85 / 121
第六章 異変
6ー13 流行り病の調査 その四
しおりを挟む
ハーイ、シルヴィですよぉ。
危険な感染地帯に行って来ましたけれど、私は元気です。
今は、防護車両でベースキャンプに戻っています。
あ、封鎖線の柵が見えてきましたね。
兵士さんが車両が通れるように柵を開けてくれましたけれど、車両には近づいてきません。
うん、とっても感染防護にとっては良いことなんだけれど、何となく私が遠ざけられているようでちょっと気にはなりますよね。
シルヴィは、汚物じゃないんですから、そんな妙な目で見るのはやめてください。
現場で使用した防護服は焼却処分して来ましたが、念のため、ここでも新しい防護服を着用してから防護車両を降りました。
そうしてモリソンさんとディヴィッドさんに報告です。
一応、戻る途中で通信機を使って大まかな報告はしていますけれどね。
流石に元凶の話は、複雑なので詳細な報告は省いています。
口頭報告でもお二人さんに医療知識があるわけじゃありませんから似たようなものですけれど、元凶を除いて実物を見せることができるだけに説得力があります。
いずれにしろ、瀕死の生存者二名を発見したこと、元凶と思われるモノを発見したこと、当該元凶を退治するために体内を巡る体液の中から元凶を取り除くための魔道具として、首輪と腕輪を作成したことを伝えました。
その上で、封鎖線の警備についている兵士を含めてベースキャプ周辺に居る人たちの健康診断を実施することにしました。
モリソンさんやディヴィッドさんの意見を聞いても仕方がありませんので、ここは私の独断と偏見で実施します。
夕刻近くになっていましたけれど、対応は早い方がいいので、すぐに開始しました。
被験者は、最初にモリソンさん、次いでディヴィッドさん。
いずれも元凶及び元凶予備軍はいませんでした。
念のため、その場で、首輪と腕輪を造り、二人に装着してもらいました。
首輪と言ってもとっても丈夫な首飾りのようなものですよ。
奴隷にでもつけるような首輪は、流石に問題がありそうなので止めました。
これさえ装着していれば、仮に、どこかで元凶予備軍の体内侵入があって元凶が復活しても、首輪若しくは腕輪が除去してくれるはずです。
因みにこの魔道具のフィルターで体液から除去したモノは、それぞれの魔道具に集積されます。
集積箇所は堅牢な固形物の牢獄みたいなものですから、元凶及び元凶予備軍はそこから出ることはできません。
元凶は小さいですからね、1ミリ四方もあれば数千万単位、数億単位で収容できます。
そんなこんなで封鎖任務に就いている将兵全て(約百名?)の健康診断を行い、魔道具を装着させました。
多少ブーブー言うような人(多分将校さん?ですかねぇ)も居ましたけれど無視です。
ここでは私が絶対的な権限を持つ女王なんです。
文句を言うなら病原体を放置して帰っちゃうぞ。
まぁ、人の命がかかっていますから、私も手掛けた以上は簡単には帰りませんけれどね。
むしろ本当に反抗する人がいたら物理的な力でもって強制的に従わせます。
封鎖線付近での健康診断がすべて終えてから、生存者二名の入ったカプセル二体を防護車両から降ろし、新たに作った診療テントに収容します。
ディヴィッドさんにお願いして、治癒師ギルドから女性の方を派遣してもらうことにしました。
二人の少女の看護をしてもらうためです。
私は色々することがありますので、今後とも二人の面倒は片手間でしか見てあげられないと思うのです。
もう一つ、拾った猫ちゃんの面倒もモリソンさんとディヴッドさんにお願いしました。
一緒に連れて行くことはできますけれど、万が一長期間放置しなければならないような事態が起きたら猫ちゃんが可哀そうですもんね。
それらをお願いして私は、診療テントの中でお休みすることにしました。
この時点では、もう防護服は脱いでいます。
勿体ない話ですけれど、汚染されていようがいまいが、一度使ったら防護服は焼却処分なのです。
