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第八章 研修と色々
8ー1 ヘルパーさんの決意
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私は、クレアン・ドラベル。
ベテランのフェイネリアスさんたちと共に、魔晶石ギルドに開設された診療所にヘルパーとして派遣された12名の治癒師の一人です。
絶対に何かおかしいとは思いますけれど、天下の治癒師ギルドが匙を投げた患者を救う者が魔晶石ギルドに所属しているのです。
それも恐ろしい魔晶石採掘師だというのですからとんでもない話だと最初は思いました。
しかしながら治癒師ギルド本部は世界中の支部から選別して、この魔晶石採掘師が提唱する治癒師の研修に優秀な人物を送り込むのだそうです。
残念ながら我がワイオブール支部所属の治癒師はその選別から除かれています。
それと言うのもワイオブール支部から4名、隣接支部8か所から各一名が選ばれて、診療所のヘルパーとしてその診療を間近に見ることができるためです。
おまけに後で判ったことですが、救急飛空艇で患者の輸送に携わる場合を除いて、私たちも研修を聴講することができるのです。
当初は、治癒師まがいの成り上がりの採掘師のお手伝いかと若干落ち込んでも居たのですが、診療所の開設第一号で運ばれてきた少女を左程の時間を掛けずに治癒してしまった場に立ち会った私は、それこそ聖女様の再来を信じてしまいました。
少女が運ばれてきたのはフェルドラン国からでしたが、フェルドラン国の治癒師ギルドには高名な一級治癒師も居たはずなのです。
ワイオブール支部には二級治癒師までしか居ませんから、その一級治癒師がどうにもできなかった患者であれば当然にワイオブール支部でどうにかできるはずもありません。
当然に薬師ギルドとも連携を図った上で対応不可と判断されたので魔晶石ギルドに依頼された特別なケースに違い無いのです。
私の見ている目の前でその少女の治癒が為されましたけれど、不思議でした。
魔晶石採掘師のシルヴィ様の身体がぼんやりと金色に光り、それに合わせるように患者である少女の身体が朧気に光りました。
正直なところ何をしているのかよくわかりませんでしたが、後でシルヴィ様に教えてもらったところによると、その時点では魔法によって少女の身体の悪い部分を探査していたのだそうです。
私達治癒師も似たようなことを患者の身体に手を触れながら行います。
特に患部に近い場所に行き当たるとそこに熱を感じたり、魔力の変化を感じたりしますのでそれを追いかけてヒールを掛けるのですけれど、シルヴィ様は違いました。
手も触れずに少女の身体全体に探査をかけて悪いところを確認し、その上で治癒を施すのですが、先ほどよりもさらに強烈な金色の光が少女の身体を覆いつくし、至るところで小さく発光しているのが見えるのです。
それは、明らかに私達の知っているヒールではありませんでした。
ヒールとは癒しの波動を伴っているはずなのに、目の前で行われているのは、私にはむしろ攻撃をしているような感覚を覚えたのです。
そうして、その感は当たっていたようです。
シルヴィ様が後で教えてくれたところによると、少女の身体に巣くっていた悪しきモノを体外に取り出していたのだそうです。
そうして取り出した悪しきモノは、少女の身体の真上で真っ白な炎で焼き尽くしされて消滅しました。
但し、そうした処置は、対象となる悪しきモノを見つけることができないと、そもそも為すことができないそうなのです。
無差別に攻撃すれば正常な身体の組織を壊してしまうそうです。
今回の悪しきモノは、アルナクサリヘビと言う毒蛇の吐いた毒液によるもので、体内に侵入した毒液の一部が体内を巡る血流に乗って、至る所で悪さを働いていたのだそうです。
シルヴィ様は、悪しきモノを殲滅した後で、ヒールを掛けました。
とても暖かな淡い薄青の光で包まれた少女の身体から今度は間違いなくヒールを感じました。
但し、その効果は間違いなく一級治癒師のヒールを上回る力持っていました。
その波動を間近に見て感じることのできた私だからこそ断言できることです。
シルヴィ様は、神が与えた天性の能力を持っているのだと感じました。
生憎と、成人の儀で託されたお告げは神聖なものであって余人が口を挟むことなどできません。
