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第二章 富士野宮(ふじのみや)宏禎(ひろよし)王
2-10 造船所の設立
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明治43年初頭に、各会社を設立し、自社ビル等を建設する際に必要な建設機械は飛鳥重工農機部から分離した飛鳥重機で製造することにしました。
小型排土重機、小型掘削路重機が取り敢えずメインの商品です。
これらの重機は実は陣地設営に役立つ機械なので早速に陸軍と海軍からも引き合いがありました。
海軍は、海が活躍の舞台と言っても補給のための基地建設その他で土木工事はどうしても必要なのです。
飛鳥セラミックスは、便器、洗面台その他の生活用品生産が主体ですが、実は軍用品にも波及します。
ファインセラミックスは、いずれ大量生産するシリコン素子や耐熱素材、ガスタービンブレード、内燃機関への応用など多岐に渡るのです。
取り敢えずは試行錯誤の研究を重ね、いずれは武器兵装への利用も図ることになるでしょう。
◇◇◇◇
明治43年4月には静岡県沼津西方の西浦湾内に飛鳥造船所を設立しました。
造船所の候補地としては清水港三保地区も有ったのですが港内浚渫の維持経費が必要な三保よりも平均水深の大きい西浦湾を選択したのです。
三保の内湾沿岸部は巴川の堆積層からできていることから、地震の影響も大きい事が忌避された一因です。
耐震設計にしても岩盤まで基礎を打ち込まないと大型建造物は作れませんからね、その点西浦湾の方が比較的基盤がしっかりしています。
尤も、後に起きる筈の関東大震災の被害をもろに受ける場所でもありますから地震対策は二重三重にしていますよ。
因みに西浦湾にも河内川と言う小さな川が流れ込んでいますが、巴川と異なり河川延長が7キロ足らずであり、巴川と支流の長尾川の総延長約80キロに比べると水量も少なく堆積土砂も非常に小さいのです。
なおかつ西浦湾西岸に造船を建設することで、駿河湾からの海洋波の影響を最小限にできます。
尤も西浦湾口に大水深防波堤を建造しましたけれどね。
そのために西浦湾30ヘクタール余りの海面の大部分が飛鳥造船西浦工場の占有海面になりました。
あ、西浦湾に在住する漁業者たちは喜んでいますよ。
湾奥に比較的大きめの漁港になる漁船船溜まりと物揚げ場を作ってあげましたので、彼らは造船所の進出に諸手を挙げて賛成していました。
造船所自体は乾ドック方式を採用し、当面は5万トン級三本なのですが、将来的に10万トン級三本、20万トン級二本、50万トン級二本、100万トン級二本を増設する予定なのです。
この建造にもゴーレム部隊が大活躍です。
ゴーレム部隊は引き続き造船所の操業、運営、工員の育成に当たる予定です。
見かけ上は、人間と変わらないですからね。
地元の人たちには、表向き東京からやってきた本社の社員として接しています。
概ね5年程度で現地雇用の社員に引き継ぎ、入れ替わる予定なんです。
既に海軍に対しては、当造船所での建船・建艦予定を概略説明しており、幹部クラスからも了解を得ています。
海軍に関連して最初に建艦するのは、排水量7800トンの長月型駆逐艦です。
全長160m、全幅21m、喫水6m、深さ12mの船型は、20世紀末の海上自衛隊のこんごう型イージス艦に匹敵する大きさであり、帝国海軍保有の新鋭艦「香取」(明治39年(1906年)竣工)が全長143.3m、全幅23.81m、喫水8.2m、排水量16400トンなので、香取に比べて全長で長く、排水量で小さい艦となりますが、この時代の大きさだけで言えば戦艦クラスと言うことでしょうか。
現在建造中で明治43年中に竣工する予定の薩摩型戦艦でも全長146~150m、排水量で19,700~21,800トンですので、船体は薩摩型より少し大きいのに排水量で半分以下ですから、如何に長月型が軽量であるかわかるというものです。
但し、公称は「駆逐艦」ではなく「海防艦」になる予定です。
勿論、敵性国に誤解させるための方便ですけれどね。
外見上はのっぺりとした艦橋に、単装砲一基と機銃二基だけの貧弱な兵装しか持たない大型船ですから海防艦と言えば「ああそうかな」と勘違いするのも止むを得ないと思いますよ。
成りは小さいですけれど、隼型水雷艇(明治33年(1900年)竣工)でさえも47ミリ単装砲三基を搭載してますからね、目に見える魚雷発射管三基と合わせて余程戦闘艦らしく見えます。
詳細は忘れてしまいましたが、確か昭和初期に建造された千鳥型水雷艇と言うのがあって500トン前後の大きさなのに欲張って127ミリ連装砲一基、同単装砲一基、12.7ミリ機銃などの重武装を施した欠陥船があったはずです。
甲板上が重すぎて転覆してしまったのですけれどね。まぁ、明らかに設計上のミスでしょう。
海軍のとある幹部に私が直接聞かれました。
