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第十章 嫁sの実家

10ー13 閑話 地球での過ごし方 その三

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 私はジェームス・キンドリー。
 米国西海岸でも屈指の資産家であるヘンリー・クロシェール様の執事を務めさせていただいております。

 主人であるヘンリー様は、お若いにもかかわらず人の心の機微というものを良くお分かりのようです。
 お屋敷は、L.A.でも屈指の豪邸ですけれど、実は隣地にもう一軒お屋敷を持っていらっしゃるのです。

 因みにそちらを所有していることは公的に伏せていらっしゃいます。
 別に犯罪に使っておられるわけではございませんが、多少後ろめたいことに使っておられるのは確かでしょうな。

 ヘンリー様は、お若いのにすごくになるのです。
 相手の女性は、ヘンリー様よりも若い方もいらっしゃるのですが、どちらかというとヘンリー様よりも年上の方が多いかもしれません。

 そんな方達の中で、ヘンリー様が良かれと思った女性については家に招いたりもしているのです。
 そんな場合でも相手が有名な方の場合は、公表されているお屋敷ではなく隣地のお屋敷に招くのです。

 そうした場合、かなりの数の女性はお泊りになって行かれますね。
 無論、ヘンリー様との同衾どうきんを求められてのことなのです。

 ヘンリー様は、危うい女性には手も付けられません。
 一体どのような選定眼をお持ちなのかわかりませんが、火遊びと承知して合意のもとでセックスを望まれる女性のみを相手にされているご様子なのです。

 面白いことに、そうした女性とは結婚にまで至るようなことにはならないようですね。
 往々にしてそのような関係は破綻し、下手をすると血を見るような愛憎劇にまで発展することはこのL.A.でも多々あることを知っています。

 バトラーは、バトラー同士の情報交換の場がございますから、表に出ない情報を少なからず知っているのでございます。
 私の見るところでは、そうした関係を望まれた方は間違いなく火遊びと承知している単なる浮気相手ですので、本気にはならないで粛々しゅくしゅくとお別れになります。

 その回数が多くて五回。
 これまでヘンリー様がベッドを共にした女性の同衾の最大回数でございます。

 つまりは五回の逢瀬おうせを限度に火遊びはしないということでございましょう。
 恐らくはヘンリー様が事前に口頭での契約をされてそのような関係になっているのかと推測されます。

 別れの日、女性の目には未だ名残なごり惜しさをとどめておりますけれど、それ以後ヘンリー様の二つの家に同衾のために来られることはありません。
 とは言いながら、町でお会いしたならご挨拶を交わすような親しい間柄を間近に見ると、実に不思議な関係なのでございます。

 女性とはもっと執着心が強い生き物と承知していたのですが、あるいは私の勘違いだったのかもしれません。
 ところで、そんな中で肉体的に結ばれないまま、かなりヘンリー様に迫っている方がお二人いらっしゃいます。

 無論のことながら、ヘンリー様の資産を狙って意図的に近づいて来るような女性がお屋敷に招かれることはありません。
 本当に旦那様の選定眼は大したものでございます。

 で、先ほど申したお二人の女性は、いずれも若く、米国におけるセックスに奔放な最近の風潮にも関わらず、多分処女のままの方とお見受けしております。
 旦那様の素振りを見ていると、別に女性を焦らしているわけではないのですが、この二人の女性と親密な関係になろうとはしておられないようなのです。

 旦那様とセックスをされた他の女性で処女の方もおられましたから、別に処女の女性を嫌ってはいないようですが、ある意味で深みにはまるのを避けていらっしゃるようではあります。
 大衆週刊誌で騒がれるほど旦那様の女性遍歴は凄まじいものでございます。

 すぐそばに仕える私とメイドのブレンダのみが知っているヘンリー様の秘密でもございます。
 多いときは日替わりで女性と同衾されていらっしゃいますが、翌日に全く疲れを残されていないようですから、ある意味で絶倫男でもいらっしゃるようです。

 相手の女性は、往々にして午前中はそのままベッドの中ということがしばしばあります。
 女性が出入りするのはもちろん隣地の敷地でございますので、いくら旦那様の屋敷を見張っていても密会の証拠は出ません。

 因みに隣地のお屋敷は旦那様とは全く異なる別人の名義になっているようでございます。
 どうしてそのようなことができるのかは不明でございますが、別人名義の屋敷を維持し、固定資産税や電気・ガスなどの公共料金を払っているのも実質ヘンリー様なのでございます。

 さてさて、仮にヘンリー様が伴侶を得られるとしたならどのような方なのか非常に興味が沸くところでございます。
 恐らくは既に同衾された方の中にはおられないのだと思います。

 もしかすると、未だ大学生でいらっしゃるジュリア・デッカー様、それに歌手で女優であるメリンダ・リブリー様のお二人の中から選ばれるかもしれません。
 私の見るところ、お二人とも欲の無い目でヘンリー様を見ていらっしゃる方ですし、何よりヘンリー様に夢中なのです。