シルヴィ様が魔晶石ギルドに受け入れられた事実は、間違いなくシルヴィ様が魔晶石採掘師と魔晶石加工師の天分を神から与えられていることの証明なのです。
他にシルヴィ様が治癒師の天分をを持っていたにしてもそれに優先した天分があればこそ、魔晶石ギルドに所属することになったのです。
私とて治癒師の職は得ていますが、その一方で魔法は多少なりとも使えます。
だからと言って魔法師になれるかと言うとそんなに生易しいものではありません。
むしろ神に告げられた天職を放棄すれば間違いなく転落してしまいます。
どれほどあがいても他の職には就くことができません。
それが天の定めなのです。
それゆえに古来から人々は成人の儀における託宣を尊び、その枠から外れないよう努力してきたのです。
斯く言う私も治癒師として成果を上げるべく日夜努力しているところなのです。
しかしながら、その必死の努力もシルヴィ様の能力には到底及びもつかないモノでした。
とは言いながら、この魔晶石ギルドの診療所に配属されたのも非常な幸運なのです。
ここにいる間に私はできるだけ多くの知識を得たいと考えています。
研修も来年初春には始められると聞いています。
そこでは体系的な知識から勉強を始めるそうで、シルヴィ様は研修生に与える教科書、参考書の類を私達にも貸し与えてくれるそうです。
私の任期は、1年と定められており、その任期の後は別な者と交替せねばなりませんが、その間に貪欲にシルヴィ様からその豊富な知識を盗もうと企てています。
シルヴィ様が運営する診療所は、週8日の内わずかに三日だけの営業で、しかも一日三人までと制限されていますが、いずれもが重病人にもかかわらず、生きて診療所まで運ばれてきた患者の生還率は実に9割を超えています。
先日などは明らかに心の臓が止まっている患者すら生き返らせてしまいました。
この患者さん、救急飛空艇で運ばれている最中であり、間もなく診療所脇の離着陸場と言う時点で息を引き取ってしまったのです。
私もその飛空艇の搭乗していて、呼吸が止まり心の臓が止まったのを確認しています。
輸送途中で患者が亡くなった場合、患者が乗った場所に送り返すということもあり得るのですが、その実、シルヴィ様からの普遍的な指示があって、機内で死亡を確認して場合は、その場で砂時計をひっくり返してその砂が尽きる前なら対応するというのがあったのです。
そのおかげでこの患者さんは正しく九死に一生を得ました。
着陸場に着くと直ぐ様シルヴィ様が乗り込んできて、患者の診断を始め、同時に指先から患者に向けて稲妻を発したのです。
死体と思われた患者が大きな痙攣をおこして担架の上で跳ねました。
驚くべきことに、それを二度繰り返してたら、患者が息を吹き返したんです。
それからシルヴィ様が担架の傍に密着しながら、診療所へ患者を運び、そこから診療が始まりました。
いつものように見事に患者さんを救えた時は居合わせた者が拍手をしました。
シルヴィ様は死んだ者ですら生き返らせる聖女様なんです。
但し、そのような蘇生術は死後一定時間を経過するとできないとシルヴィ様から教えられました。
人の身体には血が巡っています。
人が死んで心の臓が止まるとその血が流れなくなって、人の大事な脳ミソに血が流れなくなることで、脳に蓄えられている人の意識が消えるのだそうです。
単純に言えば、魂の無い抜け殻になってしまえば、仮に生き返らせても生きていた当時の記憶も何もないアンデッドの様な生き物になってしまうのだとか。
その限界がシルヴィ様の指示にあった砂時計なんだそうです。
砂時計の砂が全て落ちてしまったなら、助けることは非常に難しいそうです。
可能性があるのは身体の温度を非常に低く保った場合に、砂時計よりも長い時間蘇生の可能性があるということですが、普通では難しいですよね。
私達治癒師では身体の体温を下げるなんてことはできません。
それをすれば下手をすると生きている人を殺してしまうことにもなりかねませんから。
シルヴィ様の言うことはやはり中々理解しにくい部分が沢山あります。
治癒師の研修が始まったなら、もう少し体系的に理解できるようになるのかもと大いに期待はしているのですけれど、二級治癒師の中程度しか能力のない私ではどこまで食らいつけるかが心配です。
でも、せっかく掴んだ今チャンスは絶対に逃がしません。