二人の少女は、点滴を受けて安らかに眠っています。
問題は栄養不足と脱水症状でしたから、この状態ならば多分一月とかからずに全回復できるでしょう。
◇◇◇◇
翌日は、また朝早くから出動です。
昨夕の内にディヴィッドさんに予めお断りして、ジラベルに放置されている遺体及び住居施設等の焼却を実施する予定にしています。
ディヴィッドさんも上司に報告してクロマルド王国の然るべき人物?組織?から承諾を貰っているようです。
ジラベル村に到着すると、村の中に分散している遺体を付近のベッド、床あるいは土壌なんかと一緒に集めました。
私の魔法でやっていますので、遺体等に直接手を触れることはありません。
次いで村の住居を、一か所に集積します。
この際は埃が拡散しないように家等に結界を施して運びました。
その上に遺体を乗せて火葬をするのです。
但し、やっぱり、どんな状況だったのかは証拠として保存しておく必要がありますよね。
開発したばかりの撮影機能のある魔道具を使って、現場写真の記録をしました。
まだ動画は撮影できませんし、音声の録音機能もありませんが、そのうち魔法陣を使った魔道具で何か考えてみます。
これで、関係者への説明も少しは楽になるんじゃないかと思います。
残念ながら液晶に表示するだけで、プリンターがないので印刷はまだ無理です。
火葬については可燃物の燃焼という自然の火勢に任せると時間がもったいないので、私の火属性魔法でも効果の大きな魔法を使いました。
私の50mほど目の前で青白い豪炎が吹きあがっています。
多分、最高温度は一万度を超えているんじゃないかと思います。
焼却処分は、ものの五分ほどで終了しました。
次いで井戸水についても危険因子ですので、井戸への侵入口、井戸からの排出口双方にフィルタリングの魔道具を設置しました。
これで、井戸に流入した水も、井戸から流出した水も自動的に元凶と元凶予備軍が除去されるはずです。
それからワルドレン峡谷内の水辺に行きました。
鑑定を掛けると確かに元凶予備軍が水の中に潜んでいます。
ここにも地下の流入口に魔道具を設置するとともに、私の能力で水の中に含まれている元凶予備軍を順次除去しました。
次いでセンサーを拡大し、ワルドレン峡谷内の生物で元凶若しくは元凶予備軍を持っているものを順次見つけ出しました。
一旦、私の頭の中でモノを特定できると脳内センサーが働いて、範囲制限はありますけれど瞬時に見分けがつくようになっているんです。
チートって本当に素ん晴らしいですよね。
峡谷内で結構な時間をかけて捜索し、最後にジラベル村周辺地域に同様のサーチを掛けて一応の安全性を確認しています。
この時点で、一応ジラベル村とワルドレン峡谷で私が為すべきことは終わりました。
でも、カロス首長国にももう一か所の汚染地域らしいものがありますから、モリソンさんとディヴィッドさんに連絡した上で、このまま、カロス首長国にある隣村に向かうことにします。
カロス首長国へは、ディヴィッドさん経由で何らかの連絡が行くでしょう。
或いは、カロス首長国から通信機による連絡があるかもしれません。
事前に確認した所では、ジラベルからカロス首長国のフィガルド村までは、直線距離で20ガーシュほど、道なりでは35ガーシュ程でしょうか。
今日の明るいうちには着けそうです。
太陽がかなり傾いていますが、フィガルド村の近傍に到着しました。
村の周囲を柵が覆っていますが、そこから200mほど離れた場所で、ヴィルデカッツ(ヤマネコ)の死骸があり、ほとんど骨だけになっていますけれど比較的新しい遺骸のようです。
念のためその近くへ防護車両を寄せて鑑定を掛けました。
青紫色っぽいカラスが遺骸の傍から飛び立ったので、同じく瞬時に鑑定を掛けました。
ヴィルデカッツには元凶と元凶予備軍の痕跡がありました。
カラスには予備軍が付いていたみたいですけれど、飛び立った時に埃となって落ちたみたいです。
