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第二章 ホブランドでの始まり

2-4 錬金術師・薬師ギルド

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 ギルドの斜め前に少し古ぼけているが高そうな造りの宿と、新しいがやや格が落ちていそうな宿が少し距離を置いて在った。
 で、少々古ぼけた方の宿の帳場に行ってお値段を聞いてみた。

 一泊大銀貨3枚だった。
 これは日本の感覚で言えば3千円?

 いや、ちょっと安過ぎだから3万円くらい?
 朝晩の食事を付けると更に大銀貨1枚らしい。

 つまりは一泊二食付きで4万円?
 高いっちゃ高いけど、食事付きの旅館ならめっちゃ高過ぎると言うほどでもない。

 元の世界でも有名旅館は1泊5万円以上、スィートルームなんか優に10万円から20万円を超えるはずだ。
 で、俺は即決で、食事つき5泊を頼んだ。

 懐が温かいうちの贅沢である。
 帳場のオバサン思いのほか計算が速かった。

 ラノベのテンプレでは、普通の人は暗算が中々できないのではなかったかなぁ。
 で、三連泊以上だと1割引きになって大銀貨18枚になるんだと。

 金貨二枚を渡すと500円玉の倍ほどもある大銀貨2枚をお釣りでくれた。
 日本の五百円硬貨は直径27ミリほど、百円硬貨が22ミリ程の筈だけれど、大銀貨は50ミリ近くあるような気がする。

 オバサン?女将さん?
 よくわからんけれど、その帳場の女性に頼んでついでに金貨一枚を小銭に換えてもらった。

 結局お釣りを含めて、大銀貨11枚、銀貨9枚、大銅貨9枚、銅貨10枚が新たに懐に入った。
 宿泊手続きと領収書代わりの木札を貰って、街の中をぶらっと散歩をしていたら、ありましたよ。異世界テンプレの屋台村。

 その中の一軒からいい匂いがしていたので覗いてみると、串焼の肉でした。
 値段を聞いてみると、店のオッサン曰く一串が十五レット、銅貨15枚だという。

 そこでようやくこの世界の貨幣の単位がわかりました。
 どうやら最小単位は1レット。

 でもいくら物価が安くても三センチ角の肉が三つも刺してある串焼きが15円とは思えないので、多分最低でも150円程度にはなるだろう。
 であれば1レットは、10円程度かあるいはもう少し価値があるかも・・・。

 15レットの串焼き肉を一つ貰い、歩きながら食べてます。
 サシの無い赤身肉で、少し硬めだけれど肉汁が多くてとっても美味しいです。

 ウーン、さっきの宿での貨幣の価値は上方修正だな。
 肉の重さは三切れで多分100グラムは間違いなくあると思うし、霜降り牛肉に匹敵するんじゃないかという美味しさであれば、少なくともこの串焼きは、日本でなら300円以上は間違いなくする。

 霜降り牛肉の特上品は100グラム千円を超すからねぇ。
 もしかしたら450円以上かも。

 日本の祭りの屋台では、インフレの所為もあるけれど、トウモロコシ一本で500円ぐらいは取る。
 この串焼きの肉の美味さで一本150円は絶対にあり得ない。

 だとすれば食事込みの宿代の大銀貨4枚は8万円相当か、場合によっては12万円ほどになる?
 ウーン、金貨一枚がアバウト10万相当の筈だけれど、元の世界よりも大きい金貨だから或いは20万円ぐらいが妥当なのかもしれない。

 あくまで私見ではあるけれど、金貨一枚で30万円はちょっと多すぎるような気がするんだよなぁ。
 まぁ、元の世界の通貨と比べること自体がナンセンスなのだろうけれど。

 日本だって江戸時代は金銀の価値が欧州辺りと異なっていたために、随分と金が海外に流出していたから、この世界でも金の価値が異なることは十分にあり得る話だ。
 いずれにせよ、今のところ言葉にも金にも余り不自由のない状況だが、この世界の常識に俺がうといのは流石に困る。

 まぁ、田舎育ちということでごまかせる範囲ならばいいが、この世界の者なら誰でも知っているようなことを知らないと言うのはウザ過ぎる。
 怪しいことこの上ない人物と言うことになるだろう。

 特に敵対国があるような場合は、スパイなどと間違われる可能性もある。
 こいつは何とかしなければならないが、はてさてどうしたものか。

 そんなことを考えながら串焼きを堪能しつつぶらついていると、何やら興味を引く看板が見えたよ。
 「商業ギルド」という看板、更にその斜め向かいには「錬金術・薬師ギルド」の看板です。

