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第十一章 ファンデンダルク侯爵
11ー8 刺客の動き?
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ガランディア帝国にも動きがあった。
当然δ型ゴーレムにより、その後の監視も怠ってはいないんだが、バルマラードが壊滅した際に、バルマラード海軍統括指揮所に籠っていた海軍の幹部たちが全滅したことで、せっかく特使でやってきたシェンツ准将には彼らの秘密会合の模様が俺に筒抜けであることを教えてあげたのだが、ある意味で無駄になった。
シェンツ准将も、その報告を受けたレーリッヒ・ズーゲン提督も、その事実を帝都に報告しないまま戦死した。
従って、ガランディア帝国は、俺に隠し事ができない可能性があるということを未だに知らないのだ。
彼らも、かつてオルテンシュタイン帝国皇帝が突然死んだ事実については知っていた。
しかも警備が厳重なはずの皇宮内で何者かに害されて亡くなったという秘密情報も入手していたのだった。
オルテンシュタイン皇帝の暗殺については、誰が首謀者なのかは不明であったが、当時皇帝はジェスタ国に対して何やら扇動の画策をしていたこと、皇帝亡き後に帝位を継いだ新皇帝は理由不明のままジェスタ国に対する関与を一切断ち切ったことがわかっており、皇帝の死に関してジェスタ国の諜報部隊が何らかの形で関与していた可能性もあるのではないかという極めて曖昧な情報も上がっていたのだった。
同じ大陸内であればそうした諜報組織の介在する可能性もあるが、ジェスタ国の交易船がファランド北大陸に現れ始めたのはわずかに半年内外のことであり、ガランティア帝国内にジェスタ国の諜報組織の浸透は無いとガランディア帝国幹部は判断していた。
その上で、皇帝の内々の意向を受け、宰相ツァイネルは宰相補佐をして、ファランド北大陸では名の知れた闇組織オーレブレオンにつなぎをつけ、ジェスタ国のファンデンダルク侯爵の暗殺を依頼したのだった。
マルバラード壊滅の元凶は確かに俺だし、拡声器で明確にわかるように公言もしている。
まぁ、権力に胡坐をかいている連中のやり方、考え方というのは大体推測できるよな。
彼らは隣の大陸の一小国に過ぎないジェスタ王国が大国である自国に対して国交断絶を言い放ったことにかなりご立腹なのだ。
おまけに15隻もの海軍の主力艦を沈められ、帝都の海の玄関口でもあるマルバラードがほとんど灰燼に帰させられたことは、彼らの誇りが痛く傷つけられたのだ。
更には、帝都の象徴でもあった皇宮内の大尖塔が破壊されたことは、大いなる屈辱でもあったのだろう。
◇◇◇◇
皇帝からは遺憾の意を表明された上に、後をよしなとに頼まれた以上、このまま放置するわけには行かないと宰相は判断した。
ファランド北大陸で覇を唱えるガランディア帝国が、高々小国の将軍如きに悪し様に罵られ、一方的に断交されるようなことなどあってはならないことなのだ。
一方で、バルマラードに残留していた戦列艦群が一方的に惨敗した以上、何の対策も無いままに海軍を持ってジェスタ国へ侵攻するのは極めて危険な博打である。
従って、宰相は搦手から報復することを選択したのだった。
南部連合国と紛争を継続している最中に他大陸への侵攻の可能性などそもそも有りようも無いが、件の元凶がファンデンダルク侯爵だというならばその者に思い知らせてやればよい。
宰相は大枚の金を支払って闇組織に一年以内での暗殺を請け負わせることにしたのだった。
宰相補佐筆頭のアーレンシュタインは、帝都の一角で闇組織オーレブレオンの幹部であるダミルカスと会っていた。
これまで十指に余るほどダミルカスとは接しており、冗談を言い合うほどの知己でもある。
そのいずれも表には出せない用件を依頼するものであり、そのほとんどが暗殺の依頼であった。
オーレブレオンに情報収集を依頼することはほとんどない。
そのようなことはガランディア帝国の諜報組織が行うからだ。
オーレブレオンに依頼するのはそのほとんどが汚れ仕事であり、外部に漏れてはならない仕事なのだ。
「久しいのぉ、南部連合の一角でもあるデルマルケルの仕事以来ではないか?」
「おう、あの節は思惑通りデルマルケルの魔法師団長を始末してくれたのだったな。
刺客の手になるものとの疑いを払拭できなかったのは残念だったが、いつもながら良い仕事をしてくれたと我が上司もお喜びだった。」
「うん、で、此度の用向きは?」
「つまらぬ仕事ではあるのだが、少々手間暇がかかる仕事だ。
アルバンド大陸の小国でジェスタ王国というのがあるんだが、承知しているか?」
「ははぁ、例のバルマラード壊滅の一件か?
