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第六章 日米の戦いと紅兵団の役割
6-9 日米講和会議 その四
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全権大使の吉田茂が突然言った。
「わしゃあ、18日から3日間は病気になる。
会議には出ないから、長崎君お主が中心になって会議を進めてくれい。
ホテルに入ったらすぐ熱を出して寝込む。
だから医者を呼んでくれればいい。
少なくとも三日は安静が必要になるはず。
だが、断っておくが、わしのいない間に全部を纏め上げてはいかん。
程々のところで止めておけばいい。」
「大使、しかしながら、医者を呼んでは仮病がばれますが・・。」
「心配するな。
仮病にはならん。
それよりも、会議だが・・・。
長崎君、君も英語でも十分やれるだろう。
だが、君は日本語でやれ。
河合君、君が通訳だ。
それで三日間を粘れ。
少なくとも時間稼ぎにはなるだろう。
そうして、わしが会議に出るのは4日目の22日からだが、其処からは全て英語の会議にする。
日本語は無しだ。」
「ほう、それはまた、何故でしょうか。」
「米国は影武者を仕立ててきたとわしは思うとる。
エルンシュタインなる男をわしは知らん。
ハーバードを出た男じゃからそれなりの男とは思うが、国務省の経験もない男が全権代表として出てくること自体が解せない。
この講和会議は米国にとっては重要な会議。
本来なれば米国領土内での会議なのだからハル国務長官が出てきてもしかるべき。
増してや日本側からは米国西岸でも場所は構わぬと進言したはず。
それにもかかわらず出て来ぬは、とりあえずの時間稼ぎとわしは見ている。
何の時間稼ぎかを見極める時間が三日間。
それでも米国が動かぬようであれば、場合によっては講和会議を蹴るまで。」
「それはなりません。」
サキが声高に叫んだ。
「ほう、それは何故かな。」
「はい、このたびの戦は、全てが米国の策謀によるもの。
米国を押しつぶす事は可能ですが、それで、喜ぶのはドイツだけ。
吉田大使は、ドイツが欧州の覇権をとっても宜しいとお思いですか。」
「フン、ナチスの率いるドイツなどをわしが支持するわけは無かろう。」
「であれば、この講和は早めに終わらせる必要があります。
ドイツはいずれ負けますが、米国の反攻が遅れるほど欧州での被害が増えます。
それを防ぐには米国が最大限の勢力を欧州に振り向ける事が必要です。
我が国と事実上の停戦状態とは言っても、米国は太平洋をガラ空には出来ないのです。
大使が米国大統領の立場になってみればわかります。
日付変更線は、ミッドウェイの僅かに300海里東、普通の船でも1日の距離です。
太平洋艦隊の基地である真珠湾までは1000海里、日付変更線から2日の距離です。
米国は日本が圧倒的な力を有しながら攻撃してこない事を訝しく思っているのです。
仮にハワイが落ちれば西海岸は眼と鼻の先、欧州に構っていられるわけがありません。
どうしても太平洋から勢力を割くわけには行かないのです。」
「ほう、今の説から推測するに、お前さんは帝国の利益よりも欧州諸国の侵略を受ける一般民衆の安全を優先しようというのかな。
ならば、わしも聞かねばならぬ。
絶対的な優位に立ちながら、何故に米国を攻めぬ。
その方が講和を早くしかも有利に進めさせるはずだ。」
「大使、今回の会議にわざわざこの海王を使うのは何故だと思われますか。」
「それは・・・、相手に対する威嚇だろう。」
「その通りです。
相手に戦意を失わせる事が最大の目的です。
今の米国にこの海王を作る技術はありません。
真似は出来ても後10年かそれ以上米国に実用化は難しいと思います。
それで優位な交渉をしようという姑息な手段ですが、今の米国には十分脅しが効きます。
大使はご存じないかもしれませんが、実際は海王を始めとする連合艦隊が彼らの脅威の対象ではありません。
彼らにとって眼に見えぬ敵、秘密戦隊が脅威の対象なのです。
彼らが知りたがっているのはその正体でしょう。
あるいは、もう既に正確な推測をしている者さえいるはずです。
私達紅兵団の隊員がわざわざ随行員として選抜された理由を考えてみてください。