 商業ギルドはさほど関わりがなさそうだけれど、俺のユニークスキルには錬金術がある。
 従って、錬金術・薬師ギルドは間違いなく関わりがありそうだ。

 そこで俺は、錬金術・薬師ギルドの中に入ってみた。
 若干雰囲気は異なるが、冒険者ギルドと同様にカウンターがあって受付嬢らしき人がいた。

 その受付嬢が軽く会釈して俺に向かって言う。
 他には客もいないので間違いなく俺に言っているのだ。

「 いらっしゃいませ。
私は、受付のマリアンと申します。
本日は当錬金術・薬師ギルドにどのような御用でしょうか?」

 俺はそこで単純に疑問をぶつけてみた。

「俺、実は錬金術師になりたいと思っているのだけれど、なにか手続きが必要ですかねぇ?」

「はい、錬金術師として活動するためには、先ず当ギルドに登録していただくことが必要です。
更に、錬金術で生み出したものを売買する場合には、斜向かいの商業ギルドでの登録も必要なのですが・・・。
大変失礼なのですが、お客様には錬金術師としての素質がございましょうか?
仮にそれが無ければ当ギルドへの登録はできません。」

 うん、俺には幼女神様の付与してくれた錬金術があるよ。
 ただ、ステータス上はユニークスキルになっている。
 俺の読んだラノベじゃ、普通はユニークスキルってしっかり隠すものらしいんだけれど、この場では言ってもいいよね?

「ええ、錬金術のスキルは持っています。」

「お持ちになっているのであれば、当ギルドに登録するには簡単な実技テストを受けてもらい錬金術の素質を確認させていただくのですが、受けられますか?」

「それは、今から?」

「いいえ、今日申請の手続きをしていただき、明朝三の時に受付に来ていただければ試験に立ち会う者が対応します。
登録申請の用紙に氏名、年齢、それに現在の連絡先をお書きください。
必要でしたなら私が代書も致します。」

 そう言って受付嬢は用紙を出してきた。
 またまたパピルス擬きである。

 俺は氏名と年齢を記載し、連絡先には先ほど契約した宿の名「キライアの荘館」を記入した。
 それを提出すると、受付嬢の目がキラリンと光り、彼女が言った。

「あら、キライアの荘館にお泊りなのですね?
後、当日、登録手数料として銀貨二枚が必要となりますし、身分証明が必要となりますが、身分証明書はお持ちでしょうか?」

「はい、今日冒険者ギルドで登録しましたので、その登録証ならばあります。」

 受付嬢の視線が訝し気に中空を彷徨ったように見えたが、瞬時に表情を戻して言った。

「あ、それで結構です。」

「キライアの荘館って、有名なんですか?」

「はい、この町一番の宿ですよ。
王族もお泊りになることがあります。
一般の方は余程のお金持ちでなければ泊まりません。」

 なるほど、この受付嬢、最初は高級宿に泊まる貴族か金持ちの上客と考え、次に冒険者と聞いて「何だ?この人?」と本気で迷ったような気がする。

「へぇ、そうだったんだ。
ところで、実地試験と言うのはどんなことをするんですか?」

「えっと、詳細には申し上げられないのですが、例えば簡単な生活道具の製造とかあるいは初級ポーションの製造とかがありますね。
因みにポーションを造ることができるならば薬師としての登録が受けられます。」

「それは実地試験の結果を見て適性があれば錬金術師にも薬師にもなれると言うことかな?」

「はい、左様でございますが、錬金術師と薬師双方の登録をなされている方は、千人に一人ぐらいしかいなくってとても希少な存在です。
普通は、どうしてもどちらかの能力スキルに偏ってしまうようです。」

 取り敢えず明日朝の三の時までに錬金術・薬師ギルドに来ることを約して俺は外に出た。
 商業ギルドへの登録については、明日の実地試験の後で構わないだろう。

 そもそも錬金術師としての登録がなされなければおそらく商業ギルドの方は必要がない筈だ。
 ン、ところで三の時って一体何時なのだ?

 それがわからんと話にならんぞ。
 そんなことを考えているうちに少し遠くから鐘の音が聞こえて来た。

 最初に高い音で鐘が四つ、それから少し間を置いて先ほどよりもやや低い鐘の音が五つ。
 以前聞きかじりの情報では、ハンガリーで教会の時の鐘として使われている方法が、これに似ていた。

 最初の鐘は午前か午後の見分けのための鐘、次の鐘は時刻を表す。
 従って、今の鐘はきっと午後の五の時の鐘に違いない。

 何故なら空が夕焼けに近づいているからである。
 では、明日はこの鐘で三の時がなる頃には錬金術・薬師ギルドに赴かねばならないことになる。

 俺の時計はと言えば、概ね午前6時半を指していた。
 そこで、時計を午後5時に無理やり合わせた。

 これで、次の鐘が鳴ればこちらの一時間がわかることになる。
 できれば元の世界の1時間に近い方がいいのだけれどなぁと思う俺である。

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 しっかりしているようで何処か抜けていそうなリューマです。
 はてさてこれからどうなるのやら。

 毎週3千から5千字程度の投稿をしたいと考えています。

                   By サクラ近衛将監
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