我らも噂話程度の情報は知っている。
何でもジェスタ国の大型交易船を無理やり拿捕したところ、ジェスタ国海軍が乗り出してきて、バルマラードに残っていた15隻の戦列艦をわずかの間に沈めた三隻の軍艦があったようだな。
その軍艦がジェスタ国海軍所属で指揮官がファンデンダルク侯爵でジェスタ国海軍元帥だとか・・・。」
「そこまで知っているなら話は早い。
依頼は、アルバンド大陸まで出向き、ジェスタ国のファンデンダルク侯爵を惨殺してほしいということだ。」
「ほぉ、いつもなら暗殺がばれないようにしてほしいという条件が付くのに、惨殺というのは、今回はそれがばれても良いのか?」
「無論、ガランディア帝国が介在していることは絶対に秘匿してもらわねば困る。
だが遠く離れた我が帝国から刺客が送られたとは一般的には悟られまい。
侯爵ともなれば、仲間内の貴族からも周囲の市井の関係者からもなにがしかの恨みを買っている筈、それらの仕業に見せかければ良かろう。
但し、アルバンド大陸はいかにも遠い。
じゃから期限の定めは無いが、できれば一年以内に始末してほしいのだ。」
「ふむ、ファンデンダルク侯爵の動向を探らねばならんが・・・。
此度は軍艦に乗ってはるばるバルマラードまでやって来たのであろう?
しかもガランディア帝国の交易船なればアルバンド大陸西端ですら半月以上の公開が必要と聞いている。
それが拿捕して数日後にジェスタ国海軍が現れたということは、奴らの軍艦が西エオール海に配置されているということであり、なおかつファンデンダルク侯爵は当時軍艦に乗っていたということでは無いのか?
仮にその侯爵が軍艦を住居にしているならば、流石に難しいぞ。
下船した時を狙わねば洋上の軍艦に忍び込むわけには行かぬ。」
「その心配はほとんど無いだろう。
問題の人物はカラミガランダという侯爵領に屋敷を構える人物であり、ハーレムのように複数の嫁を抱えているらしいから、少なくとも定期的に領都には戻るはずだ。
但し、飛び地的に複数の領地を持っているらしくてな。
シタデレンスタッドとウィルマリティモという大きな城塞都市を擁している様だ。
儂も詳細は知らぬが、ウィルマリティモとは海上にある要塞で島ごと要塞のような街らしい。
そこに商港と軍港があるらしいが詳しい話は分からぬ。」
「まぁ、いずれにしろ計画を立てるのに情報収集が先に必要だが、生憎とアルバンド大陸に我らのとっかかりは無いからな。
アルバンドに数人渡航させることを考えねばならぬが・・・。
確か、アルバンド大陸への就航隻数は少ない筈だったな?」
「その通りだ。
ガランディア帝国の交易船で4隻、アルバンド随一の大国であるオルテンシュタイン帝国の交易船が二隻就航しているが、いずれもオルテンシュタイン帝国とガランディア帝国との間を往復しているだけじゃ。
多少周期は異なるが、それぞれの船が一年に二回ほど往復しているだけと聞いておる。」
「フム、多くて一月に一隻か・・・。
しかもアルバンド大陸に辿り着くだけで半月以上もかかるとは厄介だな。
で、ジェスタ国というのはアルバンド大陸の何処にあるんだ。
まさかアルバンド大陸の東端などというわけではあるまいな?」
「ジェスタ国は、アルバンド大陸の中ほどにある。
元々は海岸に面していない内陸国だったようだが、魔境を切り開いて海までの道をつけ、海上に港を造ったという噂だ。
概ね、オルテンシュタインの東にある国だ。
オルテンシュタインとは山脈を隔てて国境を接している様だが、この山脈が高く険しくてな。
分水嶺で国境を接していても、その部分での交流はできないらしい。
ジェスタ国とオルテンシュタインとの交易は、かつては、山脈を迂回する内陸の交易路で二か国若しくは三か国を経由する街道しかなかったようだ。
今現在は、ウィルマリティモからオルテンシュタインへの航路もできているらしく海上交易が盛んだと聞いている。」
