たな国土を速やかに再建するためには、人々の衣食住を充足することが必要不可欠であるが、我が国は被害国家に対して、その被害程度に応じて最低限度の保障を、今後2年間に渡り行う用意があり、この間に、当該国家が必要な敷地を提供するならば、既に我が国において稼動中の農業工場と同程度の施設建設を進める用意がある。
各国においても、余裕がある国は是非に被害国家又は国民への支援に協力願いたい。
戦争は、国家が軍備を持つことにより他国家との紛争解決の手段として利用することから生じる。
それゆえ、国家間の紛争解決の手段として国家が軍備を持つことが必要でなくなるようにするため、わが国は国際連盟とは全く異なる国際機関の新設とその指揮下に入る国際部隊の創設を進言する。
国際連盟は単なる寄り合い所帯であったが故に、今回の戦争において何ら抑止機能を果たせなかった。
このため、あらゆる国際紛争の調停は新たな国際機関の手に委ね、その裁定に各国は従わねばならないような体制作りが是非とも必要である。
国際機関の裁定に不服を申し立て、武力を行使する国家が存在する場合は、然るべき武力を有する国際部隊が発動し、当該武力行使を鎮圧する枠組みも必要である。
我が国が提案する国際機関の調停において、紛争当事国に発言権は与えられるものの、採決権は与えられるべきではない。
当該国際機関の調停が間に合わない場合の緊急措置として、国際機関の長及び予め指定される複数の有識者の判断により、国際部隊は紛争地域に介入し、一切の戦闘行為を禁止する措置をとることが可能なようにすることも必要であろう。
紛争地域へ派遣された国際部隊への攻撃があった場合は、当該国際部隊は部隊を指揮する者の判断により、正当防衛又は緊急避難により反撃することができる枠組みもまた必要である。
我が国が提唱するシステムにおいて、国際機関は国家間の裁判所であり、国際部隊は国家間の警察機関的な役割を果たすこととなる。
また、国際機関に加盟する国家に対するテロ行為の場合であって、武装勢力に対して当該国家が適切な武力を持たない場合には、当該国家から国際機関への要請に応じて、国際部隊が派遣される枠組みも必要である。
わが国が提唱する国際機関に加盟する国家は、次の条件を充足する国家でなければならないだろう。
加盟する国家は、保有する全ての海外植民地を放棄しなければならない。
既に国際連盟により信託統治を委任された地域については新設される国際機関の手に委ねなければならない。
また、加盟国家はその統治する域内全ての住民の基本的人権を尊重しなければならない。
ここでいう基本的人権とは、次のものを言う。
法の下に平等な権利が与えられ、言語、性別、人種、出自、学歴等による差別があってはならない。
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けず、又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられないことが保障されなければならない。
信教の自由は、何人に対してもこれを保障され、いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されないことが保障されなければならない。
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
公序良俗に反しないことを条件として集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由が保障されなければならない。
検閲は、これをしてはならず、通信の秘密は、これを侵してはならない。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由が保障されなければならない。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を保障されなければならない。
学問の自由は、保障されなければならない。
婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならず、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
各国の国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利が保障されなければならない。
各国の国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うが、一定の義務教育は無償とされなければならない。
各国の国民は、勤労の権利を有し、義務を負うが、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する最低基準は、法律で定められなければならない。
また、児童は酷使してはならない。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は保障されなければならない。
個人の財産権は、これを侵してはならず、財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定められなければならない。
但し、私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科されないことが保障されなければならない。
何人も、裁判所において裁判を受ける権利が保障されなければならない。
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されないことが保障されなければならない。
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されないことが保障されなければならない。
又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、現行犯逮捕の場合を除き、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ侵されないことが保証されなければならない。
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する令状により行われなければならない。
公務員またはこれに準ずる者による拷問及び残虐な刑罰は絶対に禁じられなければならない。
刑事事件において、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有し、刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有することが保障されなければならない。
また、刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができ、経済的理由その他の事由により被告人が自らこれを依頼することができないときは、国が弁護人を保障しなければならない。
