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第七章 英国との交渉
7-9 英国の社交界
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14日サキ達がパーティに出席する準備をしているときに、女王からの使いが来た。
15日午前9時から、バッキンガムで会議を開く際に同席して欲しいとの女王からのメッセージである。
二人は即座に「謹んで承ります。」と返事をした。
◇◇◇◇
パーティはささやかと言いながらも100人近くの老若男女が集まる大きなものだった。
広いホールには壁際にソファや椅子が並べられ小さなテーブルも置かれている。
サキのパートナーは財務省の主計部長の子息であり、財務省のエリート官僚になっているドナルド・ハーレィ、絵里子のパートナーはマッケンジー海運社長の子息であり、商事会社を経営しているサム・マッケンジーであった。
どちらもハンサムな顔立ちであるが、ドナルドの方が小柄である。
それでも158センチのサキに比べると10センチ以上背が高い。
サムはさらに背が高く、163センチの日本人女性としては大柄な絵里子にしても15センチ以上の差があった。
サキも絵里子もかなり高いハイヒールを履いているのだが、それでも男性とは身長差があるのである。
サキは淡い紫のロングドレスに幅広の赤いベルトでアクセントをつけた。
実はこのドレスは飛鳥総業が石油から精製した繊維で出来ており、様々な色合いが混じっている。
遠めには薄い紫であるが、光を当てて近くで見ると実に様々な色合いに変化し、煌めきを見せる生地である。
正直言ってこのドレスを着るのには勇気がいる。
胸元がかなり開いているのである。
サキの乳房は日本人の平均以上に大きいはずだが、西洋人の女性に比べるとかなり見劣りがする。
だから少々恥ずかしいのだが、一方で肌理細やかな染み一つ無い肌は若々しく西洋人の白い肌にも負けないはずだった。
絵里子は、白いドレスであるが、細かい刺繍が施してある。
刺繍の糸がサキのドレスと同じで色変わりするために、白でありながら非常に奥深い色合いにみえるのである。
絵里子の場合、胸元はさほど大きく開けてはいない。
それに趣向も若干用意した。
茶会の翌日、サッチャー夫人がパートナーの名前を知らせてくれたのだが、その際に二人の披露がてら何か余興があればやって欲しいという依頼があったのである。
それで、どちらも和服を持参することにした。
サキは巫女の服装、絵里子は振袖である。
無論巫女の衣装など持ってきているはずも無く、サキと絵里子が手分けして作った自作の品である。
ロンドンの街中を探し回って黒っぽい長い髪の鬘を借り受けた。
日本大使館職員の家族が琴を持っていたので、それを借り受け、絵里子が演奏し、サキが日舞を舞うことにしたのである。
サキは、静御前を演じて舞うつもりであった。
絵里子もそれに応じた演題を演奏する。
但し、琴は少々年代物であった。
若干の修理に出して戻ってくるのが当日の午前中であった。
従って練習が出来ず、ぶっつけ本番である。
舞は即興で行う方が絵里子の演奏にも合わせられると変な理屈をつけてその出し物にしたのである。
大使館の方で、パーティに間に合うよう琴はホテルへ届けてもらうことになっていた。
さらに大使館にお願いして、畳一畳を用意してもらった。
屏風と緋毛氈が必要だったが、屏風の代わりに畳大の薄板四枚を執事のクラークに頼んで縦に半分し、それを蝶番で綺麗に併せてもらった。
板に大きな紙を張って、サキが其の上に山水画を描いた。
墨など無いから、水彩画の絵の具の黒を使った。
濃淡に少々苦労はしたものの、何とか納得のできる物に仕上がった。
緋毛氈は赤いビロードの布を代用する。
静御前の白粉の代用品が中々見つからなかった。
西洋に白粉などがあるはずも無く、止むを得ず、真珠の粉末を混ぜた化粧品で代用することにした。
こうして何とかパーティの当日に間に合い、サッチャー夫人に連絡を入れ、会場で若干の準備が必要なので出来れば終わりのほうにして欲しいと頼んだのである。