ウーン、鳥類には感染しないということかもしれません。
今後の研究課題かもしれませんね。
そうして村の外からの観測(サーチをかけました)では生存者は居ませんでした。
生存者が居たら居たで面倒なのですけれど、全滅ということが判ると重いし、切ないですね。
ジラベル村を襲った疫病と同じかどうかは、もう少し近づかないと分かりません。
私のセンサーでは今のところ200mほどまで近づかないと判定ができないんです。
村の端で、防護車両を降りて、村の中の探索です。
最初の家で腐敗した遺体を見つけました。
死体には特に外傷はなく、腐敗はしているものの元凶は髄膜周辺に痕跡があり、元凶予備軍は遺体周辺に多数残っていました。
この元凶予備軍であるオーシストは、少し強い風が吹くと空中を舞いますから早めに処分をしなければなりません。
私は、ベースキャンプの二人(モリソンさんとディヴィッドさん)に連絡を入れました。
「こちらシルヴィです。
カロス首長国のフィガルド村に到着しました。
生存者はいません。
ここでの疫病もジラベルと同じ疫病であることを確認しました。
遺体の腐敗状況から見て、フィガルド村の疫病発生がジラベルよりも早かった可能性があります。
感染源が何かは不明ですが、あるいは動物もしくは動物の遺骸が感染源だった可能性もあります。
村の入り口近くにほとんど骨だけになったヴィルデカッツの死骸がありました。
この死骸の周辺にも元凶の痕跡がありますので、この死骸から生じた不活性の元凶が、人体に入ることによって活性化したことが原因ではないかと考えています。
このまま放置すると疫病の原因となったものが風次第で周囲にまき散らされますので、このフィガルド村の遺体及び住居の焼却処分を急がねばなりません。
恐れ入りますが、お二人にお願いしたいのは、カロス首長国の然るべき方と連絡を取っていただき、現場の判断で遺体及び住居棟の焼却処分を実施する許可を貰ってください。
その返事が来るまでは、村の外の防護車両の中で待機します。」
「了解。
早急に関係先と連絡を取って、結果が判ればそちらに連絡する。」
それから間もなく返事がきました。
カロス首長国からは現場判断で処分して差し支えないとの返事が来たようです。
但し、処理が済んだ後で、カロス首長国側の封鎖線に待機する現地対策本部へ顔を出してほしいとの話でした。
「カロス首長国を訪問する際に、モリソンさんも一緒に行かれますか?」
「ああ、面倒を掛けることになるが、できればシルヴィと一緒に顔を出した方が良いだろう。
焼却処理が終わったらこちらへ一旦こちらへ戻ってくれるか?」
「了解です。
但し、泊りがけになる可能性もありますので、そのおつもりでいてください。」
「ああ、だが、君の乗っている例の乗り物ならばそんなにかからないのではないのか?」
「ええ、移動時間は精々二刻も観ておけばいいと思うのですけれど、向こうでの状況説明に時間がかかると思います。
それに焼却処分を済ませても、ジラベル村とフィガルド村は当分の間閉鎖しておく必要がありますからね。
この疫病の厄介なところは、疫病の原因となったものが殻に閉じこもり、かなり長い時間を冬眠のような状態で生き続けることなんです。
砂漠の植物で乾燥した種のまま雨が降るまで10年以上もじっと待っているモノもあると聞いています。
この疫病の元凶は、宿主に辿り着けるまでじっと我慢していることができる可能性があります。
一応集落の周囲の安全性はそれなりに確認していますが、漏れがあると困ります。
従って、安全のためには二つの村自体を立ち入り禁止して閉鎖するしかありません。」
「わかった。
カロス首長国の方へは、向こうに行った際に申し出ることとして、クロマルド王国の方へはその旨連絡をしておこう。」
================================
7月12日、一部の字句修正を行いました。
By サクラ近衛将監