彼らにその推測の実体の一部を餌として投げ与えてやるだけなのです。
聞かれれば勿論否定します。
ですが、私達の異常な教育程度の高さ、異例の抜擢など、米国にとって疑惑の種ばかりなのです。
彼らは紅兵団を脅威の対象として特定し、何とか実体を掴もうとしますが、彼らには出来ません。
帝国においても部外でその実体を知っているのは陛下只お一人。
だからどこを探っても答えは出てきません。
彼らは取り敢えず目の前の餌に食いつくしかないのです。
ハレクラニホテルは或いは罠で一杯かもしれません。
最初の一日だけはホテルで泊まりますが、二日目以降は毎日海王へ戻るようにします。
これは代表団の安全のためです。」
「ふむ、餌が目の前にあるがそれを手に入れにくい場合はどうするか。
1日目にお前さんたちを襲撃するのは余りに露骨だな。
それも確認も出来ないうちには無理だ。
狙うならやはり何らかの確証を得たい。
やはりわしと同じで3日ぐらいは掛けるだろう。
ホテルは米側の警護責任がある。
かといって、航空機に乗って海王に戻ってからでは遅い。
輸送ヘリを狙うかい。」
「それも一つの方法ですが、仮にどこかの不満分子が戦闘機を勝手に使って輸送ヘリを攻撃したところで輸送ヘリは撃墜できません。
会議の輸送ヘリは特別仕様の物が二機用意されています。」
「じゃが、そうとは知らんのじゃろう。」
「はい、その通りです。
ですが、一番ありそうな話は、海王そのものを鹵獲してしまう計画でしょう。
何しろ10海里も離れていない場所に太平洋艦隊の主力がいるのですから。」
「おいおい、軍が出動ともなりゃ。
これは謀略、しかも途轍もなく薄汚い謀略だ。
国際世論が黙ってはいないだろう。」
「そうでしょうか。
集まっている報道陣全てに口封じをしてしまえばいいわけです。
例えば、記者連中を一定の場所に集めておいて其処を砲撃すればいいわけです。
死人に口無し。
砲撃したのは海王であり、泊まっていた代表団も全員死亡したとでもすれば、悪く言われるのはどちらでしょう。
中国でも、フランスのカレー沖でも平気で同胞を殺害している相手です。」
「ほう、なるほど・・・・。
理屈に合うな。
国務長官を殺すわけには行かぬがそこそこ名門の男でも殺されれば同情を買うことが出来る。
5海里離れたところにいる船から撃ったものかどうかなどハワイの住民にはわからんだろうしな。」
「ですが、私達は餌なのです。
餌を仕掛けて魚を待っている釣り人がいます。
この場合狙っているのは大魚です。
仮にこちらの読みが正しいとすれば、今度歯向かってくる敵は容赦なく撃つことになるでしょう。
米国は今度こそ脅威が本物だと知ります。
紅兵団の一部が姿を見せますので、彼らもその実体を見ることが出来るわけです。
それで米国は完全に戦意を失うはずです。
それでも、なお、講和に応じない場合は、ワシントンを脅威に陥れます。
彼らは、所詮、大陸人です。
西海岸よりも西にある地域は必ずしも重要ではありませんが、ワシントン、ニューヨークは彼らにとって聖域です。
そこが戦場になるかもしれないと国民が知れば裏切りを働いた現政府は持たないでしょう。
欧州戦線の問題も残りますがその場合は止むを得ません。」
「中々に面白い見方だ。
確かに色々な面で符丁が合うのだが、果たしてその読みどおりに行くかな。」
「読みが外れてくれた方が本当は宜しいのです。
最悪の場合、米国は立ち直れないほどのダメージを受ける可能性もありますから。
読みが外れ、米国が真摯に講和に向けて努力するならば、帝国も応じるべきです。
太平洋の占領島嶼も本来は必要ありません。
返してやっても宜しいと思います。
但し、条件付です。
5年以内に住民に独立の意思を確認する事と、独立を望まない場合は信託統治など属領ではなく本土と同じ扱いをすることを義務付けします。
それができなければ信託統治権を放棄する必要があります。
将来英国と交渉する場合にも同じ条件になろうかと存じます。」
「おいおい、イギリスにインドを放棄しろというのか。
そいつは無理だぜ。
インドはイギリスの生命線なんだから。」
「英国に要請するのは全ての植民地の独立か自国と同じ扱いです。
アフリカ、アジア、ラテンアメリカを含みます。」
「ふーむ、そいつは絶対無理だ。」
「そうでしょうか?
