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第十章 嫁sの実家

10ー12 閑話 地球での過ごし方 その二

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 私は、ジュリア・デッカー、21歳です。
 UCLAの経済学部三回生です。

 たまたまお父様がCEOをしているDFGM社の創立記念パーティがロサンゼルス支社でもあって、パーティに出席する名士とは将来的にも顔をつないでおくとよいと言われて参加したパーティでしたが、気になる男性と出会ってしまいました。
 お名前は、ヘンリー・クロシェールさん、24歳だから私より3つ年上ですね。

 彼の名前と写真は、私も週刊誌で見たことがある有名人なのです。
 一つは、この若さで長者番付に名前が載るほどの資産家であること。

 総資産は百億ドルを超えていると噂されています。
 この若さでどうやったらそんな金を儲けられるのか不思議ですけれど、いろいろと私には伺い知れない能力をお持ちになっているのでしょうね。

 週刊誌の情報によれば、ハリウッドサインの南側にお屋敷があるようです。
 もう一つ有名なのは、数々の女性と浮名を流しているプレイボーイのようなんです。

 私が現場を見たわけじゃないから真実かどうかはわかりません。
 でも女性の有名人と色々あるようで、週刊誌に四半期に一度、場合によっては月に二度ほども美人さんと彼の名前が出てくることがあるんです。

 いわゆる三流紙のゴシップの類なので、かなり信ぴょう性に欠けるのですけれど、でもサングラスや帽子で顔を隠した某女優さんが彼と並んで歩いている写真を見てしまうと、何となくそうなのかなぁと信じてしまうものなのです。
 ほら火の無いところに煙は立たないと言うし、・・・。

 そうしてLA支社の支社長から紹介を受けて、その彼が今私の目の前に居ます。
 写真で見たときにも思いましたけれど、若々しく見えるし、少し変わった風貌ですね。

 鼻筋が通っており、オリエンタルな黒髪なのですけれど、目の色は濃い紫に近い色で光によっては少し赤くも青くも見える不思議な色です。
 LAにも多いのですけれど多分ハーフなんじゃないかと思います。

 紹介を受けた際に訊いてみました

「失礼ですけれど、東洋人の血が入っておられますか?」

「そうですね。
 僕は、クォーターで日本人の血が混じっています。
 残りは米国、イタリア、フランスですね。」

 うん、でも、日本人にはとても見えないですね。
 風貌から感じられるのは中央アジアのイスラム圏に近い地域の出身者と見間違うかもしれません。

 体型は、一見するとスリムに見えるんだけれど、シャツの下の逆三角の体型は隠しようがありません。
 それにヒップが引き締まっているから、きっと普段から鍛えているんじゃないかと思うのです。

 パソコンと一日中にらめっこしているデイトレーダーの若者には全く見えないのです。
 私は思い切って、彼に噂の件を尋ねてみました。

「あの、・・・。
 週刊誌では、職業がデイトレーダーと紹介されていたようですけれど、ネットでの取引が中心なのですか?」

「ええ、ネットを使った取引が多いですけれど、投資会社を通じての長期投資も多いんですよ。
 DFMG社の株主になっているのもその一つです。」

「そうですか・・・。
 デイトレーダーというと何となく、パソコンと一日中にらめっこしている引きこもりをイメージしてしまっていたのですけれど、ヘンリーさんの肌は日に焼けているし、身体も鍛えていそうな感じです。
 普段はどんな運動をされているんですか?」

「あぁ、私の屋敷には色々トレーニング機材がありますのでそれで運動はしていますね。
 パソコンもありますけれど、にらめっこは精々一日に二時間程度でしょうね。
 それ以外は読書をしたり散歩をしたりしていますよ。」