それぞれのパートナーに付き添われ、ホテルについて最初にしたことは、ホテル側のパーティ裏方とサッチャー夫人を交えて打ち合わせを行うことであった。
十分に間に合う時間についたのだが、打ち合わせでの細かい指示が仇となって、パーティ時間ぎりぎりになってしまった。
パーティが始まり、最初に遠来の客であるサキと絵里子が紹介された。
サッチャー夫人の「カモン、エンジェルズ」の声で、会場の外から二人がエスコートされながら入ってゆくと、パーティ会場の豪勢なシャンデリアの光に照らされ、二人の衣装は非常に煌めいて見え、それだけでも会場の注目を浴びる存在となった。
無論、英国でこのような衣装を見たことがあるはずも無く、大きな拍手と共に一斉にご婦人方のため息を誘ったのである。
直ぐにダンスの曲が始まり、それぞれにワルツを踊り始めた。
エスコ-ト役の二人とはそれぞれ一曲踊っただけであるが、サキと絵里子の踊りは鮮やかであり、さらに注目を浴びる結果となった。
直ぐに二曲目が始まると、二人の前に男性が並ぶ始末であり、その後も次から次へとパートナーを変えて踊らされる嵌めになった。
殆ど休む暇も与えられずに踊った二人であるが、最後までその足捌きは乱れなかった。
パーティも終焉に近づいた頃、ホステス役のサッチャー夫人が演壇に上がり、サキと絵里子の二人が余興のために、暫し会場を離れますと説明した。
漸く、ダンスから開放されて、控え室に向かい。
そこで大急ぎで着替えて、二人が出て来たのは僅かに10分後であった。
着付けをしっかり確認しあい、化粧もチェックしての出番である。
演壇の前には手製の屏風が立てられ、その前に緋毛氈代わりのビロードの布が4m四方くらいに敷かれている。
其の片隅に斜めに畳が置かれ、琴も置かれていた。
何が始まるのかと興味津々のパーティ客たちも、屏風や琴を知っているものは僅かだった。
其処へ白装束に目にも鮮やかな緋色の袴をはき、烏帽子を被ったサキを見て一様に息を飲んだ。
長い黒髪は白い和紙で束ねられ、背中に流れている。
顔は驚くほど白く輝いており、目鼻立ちが驚くほどすっきりと見え、なおかつ、オリエンタル・スマイルに象徴される切れ長の目が印象的であった。
振袖姿の絵里子の艶姿も墨絵に良く映えている。
花模様に小川と御所車の組み合わせの振袖も見た目以上に鮮やかな色彩で和服の真骨頂である。
これほど艶やかな衣装は英国には存在しない。
和服が女性の美しさを強調する衣装であることを今更ながら英国女性は知ったのである。
やがて琴の調べが会場に流れ始めた。
最初はゆっくりとした旋律から徐々に激しく早いテンポに移り変わってゆく。
その驚くほど繊細な調べに併せて、サキが優雅な足さばきをみせ、白い手が大きな袖とともに宙に舞う。
いつの間に取り出したか大きな淡い水色の扇子が開いてひらひらと木の葉のように舞い落ちる。
琴がシャラランと一際大きな音を出してなり終わると、サキが唄いだした。
「静や静ーっ、静の苧環ー、繰り返すぅ・・・・」
日本語である。
英国人にとって意味のわからない言葉であったが、サキの透き通った声は、会場に響き渡り、多くの者が悲恋の唄であることを感じ取っていた。
ゆっくりと舞う姿とその声は誰の目にも耳にも焼きついた。
その間にも誰が撮ったか三回ほどのフラッシュが閃いていた。
サキの最後の声が静かに途絶え、その動きが止まったときに、歓声が沸きあがり、万来の拍手に迎えられた。
サキと絵里子の二人が並んで座り、その歓声に応えるように、両手を突いてお辞儀をしたときに、更なる歓声がため息と共に溢れ出た。
二人の姿に見事なまでの「礼」と「心」を感じ取ったからである。
その後、ホテルマンたちの後片付けを他所に、今の舞の意味を教えて欲しいと多くの客が二人の元に集まった。
サキがサッチャー夫人に促され、簡単な説明を行った。
「八百年ほど前の日本の武将の妻が夫と生き別れになり、舞の名手であったことから、敵将の前で舞を舞うことを強制されたときに、自らの名前と海の波の様子を言葉に掛けて、夫を忍んで即興で謡った唄と舞です。
歌の意味は、
『とても静かな波が繰り返し、繰り返し、岸辺に寄る様は、夫である愛しい人が自分の名前を繰りかえし繰り返し呼んでいるようで、私も出来ることなら波になって愛しい人の元に行きたい。』と言う意味です。