 それに何より賢く、気立ての良い方ですから、どちらが奥様になられても何ら心配はいらないでしょう。
 ジュリア様が21歳、メリンダ様が19歳。

 いずれも結婚をするには少し早いのでしょうね。
 逢瀬の機会に関して言えば、メリンダ様よりもジュリア様の方が時間的には有利でしょうか。

 ジュリア様の場合一月に一度程度の逢瀬がありますけれど、メリンダ様の場合は人気商売でございますので多くても四半期に一度か二度ぐらいでしょうか。
 そうしてメリンダ様の場合は、人目を避けた逢瀬になるのはやむを得ないところでございます。

 何でも所属事務所からは男性とのお付き合いを禁止されているのだとか・・・。
 そんな話をあっけらかんとお話されながらヘンリー様の元に子犬のようにすり寄っていらっしゃるとても可愛い方なのです。

 私の目からは、お二人が最もヘンリー様の伴侶に近い位置にいらっしゃるような気がしますけれど、あるいは他にダークホースがいらっしゃるかもしれません。
 ヘンリー様はフランスのニースに別荘を抱えておいでです。

 フランスのバカンスなどで人が集まる機会を避けて、四半期に一度はニースに一週間ほど滞在されるのが恒例のスケジュールになっており、その際には必ず日本のネオ東京にも二日ほど滞在されるのです。
 ヘンリー様曰く、ビジネスではなくリラクゼーションのための休暇なのだそうでございます。

 ヘンリー様の日常は、一日に精々二時間ほどパソコンルームに籠るだけのお仕事でございます。
 残りの時間は、読書、音楽鑑賞、立体動画鑑賞、散歩、運動と比較的ゆったりとした生活で、どこにも働いているという雰囲気は感じさせないものがございます。

 そんな合間に美女と語り合い、火遊びをする時間を設けていらっしゃるわけでございます。
 ヘンリー様の時間管理はとても簡単でございます。

 起床は午前6時、就寝は原則午後11時でございますが、火遊びなどが入ると就寝がいつなのかはわかりません。
 それでも翌日にはきっちりと6時には起床されますので、そのタフネスさは本当に目を見張るほどでございます。

 朝食は午前7時、午前8時から午前10時までが、所謂ワークタイムでございます。
 正午から一時間がランチタイム、その後、邸のあるホーリーウッド・ランド地区の散歩を良くされます。

 雨が降ったり、嵐になったりする場合は、室内プールで泳いでいらっしゃったり、地下のトレーニングジムで運動をされたりしていらっしゃいます。
 私の見るところヘンリー様は一流のアスリートでございます。

 何というかいにしえの騎士のような風格を持った人物なのです。
 騎士と言ってもレイピアやエペなど細身の剣を携える騎士ではなく、アーサー王の円卓の騎士に出てくるような大剣を振り回す騎士のイメージなのです。

 実際問題としてヘンリー様は身長が180センチに満たず、スレンダーで左程体格に恵まれているわけではございませんが、私の知り合いのボディガードを務める大男を一瞬で倒せるようにさえ感じてしまうのです。
 但し、何故そう思うのか自分でもよくわかりませんが、間違いなくヘンリー様はL.A.にも多数存在する破落戸ごろつき共が複数でかかってきても切り抜けられる強さをお持ちだと思います。

 余分な話をしてしまいましたが、ヘンリー様の日課に戻りましょう。
 夕食は、普段は午後7時となっていますが、お客様がある場合は遅い時間になることもしばしばございます。

 一月に一度ほどは邸でパーティを開くことがあり、ヘンリー様の知人・友人が招かれますが、毎度同じ方が招かれるわけではございません。
 むしろ、毎回新たな知人・友人が増えているようでございます。

 他の時間については、特段の決まりはございません。
 居間、書斎及びワークルームなどにはコーヒーサーバーがあり、いつでも自由に飲めるようになっておりますので、お客様がいらっしゃる以外は、お茶のサーバーをしなくともよいことになっています。

 余ったコーヒーは、再生処理機なるものに捨てているのですが、実はそこからコーヒーモドキが生まれます。
 驚いたことにこれが大元のコーヒーに勝るとも劣らない味のコーヒー粉末を生み出すのです。

 ただし、この装置は秘密にされております。
 何でもヘンリー様の手作りの品であり、他の者には絶対真似できない装置なのだとか。

 仮にこれが対外的に知られると、ヘンリー様の元に製造依頼が舞い込む恐れがございまして、そうなるとヘンリー様の生活にゆとりが無くなることにつながるので、絶対に避けたいことなのだそうです。
 確かにヘンリー様しか製造ができないとなると、依頼が殺到し、ヘンリー様がそれに応じると起きている時間は全てそれに費やされそうです。

 それは経済効率から言っても好ましいことではございません。
 仮にこの再生処理機を二百ドルで販売すると仮定しても、ヘンリー様が懸命に作っても一日に10台から15台ほどでございましょう。

 毎日せっせと作っても一月に300台から450台。
 全額収入になるとしても月に9万ドルから13万ドル程度の収入では、最低でも年に数億ドルを稼ぐヘンリー様にとっては小遣いにもならない額でございます。

 そんなことに時間を取られるぐらいなら、屋敷でぐうたらしていた方がましというヘンリー様の口癖はまことに理解できるお話でございます。
 斯様にヘンリー様は色々と有り余る才能をお持ちの方の様で、本当に不思議な方でございます。

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 8月7日及び8月27日、一部の字句修正を行いました。
  
  By サクラ近衛将監

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