魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第八章 研修と色々

8ー6 魔鉱石の利用?

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 ハーイ、シルヴィで~すヨォ。
 今は受験で大変な人も多いのかな。

 他人事ヒトゴトなので月並みなことしか言えませんが、頑張ってとは言いませんので、どうぞ身体を壊さないようにいたわってくださいね。
 これまでの努力はきっと後からついてきますよ。

 私はというと異世界で受験じゃないけれど過去問に取り掛かっています。
 ホラ、瘴気が発生して魔物が突然変異を起こした件で出動した事例があったじゃないですか。

 あの時に龍脈の波動に触れたために瘴気を発生する原因となった魔鉱石を見つけて、その鉱床を掘り出し、若しくは抽出しました。
 その場に放置しておくと、ずっと龍脈の影響を受けて瘴気を発生し続けるからであり、その埋蔵量からみて10年以上も瘴気を発生すると推測されたからです。

 仮にそんなことになれば発端となったクロマルド王国はもちろんのこと、周辺の国も人が住めない魔境となってしまう恐れがあったからです。
 クロマルド王国と周辺国家との協議により、掘り出した魔鉱石を、最終的に隣国であるベンゼルトン商国の北部にある荒野に移動させ、私が作った魔法陣の魔法障壁で覆われた石の倉庫に保管していますけれど、その一部は調査・研究のために持ち帰っているのです。

 派遣から帰った後でも色々暇を見つけては調査を行っていましたけれど、その利用方法がふいにポッと浮かんだので早速試してみることにします。
 発明・発見というのは、ほんの些細なことから成功につながることも有るので、インスピレーションというものは大事にしたいですよね。

 尤も、百回、千回のインスピレーションが有っても成功に結び付くのはほんの一回というのが普通ですから、無駄とも思える試行錯誤が本当に多いのですけれどね。
 今回私が思いついたのは、魔鉱石に蓄えられた魔素を直接若しくは間接的に電気エネルギーに変換できないかというものでした。

 まぁ、魔素というか魔力の補給が可能な代物については、これまでにも効率はあまり良くないのですけれど、魔石や魔晶石の加工品で存在しています。
 確かに魔石や魔晶石に込められた魔力を放出することによって特定の魔法が発動されますので、その内部に蓄えられた魔素エネルギーを利用するという点では同じなのですけれど、実は魔晶石や魔石の場合、込められている魔素の属性により放出される魔力も左右されるのです。

 火の属性であれば火の魔法を、水の属性であれば水の属性が使えますけれど、生憎と水の属性の魔素が込められた魔石では火の魔法は発動しません。
 しかも使い手を選びます。

 火の魔法を使える者が火の属性の魔素を込められた魔石を使えるのであって、他の属性しか持たない者は火の魔法を使えないのです。
 尤も低級魔法と呼ばれる汎用魔法(生活魔法)に属する魔素を有する魔石では、魔力を持っている者ならば、誰が使っても小規模なんですけれど火をつけたり、水を出したりすることができます。

 私が狙っているのは、魔力の多寡にかかわらず、誰でもが使えるエネルギーという形で供給することができないかということでした。
 実は魔法で電気を発生することはできますが、通常の魔法で発動する電気は稲妻であり、長時間利用することができないものなんです。

 それを魔導モーターという形で魔力を回転エネルギーに変換するところまではできていますので、魔導モーターに発電機をつないで発電が可能なのです。
 小規模ですけれどこれまでに魔導モーターを利用した発電機を造り、交流電気と直流電気の双方を作れるようにはなっているんです。

 でも私が作った通信機械の場合、電流ではなくって無属性の魔力をそのまま使う魔道具を作ってしまったので、これまで左程電気に利用価値があるとは思っていなかったのです。
 でも魔鉱石に秘められた大きな魔素エネルギーを利用しようとするならば、電気エネルギーに変換した方がより多くの人々に利用してもらえるのではと思ったわけなんです。