「この艦であれば、排水量は少ないものの成りは戦艦よりも大きいはずだ。
それでいて何故駆逐艦なのだ?」
「いずれ巡洋艦でも1万トンを超えるようになります。
戦艦であれば少なくとも3万トン以上でしょうかねぇ。
でも戦艦を作る意味合いは時代が進むにつれてほとんど無くなりますよ。」
そう答えてやりましたら、目を白黒させていましたね。
明治43年12月に徳河大尉が日本で初の動力機飛行を成功させたばかりの段階で、航空機主戦論をぶつのは早すぎたので結果だけ簡単に言ったのですけれど、多分何のことかわかっていないでしょうね。
長月型駆逐艦の外見上の兵装は120mm単装砲一基、六銃身30mmバルカン砲二基のみなので、前述したとおりとても強そうには見えません。
主機関は直流モーターで、パラチウム電池及び中型地脈発電装置を動力源とします。
モーター単独でも回転数調整は可能な方式ですが、その上に特殊素材を多用した無段階式変速機を採用した二軸推進方式で、プロペラはスキュードプロペラの6枚ペラなのです。
最高速力は建艦材質の所為(軽量化と摩擦抵抗の低減)で多分45ノットを超える速力になるはずです。
バウスラスターとスターンスラスターを備えているために、その場回頭や横向きに移動することができるため着岸操船の際には極めて便利です。
それにスタビライザーを装備していますので荒天時の動揺防止には非常に役立つはずです。
20世紀末のイージス艦の兵装そのままに高性能なパッシブ・フェイズド・アレイ・レーダーを搭載し、艦対艦、艦対潜、艦対空、艦対地の各ミサイル群、それにレールガン一基とビーム砲二基を艦内に隠し持っていますから、おそらくはいずれの国の艦隊と戦闘行動に入っても、負けることはないでしょう。
何しろ敵艦の射程外から命中率100%の攻撃を加えることが可能ですから。
因みに各ミサイルの弾頭に用いられる「ヒロ炸薬」は安定性が高いのに強力な爆発力を有し、日露戦争で有名となった下瀬火薬とは桁違いの破壊力を持っています。
実際のところ、後に開発されるTNT火薬の数十倍の破壊力を持つ火薬なのです。
ために対艦ミサイルの攻撃を喫水線付近で受けた1万トン級の戦艦は、瞬時にその爆発力で周囲数十メートルに渡って船殻部分が蒸発、真っ二つに割れて轟沈の憂き目にあうことになるでしょう。
ミサイル、弾丸、火薬については造船所では造らず、取り敢えずは私とゴーレムが製造していますが、いずれ飛鳥化学を設立して、そこの火薬部門で製造することになるでしょう。
この対艦ミサイルの射程は250キロであり、艦の搭載レーダー圏内若しくは艦内に搭載している無人哨戒機(ドローン)の監視活動範囲であれば間違いなく殲滅できることになります。
長月型駆逐艦は一回戦分として、対艦ミサイルを20発保有する予定です。
明らかに当代では過剰に過ぎる戦力ではあるのですが、将来のために帝国の機密戦力として順次蓄えて行く予定なのです。
但し、建艦予定は年間二隻のみです。
お値段は格安で兵装完備で一隻当たり189万円の予定なのです。
実は日露戦争の前にイギリスに発注した戦艦三笠の価格は120万ポンドもしたのです。
当時の「円―ポンド」相場で言うと1ポンドが9.8円から9.9円相当なので、おおよそではありますが「三笠」一隻に1200万円を支払ったことになるのです。
日露戦争の際には八八計画ならぬ、帝国海軍の六六計画に沿って戦艦六隻、装甲巡洋艦六隻を準備していましたから、三笠を含めて海外に少なくとも12隻の戦闘艦を発注しており、12隻分で少なくとも約8倍の一億円ほども支払ったのではないでしょうか。
明治34年の予算が3億円、同38年の予算が4.2億円なので、戦艦1隻が国家予算の3%程度を占めたことになるのです。
これに比べれば超格安でのご提供になるはずです。
正確な値段は承知していませんが、3500トンクラス三等巡洋艦三隻で装甲巡洋艦一隻の値段と聞いていますので、三等巡洋艦でおおよそ300万円程度でしょうか。
その三等巡洋艦一隻の値段の六割強程度なのですからこれは絶対にお買い得なのです。
まぁ、性能その他は完成してからでないと明確にならないので、こちらから出した設計仕様だけでは海軍艦政本部も半信半疑でしょうけれどね。
実のところ海軍さんの安心のために事前の建艦契約はありません。
三号艦以降は予め契約を締結したうえでの建造になりますが、今回の場合一号艦と二号艦だけは出来上がった艦の性能を実際に確認してもらってから購入してもらうという特別の方式なんです。
如何に宮家が関わっていようとも、やはりお高い買い物(21世紀初頭の価値にすれば100億円から200億円でしょうか・・・〔かなりお安い‼〕)には違いないのですから、信用の乏しい新興企業にいきなり発注はできないのがお役所なんですよね。
それ故に特別に譲歩した破格の条件を提示しているわけですが、これでも、海軍さんのお気に召さず、購入してくれない場合は、状況によっては他国に転売することもありなのでしょうかねぇ?