「ふむ、アルバンドに人を送り込むのに、まず一月、情報収集に一月、ジェスタ国へ潜入するのに一月か二月・・・。
おい、物凄く面倒じゃねぇか?」
「だから最初に言っただろうが。・
少々手間暇がかかる仕事だと・・・。
その代わりその手間暇に合うよう報酬は弾む。
黒金貨5枚を前金で払う。
見事完遂できれば後金で黒金貨5枚を払う。」
「ほう、黒金貨十枚か。
倹約家の宰相にしては、随分と張り込んだものだなぁ。」
「それだけ事の成就に期待しているということでもある。
この依頼、受けてくれ様な?」
「あぁ、勿論だ。
相手が軍艦に閉じこもっていない限りは、オーレブレオンの名にかけてやってみせるぜ。」
宰相補佐筆頭のアーレンシュタインから内密の依頼を請け負った闇組織の幹部ダミルカスは至って安易に考えていた。
このファランド北大陸は言うに及ばず、陸続きの南大陸でも、小国・大国を問わず貴族の暗殺ならばこれまで何度もこなしている。
残念ながら大型船をチャーターできるほどの金は使えないし、小型船では気候の良い時期でも西エオール海を横断するのは至難の業だ。
従って、方法としてはガランティア帝国の商会にかけあうか、潜り込んで、アルバンド大陸まで運んで貰うしかない。
ダミルカスは取り敢えず先乗り隊二名をアルバンド大陸のオルテンシュタインに派遣、仮のアジトを設けて、後発に更に二名の派遣を考えていた。
その仮のアジトを整備して、アルバンド大陸にも組織を造っても良いとは考えていた。
但し、どこにでも闇組織は存在するから、そことの勢力争いで無駄な抗争は避けねばならない。
その辺はこれまで培ったダミルカス達幹部の腕の見せ所でもある。
敵対勢力に気づかれないうちに侵食する。
これが一番の方法なのだ。
◇◇◇◇
さてさて、性懲りも無く闇組織が動き始めるようだが、芽の内に潰すか、それともある程度金を使わせてから潰すか?
どちらが良いのかな?
当然δ型ゴーレムにより、その後の監視も怠ってはいないんだが、バルマラードが壊滅した際に、バルマラード海軍統括指揮所に籠っていた海軍の幹部たちが全滅したことで、せっかく特使でやってきたシェンツ准将には彼らの秘密会合の模様が俺に筒抜けであることを教えてあげたのだが、ある意味で無駄になった。
シェンツ准将も、その報告を受けたレーリッヒ・ズーゲン提督も、その事実を帝都に報告しないまま戦死した。
従って、ガランディア帝国は、俺に隠し事ができない可能性があるということを未だに知らないのだ。
彼らも、かつてオルテンシュタイン帝国皇帝が突然死んだ事実については知っていた。
しかも警備が厳重なはずの皇宮内で何者かに害されて亡くなったという秘密情報も入手していたのだった。
オルテンシュタイン皇帝の暗殺については、誰が首謀者なのかは不明であったが、当時皇帝はジェスタ国に対して何やら扇動の画策をしていたこと、皇帝亡き後に帝位を継いだ新皇帝は理由不明のままジェスタ国に対する関与を一切断ち切ったことがわかっており、皇帝の死に関してジェスタ国の諜報部隊が何らかの形で関与していた可能性もあるのではないかという極めて曖昧な情報も上がっていたのだった。
同じ大陸内であればそうした諜報組織の介在する可能性もあるが、ジェスタ国の交易船がファランド北大陸に現れ始めたのはわずかに半年内外のことであり、ガランティア帝国内にジェスタ国の諜報組織の浸透は無いとガランディア帝国幹部は判断していた。
その上で、皇帝の内々の意向を受け、宰相ツァイネルは宰相補佐をして、ファランド北大陸では名の知れた闇組織オーレブレオンにつなぎをつけ、ジェスタ国のファンデンダルク侯爵の暗殺を依頼したのだった。
マルバラード壊滅の元凶は確かに俺だし、拡声器で明確にわかるように公言もしている。
まぁ、権力に胡坐をかいている連中のやり方、考え方というのは大体推測できるよな。
彼らは隣の大陸の一小国に過ぎないジェスタ王国が大国である自国に対して国交断絶を言い放ったことにかなりご立腹なのだ。