そうそう、私も輸送要員スタッフとしてしばしば乗り組むことのある救急飛空艇ですけれど、そもそもこの飛空艇はシルヴィ様が独力で造り出されたものだとか。
ワイオブルグの飛行場でに稼働している飛空船は非常に大きなものですけれど、シルヴィ様の造った飛空艇はものすごく小型なのです。
普通の飛空船は長さが160尋近く、胴体の径が30尋から40尋近くある大きなものですけれど、救急飛空艇は長さが4尋、最大幅が6尋の大きさで至って小さいんです。
患者を収納するスペースも小さいですから、真ん中に担架を置き、その周囲に6人ほどが座れるスペースしかありません。
操縦室は四人が座れる座席があるようですが、基本的に操縦席と患者の収容スペースは分離されています。
会話はできるようになっていますけれどね。
このスペースに長い時間放置されると困りますが、この飛空艇ものすごく速いんです。
普通の大型飛空船の4倍以上の速度で飛行できますから、余程遠くでない限りは大丈夫です。
おまけに患者の寝る担架やベッドは別としても、付き添いや私達ヘルパーの座席もすごく座り心地の良いモノになっていて、長時間座っていても疲れにくい仕様になっているようです。
そうして飛空船の場合は高い高度を取ると、耳鳴りがしたり、頭が痛くなったりするんですけれど、この飛空艇は飛行船が飛ぶ高度の10倍もの高度を取りながら全く地上と同じ環境を造ってくれています。
更には、先日、小型飛空艇で患者を迎えに行く際に翼竜に襲撃されそうになりましたけれど、あっという間にその襲撃を避けて難を逃れました。
速度が速いこと、操縦士の腕が良いこと、更には飛空艇自体にバリアが張ってあって余程のことが無ければ魔物から襲撃を受けても大丈夫なようになっているんだそうです。
これはものすごい武器になるのかもと思いましたけれど、シルヴィ様曰く、この飛空艇は外部には売らないのだそうです。
いずれにしろ私のお師匠様になる人物は、とっても凄い人物だということがよくわかりました。
噂では、魔法師ギルド、鍛冶師ギルド、薬師ギルドなど様々なギルドがシルヴィ様の秘密を探ろうと暗躍しているそうな。
その意味ではウチの治癒師ギルドはかなり先行していますよね。
この優位性も逃さないようにしなければなりません。
日々班長のフェイネリアスさんと話し合っているところです。
ベテランのフェイネリアスさんたちと共に、魔晶石ギルドに開設された診療所にヘルパーとして派遣された12名の治癒師の一人です。
絶対に何かおかしいとは思いますけれど、天下の治癒師ギルドが匙を投げた患者を救う者が魔晶石ギルドに所属しているのです。
それも恐ろしい魔晶石採掘師だというのですからとんでもない話だと最初は思いました。
しかしながら治癒師ギルド本部は世界中の支部から選別して、この魔晶石採掘師が提唱する治癒師の研修に優秀な人物を送り込むのだそうです。
残念ながら我がワイオブール支部所属の治癒師はその選別から除かれています。
それと言うのもワイオブール支部から4名、隣接支部8か所から各一名が選ばれて、診療所のヘルパーとしてその診療を間近に見ることができるためです。
おまけに後で判ったことですが、救急飛空艇で患者の輸送に携わる場合を除いて、私たちも研修を聴講することができるのです。
当初は、治癒師まがいの成り上がりの採掘師のお手伝いかと若干落ち込んでも居たのですが、診療所の開設第一号で運ばれてきた少女を左程の時間を掛けずに治癒してしまった場に立ち会った私は、それこそ聖女様の再来を信じてしまいました。
少女が運ばれてきたのはフェルドラン国からでしたが、フェルドラン国の治癒師ギルドには高名な一級治癒師も居たはずなのです。
ワイオブール支部には二級治癒師までしか居ませんから、その一級治癒師がどうにもできなかった患者であれば当然にワイオブール支部でどうにかできるはずもありません。
当然に薬師ギルドとも連携を図った上で対応不可と判断されたので魔晶石ギルドに依頼された特別なケースに違い無いのです。
私の見ている目の前でその少女の治癒が為されましたけれど、不思議でした。
魔晶石採掘師のシルヴィ様の身体がぼんやりと金色に光り、それに合わせるように患者である少女の身体が朧気に光りました。
正直なところ何をしているのかよくわかりませんでしたが、後でシルヴィ様に教えてもらったところによると、その時点では魔法によって少女の身体の悪い部分を探査していたのだそうです。
