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第一章 仇を追う娘
1ー11 白木屋にて その二
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「ですが、その前に探索方が塩崎を見つけたなら・・・。」
「塩崎は、この一月では見つからぬ。
何せ、江戸での探索方の差配をしておる佐野十郎左衛門が塩崎を匿っておるでな。
見つけられるはずもない。
こちらは粛々と準備を整えておけばよいのじゃ。」
その日から、白木屋の庭先が彩華達の道場になった。
陽が昇るとすぐに稽古を始め、日が沈むと稽古が終了する。
松岡は、日が落ちてから小一郎に学問を教え始めた。
松岡の教え方は、剣術の稽古と同様に規格外のものであった。
論語は教えるが、一々暗記などはさせない。
だがその教えとすることを説明し、別の話に置き換えた場合、どのようにすべきかを小一郎に尋ねるのである。
藩校である秀修館では四書五経を使って教えるが、ひたすら声を出させて暗記をさせることに重きを置いている。
小一郎も相当に覚えている方であったが、一方でその教えとしていることが何なのかは必ずしも認識していなかった。
松岡はそれを理路整然と説明し、世情に置き換えた時に何が役立ち、また役立たないかを教えているのである。
稽古が終わってからそのような授業を行っていると聞いて、三日目には彩華もその弟子に加えてもらった。
白木屋で生活を初めて、二十日ほど過ぎたある日、その授業の合間に松倉が言った。
「小一郎殿も数えで十五、彩華殿より明後日が生まれた日と聞いた。
そろそろ元服をしても良いのではないかと思う。
彩華殿、小一郎殿、弥吉殿さえ良ければ然るべき人を立てて、明後日の大安の日に元服の儀を執り行おうと思うがどうかな?」
授業には末席に弥吉も控えていたのである。
小一郎は目を輝かせて言った。
「それは是非も無く・・。
但し、烏帽子親には是非とも松倉様になっていただきとうございます。」
「小一郎殿、元服の儀式は相応の身分有る者が烏帽子親になってこそ意味があるのではないかな。
某はただの素浪人じゃ。」
「松倉様、私は松倉様をわが師と仰いでおります。
剣の師、学問の師たる松倉様に、烏帽子親になっていただけるなれば、この身に過ぎたることはあっても決して不足はありませぬ。
小一郎、伏してお願い申し上げます。」
小一郎はそう言って平伏した。
松倉は苦笑して、弥吉と彩華に目を向けた。
すると二人も同じようにその場で平伏したのである。
「やれ、困った。
自ら墓穴を掘ったようじゃな。
致し方ない。
烏帽子親になってみよう。」
その二日後、白木屋の奥座敷に髪結いが招かれ、白木屋の伝兵衛夫妻なども見守る中、小一郎の前髪がおろされ、髷が結われた。
その頭に松倉が烏帽子を載せて、小一郎の前に正座した。
「元服、戴冠の儀これにて無事整えば、これよりは斯波小一郎改め、斯波小一郎宗長と名乗るがよい。
宗長殿、参賀の皆様にご挨拶をなされよ。」
「皆々様に申し上げまする。
烏帽子親に導かれ、滞りなく儀式整えたれば、これより後は松倉様を烏帽子親といたし、其の御名の一字を戴き、斯波小一郎宗長と名乗りまする。
これまでのご慈愛を心より感謝申し上げますとともに、向後ともどうぞ良しなにお引き立て賜りますようお願い申し上げます。」
小一郎は宗長となり、立派に挨拶もなした。
彩華と弥吉は涙が溢れるのを必死でこらえていた。
元服に立ち会った白木屋伝兵衛が祝いの言葉を言った。
「やれ、目出度やな。
お武家様の元服の儀式をこのように我が家で間近に見られようとは思いませんでした。
この伝兵衛、宗長様の御元服、心よりお祝い申し上げます。
後は、お父上の仇討を見事成就なされるばかりにございます。
松倉様がお側に着いておられる限り、それも間違いなく成就いたしましょう。
今日ばかりは、お祝いの席についていただかねばなりません。