何人も、自己に不利益な供述を強要されず、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
また、何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられないことが保障されなければならない。
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれず、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われないことが保障されなければならない。
以上が、我が国が提唱する国際機関に加盟しようとする国家に求める義務である。
国際連盟が付託した信託統治領に関して、国際機関はその地域の行政を司る職員を自らの職員の中から派遣し、国際機関が地域運営に必要な予算を捻出しなければならない。
そのために必要な予算は、加盟国の前年度年次予算のうち1%を国際機関に拠出することで賄われる。
また、指揮下に入る国際部隊に必要な人件費は、国際機関と国際部隊を供出する加盟国が折半するものとし、加盟国以外の国から個人の意思で入隊する者の人件費は国際機関が負担することが必要であろう。
国際部隊が使用する武器については、その一部を無償で我が国が提供する用意がある。
国際部隊構成員は、紛争当事国の国民であっても差し支えないが、紛争地域への派遣は忌避されなければならない。
これらの憲章案については既に策定済みであり、ご要望があれば、各国代表に提示するとともに、本日記者会見を持って発表することとしている。
以上が我が国の提案する国際紛争の解決策と戦後の救済策の概要である。」
日本の旗を掲げたこの一群の兵士達は、ソ連軍の国境線侵攻を一切拒んだのである。
無理に通ろうとするならば、日本との戦争の意思ありとみなすとの脅しさえちらつかせていた。
一部のソ連軍司令官が機甲師団での強行突破を図ったが、ソ連の誇るT38大型戦車の一群を一撃で破壊するなどの荒療治を受け、ソ連の南下侵攻作戦は哀れにも潰えた。
戦車でさえ通れないものを生身の兵士が通過できるわけがないのである。
ソ連外交団は、一斉に連合国である英米に対して抗議をしたが、欧州における戦闘は終了しており、これ以上ソ連からの援軍は必要がないと一蹴された。
ドイツ占領政策には連合国であるソ連も参加すべきであるとの抗議も、それは大変に結構なことであり、来る8月12日からロンドンにおいてドイツの取り扱いについて協議するのでソ連も外交団を派遣されたしと応酬されたのみであった。
無論、日本に対しての厳重抗議も同様であった。
戦後のどさくさに紛れてドイツ占領下の東欧及びドイツ北部を占領しようとしていたスターリンの野望も完全に道を閉ざされた。
8月12日から始まったドイツの戦後処理についての国際協議には英、米、ソ連、日本、フランスなどの代表が参加して開催された。
フランス及びソ連は強硬にドイツに対する戦犯処理と戦時補償を求めたが、日本がそれに対して反論した。
日本代表団の随員である若い娘が完璧な英語で述べたのである。
「戦争犯罪者として国家の中枢にあった者に処罰を課すことにも若干の異論はあるものの、ナチスドイツの暴虐行為は目に余るものがあり、一定の処罰を与えることに我が国も敢えて反対はしない。
しかしながら、我が国は、各国に対して、ドイツに対する戦時補償請求を放棄するよう要請する。
今次戦争はもともと第一次世界大戦の後始末におけるベルサイユ体制でドイツに過重な賠償金を課したことに起因する。
この上更なる賠償金を加重すれば、10年後か20年後には再度欧州での大乱が起きるであろう。
国家が他国家の領土に対して羨望のまなざしを向けるときにこそ戦争の芽生えがある。
自らの国家に自信があれば他国領土への侵攻など考えないものである。
国家が軍備を拡大すれば周辺国家も軍備を拡大しなければならず、そのために必要な軍事費の増大によって国家経済は破綻し、あるいは国民生活の窮乏を招くことになるのはこれまでの歴史が教えてくれている。
ドイツの野望によって大きな被害を蒙った多数の国家及びその国民には深く同情するものであるが、同時にドイツ国民も大きな被害を蒙っていることを忘れてはならない。
国家責任を国民に転嫁するならば、怨恨のみが残る。
一方で戦争により甚大な被害をこうむった国家およびその国民を救済することは戦勝国となった国々はもちろん、中立国であった国家群の義務であると考えている。
人類全体の幸福を考えるならば、当然の責務であるとも言える。
ナチスドイツの妄想から始まった今回の戦争に限り、わが国は世界中の人々からの自発的寄付に基づく浄財により、被害者の救済に当てることを提案する。
このため、わが国では既に民間からの供出資金10億ドル、さらに被災国家の再興を促すために、被害程度に応じた経済協力資金として年間1億ドルを我が国の予算から今後10年に渡り拠出する用意がある。
また、荒廃した被害国民の心を支え、新たな国土を速やかに再建するためには、人々の衣食住を充足することが必要不可欠であるが、我が国は被害国家に対して、その被害程度に応じて最低限度の保障を、今後2年間に渡り行う用意があり、この間に、当該国家が必要な敷地を提供するならば、既に我が国において稼動中の農業工場と同程度の施設建設を進める用意がある。
各国においても、余裕がある国は是非に被害国家又は国民への支援に協力願いたい。
戦争は、国家が軍備を持つことにより他国家との紛争解決の手段として利用することから生じる。
それゆえ、国家間の紛争解決の手段として国家が軍備を持つことが必要でなくなるようにするため、わが国は国際連盟とは全く異なる国際機関の新設とその指揮下に入る国際部隊の創設を進言する。
国際連盟は単なる寄り合い所帯であったが故に、今回の戦争において何ら抑止機能を果たせなかった。
このため、あらゆる国際紛争の調停は新たな国際機関の手に委ね、その裁定に各国は従わねばならないような体制作りが是非とも必要である。
国際機関の裁定に不服を申し立て、武力を行使する国家が存在する場合は、然るべき武力を有する国際部隊が発動し、当該武力行使を鎮圧する枠組みも必要である。
我が国が提案する国際機関の調停において、紛争当事国に発言権は与えられるものの、採決権は与えられるべきではない。
当該国際機関の調停が間に合わない場合の緊急措置として、国際機関の長及び予め指定される複数の有識者の判断により、国際部隊は紛争地域に介入し、一切の戦闘行為を禁止する措置をとることが可能なようにすることも必要であろう。
紛争地域へ派遣された国際部隊への攻撃があった場合は、当該国際部隊は部隊を指揮する者の判断により、正当防衛又は緊急避難により反撃することができる枠組みもまた必要である。
我が国が提唱するシステムにおいて、国際機関は国家間の裁判所であり、国際部隊は国家間の警察機関的な役割を果たすこととなる。
また、国際機関に加盟する国家に対するテロ行為の場合であって、武装勢力に対して当該国家が適切な武力を持たない場合には、当該国家から国際機関への要請に応じて、国際部隊が派遣される枠組みも必要である。
わが国が提唱する国際機関に加盟する国家は、次の条件を充足する国家でなければならないだろう。
加盟する国家は、保有する全ての海外植民地を放棄しなければならない。
既に国際連盟により信託統治を委任された地域については新設される国際機関の手に委ねなければならない。
また、加盟国家はその統治する域内全ての住民の基本的人権を尊重しなければならない。
ここでいう基本的人権とは、次のものを言う。
法の下に平等な権利が与えられ、言語、性別、人種、出自、学歴等による差別があってはならない。
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けず、又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられないことが保障されなければならない。
信教の自由は、何人に対してもこれを保障され、いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されないことが保障されなければならない。
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
公序良俗に反しないことを条件として集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由が保障されなければならない。
検閲は、これをしてはならず、通信の秘密は、これを侵してはならない。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由が保障されなければならない。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を保障されなければならない。
学問の自由は、保障されなければならない。
婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならず、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
各国の国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利が保障されなければならない。
各国の国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うが、一定の義務教育は無償とされなければならない。
各国の国民は、勤労の権利を有し、義務を負うが、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する最低基準は、法律で定められなければならない。
また、児童は酷使してはならない。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は保障されなければならない。
個人の財産権は、これを侵してはならず、財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定められなければならない。
但し、私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科されないことが保障されなければならない。
何人も、裁判所において裁判を受ける権利が保障されなければならない。
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されないことが保障されなければならない。
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されないことが保障されなければならない。
又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、現行犯逮捕の場合を除き、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ侵されないことが保証されなければならない。
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する令状により行われなければならない。
公務員またはこれに準ずる者による拷問及び残虐な刑罰は絶対に禁じられなければならない。
刑事事件において、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有し、刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有することが保障されなければならない。
また、刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができ、経済的理由その他の事由により被告人が自らこれを依頼することができないときは、国が弁護人を保障しなければならない。
何人も、自己に不利益な供述を強要されず、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
また、何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられないことが保障されなければならない。
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれず、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われないことが保障されなければならない。
以上が、我が国が提唱する国際機関に加盟しようとする国家に求める義務である。
国際連盟が付託した信託統治領に関して、国際機関はその地域の行政を司る職員を自らの職員の中から派遣し、国際機関が地域運営に必要な予算を捻出しなければならない。
そのために必要な予算は、加盟国の前年度年次予算のうち1%を国際機関に拠出することで賄われる。
また、指揮下に入る国際部隊に必要な人件費は、国際機関と国際部隊を供出する加盟国が折半するものとし、加盟国以外の国から個人の意思で入隊する者の人件費は国際機関が負担することが必要であろう。
国際部隊が使用する武器については、その一部を無償で我が国が提供する用意がある。
国際部隊構成員は、紛争当事国の国民であっても差し支えないが、紛争地域への派遣は忌避されなければならない。
これらの憲章案については既に策定済みであり、ご要望があれば、各国代表に提示するとともに、本日記者会見を持って発表することとしている。
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