私達治癒師も似たようなことを患者の身体に手を触れながら行います。
特に患部に近い場所に行き当たるとそこに熱を感じたり、魔力の変化を感じたりしますのでそれを追いかけてヒールを掛けるのですけれど、シルヴィ様は違いました。
手も触れずに少女の身体全体に探査をかけて悪いところを確認し、その上で治癒を施すのですが、先ほどよりもさらに強烈な金色の光が少女の身体を覆いつくし、至るところで小さく発光しているのが見えるのです。
それは、明らかに私達の知っているヒールではありませんでした。
ヒールとは癒しの波動を伴っているはずなのに、目の前で行われているのは、私にはむしろ攻撃をしているような感覚を覚えたのです。
そうして、その感は当たっていたようです。
シルヴィ様が後で教えてくれたところによると、少女の身体に巣くっていた悪しきモノを体外に取り出していたのだそうです。
そうして取り出した悪しきモノは、少女の身体の真上で真っ白な炎で焼き尽くしされて消滅しました。
但し、そうした処置は、対象となる悪しきモノを見つけることができないと、そもそも為すことができないそうなのです。
無差別に攻撃すれば正常な身体の組織を壊してしまうそうです。
今回の悪しきモノは、アルナクサリヘビと言う毒蛇の吐いた毒液によるもので、体内に侵入した毒液の一部が体内を巡る血流に乗って、至る所で悪さを働いていたのだそうです。
シルヴィ様は、悪しきモノを殲滅した後で、ヒールを掛けました。
とても暖かな淡い薄青の光で包まれた少女の身体から今度は間違いなくヒールを感じました。
但し、その効果は間違いなく一級治癒師のヒールを上回る力持っていました。
その波動を間近に見て感じることのできた私だからこそ断言できることです。
シルヴィ様は、神が与えた天性の能力を持っているのだと感じました。
生憎と、成人の儀で託されたお告げは神聖なものであって余人が口を挟むことなどできません。
シルヴィ様が魔晶石ギルドに受け入れられた事実は、間違いなくシルヴィ様が魔晶石採掘師と魔晶石加工師の天分を神から与えられていることの証明なのです。
他にシルヴィ様が治癒師の天分をを持っていたにしてもそれに優先した天分があればこそ、魔晶石ギルドに所属することになったのです。
私とて治癒師の職は得ていますが、その一方で魔法は多少なりとも使えます。
だからと言って魔法師になれるかと言うとそんなに生易しいものではありません。
むしろ神に告げられた天職を放棄すれば間違いなく転落してしまいます。
どれほどあがいても他の職には就くことができません。
それが天の定めなのです。
それゆえに古来から人々は成人の儀における託宣を尊び、その枠から外れないよう努力してきたのです。
斯く言う私も治癒師として成果を上げるべく日夜努力しているところなのです。
しかしながら、その必死の努力もシルヴィ様の能力には到底及びもつかないモノでした。
とは言いながら、この魔晶石ギルドの診療所に配属されたのも非常な幸運なのです。
ここにいる間に私はできるだけ多くの知識を得たいと考えています。
研修も来年初春には始められると聞いています。
そこでは体系的な知識から勉強を始めるそうで、シルヴィ様は研修生に与える教科書、参考書の類を私達にも貸し与えてくれるそうです。
私の任期は、1年と定められており、その任期の後は別な者と交替せねばなりませんが、その間に貪欲にシルヴィ様からその豊富な知識を盗もうと企てています。
シルヴィ様が運営する診療所は、週8日の内わずかに三日だけの営業で、しかも一日三人までと制限されていますが、いずれもが重病人にもかかわらず、生きて診療所まで運ばれてきた患者の生還率は実に9割を超えています。
先日などは明らかに心の臓が止まっている患者すら生き返らせてしまいました。
この患者さん、救急飛空艇で運ばれている最中であり、間もなく診療所脇の離着陸場と言う時点で息を引き取ってしまったのです。
私もその飛空艇の搭乗していて、呼吸が止まり心の臓が止まったのを確認しています。
輸送途中で患者が亡くなった場合、患者が乗った場所に送り返すということもあり得るのですが、その実、シルヴィ様からの普遍的な指示があって、機内で死亡を確認して場合は、その場で砂時計をひっくり返してその砂が尽きる前なら対応するというのがあったのです。
そのおかげでこの患者さんは正しく九死に一生を得ました。