宗徳様、午後の稽古の一部を割いていただいて宜しゅうございますな?」
「伝兵衛様のたっての申し入れ、断るわけには参りませぬ。
お世話になります。」
「何を仰せになることやら、私ども方が松倉様や皆様のお世話をさせていただくのはほんの恩返しにございます。
どうぞ、遠慮はなされずに・・・。
それに、松倉様よりは既に過分の金子も頂戴しております。
あっと、これは内緒の話にございましたな。」
松倉は苦笑した。
どうやら、松倉にはまだまだ秘密があるようだ。
少なくとも白木屋にタダで厄介になっているのではない。
過分の金子とはいったいいくらなのか。
四人家族が一月に入用な金子は、つましく過ごせばおよそ一両余り、だがそれでは過分の金子とは言わぬであろう。
白木屋の賄いは大層吟味された食材を使っている。
少なくとも丁稚達に出している食事ではなく、奥向きの食事と同じものが彩華達にも出されているのである。
家賃食費込みでおよそ二両か三両が入用ではないかとは思うが、定かではない。
少なくとも松倉が渡したのは十両以上の金子であることは間違いないのだろう。
しかしながら素浪人がそれほどの金を持ち歩くこと自体が解せないことのように思う。
彩華の胸の内に少し不安が生じた。
白木屋は元々京都の老舗呉服屋であり、それが江戸に支店を出して分家の伝兵衛が店を差配していると聞いたのである。
教えてくれたのは、母屋の奥向き女中であるおしまさんである。
今の女将さんは二人目で、最初の嫁は京都で死に別れたのだそうだ。
伝兵衛は四十七だが、女将さんのお芳は三十二、二人の間には子が二人。
一人は女の子で十歳、もう一人は男の子で七歳になる。
女の子は舞というが、随分と彩華に懐いて、しばしば彩華の元へ来るのだ。
尤も、彩華の方がほとんど日中は庭先で稽古をしているから、舞が近づくのは稽古の休みか昼時の暫しの休憩のときである。
舞も女将さんのお芳も江戸言葉であるが、伝兵衛は時折上方の言葉が出る。
そうして、松倉も極たまにではあるが上方の言葉が出るのである。
どうやら二人の出会いは上方の様である。
彩華は松倉と一日のうちかなり長い時間を過ごしているが、その出自はいまだに知らないのである。
松倉はとても良い人である。
物静かであり、博識である。
剣をとってもおそらくは一角の武芸者であろう。
それらを知るにつけ思慕の想いは深まるが、仇討を控えた我が身ではこれ以上の深入りはできないのが辛い。
そうして今また、松倉の意外な面を知り、あるいは浪人ではないのではないかと言う疑いが首をもたげてきた。
藩侯が顔見知りである程身分の高い人ではないのか?
仮にそうであれば、許嫁などもってのほかのことである。
祝いの席で彩華は松倉のことを考えながら堂々巡りをしていた。
隣に座っている松倉が声を掛けてきた。
「彩華殿、食が進まぬようだが、身体の具合が良くないのかな?」
「あ、いえ、少し考え事をしておりましたので・・・。
ご心配をかけて申し訳ございません。」
「そうか。
なればよいが・・・。」
彩華は無理にもその考えを押し殺して、祝いの膳に箸をつけた。
祝いが終わって半時後、庭先でいつもの稽古が始まった。
但し、いつもと違うのは、彩華と小一郎は自分たちの刀を使うようにと言われたのである。
弥吉だけは、いつもの棒である。
驚いたことに刀が軽かった。
脇差の倍近い長さの刀が、本当に軽いのである。
その刀で、いつものように一振りの斬撃をすると驚いたことに、ビュッと風切り音が聞こえた。
段違いの速さを感じた。
「刀が軽く感じられるだろう。
だが,それに誤魔化されてはいけない。
二人の持つ刀は今まで稽古に使っていた刀のおおよそ倍の長さを持っている。
従って、斬撃を加える場所をこれまでより概ね七寸ほど前にしなければならない。
明日からは、午前中はいつものように例の脇差で修練し、午後は自分の刀で斬撃の稽古をする。
それを五日ほど続け、その後はまた練習方法を変える。
多分それが最終段階になるだろう。
相手の剣の動きを見切る稽古だ。