下手をするとミサイルなんか積まないでも基礎的な性能だけで帝国海軍の強敵になりますよ?
あぁ、そうそう、建艦に必要な原材料は全て自前で調達しているのですよ。
特殊な船ですからね。大部分が鉄鋼ではなく特殊合金で建造されているんです。
まぁ、鉄鋼も多少は使っていますけれど、船体の8割以上は地中から抽出したアルミ、シリカゲル、炭素、チタン、マンガン、銅からなる特殊冶金の成果なんです。
鋼鉄よりも強靭で、比重が軽く、耐熱性に優れた特殊合金です。
私の錬金術により産み出した合金なので、HH08合金と名付けています。
因みにHHは私のイニシャルで、08は西暦の下二桁です。
海軍御用達になるかどうかは先の話として、商用船の建造も請け負います。
当面、私の仕事上の利用その他で使う2万トンクラスの貨客船を建造予定です。
素材は同じくHH08合金を使います。
強靭軽量ですから色々と取り回しに便利なんですよね。
この合金は将来的に航空機産業にも使う予定です。
造船所の第一期施設が完工するのが明治43年末頃、新造船が出来上がるのはさらに半年ほど後になる見込みです。
7800トンの軍艦も2万トン級の貨客船も完工するのはほぼ同時期になるとみています。
ゴーレムさんたちは優秀ですからね。
分業しつつ無駄なく作業をすれば、それぐらいで一隻の船が出来上がるのです。
小型排土重機、小型掘削路重機が取り敢えずメインの商品です。
これらの重機は実は陣地設営に役立つ機械なので早速に陸軍と海軍からも引き合いがありました。
海軍は、海が活躍の舞台と言っても補給のための基地建設その他で土木工事はどうしても必要なのです。
飛鳥セラミックスは、便器、洗面台その他の生活用品生産が主体ですが、実は軍用品にも波及します。
ファインセラミックスは、いずれ大量生産するシリコン素子や耐熱素材、ガスタービンブレード、内燃機関への応用など多岐に渡るのです。
取り敢えずは試行錯誤の研究を重ね、いずれは武器兵装への利用も図ることになるでしょう。
◇◇◇◇
明治43年4月には静岡県沼津西方の西浦湾内に飛鳥造船所を設立しました。
造船所の候補地としては清水港三保地区も有ったのですが港内浚渫の維持経費が必要な三保よりも平均水深の大きい西浦湾を選択したのです。
三保の内湾沿岸部は巴川の堆積層からできていることから、地震の影響も大きい事が忌避された一因です。
耐震設計にしても岩盤まで基礎を打ち込まないと大型建造物は作れませんからね、その点西浦湾の方が比較的基盤がしっかりしています。
尤も、後に起きる筈の関東大震災の被害をもろに受ける場所でもありますから地震対策は二重三重にしていますよ。
因みに西浦湾にも河内川と言う小さな川が流れ込んでいますが、巴川と異なり河川延長が7キロ足らずであり、巴川と支流の長尾川の総延長約80キロに比べると水量も少なく堆積土砂も非常に小さいのです。
なおかつ西浦湾西岸に造船を建設することで、駿河湾からの海洋波の影響を最小限にできます。
尤も西浦湾口に大水深防波堤を建造しましたけれどね。
そのために西浦湾30ヘクタール余りの海面の大部分が飛鳥造船西浦工場の占有海面になりました。
あ、西浦湾に在住する漁業者たちは喜んでいますよ。
湾奥に比較的大きめの漁港になる漁船船溜まりと物揚げ場を作ってあげましたので、彼らは造船所の進出に諸手を挙げて賛成していました。
造船所自体は乾ドック方式を採用し、当面は5万トン級三本なのですが、将来的に10万トン級三本、20万トン級二本、50万トン級二本、100万トン級二本を増設する予定なのです。
この建造にもゴーレム部隊が大活躍です。
ゴーレム部隊は引き続き造船所の操業、運営、工員の育成に当たる予定です。
見かけ上は、人間と変わらないですからね。
地元の人たちには、表向き東京からやってきた本社の社員として接しています。
概ね5年程度で現地雇用の社員に引き継ぎ、入れ替わる予定なんです。
既に海軍に対しては、当造船所での建船・建艦予定を概略説明しており、幹部クラスからも了解を得ています。