イギリス本土を失ってもそうしたいと言うのであれば、イギリスの政治家は愚かですね。
仮に、米国が何らかの事情で欧州派兵と英国支援を取りやめればイギリスは長くは持ちません。
精々来年の6月か7月が限度でしょう。
そのときに強大な武力を有する国がかつての盟友であれば、そうして其処に救いの手があるとすれば、飛びつくのでは無いのですか。
私は詳しくは知りませんが、聞くところによると英国政府はいざという場合には女王陛下をインドに移す計画があるやに聞いておりますが・・。」
「よく知っているねぇ。
さすがによく訓練されている。
ドイツのポーランド侵攻があって間もなく、チャーチルが首相になったんだが、ダンケルクの撤退から先、見通しが立たなくなってね。
万が一を想定した計画だけはあるよ。」
「でも、女王がうんとは言わなかった。」
「ほう、其処まで知ってるかい。
本郷君、君は知ってたかい。」
「いいえ、そのような情報は不確定情報としてならありましたが、外務本省には伝えていないはずです。」
「そうだろうな。
俺も知人からの手紙で知ったばかりだからな。
で、そいつは例の御大将の情報網かね。」
「おそらく、・・・。
ですが、出所その他は私は知りません。」
「お前さん、いや黙っているそっちのお二人さんもだが、あんたらが、スパイをやればいい情報が取れるだろうなぁ。
話が変な話になっちまったな。
で、御大将は場合によっては米国の陰謀もあり得るということで最強の空母を持ってきたわけだ。
何で戦艦にしなかったんだい。
あっちの方が近場で喧嘩するにはもってこいだろうが。」
「露骨過ぎます。
空母が接近戦に弱い事は常識です。
米国が陰謀を企んでいる場合には油断させる方がいいからです。」
「わかった。
これは、ちょいと思惑が違ってきたが、お前さんの読みの方が確率は高そうだ。
長崎君、本郷君、こちらの綺麗どころ三人に笑われないよう、よっぽどふんどしを締めてかからにゃならんぞ。」
その後も細々とした協議の進め方について話し合い、大枠の目標を定めて会議を終えた。
「わしゃあ、18日から3日間は病気になる。
会議には出ないから、長崎君お主が中心になって会議を進めてくれい。
ホテルに入ったらすぐ熱を出して寝込む。
だから医者を呼んでくれればいい。
少なくとも三日は安静が必要になるはず。
だが、断っておくが、わしのいない間に全部を纏め上げてはいかん。
程々のところで止めておけばいい。」
「大使、しかしながら、医者を呼んでは仮病がばれますが・・。」
「心配するな。
仮病にはならん。
それよりも、会議だが・・・。
長崎君、君も英語でも十分やれるだろう。
だが、君は日本語でやれ。
河合君、君が通訳だ。
それで三日間を粘れ。
少なくとも時間稼ぎにはなるだろう。
そうして、わしが会議に出るのは4日目の22日からだが、其処からは全て英語の会議にする。
日本語は無しだ。」
「ほう、それはまた、何故でしょうか。」
「米国は影武者を仕立ててきたとわしは思うとる。
エルンシュタインなる男をわしは知らん。
ハーバードを出た男じゃからそれなりの男とは思うが、国務省の経験もない男が全権代表として出てくること自体が解せない。
この講和会議は米国にとっては重要な会議。
本来なれば米国領土内での会議なのだからハル国務長官が出てきてもしかるべき。
増してや日本側からは米国西岸でも場所は構わぬと進言したはず。
それにもかかわらず出て来ぬは、とりあえずの時間稼ぎとわしは見ている。
何の時間稼ぎかを見極める時間が三日間。
それでも米国が動かぬようであれば、場合によっては講和会議を蹴るまで。」
「それはなりません。」
サキが声高に叫んだ。
「ほう、それは何故かな。」
「はい、このたびの戦は、全てが米国の策謀によるもの。
米国を押しつぶす事は可能ですが、それで、喜ぶのはドイツだけ。
吉田大使は、ドイツが欧州の覇権をとっても宜しいとお思いですか。」
「フン、ナチスの率いるドイツなどをわしが支持するわけは無かろう。」
「であれば、この講和は早めに終わらせる必要があります。
ドイツはいずれ負けますが、米国の反攻が遅れるほど欧州での被害が増えます。