 魔石の場合、属性は一つしかない場合が多く、魔晶石になると二つ以上の属性を有しているのですけれど、魔道具に利用しようとした場合は主たる属性を利用することが多いのです。
 一方で、魔鉱石の方は雑多な属性でほぼすべての魔素が含まれているので、どんな魔道具にでも利用できるんじゃないかと思っています。

 但し、これまでの魔道具ならば、一つだけの魔法が発動するだけになってしまいます。
 これは、魔法発動のプログラムである魔法陣がそう組まれているので仕方がないんです。

 前にも申し上げましたが、魔鉱石は地下を流れる龍脈放射エネルギーの干渉を受けると、その内部に蓄積された様々な魔素を変換しながら放出するわけで、少なくともその一部が瘴気に変わることが既に確かめられています。
 この瘴気が生命体に影響を与える「毒」又は「それに類するもの」であることは確実なわけですけれど、そのことは、生命体のDNA等の基盤に影響を与えるなにがしかの力を持っているということでもあります。

 この魔鉱石の力をもしも動力に変換することができたなら、新たな魔道具の出来上がりなわけです。
 これまでの魔道具でも魔石若しくは魔晶石から熱エネルギーなどへの変換は既にできています。

 鍛冶師が使う高出力の火炉などは、魔晶石若しくは魔石に含まれる火属性の魔力(魔素)で直接火魔法を発生させるものなんです。
 但し、効率が左程良いものではありません。

 透視の能力で見ると、本来魔晶石なり魔石なりが保有している魔力エネルギーの八割ほども熱変換の際に無駄に空気中に放出されているんです。
 本来であれば四~五倍の火力が産まれてしかるべきなのに、精々二割ぐらいしか使えないのは無駄に過ぎますよね。

 それで、この魔力若しくは魔素のエネルギーをより効率的に引き出すために「電気又は電磁気」を使えないだろうかと思いついたわけです。
 バッテリーパックみたいに、誰でもが利用できて、何時でも変換可能なエネルギーに変えられたら便利ですよね。

 しかも電気という形にすれば、個人が持っている魔法属性に捉われずに、熱を発生し、風を起こし、物を動かせる動力にも使える汎用的なエネルギーになるはずです。
 今までの魔晶石なり魔石なりの場合は、使用される魔道具の魔法陣で用途は決まりました。

 私が考えているバッテリーパック状の魔鉱石でも、使用機器で用途が異なりますけれど、パックの大きさを定型にすることでより汎用性が高まりますし、寿命が長いものになるかもしれません。
 例えば光属性の魔石を使った魔道具で照明に使われるものはその輝度によって魔石の大きさが決まります(魔晶石は高価すぎて通常の照明用の魔道具には使われません。)けれど、ほぼ半年から一年で魔石を交換しなければなりません。

 仮に魔力若しくは魔素のエネルギー利用を二割ではなくって、半分ほどの効率に引き上げられれば、それだけで魔石の寿命が倍以上にも伸びることになりますが、そもそも魔鉱石の場合は推定ですけれど魔石の50倍以上、魔晶石の8倍以上の魔素エネルギーが含まれているものと思っています。
 ですから仮に魔鉱石のほんの小さな塊で照明用の魔道具を作れば、恐らくは連続して30年以上も照明が使えることになるでしょう。

 やたら寿命が長ければ良いというものではありませんが、それだけ魔鉱石に蓄えられた魔素エネルギーが有効に活用できるのであれば、経済的だろうと思うのです。
 色々試行錯誤しながら電子回路のような魔素が流れる流路を魔晶石の薄板に魔鉱石の粉末を溶融させてプリントしてみました。

 この辺は通信用に造ってみた魔道具と同じですけれど魔晶石だけではなくって魔鉱石も使っているところがミソなんです。
 どちらかというと魔晶石と魔鉱石の厚みの変化で流路の抵抗が生ずるものであり、コンデンサーのようにエネルギーの蓄積も回路の中で出来ます。