「あの、・・・。
 私は歯に衣を着せるような言い方はできませんから率直に聞きますけれど、週刊誌にあれこれ書かれている女優さんとかの武勇伝は本当なんですか?」

「おや、まぁ、本当にストレートですね。
 でも残念ながらその質問に対するお答えはできません。
 一つは真実であるならば、相手と目される女性のゴシップ故に迷惑がかかるかもしれないこと、また、真実でないとするならば、単なる評判を稼ぐためのホラ話と受け取られ、やはりその女性に迷惑をかける恐れがあるからです。
 ここはお答えしないことで曖昧にしておきます。
 男にとってはプレイボーイと噂されても左程困りませんが、人気商売の女性にとっては遊び歩いているという印象は余り明確にさせない方がいいでしょう。
 二人並んで歩いてデートしたとしても、それは普通に許される範囲のものですよね?」

「でも、週刊誌ではホテルに入って行ったようなことも書いてありました。」

「うん、あなたもお年頃だから男女の絡み合いを想像しがちかもしれませんが、ホテルの最上階にはレストランもありますし、カクテルバーもあります。
 そこで男女がミッドナイト近くまで語らいあっても別に不思議はないでしょう。
 週刊誌の記者さんもホテルの部屋を取ったかどうかまでは調べられないはずですよ。
 さてさて、あなたはどうだったと思いますか?」

「うーん、話としては部屋に二人入り込んであれこれした方が面白いけれど・・・。
 判りません。
 疑わしきは罰せずですね。
 取り敢えずあなたへの疑惑はそのままにしておきます。
 でも、あなたって不思議な方ですね。
 プレイボーイって、何となく女性の敵って感じなのに、あなたにはそんな印象がないわ。
 むしろこれまであった若い男性の中ではとびっきりの爽やか系だわ。
 何故なのかしら?」

「さてさて、僕は女性の心理には詳しくはありませんのでそのお答えにも窮します。
 もしわかりましたなら僕にも教えてください。」

 私、初対面で何となくヘンリーさんを気に入ってしまっていました。
 私の出身はシアトルだけれど、今は大学に通うのでLA市内のセキュリティの確かなコンドミニアムに住んでいるのです。

 同じLAに住んでいるということもあって、この出会いを契機に、時々は休日に彼をデートに誘ったりもしています。
 彼も他の女性との交際に忙しいのか、一月に一回程度はデートに応じてくれ、その都度遠慮のない会話を交わしているんです。

 彼とのおしゃべりはとても楽しいんですよ。
 おまけにマルチリンガルで、LAにはいろんな言語が飛び交っているけれど、彼はその全てを完璧に理解しているみたいです。

 英語、仏語、イタリア語、日本語はもちろんですけれど、中国語、韓国語、ベトナム語、タイ語、ロシア語、スペイン語等々、彼の知らない言語は無いのじゃないかと思うぐらいぺらぺらと話せるの。
 LAでも指折りの資産家だけれど、やはり尊敬できるだけの能力を持った男性ということみたいです。

 それに、彼を誘ってサンタモニカのビーチに行ってみたけれど、彼のボディはマッスルの塊でした。
 ボディビルダーみたいな物々しい筋肉とは少し違うと思うのだけれど、腹筋は見事なシックスパックでしたし、後ろ姿のお尻の形は私好みの形でしたから、胸がきゅんきゅんしちゃいました。

 何となく私の周囲の女友達は、男性と肉体的に結ばれてから、結婚の可否を考えるような風潮があるのですけれど、私はそんなのは嫌。
 結ばれるなら伴侶と決めてから結ばれたいと思っています。

 親友のカナリーからは、そんなんじゃ行き遅れるよっていつも言われてるけれど、それでもいいの。
 自分に納得できない結ばれ方はしたくないし、できない。

 そうして、ヘンリーは最も伴侶に近い候補なんだと思う。
 彼との交友を深めるにはセックス以外でどうしたらいいのかなぁ。

◆◇◆◇◆◇

 私は、メリンダ・リブリー、19歳です。
 ハイスクール時代の二年前にエランダル・ミュージックからデビューし、私の歌が売れに売れたもので、高校だけは何とか卒業しましたけれど、大学進学は諦めて、芸能界に専念することにしました。