危険な感染地帯に行って来ましたけれど、私は元気です。
今は、防護車両でベースキャンプに戻っています。
あ、封鎖線の柵が見えてきましたね。
兵士さんが車両が通れるように柵を開けてくれましたけれど、車両には近づいてきません。
うん、とっても感染防護にとっては良いことなんだけれど、何となく私が遠ざけられているようでちょっと気にはなりますよね。
シルヴィは、汚物じゃないんですから、そんな妙な目で見るのはやめてください。
現場で使用した防護服は焼却処分して来ましたが、念のため、ここでも新しい防護服を着用してから防護車両を降りました。
そうしてモリソンさんとディヴィッドさんに報告です。
一応、戻る途中で通信機を使って大まかな報告はしていますけれどね。
流石に元凶の話は、複雑なので詳細な報告は省いています。
口頭報告でもお二人さんに医療知識があるわけじゃありませんから似たようなものですけれど、元凶を除いて実物を見せることができるだけに説得力があります。
いずれにしろ、瀕死の生存者二名を発見したこと、元凶と思われるモノを発見したこと、当該元凶を退治するために体内を巡る体液の中から元凶を取り除くための魔道具として、首輪と腕輪を作成したことを伝えました。
その上で、封鎖線の警備についている兵士を含めてベースキャプ周辺に居る人たちの健康診断を実施することにしました。
モリソンさんやディヴィッドさんの意見を聞いても仕方がありませんので、ここは私の独断と偏見で実施します。
夕刻近くになっていましたけれど、対応は早い方がいいので、すぐに開始しました。
被験者は、最初にモリソンさん、次いでディヴィッドさん。
いずれも元凶及び元凶予備軍はいませんでした。
念のため、その場で、首輪と腕輪を造り、二人に装着してもらいました。
首輪と言ってもとっても丈夫な首飾りのようなものですよ。
奴隷にでもつけるような首輪は、流石に問題がありそうなので止めました。
これさえ装着していれば、仮に、どこかで元凶予備軍の体内侵入があって元凶が復活しても、首輪若しくは腕輪が除去してくれるはずです。
因みにこの魔道具のフィルターで体液から除去したモノは、それぞれの魔道具に集積されます。
集積箇所は堅牢な固形物の牢獄みたいなものですから、元凶及び元凶予備軍はそこから出ることはできません。
元凶は小さいですからね、1ミリ四方もあれば数千万単位、数億単位で収容できます。
そんなこんなで封鎖任務に就いている将兵全て(約百名?)の健康診断を行い、魔道具を装着させました。
多少ブーブー言うような人(多分将校さん?ですかねぇ)も居ましたけれど無視です。
ここでは私が絶対的な権限を持つ女王なんです。
文句を言うなら病原体を放置して帰っちゃうぞ。
まぁ、人の命がかかっていますから、私も手掛けた以上は簡単には帰りませんけれどね。
むしろ本当に反抗する人がいたら物理的な力でもって強制的に従わせます。
封鎖線付近での健康診断がすべて終えてから、生存者二名の入ったカプセル二体を防護車両から降ろし、新たに作った診療テントに収容します。
ディヴィッドさんにお願いして、治癒師ギルドから女性の方を派遣してもらうことにしました。
二人の少女の看護をしてもらうためです。
私は色々することがありますので、今後とも二人の面倒は片手間でしか見てあげられないと思うのです。
もう一つ、拾った猫ちゃんの面倒もモリソンさんとディヴッドさんにお願いしました。
一緒に連れて行くことはできますけれど、万が一長期間放置しなければならないような事態が起きたら猫ちゃんが可哀そうですもんね。
それらをお願いして私は、診療テントの中でお休みすることにしました。
この時点では、もう防護服は脱いでいます。
勿体ない話ですけれど、汚染されていようがいまいが、一度使ったら防護服は焼却処分なのです。
二人の少女は、点滴を受けて安らかに眠っています。