 これまで私が作った魔道具で用いた魔法陣を、より大規模に集積した回路(LSI)的なモノですが、うまく作動すれば反応速度もこれまで以上に早くなるものと期待しています。
 問題は電気ではない魔素の流れをどうやって制御するかなのですけれど、集積回路に使われる電源回路の定電圧回路を真似して魔素の流量調整回路を造り上げました。

 供給元は小さな魔鉱石なのですけれど、流量調整回路によって一定量の魔素エネルギーが魔法陣に流れ込み必要な変化を起こさせるのです。
 真っ先に造ったのは魔導モーターです。

 魔鉱石で放出できる魔素エネルギーは非常に大きいので、恐らくは鉄道に使われる電動モーターぐらいのものは造れると考えたのです。
 流路に流れ込む魔素エネルギーの調整回路が効いたのか、魔鉱石に蓄えられた魔素エネルギーの9割程度を運動エネルギーに活用できることがわかりました。

 この魔鉱石を利用する魔導モーターの利点は、その寿命です。
 直径2センチ、長さが4センチほどの円柱状の魔鉱石一個で、私の作った飛空船を50年ほどは動かし続けられます。

 私が最初に造った小型飛空船の魔導モーターでは白系の魔晶石を使うものでしたけれど、倍ほどの大きさの魔晶石でそもそも魔素エネルギー総量が魔鉱石の十分の一ほどしかありません。
 なおかつ、魔力若しくは魔素のエネルギー発生効率が二割ほどとかなり低いので、1年で交換する必要があると考えていました。

 少なくとも新たに開発した魔導モーターならば長持ちする上に、流量調整を行うだけででより出力も上げられそうです。
 問題があるとすれば、魔鉱石が龍脈の影響を受けないように魔鉱石の周辺には障壁を常にかける必要がある点でしょうか。

 何事にも危険は付きまとうというものの、魔鉱石は扱う魔素エネルギーが大きいだけに爆弾を扱うような慎重さが求められます。
 当面は単体では世には普及させない方向で動きましょう。

 扱いを間違えると至る所で大規模な事故が起きそうです。
 尤も、魔導モーターを使って発電所を造り、電力として外部に供給する場合にはそうした問題が局限されますよね。

 発電所ではどうしても厳重な対策が必要ですけれど、発電された電気には一般的な電気を扱う程度の危険(高圧電流は危ないですけれどねぇ・・・。)で済みます。
 当然のことながら、電気を使って動かす製品についても安全性が求められますけれど、利便性は増すはずです。

 時間をかけてヒラトップの施設の電化を進めてみて、その成果を必要に応じて魔晶石ギルド、診療所、ハンガー等に試験的に導入しても良いかもしれません。
 電路は地下に電線を這わせて高電圧送電を行えば送電効率は上げられますもんね。

 発電機の設置場所はヒラトップとして、電路からヒラトップの場所を悟られるのは何かと面倒なので、電路のトンネルは直径20センチ程度で人が入れない大きさにしておけば良いでしょう。
 途中ところどころに点検用の空間は造っても、そこへの出入り口をなくしておけば問題ありません。

 私は閉鎖空間であっても場所が分かっていれば転移できますから。
 それよりも内部に動物が入って電線をかじったりしないように、侵入防止用の仕掛けは必要ですね。

 次いで作ったのは魔鉱石の魔素エネルギーから直に電気エネルギーに変換する方法を試しました。
 詳細は省きますが、30センチ四方程度の魔鉱石から推定で100万キロワットの電力を得ることができましたけれど、このダイレクトの電気変換は危険ですので封印します。

 だって、これって前世の原子力発電所一基分ですよ。
 しかもこの大きさで1年程は膨大な電気が採れそうなんです。

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 1月25日、一部の字句修正を行いました。
 
   By サクラ近衛将監
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