巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第四章 伯爵になってはみたものの

4-13 文官の採用

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 文官の候補については、マクレナン侯爵の仲介により、派閥の貴族から特に三名の推薦を受けた。
 騎士の採用では随分と俺の審査が厳しかったので、文官については特に候補を絞ってきたようだ。

 流石に推薦した者の大半が落ちるようでは派閥の沽券にかかわるとでも考えたのかもしれない。
 フレナガン子爵の三男坊であるマイケル・フレナガン、ブレイド男爵の五男坊であるエリクスタン・ブレイド、近衛騎士団所属のベルンハルト騎士爵の三男坊であるユーリック・ベルンハルトの三名である。

 いずれも文官養成のための王立学院卒業者であり、ユーリック以外の二名はいずれも、親の領地で文官としての実務を五年ほど経験している。
 ユーリックのみは、領地を持たない騎士の家柄の三男坊ゆえに、実父の雇用主であるウェンドル男爵の領地で一年半ほど文官見習いをしていた。

 いずれも文官として優秀であるとのお墨付きがあるようだが、無論のことそれぞれのお抱え貴族が最優秀の者をおいそれと手放すわけもない。
 従って抱えている文官の中では、二番目、三番目以下の能力者である可能性が高い。

 俺は万が一のことも考えて、一人一人との個人面談を行った。
 前世ではタブーとされている思想や宗教観も遠慮会釈なしに質問した。

 勿論、「話せるならばその範囲で構わない」との条件付きだが、思想的に危険な者や特定の宗派にかぶれて他の宗派の者を排斥するような考えであるならば領民のためにも雇うわけには行かないだろう。
 幸いにして三人共に思想的にも宗教観においても問題は無かった。

 因みにこの確認だけのために、俺は「真偽審問」と「心理看破」という魔法を作ってみた。
 「真偽審問」は、虚実を見抜く能力であり、嘘をつけばたちどころに分かる能力だ。

 但し「真偽審問」はこちらが質問を為したことに対する発言にのみ反応する。
 ある意味で「イエス」か「ノー」かの質問であれば即反応するが、自発的に話した内容の虚実については必ずしも反応しない。

 そこで「心理看破」の出番である。
 「心理看破」は、真偽の見分けではなく当人の心理状態を見破る能力であり、本人が嘘をついた時に揺れ動く心の様を見えやすくする。

 ある意味でうそ発見器のようなものだが、欠点はある。
 本人が動揺しているとか気持ちが高ぶっているとかがわかるだけで嘘かどうかの判別は必ずしもできないのである。

 だが、「真偽審問」と「心理看破」を同時に使えば、一切の感情を示さないような余程の冷徹漢でもない限りは本人の話すことの真偽の見分けがつく。
 その判断がつかない場合には、確認のために「イエス」か「ノー」の答えしか出せない質問をすれば良いだけなのだ。

 面談の結果、三人共に思想、宗教観共に問題は無かったし、元の雇い主からスパイを頼まれているわけでは無かった。
 仮にブランデンダルク家に文官として雇われた場合に、実家の利害とファンデンダルク家の利害が相反する場合、どちらを選ぶかとの問いに際しては、いずれも若干の逡巡の後で、ブランデンダルク家の利害を優先すると答えた。
満点の答えである。

 ここで逡巡しないような者ならば、代官にはできない。
 代官やその下に付く文官は、俺の代理として領内のまつりごとを扱うことになるのだが、その際に単なる機械の様に物事を判断してもらいたいわけではない。

 場合によって情状も酌量しつつ領民のために適切な政をして欲しいのだ。
 極端な話、税率は定められているから如何なる不作の場合でも税率を下げることはできないというような杓子定規な判断はしてほしくない。

 必要があれば敢えて領主である俺に減税なり免税なりを申し出るぐらいの裁量が欲しいのだ。
 だから回答は、当然にファンデンダルク家への忠誠を示さねば駄目だが、一方で実家への未練の情も無くてはならない。

 だから俺はその僅かの逡巡を見て雇うことに決めたのだ。
 鑑定で見る限り、マイケルとエリクスタンの両名はいずれも知性とカリスマの値が比較的高く、官吏としての将来性は十分に認められる。

 一方で、ユーリックについては、知性とカリスマは両名にやや劣るものの、筋力、器用さ、丈夫さ・持久力、敏捷性については、今回既に雇っている王都別邸の警護騎士でも上位になるほどの能力を持っている。
 つまりは文武両道の文官なのであり、領地の管理補佐としてはかなり役立つことが考えられる。

 往々にして文官と武官の対立や派閥抗争が領内の結束を弱めることになるが、双方の立場を理解する者が一人いるだけで随分と助かるのである。
 従って、ユーリックについてはカラミガランダの代官補佐とした。

 一方のマイケルとエリクスタンについては、領地の広いカラミガランダ代官をマイケルとし、エリクスタンをランドフルト代官とした。
 能力的にはほぼ一緒と見たのだが、序列的に子爵家の三男坊と男爵家の五男坊であれば、子爵家の三男坊を優先するのが貴族の慣行らしい。