そのために、舞姫は敵将の怒りを買って殺害されました。
舞姫の名前を静御前といい、夫の名前を源義経と言います。
皆さんは源氏物語という日本の古典で源という名前を知っているかもしれません。
源氏とは源家の一族を総称して言います。
源氏物語は創作ですが、少なくとも千二百年ほど前から続いていた由緒ある家系であることが判ります。
源氏物語と違うところは、静御前も源義経も英国のアーサー王と同様に実在の人物であったことです。
今日は、聖バレンタインの記念日、洋の東西を問わず、男女の愛は変わらないということを知っていただくためにこの趣向を考えました。
拙い舞でしたが、日本の舞踊の一端でも知っていただけたら幸いです。」
次は衣装から、屏風まで説明をさせられ、絵里子の着ている衣装は別として、全て手作りだと言うと、日本人は、皆、こんなことが出来るのかと一様に驚いており、慌ててたまたま自分に出来ることをしただけで日本人全てが琴を弾いたり、舞を舞ったりできるわけではなく、山水画も自分の趣味で少し手習いをしただけだと説明した。
ところが、屏風絵を気に入った者が多数現れ是非自分に譲ってくれと言う。
困ってしまってサッチャー夫人に相談すると、サッチャー夫人までもが欲しいと言う始末であり、結局は、手製屏風は今回のホステス役のサッチャー夫人に差し上げることで皆を納得させ、別に何枚かの山水画もどきを描く約束までさせられた。
件のパーティには尾ひれがついた。
どうやらパーティ会場に新聞社の者もいたらしく、翌日のロンドン・タイムズには写真入りででかでかと紹介されてしまったのである。
写真を写したのが本職のカメラマンであったらしく、見事な構図で写された写真は、誰が見てもはっと息を呑む美しい舞姿と流し目の東洋美人が写されていた。
表題は「エンジェル、悲恋のヒロインを演ずる」である。
米国ではウィッチ、英国ではエンジェルがサキの通り名になったが、英国ではさすがに名前は知られていても巫女姿のサキと素顔で洋装のサキを結び付けられる者は少なく、ロンドン市街を歩いていても呼び止められることは滅多になかった。
15日午前9時から、バッキンガムで会議を開く際に同席して欲しいとの女王からのメッセージである。
二人は即座に「謹んで承ります。」と返事をした。
◇◇◇◇
パーティはささやかと言いながらも100人近くの老若男女が集まる大きなものだった。
広いホールには壁際にソファや椅子が並べられ小さなテーブルも置かれている。
サキのパートナーは財務省の主計部長の子息であり、財務省のエリート官僚になっているドナルド・ハーレィ、絵里子のパートナーはマッケンジー海運社長の子息であり、商事会社を経営しているサム・マッケンジーであった。
どちらもハンサムな顔立ちであるが、ドナルドの方が小柄である。
それでも158センチのサキに比べると10センチ以上背が高い。
サムはさらに背が高く、163センチの日本人女性としては大柄な絵里子にしても15センチ以上の差があった。
サキも絵里子もかなり高いハイヒールを履いているのだが、それでも男性とは身長差があるのである。
サキは淡い紫のロングドレスに幅広の赤いベルトでアクセントをつけた。
実はこのドレスは飛鳥総業が石油から精製した繊維で出来ており、様々な色合いが混じっている。
遠めには薄い紫であるが、光を当てて近くで見ると実に様々な色合いに変化し、煌めきを見せる生地である。
正直言ってこのドレスを着るのには勇気がいる。
胸元がかなり開いているのである。
サキの乳房は日本人の平均以上に大きいはずだが、西洋人の女性に比べるとかなり見劣りがする。
だから少々恥ずかしいのだが、一方で肌理細やかな染み一つ無い肌は若々しく西洋人の白い肌にも負けないはずだった。
絵里子は、白いドレスであるが、細かい刺繍が施してある。
刺繍の糸がサキのドレスと同じで色変わりするために、白でありながら非常に奥深い色合いにみえるのである。
絵里子の場合、胸元はさほど大きく開けてはいない。
それに趣向も若干用意した。
茶会の翌日、サッチャー夫人がパートナーの名前を知らせてくれたのだが、その際に二人の披露がてら何か余興があればやって欲しいという依頼があったのである。
それで、どちらも和服を持参することにした。
サキは巫女の服装、絵里子は振袖である。
無論巫女の衣装など持ってきているはずも無く、サキと絵里子が手分けして作った自作の品である。
ロンドンの街中を探し回って黒っぽい長い髪の鬘を借り受けた。
日本大使館職員の家族が琴を持っていたので、それを借り受け、絵里子が演奏し、サキが日舞を舞うことにしたのである。
サキは、静御前を演じて舞うつもりであった。
絵里子もそれに応じた演題を演奏する。
但し、琴は少々年代物であった。
若干の修理に出して戻ってくるのが当日の午前中であった。
従って練習が出来ず、ぶっつけ本番である。
舞は即興で行う方が絵里子の演奏にも合わせられると変な理屈をつけてその出し物にしたのである。
大使館の方で、パーティに間に合うよう琴はホテルへ届けてもらうことになっていた。
さらに大使館にお願いして、畳一畳を用意してもらった。
屏風と緋毛氈が必要だったが、屏風の代わりに畳大の薄板四枚を執事のクラークに頼んで縦に半分し、それを蝶番で綺麗に併せてもらった。
板に大きな紙を張って、サキが其の上に山水画を描いた。
墨など無いから、水彩画の絵の具の黒を使った。
濃淡に少々苦労はしたものの、何とか納得のできる物に仕上がった。
緋毛氈は赤いビロードの布を代用する。
静御前の白粉の代用品が中々見つからなかった。
西洋に白粉などがあるはずも無く、止むを得ず、真珠の粉末を混ぜた化粧品で代用することにした。
こうして何とかパーティの当日に間に合い、サッチャー夫人に連絡を入れ、会場で若干の準備が必要なので出来れば終わりのほうにして欲しいと頼んだのである。
それぞれのパートナーに付き添われ、ホテルについて最初にしたことは、ホテル側のパーティ裏方とサッチャー夫人を交えて打ち合わせを行うことであった。
十分に間に合う時間についたのだが、打ち合わせでの細かい指示が仇となって、パーティ時間ぎりぎりになってしまった。
パーティが始まり、最初に遠来の客であるサキと絵里子が紹介された。
サッチャー夫人の「カモン、エンジェルズ」の声で、会場の外から二人がエスコートされながら入ってゆくと、パーティ会場の豪勢なシャンデリアの光に照らされ、二人の衣装は非常に煌めいて見え、それだけでも会場の注目を浴びる存在となった。
無論、英国でこのような衣装を見たことがあるはずも無く、大きな拍手と共に一斉にご婦人方のため息を誘ったのである。
直ぐにダンスの曲が始まり、それぞれにワルツを踊り始めた。
エスコ-ト役の二人とはそれぞれ一曲踊っただけであるが、サキと絵里子の踊りは鮮やかであり、さらに注目を浴びる結果となった。
直ぐに二曲目が始まると、二人の前に男性が並ぶ始末であり、その後も次から次へとパートナーを変えて踊らされる嵌めになった。
殆ど休む暇も与えられずに踊った二人であるが、最後までその足捌きは乱れなかった。
パーティも終焉に近づいた頃、ホステス役のサッチャー夫人が演壇に上がり、サキと絵里子の二人が余興のために、暫し会場を離れますと説明した。
漸く、ダンスから開放されて、控え室に向かい。
そこで大急ぎで着替えて、二人が出て来たのは僅かに10分後であった。
着付けをしっかり確認しあい、化粧もチェックしての出番である。
演壇の前には手製の屏風が立てられ、その前に緋毛氈代わりのビロードの布が4m四方くらいに敷かれている。
其の片隅に斜めに畳が置かれ、琴も置かれていた。
何が始まるのかと興味津々のパーティ客たちも、屏風や琴を知っているものは僅かだった。
其処へ白装束に目にも鮮やかな緋色の袴をはき、烏帽子を被ったサキを見て一様に息を飲んだ。
長い黒髪は白い和紙で束ねられ、背中に流れている。
顔は驚くほど白く輝いており、目鼻立ちが驚くほどすっきりと見え、なおかつ、オリエンタル・スマイルに象徴される切れ長の目が印象的であった。
振袖姿の絵里子の艶姿も墨絵に良く映えている。
花模様に小川と御所車の組み合わせの振袖も見た目以上に鮮やかな色彩で和服の真骨頂である。