問題は栄養不足と脱水症状でしたから、この状態ならば多分一月とかからずに全回復できるでしょう。
◇◇◇◇
翌日は、また朝早くから出動です。
昨夕の内にディヴィッドさんに予めお断りして、ジラベルに放置されている遺体及び住居施設等の焼却を実施する予定にしています。
ディヴィッドさんも上司に報告してクロマルド王国の然るべき人物?組織?から承諾を貰っているようです。
ジラベル村に到着すると、村の中に分散している遺体を付近のベッド、床あるいは土壌なんかと一緒に集めました。
私の魔法でやっていますので、遺体等に直接手を触れることはありません。
次いで村の住居を、一か所に集積します。
この際は埃が拡散しないように家等に結界を施して運びました。
その上に遺体を乗せて火葬をするのです。
但し、やっぱり、どんな状況だったのかは証拠として保存しておく必要がありますよね。
開発したばかりの撮影機能のある魔道具を使って、現場写真の記録をしました。
まだ動画は撮影できませんし、音声の録音機能もありませんが、そのうち魔法陣を使った魔道具で何か考えてみます。
これで、関係者への説明も少しは楽になるんじゃないかと思います。
残念ながら液晶に表示するだけで、プリンターがないので印刷はまだ無理です。
火葬については可燃物の燃焼という自然の火勢に任せると時間がもったいないので、私の火属性魔法でも効果の大きな魔法を使いました。
私の50mほど目の前で青白い豪炎が吹きあがっています。
多分、最高温度は一万度を超えているんじゃないかと思います。
焼却処分は、ものの五分ほどで終了しました。
次いで井戸水についても危険因子ですので、井戸への侵入口、井戸からの排出口双方にフィルタリングの魔道具を設置しました。
これで、井戸に流入した水も、井戸から流出した水も自動的に元凶と元凶予備軍が除去されるはずです。
それからワルドレン峡谷内の水辺に行きました。
鑑定を掛けると確かに元凶予備軍が水の中に潜んでいます。
ここにも地下の流入口に魔道具を設置するとともに、私の能力で水の中に含まれている元凶予備軍を順次除去しました。
次いでセンサーを拡大し、ワルドレン峡谷内の生物で元凶若しくは元凶予備軍を持っているものを順次見つけ出しました。
一旦、私の頭の中でモノを特定できると脳内センサーが働いて、範囲制限はありますけれど瞬時に見分けがつくようになっているんです。
チートって本当に素ん晴らしいですよね。
峡谷内で結構な時間をかけて捜索し、最後にジラベル村周辺地域に同様のサーチを掛けて一応の安全性を確認しています。
この時点で、一応ジラベル村とワルドレン峡谷で私が為すべきことは終わりました。
でも、カロス首長国にももう一か所の汚染地域らしいものがありますから、モリソンさんとディヴィッドさんに連絡した上で、このまま、カロス首長国にある隣村に向かうことにします。
カロス首長国へは、ディヴィッドさん経由で何らかの連絡が行くでしょう。
或いは、カロス首長国から通信機による連絡があるかもしれません。
事前に確認した所では、ジラベルからカロス首長国のフィガルド村までは、直線距離で20ガーシュほど、道なりでは35ガーシュ程でしょうか。
今日の明るいうちには着けそうです。
太陽がかなり傾いていますが、フィガルド村の近傍に到着しました。
村の周囲を柵が覆っていますが、そこから200mほど離れた場所で、ヴィルデカッツ(ヤマネコ)の死骸があり、ほとんど骨だけになっていますけれど比較的新しい遺骸のようです。
念のためその近くへ防護車両を寄せて鑑定を掛けました。
青紫色っぽいカラスが遺骸の傍から飛び立ったので、同じく瞬時に鑑定を掛けました。
ヴィルデカッツには元凶と元凶予備軍の痕跡がありました。
カラスには予備軍が付いていたみたいですけれど、飛び立った時に埃となって落ちたみたいです。
ウーン、鳥類には感染しないということかもしれません。
今後の研究課題かもしれませんね。