 その後、立体動画やネットドラマにも女優として出演したり、モデルとしてファッションショーにも出させてもらったりしています。
 ファンの皆さんからすごく好意的に受け止められていて、それなりにアイドルとして活動していますので、結構忙しい思いをしていますね。

 こういう人気商売は、とかく男女関係はタブーなんです。
 男女を問わず、恋人ができると往々にして人気が廃ります。

 ですから所属事務所は、男性との交際を原則許してくれません。
 少なくとも20歳になるまではボーイフレンドも作るなと言われています。

 でも、頼まれてモデルを務めたことのあるファッション・デザイナーのマリア・セブレットさんのお宅で開かれたごくごく内輪のパーティに招かれた際に、運命の人と巡り合ってしまったみたい。
 その人はヘンリー・クロシェールさんという24歳のトレイダーの方で、お会いした時は株の売買を少々していますとおっしゃっていました。

 私はその時は知らなかったのですけれど、ヘンリーさん実は物凄い資産家で、24歳にして億万長者ビリオネアーなんだそうです。
 ハリウッド地区に豪邸を持っていらっしゃる米仏伊日の四か国のクォーターだそうで、独特の風貌を持っていらっしゃる方です。

 東洋人のように黒髪なので、当然瞳も黒か濃い茶色と思っていたら、時々色合いの変化する紫の瞳でした。
 足が長く、日焼けした肌は黄色人種ではなく白人のアスリートを思い起こさせます。

 今では米国籍を持っているようですけれど、元々はフランスの国籍を持っていたのだとか。
 その時は彼の情報を何も知らず、単にマリア・セブレットさんのお知り合いとして挨拶を交わしただけの人なんです。

 但し、ラフな服装ながらすごく格好の良い体型に惹かれました。
 若い女性が男性のお尻に惹かれるというのもおかしな話なのですけれど、彼のお尻はとっても引き締まっていてプリッとしていてとても感じが良いんです。

 それに話をしてみるととても親しみやすい話し方をしてくれます。
 私の方が年下ですし、学校も結構おざなりで終わってしまった分、知識不足のところがあるんですけれど、彼はそんな私でも馬鹿にせず、親身になって色々と教えてくれました。

 時々ウィットを交えた話しぶりは、高校の教師で大好きだった歴史のベイデン教師を思い起こさせます。
 ベイデン教師の方が彼よりも一回り以上年齢が上だとは思いますけれど、深い教養に裏付けられたヘンリーさんの話にはとても惹かれました。

 それに、ヘンリーさん、芸能界にも結構詳しくって、いろいろなゴシップ話も教えてくれましたし、何よりパーティの最中に私がマリアさんに頼まれて歌を歌う羽目になった時、それまでバックミュージックを弾いていたピアニストの方が流石に私の新曲の伴奏は無理とおっしゃったのですけれど、その時に、ヘンリーさんが、じゃぁ僕がやりましょうと申し出てくれたのです。
 そうしてその伴奏がびっくりするほど上手で、私の歌の先生よりも上手なくらい私の歌にしっかりと合わせてくれました。

 そんなこんなで、最初は左程でもなかったのに、パーティから引き上げる頃には、私はヘンリーさんにすっかり夢中になっていました。
 男性のボーイフレンドは作るなと言われていますけれど、ちょっとした知り合い程度なら良いですよね。

 少なくとも周囲にルポライターはいませんでしたから。
 でも色々その後で興味を持って調べたら、ヘンリーさんは独身でも名うてのプレイボーイと噂されていることを知りました。

 私の知っている女優のクレアさんとか、歌手のレナさん、ヴァイオリニストのビッキーさんとまで何やら艶やかな噂があるようなのです。
 これまで余り見たことのない週刊誌に、あることないことが色々と書かれていたんです。