海軍に関連して最初に建艦するのは、排水量7800トンの長月型駆逐艦です。
全長160m、全幅21m、喫水6m、深さ12mの船型は、20世紀末の海上自衛隊のこんごう型イージス艦に匹敵する大きさであり、帝国海軍保有の新鋭艦「香取」(明治39年(1906年)竣工)が全長143.3m、全幅23.81m、喫水8.2m、排水量16400トンなので、香取に比べて全長で長く、排水量で小さい艦となりますが、この時代の大きさだけで言えば戦艦クラスと言うことでしょうか。
現在建造中で明治43年中に竣工する予定の薩摩型戦艦でも全長146~150m、排水量で19,700~21,800トンですので、船体は薩摩型より少し大きいのに排水量で半分以下ですから、如何に長月型が軽量であるかわかるというものです。
但し、公称は「駆逐艦」ではなく「海防艦」になる予定です。
勿論、敵性国に誤解させるための方便ですけれどね。
外見上はのっぺりとした艦橋に、単装砲一基と機銃二基だけの貧弱な兵装しか持たない大型船ですから海防艦と言えば「ああそうかな」と勘違いするのも止むを得ないと思いますよ。
成りは小さいですけれど、隼型水雷艇(明治33年(1900年)竣工)でさえも47ミリ単装砲三基を搭載してますからね、目に見える魚雷発射管三基と合わせて余程戦闘艦らしく見えます。
詳細は忘れてしまいましたが、確か昭和初期に建造された千鳥型水雷艇と言うのがあって500トン前後の大きさなのに欲張って127ミリ連装砲一基、同単装砲一基、12.7ミリ機銃などの重武装を施した欠陥船があったはずです。
甲板上が重すぎて転覆してしまったのですけれどね。まぁ、明らかに設計上のミスでしょう。
海軍のとある幹部に私が直接聞かれました。
「この艦であれば、排水量は少ないものの成りは戦艦よりも大きいはずだ。
それでいて何故駆逐艦なのだ?」
「いずれ巡洋艦でも1万トンを超えるようになります。
戦艦であれば少なくとも3万トン以上でしょうかねぇ。
でも戦艦を作る意味合いは時代が進むにつれてほとんど無くなりますよ。」
そう答えてやりましたら、目を白黒させていましたね。
明治43年12月に徳河大尉が日本で初の動力機飛行を成功させたばかりの段階で、航空機主戦論をぶつのは早すぎたので結果だけ簡単に言ったのですけれど、多分何のことかわかっていないでしょうね。
長月型駆逐艦の外見上の兵装は120mm単装砲一基、六銃身30mmバルカン砲二基のみなので、前述したとおりとても強そうには見えません。
主機関は直流モーターで、パラチウム電池及び中型地脈発電装置を動力源とします。
モーター単独でも回転数調整は可能な方式ですが、その上に特殊素材を多用した無段階式変速機を採用した二軸推進方式で、プロペラはスキュードプロペラの6枚ペラなのです。
最高速力は建艦材質の所為(軽量化と摩擦抵抗の低減)で多分45ノットを超える速力になるはずです。
バウスラスターとスターンスラスターを備えているために、その場回頭や横向きに移動することができるため着岸操船の際には極めて便利です。
それにスタビライザーを装備していますので荒天時の動揺防止には非常に役立つはずです。
20世紀末のイージス艦の兵装そのままに高性能なパッシブ・フェイズド・アレイ・レーダーを搭載し、艦対艦、艦対潜、艦対空、艦対地の各ミサイル群、それにレールガン一基とビーム砲二基を艦内に隠し持っていますから、おそらくはいずれの国の艦隊と戦闘行動に入っても、負けることはないでしょう。
何しろ敵艦の射程外から命中率100%の攻撃を加えることが可能ですから。
因みに各ミサイルの弾頭に用いられる「ヒロ炸薬」は安定性が高いのに強力な爆発力を有し、日露戦争で有名となった下瀬火薬とは桁違いの破壊力を持っています。
実際のところ、後に開発されるTNT火薬の数十倍の破壊力を持つ火薬なのです。
ために対艦ミサイルの攻撃を喫水線付近で受けた1万トン級の戦艦は、瞬時にその爆発力で周囲数十メートルに渡って船殻部分が蒸発、真っ二つに割れて轟沈の憂き目にあうことになるでしょう。