それを防ぐには米国が最大限の勢力を欧州に振り向ける事が必要です。
我が国と事実上の停戦状態とは言っても、米国は太平洋をガラ空には出来ないのです。
大使が米国大統領の立場になってみればわかります。
日付変更線は、ミッドウェイの僅かに300海里東、普通の船でも1日の距離です。
太平洋艦隊の基地である真珠湾までは1000海里、日付変更線から2日の距離です。
米国は日本が圧倒的な力を有しながら攻撃してこない事を訝しく思っているのです。
仮にハワイが落ちれば西海岸は眼と鼻の先、欧州に構っていられるわけがありません。
どうしても太平洋から勢力を割くわけには行かないのです。」
「ほう、今の説から推測するに、お前さんは帝国の利益よりも欧州諸国の侵略を受ける一般民衆の安全を優先しようというのかな。
ならば、わしも聞かねばならぬ。
絶対的な優位に立ちながら、何故に米国を攻めぬ。
その方が講和を早くしかも有利に進めさせるはずだ。」
「大使、今回の会議にわざわざこの海王を使うのは何故だと思われますか。」
「それは・・・、相手に対する威嚇だろう。」
「その通りです。
相手に戦意を失わせる事が最大の目的です。
今の米国にこの海王を作る技術はありません。
真似は出来ても後10年かそれ以上米国に実用化は難しいと思います。
それで優位な交渉をしようという姑息な手段ですが、今の米国には十分脅しが効きます。
大使はご存じないかもしれませんが、実際は海王を始めとする連合艦隊が彼らの脅威の対象ではありません。
彼らにとって眼に見えぬ敵、秘密戦隊が脅威の対象なのです。
彼らが知りたがっているのはその正体でしょう。
あるいは、もう既に正確な推測をしている者さえいるはずです。
私達紅兵団の隊員がわざわざ随行員として選抜された理由を考えてみてください。
彼らにその推測の実体の一部を餌として投げ与えてやるだけなのです。
聞かれれば勿論否定します。
ですが、私達の異常な教育程度の高さ、異例の抜擢など、米国にとって疑惑の種ばかりなのです。
彼らは紅兵団を脅威の対象として特定し、何とか実体を掴もうとしますが、彼らには出来ません。
帝国においても部外でその実体を知っているのは陛下只お一人。
だからどこを探っても答えは出てきません。
彼らは取り敢えず目の前の餌に食いつくしかないのです。
ハレクラニホテルは或いは罠で一杯かもしれません。
最初の一日だけはホテルで泊まりますが、二日目以降は毎日海王へ戻るようにします。
これは代表団の安全のためです。」
「ふむ、餌が目の前にあるがそれを手に入れにくい場合はどうするか。
1日目にお前さんたちを襲撃するのは余りに露骨だな。
それも確認も出来ないうちには無理だ。
狙うならやはり何らかの確証を得たい。
やはりわしと同じで3日ぐらいは掛けるだろう。
ホテルは米側の警護責任がある。
かといって、航空機に乗って海王に戻ってからでは遅い。
輸送ヘリを狙うかい。」
「それも一つの方法ですが、仮にどこかの不満分子が戦闘機を勝手に使って輸送ヘリを攻撃したところで輸送ヘリは撃墜できません。
会議の輸送ヘリは特別仕様の物が二機用意されています。」
「じゃが、そうとは知らんのじゃろう。」
「はい、その通りです。
ですが、一番ありそうな話は、海王そのものを鹵獲してしまう計画でしょう。
何しろ10海里も離れていない場所に太平洋艦隊の主力がいるのですから。」
「おいおい、軍が出動ともなりゃ。
これは謀略、しかも途轍もなく薄汚い謀略だ。
国際世論が黙ってはいないだろう。」
「そうでしょうか。
集まっている報道陣全てに口封じをしてしまえばいいわけです。
例えば、記者連中を一定の場所に集めておいて其処を砲撃すればいいわけです。
死人に口無し。
砲撃したのは海王であり、泊まっていた代表団も全員死亡したとでもすれば、悪く言われるのはどちらでしょう。
中国でも、フランスのカレー沖でも平気で同胞を殺害している相手です。」
「ほう、なるほど・・・・。
理屈に合うな。
国務長官を殺すわけには行かぬがそこそこ名門の男でも殺されれば同情を買うことが出来る。
5海里離れたところにいる船から撃ったものかどうかなどハワイの住民にはわからんだろうしな。」
「ですが、私達は餌なのです。
餌を仕掛けて魚を待っている釣り人がいます。
この場合狙っているのは大魚です。
仮にこちらの読みが正しいとすれば、今度歯向かってくる敵は容赦なく撃つことになるでしょう。
米国は今度こそ脅威が本物だと知ります。
紅兵団の一部が姿を見せますので、彼らもその実体を見ることが出来るわけです。
それで米国は完全に戦意を失うはずです。
それでも、なお、講和に応じない場合は、ワシントンを脅威に陥れます。
彼らは、所詮、大陸人です。
西海岸よりも西にある地域は必ずしも重要ではありませんが、ワシントン、ニューヨークは彼らにとって聖域です。
そこが戦場になるかもしれないと国民が知れば裏切りを働いた現政府は持たないでしょう。
欧州戦線の問題も残りますがその場合は止むを得ません。」
「中々に面白い見方だ。
確かに色々な面で符丁が合うのだが、果たしてその読みどおりに行くかな。」
「読みが外れてくれた方が本当は宜しいのです。
最悪の場合、米国は立ち直れないほどのダメージを受ける可能性もありますから。
読みが外れ、米国が真摯に講和に向けて努力するならば、帝国も応じるべきです。
太平洋の占領島嶼も本来は必要ありません。
返してやっても宜しいと思います。
但し、条件付です。
5年以内に住民に独立の意思を確認する事と、独立を望まない場合は信託統治など属領ではなく本土と同じ扱いをすることを義務付けします。
それができなければ信託統治権を放棄する必要があります。
将来英国と交渉する場合にも同じ条件になろうかと存じます。」
「おいおい、イギリスにインドを放棄しろというのか。
そいつは無理だぜ。
インドはイギリスの生命線なんだから。」
「英国に要請するのは全ての植民地の独立か自国と同じ扱いです。
アフリカ、アジア、ラテンアメリカを含みます。」
「ふーむ、そいつは絶対無理だ。」
「そうでしょうか?
イギリス本土を失ってもそうしたいと言うのであれば、イギリスの政治家は愚かですね。
仮に、米国が何らかの事情で欧州派兵と英国支援を取りやめればイギリスは長くは持ちません。
精々来年の6月か7月が限度でしょう。
そのときに強大な武力を有する国がかつての盟友であれば、そうして其処に救いの手があるとすれば、飛びつくのでは無いのですか。
私は詳しくは知りませんが、聞くところによると英国政府はいざという場合には女王陛下をインドに移す計画があるやに聞いておりますが・・。」
「よく知っているねぇ。
さすがによく訓練されている。
ドイツのポーランド侵攻があって間もなく、チャーチルが首相になったんだが、ダンケルクの撤退から先、見通しが立たなくなってね。
万が一を想定した計画だけはあるよ。」
「でも、女王がうんとは言わなかった。」
「ほう、其処まで知ってるかい。
本郷君、君は知ってたかい。」
「いいえ、そのような情報は不確定情報としてならありましたが、外務本省には伝えていないはずです。」
「そうだろうな。
俺も知人からの手紙で知ったばかりだからな。
で、そいつは例の御大将の情報網かね。」
「おそらく、・・・。
ですが、出所その他は私は知りません。」
「お前さん、いや黙っているそっちのお二人さんもだが、あんたらが、スパイをやればいい情報が取れるだろうなぁ。
話が変な話になっちまったな。
で、御大将は場合によっては米国の陰謀もあり得るということで最強の空母を持ってきたわけだ。
何で戦艦にしなかったんだい。
あっちの方が近場で喧嘩するにはもってこいだろうが。」
「露骨過ぎます。
空母が接近戦に弱い事は常識です。
米国が陰謀を企んでいる場合には油断させる方がいいからです。」
「わかった。
これは、ちょいと思惑が違ってきたが、お前さんの読みの方が確率は高そうだ。
長崎君、本郷君、こちらの綺麗どころ三人に笑われないよう、よっぽどふんどしを締めてかからにゃならんぞ。」
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