 尤も俺の方は必ずしもその貴族の慣行とやらに盲従するつもりはない。
 当座は仮配置とし、二人の実務能力と実践力を見ながら最適配置に変えるつもりである。

 更に、文官見習いとして王立学院の文官課程卒業者から7名を選んだ。
 いずれも卒業して間もないが、貴族連中の懐事情で就職に辿り着けずあぶれていた者達だ。

 商人の台頭の所為か、どうも、この国の貴族で羽振りの良いのは少ないらしい。
 或いは、金はあっても内政の人件費をケチっているのかもしれないが・・・。

 七名の内、民間人の一人でシュバルツ商会副会頭の七男坊ディートリッヒ・シュバルツについては、ランドフルト代官補佐に任命することにした。
 この男は卒業年次の首席だった男であり、特に財務経理についてはユニークスキルを持っている。

 場合によっては、領地全体の財務管理を任せられる器だと俺は思っている。
 何れにしろ、文官候補十名については領内統治に関する知識と俺の方針を知ってもらうために、王都別邸に1か月住み込んでもらい、その間に徹底的な初任者研修を実施した。

 講師は、俺と、家宰のジャック、メイド長のフレデリカの三人である。
 統治の基本とは何たるかを教え込み、領民との付き合い方、報告・連絡・相談のやり方を徹底して叩き込んだのだ。

 俺の講義では、多分に俺の趣味的な思想による統治方針が混じっており、領民を第一にファンデンダルク家の金銭的利益は二の次でいいと言うと、ジャックやフレデリカから苦笑いをされ、若干のお小言を貰ってしまった。
 どうも貴族たるもの自分が我慢をしてでも平民に配慮するという思想はあり得ないらしい。

 けれども俺は元々平民出身だし、領民が豊かになれば領主も自然と豊かになるはずと考えているからそこは譲らない。
 そうして俺の部下や配下達にもそれを実践して欲しいとお願いしただけなのだ。

 カラミガランダとランドフルト間の道路整備について課題とし、文官たち10名に協議させた。
 俺の土属性魔法を使って道路を整備するか、それとも領民を雇って金を領内に落とすかを協議させたのだ。

 それぞれのメリット、デメリットを出し合い、様々な議論を尽くした後で、最終的に金銭的余裕があるならば領民を使って道路整備をさせるということになった。
 ディートリッヒの経済的発想がモノを言ったように思う。

 領地の活性化と発展のためには公共事業で金を落とすことが一番効果が高いと力説していたようだ。
 俺もその意見には賛成だが一方で監督をしっかりとしないと手抜き工事になる可能性があることを指摘し、工事の管理監督方法についても全員で協議させた。

 因みに道路づくりに関しては、文官見習いの一人ワーロック・ゼルマンに適性があり、彼を設計と建設責任者に据えた。
 彼の場合、建築設計に詳しい上に構造物の内部を見る透視が可能な特殊能力(彼の名誉のために追記しておくが、覗き見的な能力ではない)を持っているのだ。

 かくして総勢で10名の文官が決まったのだ。
 先々、もっと多くの人員が必要になるだろうが、当座はこの陣容と現地で雇用されていた文官でしのいでもらうしかない。

 人口が精々4万程度の領地であるから、さほどに多くの者を張り付けるほどの余裕は無いのだ。
 元の世界で誰かが言っていた「小さな政府」を俺は目指したいのだ。

 あ、そうそう。
 俺が造り上げた特別な通信魔道具を代官要員とその補佐には渡した。

 まぁ、魔核を使った亜空間波利用の携帯電話だな。
 距離は無関係に、どこであっても連絡が取れる相互通話方式だ。

 因みに電波を使っているわけじゃないから、洞窟や地下室でも問題なく使えるし、この世界には未だ無さそうだけれど多分潜航中の潜水艦の中からでも使える筈だ。
 色々と調べてみたが既存の遠距離の通信用魔道具では、ギルドや王宮が用いている比較的短い文章が送れる簡易通信装置しか無いようだから、多分新発明と言うことになるのだろうが、軍事に利用される可能性が高いので取り敢えずはその存在そのものを秘匿させてもらう。

 周囲に誰もいないところで使うように部下たちには指示しており、通常は文章送付(まぁ、メールだよね。)で連絡し合い、緊急時は口頭での通話も可としておいた。
 いずれ、領地の騎士団長や副団長辺りにも渡す必要があるだろうなとは思っている。

 ジャックとフレデリカにもこの「」を渡しているよ。
 コレット王女やシレーヌ嬢にはそのうちに渡すかもしれないが、まぁ、正式に嫁いできてもらってからでも遅くは無いと思っている。

 伯爵に陞爵してから4か月が過ぎ、二つの領地の代官引継ぎをいよいよ実施することにした。
 代官であって王宮から派遣されていた者は、約15日間の引継ぎを経て、その側近とともに任を解かれて王都へ戻るが、現地雇員として雇われていた者達はそのまま領地に残るので、引き続き同じ条件で雇用を継続し、半年間の様子見で正式採用とするか否かを決めることにした。

 現地雇員は、カラミガランダで7名、ランドフルトでは5名であった。
 従ってカラミガランダ代官所は12名、ランドフルト代官所は10名で始動することになる。

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