ミサイル、弾丸、火薬については造船所では造らず、取り敢えずは私とゴーレムが製造していますが、いずれ飛鳥化学を設立して、そこの火薬部門で製造することになるでしょう。
この対艦ミサイルの射程は250キロであり、艦の搭載レーダー圏内若しくは艦内に搭載している無人哨戒機(ドローン)の監視活動範囲であれば間違いなく殲滅できることになります。
長月型駆逐艦は一回戦分として、対艦ミサイルを20発保有する予定です。
明らかに当代では過剰に過ぎる戦力ではあるのですが、将来のために帝国の機密戦力として順次蓄えて行く予定なのです。
但し、建艦予定は年間二隻のみです。
お値段は格安で兵装完備で一隻当たり189万円の予定なのです。
実は日露戦争の前にイギリスに発注した戦艦三笠の価格は120万ポンドもしたのです。
当時の「円―ポンド」相場で言うと1ポンドが9.8円から9.9円相当なので、おおよそではありますが「三笠」一隻に1200万円を支払ったことになるのです。
日露戦争の際には八八計画ならぬ、帝国海軍の六六計画に沿って戦艦六隻、装甲巡洋艦六隻を準備していましたから、三笠を含めて海外に少なくとも12隻の戦闘艦を発注しており、12隻分で少なくとも約8倍の一億円ほども支払ったのではないでしょうか。
明治34年の予算が3億円、同38年の予算が4.2億円なので、戦艦1隻が国家予算の3%程度を占めたことになるのです。
これに比べれば超格安でのご提供になるはずです。
正確な値段は承知していませんが、3500トンクラス三等巡洋艦三隻で装甲巡洋艦一隻の値段と聞いていますので、三等巡洋艦でおおよそ300万円程度でしょうか。
その三等巡洋艦一隻の値段の六割強程度なのですからこれは絶対にお買い得なのです。
まぁ、性能その他は完成してからでないと明確にならないので、こちらから出した設計仕様だけでは海軍艦政本部も半信半疑でしょうけれどね。
実のところ海軍さんの安心のために事前の建艦契約はありません。
三号艦以降は予め契約を締結したうえでの建造になりますが、今回の場合一号艦と二号艦だけは出来上がった艦の性能を実際に確認してもらってから購入してもらうという特別の方式なんです。
如何に宮家が関わっていようとも、やはりお高い買い物(21世紀初頭の価値にすれば100億円から200億円でしょうか・・・〔かなりお安い‼〕)には違いないのですから、信用の乏しい新興企業にいきなり発注はできないのがお役所なんですよね。
それ故に特別に譲歩した破格の条件を提示しているわけですが、これでも、海軍さんのお気に召さず、購入してくれない場合は、状況によっては他国に転売することもありなのでしょうかねぇ?
下手をするとミサイルなんか積まないでも基礎的な性能だけで帝国海軍の強敵になりますよ?
あぁ、そうそう、建艦に必要な原材料は全て自前で調達しているのですよ。
特殊な船ですからね。大部分が鉄鋼ではなく特殊合金で建造されているんです。
まぁ、鉄鋼も多少は使っていますけれど、船体の8割以上は地中から抽出したアルミ、シリカゲル、炭素、チタン、マンガン、銅からなる特殊冶金の成果なんです。
鋼鉄よりも強靭で、比重が軽く、耐熱性に優れた特殊合金です。
私の錬金術により産み出した合金なので、HH08合金と名付けています。
因みにHHは私のイニシャルで、08は西暦の下二桁です。
海軍御用達になるかどうかは先の話として、商用船の建造も請け負います。
当面、私の仕事上の利用その他で使う2万トンクラスの貨客船を建造予定です。
素材は同じくHH08合金を使います。
強靭軽量ですから色々と取り回しに便利なんですよね。
この合金は将来的に航空機産業にも使う予定です。
造船所の第一期施設が完工するのが明治43年末頃、新造船が出来上がるのはさらに半年ほど後になる見込みです。
7800トンの軍艦も2万トン級の貨客船も完工するのはほぼ同時期になるとみています。
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