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第六章 異変
6ー9 新たなる脅威
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ハーイ、シルヴィですよぉ。
お元気でいらっしゃいましたか?
シルヴィも相変わらず元気にやっていますよ。
魔晶石の採掘に、魔道具部品の製作、ポーションの製造も、そうして今一番ホットなのが瘴気の除去に関するマニュアル作成なんです。
今のところ私しか知らないことや、同行した採掘師しか知らないことなどをマニュアル化しておかないと、いずれ対応できる人が居なくなる恐れがあります。
特に、結界放射器の扱い方、私が新たに製造した魔鉱石対応のレーザーカッターの製造方法と取扱い説明書等々。
後世に残しておかなければいけないものが結構あるんです。
私が健康なうちは大丈夫ですけれどね。
問題は結界放射器の製造方法なんですけれど、これは流石に空間魔法、光魔法、それに治癒魔法の合わせ技なので使える人がほとんど居ない可能性が高いんです。
多分、それぞれの属性魔法を使える人が個々に居たとしても、付与をしようとすると互いに干渉しあう可能性が高く、同時発動で付与することは難しいと思います。
そうしてまた、個別に魔法を付与して行くと、同時発動ができない代物になって結界は発動しなくなると思うのです。
一応、私が個別に付与をしてみたのですけれど、同時発動はできずに、三つのうちの一つの発動しかできないとわかっています。
ですから他の人がやってできるかも知れないという可能性は極めて低いと思います。
従って、他の魔道具のブラックボックスと同様に、私が中枢部分を相当数作り置きしておくしか方法がないですね。
形あるものはいずれ滅しますが、その間に私以外の誰かが別の方法を見つけてくれることを願っています。
そんなこんなで結構忙しい日々を過ごしているんですが、私が魔晶石ギルドの本部にやってきてから一年が過ぎました。
同級生たちもようやく三級採掘師や三級加工師として、戦線に加わりつつあるのです。
今回は全員が一応卒業し、資格も取れたようです。
卒業後のとある銀曜日、私は同級生を誘って、公都に出かけ、レストランを借り切って卒業祝いをしてあげました。
先に卒業し、既に稼いでいる先輩からのノブレス・オブリージュ?(ン?ちょっと違うかも?)みたいなものです。
私のギルド口座にはとんでもない金額が貯まっているのですけれど、余り使う場面が無いんです。
ですから私からのお祝いにみんなに食事をプレゼントするのです。
私以外の同期生は、みんな今のところ借金漬けですからね。
遊興や贅沢な食事に使うお金なんか持っていないんです。
中には若干肉めいた発言をする子も約一人ほどいましたけれど、そんなことは気にせずに、皆で食事を楽しみました。
そんな平穏で安息の日々も束の間のことでした。
遠征から戻って一月余り経ってから、クロマルド王国とカロス首長国から連名で魔晶石ギルドに面倒な相談ごとがやって来たのです。
相談があったのは魔晶石ギルドの事務局当てであり、対応は派遣班の支援班長だった副部長のモリソンさんが行ったようです。
モリソン副部長は、話を聞いたうえで幹部にも報告し、その上で、私に相談を持ち掛けてきたのです。
「シルヴィ君、一応我がギルドの治癒班にも話をした上で、他に適任者が居ないようなので君に相談するしかないのだが、・・・・。
君は病気の治療に詳しいかね?」
あらら、困ったことを聞かれちゃいましたねぇ。
ギルドにはもちろん内緒ですけれど、カル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤでは医師の真似事をしていますしね。
このギルドでも「黒の救命士」と二つ名をつけられる程、とある重症患者を治療したことがありますし、ツアイス症候群や飲料水の関連では、止むを得ず、色々と医療知識めいたものをひけらかしましたから、全く知らない振りはできません。
「えーっと。
左程詳しいわけではありませんが、それなりに知識は持っていますし、治癒魔法も少しは使えます。」
「そうか、それはよかった。
実は、昨日のことなのだが、クロマルド王国とその隣国のカロス首長国から連名で当ギルドに相談があった。
どうも、カロス首長国の南部地域とクロマルド王国北部地域で死病が流行っているようなのだが、原因は不明ではあるものの、或いはこの死病に瘴気が関連していないかどうかを確認してくれないかということなのだが・・・。
魔物のことならばともかく、流石に病気のことまでは手に負えないと思うのだが・・・。
それでも瘴気関連ともなれば国際会議でその処置を我がギルドに一任された経緯もあり、全く無視もできない。
だが、正直なところ何を調べたらいいのか皆目見当もつかないのだが、・・・。
シルヴィ君に何か良い知恵は無いかね。」
「詳細を知らずに助言もできませんけれど、流行っている死病というのはどんな病なのですか?」
「よくわからないが、伝染性の病気のようだ。
発症すると高熱を発し、二日ほどで死に至る病気らしい。
傍で看病していた者は全員この死病に取り付かれて亡くなっているので、詳細な症状が良くわからないのだが、未だ高熱を発しないうちに接触していた者まで発症するに至り、現状は汚染地域を封鎖して人の出入りを禁止している状況のようだ。
但し、それでも封鎖しきれておらず、徐々にだが封鎖地域は拡大していると聞いている。