おまけに15隻もの海軍の主力艦を沈められ、帝都の海の玄関口でもあるマルバラードがほとんど灰燼に帰させられたことは、彼らの誇りが痛く傷つけられたのだ。
更には、帝都の象徴でもあった皇宮内の大尖塔が破壊されたことは、大いなる屈辱でもあったのだろう。
◇◇◇◇
皇帝からは遺憾の意を表明された上に、後をよしなとに頼まれた以上、このまま放置するわけには行かないと宰相は判断した。
ファランド北大陸で覇を唱えるガランディア帝国が、高々小国の将軍如きに悪し様に罵られ、一方的に断交されるようなことなどあってはならないことなのだ。
一方で、バルマラードに残留していた戦列艦群が一方的に惨敗した以上、何の対策も無いままに海軍を持ってジェスタ国へ侵攻するのは極めて危険な博打である。
従って、宰相は搦手から報復することを選択したのだった。
南部連合国と紛争を継続している最中に他大陸への侵攻の可能性などそもそも有りようも無いが、件の元凶がファンデンダルク侯爵だというならばその者に思い知らせてやればよい。
宰相は大枚の金を支払って闇組織に一年以内での暗殺を請け負わせることにしたのだった。
宰相補佐筆頭のアーレンシュタインは、帝都の一角で闇組織オーレブレオンの幹部であるダミルカスと会っていた。
これまで十指に余るほどダミルカスとは接しており、冗談を言い合うほどの知己でもある。
そのいずれも表には出せない用件を依頼するものであり、そのほとんどが暗殺の依頼であった。
オーレブレオンに情報収集を依頼することはほとんどない。
そのようなことはガランディア帝国の諜報組織が行うからだ。
オーレブレオンに依頼するのはそのほとんどが汚れ仕事であり、外部に漏れてはならない仕事なのだ。
「久しいのぉ、南部連合の一角でもあるデルマルケルの仕事以来ではないか?」
「おう、あの節は思惑通りデルマルケルの魔法師団長を始末してくれたのだったな。
刺客の手になるものとの疑いを払拭できなかったのは残念だったが、いつもながら良い仕事をしてくれたと我が上司もお喜びだった。」
「うん、で、此度の用向きは?」
「つまらぬ仕事ではあるのだが、少々手間暇がかかる仕事だ。
アルバンド大陸の小国でジェスタ王国というのがあるんだが、承知しているか?」
「ははぁ、例のバルマラード壊滅の一件か?
我らも噂話程度の情報は知っている。
何でもジェスタ国の大型交易船を無理やり拿捕したところ、ジェスタ国海軍が乗り出してきて、バルマラードに残っていた15隻の戦列艦をわずかの間に沈めた三隻の軍艦があったようだな。
その軍艦がジェスタ国海軍所属で指揮官がファンデンダルク侯爵でジェスタ国海軍元帥だとか・・・。」
「そこまで知っているなら話は早い。
依頼は、アルバンド大陸まで出向き、ジェスタ国のファンデンダルク侯爵を惨殺してほしいということだ。」
「ほぉ、いつもなら暗殺がばれないようにしてほしいという条件が付くのに、惨殺というのは、今回はそれがばれても良いのか?」
「無論、ガランディア帝国が介在していることは絶対に秘匿してもらわねば困る。
だが遠く離れた我が帝国から刺客が送られたとは一般的には悟られまい。
侯爵ともなれば、仲間内の貴族からも周囲の市井の関係者からもなにがしかの恨みを買っている筈、それらの仕業に見せかければ良かろう。
但し、アルバンド大陸はいかにも遠い。
じゃから期限の定めは無いが、できれば一年以内に始末してほしいのだ。」
「ふむ、ファンデンダルク侯爵の動向を探らねばならんが・・・。
此度は軍艦に乗ってはるばるバルマラードまでやって来たのであろう?
しかもガランディア帝国の交易船なればアルバンド大陸西端ですら半月以上の公開が必要と聞いている。
それが拿捕して数日後にジェスタ国海軍が現れたということは、奴らの軍艦が西エオール海に配置されているということであり、なおかつファンデンダルク侯爵は当時軍艦に乗っていたということでは無いのか?