これは、本来は非常に難しいのだが、これまで修練を続けてきたそなた達ならばできる。
自信を持っていい。」
「塩崎は、この一月では見つからぬ。
何せ、江戸での探索方の差配をしておる佐野十郎左衛門が塩崎を匿っておるでな。
見つけられるはずもない。
こちらは粛々と準備を整えておけばよいのじゃ。」
その日から、白木屋の庭先が彩華達の道場になった。
陽が昇るとすぐに稽古を始め、日が沈むと稽古が終了する。
松岡は、日が落ちてから小一郎に学問を教え始めた。
松岡の教え方は、剣術の稽古と同様に規格外のものであった。
論語は教えるが、一々暗記などはさせない。
だがその教えとすることを説明し、別の話に置き換えた場合、どのようにすべきかを小一郎に尋ねるのである。
藩校である秀修館では四書五経を使って教えるが、ひたすら声を出させて暗記をさせることに重きを置いている。
小一郎も相当に覚えている方であったが、一方でその教えとしていることが何なのかは必ずしも認識していなかった。
松岡はそれを理路整然と説明し、世情に置き換えた時に何が役立ち、また役立たないかを教えているのである。
稽古が終わってからそのような授業を行っていると聞いて、三日目には彩華もその弟子に加えてもらった。
白木屋で生活を初めて、二十日ほど過ぎたある日、その授業の合間に松倉が言った。
「小一郎殿も数えで十五、彩華殿より明後日が生まれた日と聞いた。
そろそろ元服をしても良いのではないかと思う。
彩華殿、小一郎殿、弥吉殿さえ良ければ然るべき人を立てて、明後日の大安の日に元服の儀を執り行おうと思うがどうかな?」
授業には末席に弥吉も控えていたのである。
小一郎は目を輝かせて言った。
「それは是非も無く・・。
但し、烏帽子親には是非とも松倉様になっていただきとうございます。」
「小一郎殿、元服の儀式は相応の身分有る者が烏帽子親になってこそ意味があるのではないかな。
某はただの素浪人じゃ。」
「松倉様、私は松倉様をわが師と仰いでおります。
剣の師、学問の師たる松倉様に、烏帽子親になっていただけるなれば、この身に過ぎたることはあっても決して不足はありませぬ。
小一郎、伏してお願い申し上げます。」
小一郎はそう言って平伏した。
松倉は苦笑して、弥吉と彩華に目を向けた。
すると二人も同じようにその場で平伏したのである。
「やれ、困った。
自ら墓穴を掘ったようじゃな。
致し方ない。
烏帽子親になってみよう。」
その二日後、白木屋の奥座敷に髪結いが招かれ、白木屋の伝兵衛夫妻なども見守る中、小一郎の前髪がおろされ、髷が結われた。
その頭に松倉が烏帽子を載せて、小一郎の前に正座した。
「元服、戴冠の儀これにて無事整えば、これよりは斯波小一郎改め、斯波小一郎宗長と名乗るがよい。
宗長殿、参賀の皆様にご挨拶をなされよ。」
「皆々様に申し上げまする。
烏帽子親に導かれ、滞りなく儀式整えたれば、これより後は松倉様を烏帽子親といたし、其の御名の一字を戴き、斯波小一郎宗長と名乗りまする。
これまでのご慈愛を心より感謝申し上げますとともに、向後ともどうぞ良しなにお引き立て賜りますようお願い申し上げます。」
小一郎は宗長となり、立派に挨拶もなした。
彩華と弥吉は涙が溢れるのを必死でこらえていた。
元服に立ち会った白木屋伝兵衛が祝いの言葉を言った。
「やれ、目出度やな。
お武家様の元服の儀式をこのように我が家で間近に見られようとは思いませんでした。
この伝兵衛、宗長様の御元服、心よりお祝い申し上げます。
後は、お父上の仇討を見事成就なされるばかりにございます。
松倉様がお側に着いておられる限り、それも間違いなく成就いたしましょう。
今日ばかりは、お祝いの席についていただかねばなりません。
宗徳様、午後の稽古の一部を割いていただいて宜しゅうございますな?」
「伝兵衛様のたっての申し入れ、断るわけには参りませぬ。
お世話になります。」
「何を仰せになることやら、私ども方が松倉様や皆様のお世話をさせていただくのはほんの恩返しにございます。