放置すれば複数の国が滅する恐れもある。」
「お話を聞いた限りでは色々と危険な伝染病の可能性が高いと思いますけれど、生半可な知識で対応できるとは思えません。
治癒師ギルドでは対応できないのでしょうか?」
「うん、・・・。
治癒師ギルドでも事態を重視していて何人か治癒のベテランを派遣したらしいのだが、残念ながら彼らも現地で発症し、既に本部から派遣されたベテラン3人ほどが亡くなっているという。
どうも、治癒師ギルドでも手の施しようがないらしい。」
「そんな難題を持ち込まれても対応に困りますよねぇ。
伝染する病に対処するには、最低限度感染を防ぎながら、何が病気の原因なのか特定する必要がありますけれど・・・。
おそらくは伝染病にかかった人との接触若しくは患者の呼気を吸い込むことで発症する可能性が高いです。
仮に病人と接触するならば、相応の防護服が必要ですね。
それなしに近づけばそれだけで病気にかかる恐れがあります。
危ないのは、主として患者の体液で、唾液、涙、汗、血液、排泄物などですが、それ以外に患者の吐く息に含まれる微小な霧状の水分も吸い込むと危険です。
相手は目に見えない極めて微小な毒のようなモノと考えてもらえば良いかも知れません。
最低限度、患者とは一尋半ほどの距離を空けなければいけませんし、密閉された空間に患者と同居するだけで病気が伝染する可能性があります。
また、病人の生死に関わりなく、病人が触れたモノ全てが病気発生の原因になりかねません。
消毒と言って、目に見えない病気の元を殺す必要があるのですが、原因が特定できないとその消毒方法もわかりません。」
「ちょっと待ってくれ。
シルヴィの説明だと目に見えない病気の元があって、それが患者の体液や吐く息を通じて人に感染すると、そういうことなのか?」
「はい、その通りです。
それと大事なことは、患者が死んでもその病気の元はしばらく消滅しないで生き残っているということです。
場合により、風などで煽られると、より遠くへ拡散することもあり得ます。」
「うーん、・・・。
それほど危険なのか・・・。
それを防ぐには何か方法があるのかね?」
「死体や患者が触れたモノは全て焼却すべきですが、その際にも可能な限りヒトやモノに接触しないようにする必要があります。
どうしても止むを得ず接触する場合は、素肌での接触は避け、手袋を着用し、その手袋は使用後すぐに焼却します。
同様に衣服もできるだけ気密性の高いものを着用し、使用後に焼却します。
更には、その作業をする人は、素肌の露出は避ける必要がありますし、呼吸も安全な空気でしなければなりません。
総じてこれまでにない全く新たな装備一式が必要とされると思います。」
「新たな装備って、そんなものがどこに?」
「時間は多少かかりますけれど、私が造ります。
そのために、工房の敷地を一つ準備してください。
適当なスペースが無ければ、水路正門から本館に至る道路脇の敷地を使用させてください。
私がそこに新たな工房を作ります。」
先ごろの遠征で、要塞まがいの倉庫を短期間に作り上げたシルヴィの規格外の能力を知っているので、モリソンはその言葉を疑わなかった。
すぐさま幹部会に報告し、水路口から本部本館へ至る道路脇の敷地を自由に使う許可を貰ったのである。
クロマルド王国とカラス首長国に対しては、今すぐには動けないが現在対処方法を検討中とだけ返事をしておいた。
翌日から、シルヴィは、水路正門をくぐって直ぐ右手側の敷地の森を潰し、比較的大きな工房を作り出した。
感染症対策のP-Ⅳレベルの気密工房を作るのです。
その為の魔道具や特殊材料も色々と開発しました。
ツアィス症候群を調べるためにヒラトップに相応の施設は準備しましたけれど、その際は防護服までは準備していませんでした。
結界で散逸や侵入を防げると思っていたからです。
今回は明らかに死病ですので対応を間違えるとシルヴィ自身も危ない可能性がありますし、外向けに相応の防護装備を見せつける必要もありました。
準備するのは、魔石で動く小型ポンプ(P-Ⅳ施設以内を負圧にするための空気ポンプ)、気密素材になるようなゴム若しくは有機素材(シリコン樹脂系を想定中)、圧縮空気を貯め込む空気ボンベ、そのボンベから吸気を適度の圧力で取り出す調圧装置とヘルメット一体型の防護服になります。
シルヴィも一応前世で防護服などの映像を見たことはあるものの、その構造なんかは詳細に知っているわけではないですから、正しく試行錯誤の連続なのです。
それでも何とか始めてから5日後には、P-Ⅳレベルの実験工房と防護服等装備品一式を生み出すことができました。
ギルド本部での工房利用はともかく、現地でもそれなりの検体採取等の作業を行わなければならないと想定されることから、簡易版のP-Ⅲレベルのテント型移動工房を作り、現地で使用することにしています。
残念ながら碌に感染症に対する知識の無い者に現地調査をやらせるわけには行きませんよね。
シルヴィは危険を承知しつつも、自らが現地調査に赴くつもりでいるのです。
当然のことながら一度の調査で原因がわかるとは考えていませんから、シルヴィはテント型移動工房を三基、防護装備を12セット用意し、それらをマジックバックに収納して、出立の準備を整えています。
=================================
6月20日及び7月18日、一部の字句修正を行いました。
By サクラ近衛将監
お元気でいらっしゃいましたか?