仮にその侯爵が軍艦を住居にしているならば、流石に難しいぞ。
下船した時を狙わねば洋上の軍艦に忍び込むわけには行かぬ。」
「その心配はほとんど無いだろう。
問題の人物はカラミガランダという侯爵領に屋敷を構える人物であり、ハーレムのように複数の嫁を抱えているらしいから、少なくとも定期的に領都には戻るはずだ。
但し、飛び地的に複数の領地を持っているらしくてな。
シタデレンスタッドとウィルマリティモという大きな城塞都市を擁している様だ。
儂も詳細は知らぬが、ウィルマリティモとは海上にある要塞で島ごと要塞のような街らしい。
そこに商港と軍港があるらしいが詳しい話は分からぬ。」
「まぁ、いずれにしろ計画を立てるのに情報収集が先に必要だが、生憎とアルバンド大陸に我らのとっかかりは無いからな。
アルバンドに数人渡航させることを考えねばならぬが・・・。
確か、アルバンド大陸への就航隻数は少ない筈だったな?」
「その通りだ。
ガランディア帝国の交易船で4隻、アルバンド随一の大国であるオルテンシュタイン帝国の交易船が二隻就航しているが、いずれもオルテンシュタイン帝国とガランディア帝国との間を往復しているだけじゃ。
多少周期は異なるが、それぞれの船が一年に二回ほど往復しているだけと聞いておる。」
「フム、多くて一月に一隻か・・・。
しかもアルバンド大陸に辿り着くだけで半月以上もかかるとは厄介だな。
で、ジェスタ国というのはアルバンド大陸の何処にあるんだ。
まさかアルバンド大陸の東端などというわけではあるまいな?」
「ジェスタ国は、アルバンド大陸の中ほどにある。
元々は海岸に面していない内陸国だったようだが、魔境を切り開いて海までの道をつけ、海上に港を造ったという噂だ。
概ね、オルテンシュタインの東にある国だ。
オルテンシュタインとは山脈を隔てて国境を接している様だが、この山脈が高く険しくてな。
分水嶺で国境を接していても、その部分での交流はできないらしい。
ジェスタ国とオルテンシュタインとの交易は、かつては、山脈を迂回する内陸の交易路で二か国若しくは三か国を経由する街道しかなかったようだ。
今現在は、ウィルマリティモからオルテンシュタインへの航路もできているらしく海上交易が盛んだと聞いている。」
「ふむ、アルバンドに人を送り込むのに、まず一月、情報収集に一月、ジェスタ国へ潜入するのに一月か二月・・・。
おい、物凄く面倒じゃねぇか?」
「だから最初に言っただろうが。・
少々手間暇がかかる仕事だと・・・。
その代わりその手間暇に合うよう報酬は弾む。
黒金貨5枚を前金で払う。
見事完遂できれば後金で黒金貨5枚を払う。」
「ほう、黒金貨十枚か。
倹約家の宰相にしては、随分と張り込んだものだなぁ。」
「それだけ事の成就に期待しているということでもある。
この依頼、受けてくれ様な?」
「あぁ、勿論だ。
相手が軍艦に閉じこもっていない限りは、オーレブレオンの名にかけてやってみせるぜ。」
宰相補佐筆頭のアーレンシュタインから内密の依頼を請け負った闇組織の幹部ダミルカスは至って安易に考えていた。
このファランド北大陸は言うに及ばず、陸続きの南大陸でも、小国・大国を問わず貴族の暗殺ならばこれまで何度もこなしている。
残念ながら大型船をチャーターできるほどの金は使えないし、小型船では気候の良い時期でも西エオール海を横断するのは至難の業だ。
従って、方法としてはガランティア帝国の商会にかけあうか、潜り込んで、アルバンド大陸まで運んで貰うしかない。
ダミルカスは取り敢えず先乗り隊二名をアルバンド大陸のオルテンシュタインに派遣、仮のアジトを設けて、後発に更に二名の派遣を考えていた。
その仮のアジトを整備して、アルバンド大陸にも組織を造っても良いとは考えていた。
但し、どこにでも闇組織は存在するから、そことの勢力争いで無駄な抗争は避けねばならない。
その辺はこれまで培ったダミルカス達幹部の腕の見せ所でもある。
敵対勢力に気づかれないうちに侵食する。
これが一番の方法なのだ。
◇◇◇◇
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