どうぞ、遠慮はなされずに・・・。
それに、松倉様よりは既に過分の金子も頂戴しております。
あっと、これは内緒の話にございましたな。」
松倉は苦笑した。
どうやら、松倉にはまだまだ秘密があるようだ。
少なくとも白木屋にタダで厄介になっているのではない。
過分の金子とはいったいいくらなのか。
四人家族が一月に入用な金子は、つましく過ごせばおよそ一両余り、だがそれでは過分の金子とは言わぬであろう。
白木屋の賄いは大層吟味された食材を使っている。
少なくとも丁稚達に出している食事ではなく、奥向きの食事と同じものが彩華達にも出されているのである。
家賃食費込みでおよそ二両か三両が入用ではないかとは思うが、定かではない。
少なくとも松倉が渡したのは十両以上の金子であることは間違いないのだろう。
しかしながら素浪人がそれほどの金を持ち歩くこと自体が解せないことのように思う。
彩華の胸の内に少し不安が生じた。
白木屋は元々京都の老舗呉服屋であり、それが江戸に支店を出して分家の伝兵衛が店を差配していると聞いたのである。
教えてくれたのは、母屋の奥向き女中であるおしまさんである。
今の女将さんは二人目で、最初の嫁は京都で死に別れたのだそうだ。
伝兵衛は四十七だが、女将さんのお芳は三十二、二人の間には子が二人。
一人は女の子で十歳、もう一人は男の子で七歳になる。
女の子は舞というが、随分と彩華に懐いて、しばしば彩華の元へ来るのだ。
尤も、彩華の方がほとんど日中は庭先で稽古をしているから、舞が近づくのは稽古の休みか昼時の暫しの休憩のときである。
舞も女将さんのお芳も江戸言葉であるが、伝兵衛は時折上方の言葉が出る。
そうして、松倉も極たまにではあるが上方の言葉が出るのである。
どうやら二人の出会いは上方の様である。
彩華は松倉と一日のうちかなり長い時間を過ごしているが、その出自はいまだに知らないのである。
松倉はとても良い人である。
物静かであり、博識である。
剣をとってもおそらくは一角の武芸者であろう。
それらを知るにつけ思慕の想いは深まるが、仇討を控えた我が身ではこれ以上の深入りはできないのが辛い。
そうして今また、松倉の意外な面を知り、あるいは浪人ではないのではないかと言う疑いが首をもたげてきた。
藩侯が顔見知りである程身分の高い人ではないのか?
仮にそうであれば、許嫁などもってのほかのことである。
祝いの席で彩華は松倉のことを考えながら堂々巡りをしていた。
隣に座っている松倉が声を掛けてきた。
「彩華殿、食が進まぬようだが、身体の具合が良くないのかな?」
「あ、いえ、少し考え事をしておりましたので・・・。
ご心配をかけて申し訳ございません。」
「そうか。
なればよいが・・・。」
彩華は無理にもその考えを押し殺して、祝いの膳に箸をつけた。
祝いが終わって半時後、庭先でいつもの稽古が始まった。
但し、いつもと違うのは、彩華と小一郎は自分たちの刀を使うようにと言われたのである。
弥吉だけは、いつもの棒である。
驚いたことに刀が軽かった。
脇差の倍近い長さの刀が、本当に軽いのである。
その刀で、いつものように一振りの斬撃をすると驚いたことに、ビュッと風切り音が聞こえた。
段違いの速さを感じた。
「刀が軽く感じられるだろう。
だが,それに誤魔化されてはいけない。
二人の持つ刀は今まで稽古に使っていた刀のおおよそ倍の長さを持っている。
従って、斬撃を加える場所をこれまでより概ね七寸ほど前にしなければならない。
明日からは、午前中はいつものように例の脇差で修練し、午後は自分の刀で斬撃の稽古をする。
それを五日ほど続け、その後はまた練習方法を変える。
多分それが最終段階になるだろう。
相手の剣の動きを見切る稽古だ。
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自信を持っていい。」
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