これほど艶やかな衣装は英国には存在しない。
和服が女性の美しさを強調する衣装であることを今更ながら英国女性は知ったのである。
やがて琴の調べが会場に流れ始めた。
最初はゆっくりとした旋律から徐々に激しく早いテンポに移り変わってゆく。
その驚くほど繊細な調べに併せて、サキが優雅な足さばきをみせ、白い手が大きな袖とともに宙に舞う。
いつの間に取り出したか大きな淡い水色の扇子が開いてひらひらと木の葉のように舞い落ちる。
琴がシャラランと一際大きな音を出してなり終わると、サキが唄いだした。
「静や静ーっ、静の苧環ー、繰り返すぅ・・・・」
日本語である。
英国人にとって意味のわからない言葉であったが、サキの透き通った声は、会場に響き渡り、多くの者が悲恋の唄であることを感じ取っていた。
ゆっくりと舞う姿とその声は誰の目にも耳にも焼きついた。
その間にも誰が撮ったか三回ほどのフラッシュが閃いていた。
サキの最後の声が静かに途絶え、その動きが止まったときに、歓声が沸きあがり、万来の拍手に迎えられた。
サキと絵里子の二人が並んで座り、その歓声に応えるように、両手を突いてお辞儀をしたときに、更なる歓声がため息と共に溢れ出た。
二人の姿に見事なまでの「礼」と「心」を感じ取ったからである。
その後、ホテルマンたちの後片付けを他所に、今の舞の意味を教えて欲しいと多くの客が二人の元に集まった。
サキがサッチャー夫人に促され、簡単な説明を行った。
「八百年ほど前の日本の武将の妻が夫と生き別れになり、舞の名手であったことから、敵将の前で舞を舞うことを強制されたときに、自らの名前と海の波の様子を言葉に掛けて、夫を忍んで即興で謡った唄と舞です。
歌の意味は、
『とても静かな波が繰り返し、繰り返し、岸辺に寄る様は、夫である愛しい人が自分の名前を繰りかえし繰り返し呼んでいるようで、私も出来ることなら波になって愛しい人の元に行きたい。』と言う意味です。
そのために、舞姫は敵将の怒りを買って殺害されました。
舞姫の名前を静御前といい、夫の名前を源義経と言います。
皆さんは源氏物語という日本の古典で源という名前を知っているかもしれません。
源氏とは源家の一族を総称して言います。
源氏物語は創作ですが、少なくとも千二百年ほど前から続いていた由緒ある家系であることが判ります。
源氏物語と違うところは、静御前も源義経も英国のアーサー王と同様に実在の人物であったことです。
今日は、聖バレンタインの記念日、洋の東西を問わず、男女の愛は変わらないということを知っていただくためにこの趣向を考えました。
拙い舞でしたが、日本の舞踊の一端でも知っていただけたら幸いです。」
次は衣装から、屏風まで説明をさせられ、絵里子の着ている衣装は別として、全て手作りだと言うと、日本人は、皆、こんなことが出来るのかと一様に驚いており、慌ててたまたま自分に出来ることをしただけで日本人全てが琴を弾いたり、舞を舞ったりできるわけではなく、山水画も自分の趣味で少し手習いをしただけだと説明した。
ところが、屏風絵を気に入った者が多数現れ是非自分に譲ってくれと言う。
困ってしまってサッチャー夫人に相談すると、サッチャー夫人までもが欲しいと言う始末であり、結局は、手製屏風は今回のホステス役のサッチャー夫人に差し上げることで皆を納得させ、別に何枚かの山水画もどきを描く約束までさせられた。
件のパーティには尾ひれがついた。
どうやらパーティ会場に新聞社の者もいたらしく、翌日のロンドン・タイムズには写真入りででかでかと紹介されてしまったのである。
写真を写したのが本職のカメラマンであったらしく、見事な構図で写された写真は、誰が見てもはっと息を呑む美しい舞姿と流し目の東洋美人が写されていた。
表題は「エンジェル、悲恋のヒロインを演ずる」である。
米国ではウィッチ、英国ではエンジェルがサキの通り名になったが、英国ではさすがに名前は知られていても巫女姿のサキと素顔で洋装のサキを結び付けられる者は少なく、ロンドン市街を歩いていても呼び止められることは滅多になかった。
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