 これが事実としたなら、私はとても悲しいです。
 だって、多分これが私の初恋なんですよ。

 運命の人かと思ったのに、大勢の綺麗な女性と性的な関係があるなんて絶対に嫌です。
 納得できません。

 で、貰った名刺を頼りに、彼にSMSで質問状を送ってみました。
 本当は結構怒っているんですけれど、できるだけ文章では抑えて尋ねました。

<週刊誌で暴露されている女優のクレアさん、歌手のレナさん、ヴァイオリニストのビッキーさんなど複数の綺麗な女性との密会は本当のことなのでしょうか?
 正直なところ、何となく信じられない思いなのですけれど、本当のことを教えてもらえませんか?>

 返事はその日の夜に来ました。

<週刊誌に掲載された話については、僕からは、肯定も否定もしません。
 写真で二人揃って通りを歩いているのは作られたものじゃなくって本物ですよ。
 もし仮に、記載された内容を僕が肯定すると相手の方に迷惑が掛かる恐れがありますし、更にまた仮に否定すると、そうしたゴシップすらも利用するような芸能界の風潮に水を差す結果になるかもしれません。
 そもそもが、個人の情報というものは公にすべきものではありません。
 週刊誌の記者若しくはリポーターは、読者のためだと言いながら、表現の自由を盾にゴシップを垂れ流し放題です。
 あなたが名前を上げた女性達は確かに私の知り合いに間違いありません。
 でも知り合いの男女が二人揃って道を歩いてはいけませんか?
 更にホテルへ入って行ったとの記載について、その後ホテルに泊まったのかどうかは触れてはいませんよね。
 分別の付く男女が最上階のレストランやバーラウンジで語り合っても誰の迷惑にもならないはずと思うのですけれど、記者は売らんがためにそこへ邪推を入れ込みます。
 それが当を得ているものであるかどうかは本人たちが承知しています。
 そうしてそれが男女の恋愛という形に発展するならばそれはそれでいいのでしょう。
 しかしながらそうした男女の付き合い、あるいはまた友人としての付き合いの可能性すら否定して、不倫のごとく書き連ねる週刊誌の記事には憤りすら覚えますが、男の僕はプレイボーイ呼ばわりされても何ら困りません。
 でも特に名の売れた女性の場合は、下手に騒がれると困りますよね。
 仮に、私とあなたが偶然町で出会った際に親しく話していたとして、それが盗撮され、週刊誌に不倫と書き立てられたならきっとあなたも嫌ですよね。
 普通にご挨拶を交わしただけなのに・・・・。
 ですから予め申し上げておきます。
 僕とお付き合いするだけで、プレイボーイと付き合っている女性とみられることがあり危険なのです。
 ましてやあなたはアイドルですから絶対に騒がれます。
 私には近づかない方が絶対に宜しいですよ。
 あなたの質問の答えにはなっていないかもしれませんが、この件の判断はあなたにお任せします。>

 ずるいです。
 ヘンリーさん。

 これじゃ私からは文句も言えません。
 私って一度パーティで会ったきりの行きずりの女にしか過ぎません。

 勝手に嫉妬心を起こしても、こんな風に大人の対応をされてしまったら何も言えません。
 男女のセックスがあったかどうかなんて、全く問題にしていないみたいですね。

 そうしてその事実があったにせよ、無かったにせよ、相手の立場を考えて無駄な発言をしない。
 私が、もし同じ関係になっても同様の反応をしてくれるのでしょうか?

 私は、男女交際を禁じられているにもかかわらず、貴方への思いがますます募ってしまいました。
 今夜は悶々として寝られないかもしれません。

 明日の朝、私が目の周りにクマを作っていたなら、ヘンリーさん、きっとあなたの所為ですよ。

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   8月6日、一部の字句修正を行いました。
    
     By サクラ近衛将監
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