着陸場に着くと直ぐ様シルヴィ様が乗り込んできて、患者の診断を始め、同時に指先から患者に向けて稲妻を発したのです。
死体と思われた患者が大きな痙攣をおこして担架の上で跳ねました。
驚くべきことに、それを二度繰り返してたら、患者が息を吹き返したんです。
それからシルヴィ様が担架の傍に密着しながら、診療所へ患者を運び、そこから診療が始まりました。
いつものように見事に患者さんを救えた時は居合わせた者が拍手をしました。
シルヴィ様は死んだ者ですら生き返らせる聖女様なんです。
但し、そのような蘇生術は死後一定時間を経過するとできないとシルヴィ様から教えられました。
人の身体には血が巡っています。
人が死んで心の臓が止まるとその血が流れなくなって、人の大事な脳ミソに血が流れなくなることで、脳に蓄えられている人の意識が消えるのだそうです。
単純に言えば、魂の無い抜け殻になってしまえば、仮に生き返らせても生きていた当時の記憶も何もないアンデッドの様な生き物になってしまうのだとか。
その限界がシルヴィ様の指示にあった砂時計なんだそうです。
砂時計の砂が全て落ちてしまったなら、助けることは非常に難しいそうです。
可能性があるのは身体の温度を非常に低く保った場合に、砂時計よりも長い時間蘇生の可能性があるということですが、普通では難しいですよね。
私達治癒師では身体の体温を下げるなんてことはできません。
それをすれば下手をすると生きている人を殺してしまうことにもなりかねませんから。
シルヴィ様の言うことはやはり中々理解しにくい部分が沢山あります。
治癒師の研修が始まったなら、もう少し体系的に理解できるようになるのかもと大いに期待はしているのですけれど、二級治癒師の中程度しか能力のない私ではどこまで食らいつけるかが心配です。
でも、せっかく掴んだ今チャンスは絶対に逃がしません。
そうそう、私も輸送要員スタッフとしてしばしば乗り組むことのある救急飛空艇ですけれど、そもそもこの飛空艇はシルヴィ様が独力で造り出されたものだとか。
ワイオブルグの飛行場でに稼働している飛空船は非常に大きなものですけれど、シルヴィ様の造った飛空艇はものすごく小型なのです。
普通の飛空船は長さが160尋近く、胴体の径が30尋から40尋近くある大きなものですけれど、救急飛空艇は長さが4尋、最大幅が6尋の大きさで至って小さいんです。
患者を収納するスペースも小さいですから、真ん中に担架を置き、その周囲に6人ほどが座れるスペースしかありません。
操縦室は四人が座れる座席があるようですが、基本的に操縦席と患者の収容スペースは分離されています。
会話はできるようになっていますけれどね。
このスペースに長い時間放置されると困りますが、この飛空艇ものすごく速いんです。
普通の大型飛空船の4倍以上の速度で飛行できますから、余程遠くでない限りは大丈夫です。
おまけに患者の寝る担架やベッドは別としても、付き添いや私達ヘルパーの座席もすごく座り心地の良いモノになっていて、長時間座っていても疲れにくい仕様になっているようです。
そうして飛空船の場合は高い高度を取ると、耳鳴りがしたり、頭が痛くなったりするんですけれど、この飛空艇は飛行船が飛ぶ高度の10倍もの高度を取りながら全く地上と同じ環境を造ってくれています。
更には、先日、小型飛空艇で患者を迎えに行く際に翼竜に襲撃されそうになりましたけれど、あっという間にその襲撃を避けて難を逃れました。
速度が速いこと、操縦士の腕が良いこと、更には飛空艇自体にバリアが張ってあって余程のことが無ければ魔物から襲撃を受けても大丈夫なようになっているんだそうです。
これはものすごい武器になるのかもと思いましたけれど、シルヴィ様曰く、この飛空艇は外部には売らないのだそうです。
いずれにしろ私のお師匠様になる人物は、とっても凄い人物だということがよくわかりました。
噂では、魔法師ギルド、鍛冶師ギルド、薬師ギルドなど様々なギルドがシルヴィ様の秘密を探ろうと暗躍しているそうな。
その意味ではウチの治癒師ギルドはかなり先行していますよね。
この優位性も逃さないようにしなければなりません。
日々班長のフェイネリアスさんと話し合っているところです。
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