そうして村の外からの観測(サーチをかけました)では生存者は居ませんでした。
生存者が居たら居たで面倒なのですけれど、全滅ということが判ると重いし、切ないですね。
ジラベル村を襲った疫病と同じかどうかは、もう少し近づかないと分かりません。
私のセンサーでは今のところ200mほどまで近づかないと判定ができないんです。
村の端で、防護車両を降りて、村の中の探索です。
最初の家で腐敗した遺体を見つけました。
死体には特に外傷はなく、腐敗はしているものの元凶は髄膜周辺に痕跡があり、元凶予備軍は遺体周辺に多数残っていました。
この元凶予備軍であるオーシストは、少し強い風が吹くと空中を舞いますから早めに処分をしなければなりません。
私は、ベースキャンプの二人(モリソンさんとディヴィッドさん)に連絡を入れました。
「こちらシルヴィです。
カロス首長国のフィガルド村に到着しました。
生存者はいません。
ここでの疫病もジラベルと同じ疫病であることを確認しました。
遺体の腐敗状況から見て、フィガルド村の疫病発生がジラベルよりも早かった可能性があります。
感染源が何かは不明ですが、あるいは動物もしくは動物の遺骸が感染源だった可能性もあります。
村の入り口近くにほとんど骨だけになったヴィルデカッツの死骸がありました。
この死骸の周辺にも元凶の痕跡がありますので、この死骸から生じた不活性の元凶が、人体に入ることによって活性化したことが原因ではないかと考えています。
このまま放置すると疫病の原因となったものが風次第で周囲にまき散らされますので、このフィガルド村の遺体及び住居の焼却処分を急がねばなりません。
恐れ入りますが、お二人にお願いしたいのは、カロス首長国の然るべき方と連絡を取っていただき、現場の判断で遺体及び住居棟の焼却処分を実施する許可を貰ってください。
その返事が来るまでは、村の外の防護車両の中で待機します。」
「了解。
早急に関係先と連絡を取って、結果が判ればそちらに連絡する。」
それから間もなく返事がきました。
カロス首長国からは現場判断で処分して差し支えないとの返事が来たようです。
但し、処理が済んだ後で、カロス首長国側の封鎖線に待機する現地対策本部へ顔を出してほしいとの話でした。
「カロス首長国を訪問する際に、モリソンさんも一緒に行かれますか?」
「ああ、面倒を掛けることになるが、できればシルヴィと一緒に顔を出した方が良いだろう。
焼却処理が終わったらこちらへ一旦こちらへ戻ってくれるか?」
「了解です。
但し、泊りがけになる可能性もありますので、そのおつもりでいてください。」
「ああ、だが、君の乗っている例の乗り物ならばそんなにかからないのではないのか?」
「ええ、移動時間は精々二刻も観ておけばいいと思うのですけれど、向こうでの状況説明に時間がかかると思います。
それに焼却処分を済ませても、ジラベル村とフィガルド村は当分の間閉鎖しておく必要がありますからね。
この疫病の厄介なところは、疫病の原因となったものが殻に閉じこもり、かなり長い時間を冬眠のような状態で生き続けることなんです。
砂漠の植物で乾燥した種のまま雨が降るまで10年以上もじっと待っているモノもあると聞いています。
この疫病の元凶は、宿主に辿り着けるまでじっと我慢していることができる可能性があります。
一応集落の周囲の安全性はそれなりに確認していますが、漏れがあると困ります。
従って、安全のためには二つの村自体を立ち入り禁止して閉鎖するしかありません。」
「わかった。
カロス首長国の方へは、向こうに行った際に申し出ることとして、クロマルド王国の方へはその旨連絡をしておこう。」
================================
7月12日、一部の字句修正を行いました。
By サクラ近衛将監
4
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる