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第三章 新たなる展開
3-3 ボストン第一日目
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客船ですので船内には色々な設備が整っています。
プールもあって水泳ができますし、大浴場があって海を見ながら入浴ができます。
運動ができるような施設、写真館、そして映画館ならぬ芝居小屋や図書館もありますし、船内バーもあります。
一応小さな売店もあり、旅行用の小物などを置いているほか、衣類なども多少は置いていますし、テーラーがオーダーメイドの衣装を造れます。
尤もハワイ下船客は乗船時間が短すぎてテーラーが依頼を受けることはできませんでした。
私はどちらかというと、自室で錬金術や製薬などに勤しんでいましたし、規則正しい日課を続けていましたから、さほど退屈を感じませんでしたが、乗客の一部の人にとっては少々退屈な日々であったかもしれませんね。
そうした客船での旅も終わりを告げ、9月4日早朝にはマサチューセッツ湾に入りました。
船の到着岸壁は今のところ分かっていませんが代理店を頼んで埠頭を手配しているはずです。
明治の時代は事前の連絡も結構難しいのです。
一応、在米日本大使館を通じて代理店の手配等はお願いしてあるし、先乗りのゴーレムたちも相応に動いている筈ですけれどね。
いずれにせよ、実際にボストンの沖で代理店の職員が乗り込んでくるまで詳細は不明なんです。
まぁ、先に、種々の検査確認のためにCIQ(税関、入国管理局、検疫)職員が乗り込んできますけれどね。
ハワイで一応CIQの検査は受けていますけれど、あちらは植民地扱い。
ボストンは帝国で言えば内地に当たりますから、外地から来た船は再度検査を受けなければならないのです。
国務省手配でいちゃもんをつける者が現れるかなぁと懸念していましたが、意外とすんなり終わり、すぐに代理店の職員が乗り込んできました。
2万トンクラスの船をつける桟橋は比較的少なく、ボストンノースエンド地区にある海軍さんが使っている桟橋を使わせてもらえるそうです。
明日香丸の停泊予定はわずかに足掛け三日だけなので、海軍さんの了解も意外と簡単に取れたようです。
私の方は代理店にお願いして今日はホテル住まいです。
筆記試験及び口述試験は、9月7日月曜日にケンブリッジ地区にあるハーバード大学の物理学部棟で行われます。
私の希望学部は物性物理及び電磁気学にしていましたから試験会場も物理学部棟になったのだと思いますが、今後宿舎になる予定の“House of Aunt Martha(略してHAM)”からは徒歩で15分もあれば到着できる距離なんです。
今日はボストン市内のホテルで一泊し、明日は船から降ろした荷物をケンブリッジのHAMまで馬車で運ばねばなりません。
自動車もあるのですが大量の荷を運ぶトラックが出現するのにはもう少し待たねばならないようです。
いずれにしろに運びのための差配は先乗りのゴーレムが上手くやってくれている筈です。
侍従二人とメイド二人には三年間みっちりと英語を教え込みましたからハーバードでの生活には多分不自由しないはずです。
念のため、ハーバードの屋敷には番犬三匹を飼い、メイドや侍従たちの護衛に着ける予定です。
番犬を飼うと言っても実は、一旦購入した犬を従魔にして半分ゴーレムに変えてしまい、家人たちの言うことをよく聞く番犬にしてしまいます。
帰国の際はそれらの犬も連れて帰る予定ですが、検疫で何かと引っかかるのでしょうね。
まぁそれでも身内になった犬たちを米国に置いて行くわけには行きません。
飼うのはジャーマン・シェパードのような大型犬を予定しています。
既に先乗りのゴーレムからは内々で報告が来ていますが、屋敷の改装は無事住んでおり、必要な設備も目立たないよう地下等に隠してあります。
ボストンは、夏は湿度も気温も高く、冬は日本の東北地方以上に冷え込む土地柄で一日の寒暖差が大きい土地でもあります。
このため暖房と冷房の設備(いずれも自作の空調設備)をしっかりと取りつけてもらったのです。
一応暖炉の設備があるようなので、それも偽装で使わせてもらいますけれどメインは空調装置になりますね。
当該電源は別途私が空間魔法で収納している地脈発電装置を設置し、照明用電源とは別に使うことにします。
そのほか目立たないように地下に冷蔵庫や冷凍庫、食糧保存庫、更に真水補給装置(浄水器や浄水発生装置)を設置しています。
ボストンは古い街ですから、水道管が錆びており、余り水が良いとは言えません。
念のために浄水器や浄水発生装置も装備することにしたのです。(浄水器は浄化だけ、浄水発生装置は水そのものを分子から造り直します。)
新たに作った地下室はハイテクの塊みたいな場所ですから二重の鉄扉を設置して、頑丈なカギをつけてもらっています。
その日宿泊予定のホテルはボストン・オムニ・パーカー・ハウスホテルでした。
創業は1885年ですから、明治維新の時には既にあったホテルですね。
歴史のある格調高いホテルですので、日本からのRoyal Familyが泊っても大丈夫と判断されたようです。
勿論、こちらの身分については駐米大使館及び代理店経由でホテル側に知らせている筈です。
その日の午後にボストンに降り立ち、多少の荷物を持って、タクシー代わりの馬車でホテルまで移動、ホテルでチェックインを済ませました。
やっぱり、Royal Familyがお泊りと言うことでホテルマンたちはかなりピリピリしているようでしたが、クロークでは英語で会話し、簡単なジョークを言って受付嬢を笑わせると、以後は少し和んだみたいでした。
確かに言葉が通じるかどうかわからない外国のお偉いさん相手では気も張りますよね。
そんな中で気さくに声を掛けジョークを言う異国の王子さまはどうやら少し気に入られたみたいです。
傍についている年上の男女も全員が英語を話せるとわかるとはっきりわかるほど雰囲気が変わりました。
やっぱり意思疎通は大事ですね。
案内されたスィート・ルームでくつろいでいるとホテルの支配人がやってきて挨拶をして行きました。
支配人に世相のことや米国で今一番話題になっていることを訪ねたりしたところ、すっかり饒舌になって色々と話してくれました。
ボストン市内では日本の皇族がハーバードに留学するかもしれないという噂が飛び交っており、支配人も私がそのためにはるばると日本からやってきたのを承知していたようでした。
明日のボストン・グラブの朝刊にはきっとRoyal Familyのボストン上陸が紙面をにぎわせますよと支配人が言っていました。
その日の夕食前にボストン・グラブとボストン・ヘラルドの記者が合同で取材の申し込みをしてきました。
一応留学そのものはプライベートな活動なので断ることもできましたが、米国における日本への評価を下げないためにも断らずに、受けることにしました。
これもRoyal Familyの義務の一つだと思うからです。
非公式の訪問でない限りは、外国に出かけて単なる深窓の令嬢であってはならないのです。
但し、会見は夕食後の19時から一時間以内とし、フロントにも連絡を入れて会見場所はロビーとしました。
夕食は、執事やメイドも一緒の会食にはなりませんでした。
宮中における晩餐会同様、侍従やメイドはホスト若しくは主賓の傍で待機し、食事を済ませるまで待っていなければならないのです。
これはあくまで宮中作法であり、皇族の一員としては対外的に目がある場所ではそうしなければならないことになっているのです。
因みに、明日香丸では、ハワイまでは松平侯爵夫婦が居ましたので、侍従たちは同席しませんでした。
ホノルル出港後は顔見知りの乗組員以外には上級食堂に居ないので、私の指示で一緒に食事をしたのです。
私が食事を終えると、私は一旦部屋に戻るのですが、彼らは交代で食事をします。
そうして予定の19時少し前になって、伊藤侍従とともにロビーに顔を出すと、既に記者二人が待っており、そのほかに報道関係者らしき人物が三人ほど待機していました。
開口一番、ボストン・グラブの記者から、ほかの記者の同席を許可していただけるでしょうかと言う丁寧なお願いがあった。
「約束したのは、ボストン・グラブとボストン・ヘラルドの二社だけですので、質問その他の発言はお二方だけにしてください。
他の方々は同席しても発言しないことを条件に取材を認めます。」
このように私からは明確に条件を付けて許可した。
会見は至って丁寧な言葉遣いで質問がなされ、今回の渡米目的、最近の国際政治や米国の第一印象など多岐に渡ったが、私が答えるべきものを明確に区別して回答しました。
一つは政治に関わる事項については私が未成年でもあり、発言を誤解され誤った報道をされても周辺に与える影響が大きいので、基本的に回答しないこと。
プライベートな事柄についても皇族に関すること等状況により回答を控えさせてもらうことが有り得ることなどです。
彼らの質問に関しては言葉を選びながら慎重に発言し、出来るだけ予断を与えない話し方に徹しました。
プールもあって水泳ができますし、大浴場があって海を見ながら入浴ができます。
運動ができるような施設、写真館、そして映画館ならぬ芝居小屋や図書館もありますし、船内バーもあります。
一応小さな売店もあり、旅行用の小物などを置いているほか、衣類なども多少は置いていますし、テーラーがオーダーメイドの衣装を造れます。
尤もハワイ下船客は乗船時間が短すぎてテーラーが依頼を受けることはできませんでした。
私はどちらかというと、自室で錬金術や製薬などに勤しんでいましたし、規則正しい日課を続けていましたから、さほど退屈を感じませんでしたが、乗客の一部の人にとっては少々退屈な日々であったかもしれませんね。
そうした客船での旅も終わりを告げ、9月4日早朝にはマサチューセッツ湾に入りました。
船の到着岸壁は今のところ分かっていませんが代理店を頼んで埠頭を手配しているはずです。
明治の時代は事前の連絡も結構難しいのです。
一応、在米日本大使館を通じて代理店の手配等はお願いしてあるし、先乗りのゴーレムたちも相応に動いている筈ですけれどね。
いずれにせよ、実際にボストンの沖で代理店の職員が乗り込んでくるまで詳細は不明なんです。
まぁ、先に、種々の検査確認のためにCIQ(税関、入国管理局、検疫)職員が乗り込んできますけれどね。
ハワイで一応CIQの検査は受けていますけれど、あちらは植民地扱い。
ボストンは帝国で言えば内地に当たりますから、外地から来た船は再度検査を受けなければならないのです。
国務省手配でいちゃもんをつける者が現れるかなぁと懸念していましたが、意外とすんなり終わり、すぐに代理店の職員が乗り込んできました。
2万トンクラスの船をつける桟橋は比較的少なく、ボストンノースエンド地区にある海軍さんが使っている桟橋を使わせてもらえるそうです。
明日香丸の停泊予定はわずかに足掛け三日だけなので、海軍さんの了解も意外と簡単に取れたようです。
私の方は代理店にお願いして今日はホテル住まいです。
筆記試験及び口述試験は、9月7日月曜日にケンブリッジ地区にあるハーバード大学の物理学部棟で行われます。
私の希望学部は物性物理及び電磁気学にしていましたから試験会場も物理学部棟になったのだと思いますが、今後宿舎になる予定の“House of Aunt Martha(略してHAM)”からは徒歩で15分もあれば到着できる距離なんです。
今日はボストン市内のホテルで一泊し、明日は船から降ろした荷物をケンブリッジのHAMまで馬車で運ばねばなりません。
自動車もあるのですが大量の荷を運ぶトラックが出現するのにはもう少し待たねばならないようです。
いずれにしろに運びのための差配は先乗りのゴーレムが上手くやってくれている筈です。
侍従二人とメイド二人には三年間みっちりと英語を教え込みましたからハーバードでの生活には多分不自由しないはずです。
念のため、ハーバードの屋敷には番犬三匹を飼い、メイドや侍従たちの護衛に着ける予定です。
番犬を飼うと言っても実は、一旦購入した犬を従魔にして半分ゴーレムに変えてしまい、家人たちの言うことをよく聞く番犬にしてしまいます。
帰国の際はそれらの犬も連れて帰る予定ですが、検疫で何かと引っかかるのでしょうね。
まぁそれでも身内になった犬たちを米国に置いて行くわけには行きません。
飼うのはジャーマン・シェパードのような大型犬を予定しています。
既に先乗りのゴーレムからは内々で報告が来ていますが、屋敷の改装は無事住んでおり、必要な設備も目立たないよう地下等に隠してあります。
ボストンは、夏は湿度も気温も高く、冬は日本の東北地方以上に冷え込む土地柄で一日の寒暖差が大きい土地でもあります。
このため暖房と冷房の設備(いずれも自作の空調設備)をしっかりと取りつけてもらったのです。
一応暖炉の設備があるようなので、それも偽装で使わせてもらいますけれどメインは空調装置になりますね。
当該電源は別途私が空間魔法で収納している地脈発電装置を設置し、照明用電源とは別に使うことにします。
そのほか目立たないように地下に冷蔵庫や冷凍庫、食糧保存庫、更に真水補給装置(浄水器や浄水発生装置)を設置しています。
ボストンは古い街ですから、水道管が錆びており、余り水が良いとは言えません。
念のために浄水器や浄水発生装置も装備することにしたのです。(浄水器は浄化だけ、浄水発生装置は水そのものを分子から造り直します。)
新たに作った地下室はハイテクの塊みたいな場所ですから二重の鉄扉を設置して、頑丈なカギをつけてもらっています。
その日宿泊予定のホテルはボストン・オムニ・パーカー・ハウスホテルでした。
創業は1885年ですから、明治維新の時には既にあったホテルですね。
歴史のある格調高いホテルですので、日本からのRoyal Familyが泊っても大丈夫と判断されたようです。
勿論、こちらの身分については駐米大使館及び代理店経由でホテル側に知らせている筈です。
その日の午後にボストンに降り立ち、多少の荷物を持って、タクシー代わりの馬車でホテルまで移動、ホテルでチェックインを済ませました。
やっぱり、Royal Familyがお泊りと言うことでホテルマンたちはかなりピリピリしているようでしたが、クロークでは英語で会話し、簡単なジョークを言って受付嬢を笑わせると、以後は少し和んだみたいでした。
確かに言葉が通じるかどうかわからない外国のお偉いさん相手では気も張りますよね。
そんな中で気さくに声を掛けジョークを言う異国の王子さまはどうやら少し気に入られたみたいです。
傍についている年上の男女も全員が英語を話せるとわかるとはっきりわかるほど雰囲気が変わりました。
やっぱり意思疎通は大事ですね。
案内されたスィート・ルームでくつろいでいるとホテルの支配人がやってきて挨拶をして行きました。
支配人に世相のことや米国で今一番話題になっていることを訪ねたりしたところ、すっかり饒舌になって色々と話してくれました。
ボストン市内では日本の皇族がハーバードに留学するかもしれないという噂が飛び交っており、支配人も私がそのためにはるばると日本からやってきたのを承知していたようでした。
明日のボストン・グラブの朝刊にはきっとRoyal Familyのボストン上陸が紙面をにぎわせますよと支配人が言っていました。
その日の夕食前にボストン・グラブとボストン・ヘラルドの記者が合同で取材の申し込みをしてきました。
一応留学そのものはプライベートな活動なので断ることもできましたが、米国における日本への評価を下げないためにも断らずに、受けることにしました。
これもRoyal Familyの義務の一つだと思うからです。
非公式の訪問でない限りは、外国に出かけて単なる深窓の令嬢であってはならないのです。
但し、会見は夕食後の19時から一時間以内とし、フロントにも連絡を入れて会見場所はロビーとしました。
夕食は、執事やメイドも一緒の会食にはなりませんでした。
宮中における晩餐会同様、侍従やメイドはホスト若しくは主賓の傍で待機し、食事を済ませるまで待っていなければならないのです。
これはあくまで宮中作法であり、皇族の一員としては対外的に目がある場所ではそうしなければならないことになっているのです。
因みに、明日香丸では、ハワイまでは松平侯爵夫婦が居ましたので、侍従たちは同席しませんでした。
ホノルル出港後は顔見知りの乗組員以外には上級食堂に居ないので、私の指示で一緒に食事をしたのです。
私が食事を終えると、私は一旦部屋に戻るのですが、彼らは交代で食事をします。
そうして予定の19時少し前になって、伊藤侍従とともにロビーに顔を出すと、既に記者二人が待っており、そのほかに報道関係者らしき人物が三人ほど待機していました。
開口一番、ボストン・グラブの記者から、ほかの記者の同席を許可していただけるでしょうかと言う丁寧なお願いがあった。
「約束したのは、ボストン・グラブとボストン・ヘラルドの二社だけですので、質問その他の発言はお二方だけにしてください。
他の方々は同席しても発言しないことを条件に取材を認めます。」
このように私からは明確に条件を付けて許可した。
会見は至って丁寧な言葉遣いで質問がなされ、今回の渡米目的、最近の国際政治や米国の第一印象など多岐に渡ったが、私が答えるべきものを明確に区別して回答しました。
一つは政治に関わる事項については私が未成年でもあり、発言を誤解され誤った報道をされても周辺に与える影響が大きいので、基本的に回答しないこと。
プライベートな事柄についても皇族に関すること等状況により回答を控えさせてもらうことが有り得ることなどです。
彼らの質問に関しては言葉を選びながら慎重に発言し、出来るだけ予断を与えない話し方に徹しました。
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