シルヴィも相変わらず元気にやっていますよ。
魔晶石の採掘に、魔道具部品の製作、ポーションの製造も、そうして今一番ホットなのが瘴気の除去に関するマニュアル作成なんです。
今のところ私しか知らないことや、同行した採掘師しか知らないことなどをマニュアル化しておかないと、いずれ対応できる人が居なくなる恐れがあります。
特に、結界放射器の扱い方、私が新たに製造した魔鉱石対応のレーザーカッターの製造方法と取扱い説明書等々。
後世に残しておかなければいけないものが結構あるんです。
私が健康なうちは大丈夫ですけれどね。
問題は結界放射器の製造方法なんですけれど、これは流石に空間魔法、光魔法、それに治癒魔法の合わせ技なので使える人がほとんど居ない可能性が高いんです。
多分、それぞれの属性魔法を使える人が個々に居たとしても、付与をしようとすると互いに干渉しあう可能性が高く、同時発動で付与することは難しいと思います。
そうしてまた、個別に魔法を付与して行くと、同時発動ができない代物になって結界は発動しなくなると思うのです。
一応、私が個別に付与をしてみたのですけれど、同時発動はできずに、三つのうちの一つの発動しかできないとわかっています。
ですから他の人がやってできるかも知れないという可能性は極めて低いと思います。
従って、他の魔道具のブラックボックスと同様に、私が中枢部分を相当数作り置きしておくしか方法がないですね。
形あるものはいずれ滅しますが、その間に私以外の誰かが別の方法を見つけてくれることを願っています。
そんなこんなで結構忙しい日々を過ごしているんですが、私が魔晶石ギルドの本部にやってきてから一年が過ぎました。
同級生たちもようやく三級採掘師や三級加工師として、戦線に加わりつつあるのです。
今回は全員が一応卒業し、資格も取れたようです。
卒業後のとある銀曜日、私は同級生を誘って、公都に出かけ、レストランを借り切って卒業祝いをしてあげました。
先に卒業し、既に稼いでいる先輩からのノブレス・オブリージュ?(ン?ちょっと違うかも?)みたいなものです。
私のギルド口座にはとんでもない金額が貯まっているのですけれど、余り使う場面が無いんです。
ですから私からのお祝いにみんなに食事をプレゼントするのです。
私以外の同期生は、みんな今のところ借金漬けですからね。
遊興や贅沢な食事に使うお金なんか持っていないんです。
中には若干肉めいた発言をする子も約一人ほどいましたけれど、そんなことは気にせずに、皆で食事を楽しみました。
そんな平穏で安息の日々も束の間のことでした。
遠征から戻って一月余り経ってから、クロマルド王国とカロス首長国から連名で魔晶石ギルドに面倒な相談ごとがやって来たのです。
相談があったのは魔晶石ギルドの事務局当てであり、対応は派遣班の支援班長だった副部長のモリソンさんが行ったようです。
モリソン副部長は、話を聞いたうえで幹部にも報告し、その上で、私に相談を持ち掛けてきたのです。
「シルヴィ君、一応我がギルドの治癒班にも話をした上で、他に適任者が居ないようなので君に相談するしかないのだが、・・・・。
君は病気の治療に詳しいかね?」
あらら、困ったことを聞かれちゃいましたねぇ。
ギルドにはもちろん内緒ですけれど、カル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤでは医師の真似事をしていますしね。
このギルドでも「黒の救命士」と二つ名をつけられる程、とある重症患者を治療したことがありますし、ツアイス症候群や飲料水の関連では、止むを得ず、色々と医療知識めいたものをひけらかしましたから、全く知らない振りはできません。
「えーっと。
左程詳しいわけではありませんが、それなりに知識は持っていますし、治癒魔法も少しは使えます。」
「そうか、それはよかった。
実は、昨日のことなのだが、クロマルド王国とその隣国のカロス首長国から連名で当ギルドに相談があった。
どうも、カロス首長国の南部地域とクロマルド王国北部地域で死病が流行っているようなのだが、原因は不明ではあるものの、或いはこの死病に瘴気が関連していないかどうかを確認してくれないかということなのだが・・・。
魔物のことならばともかく、流石に病気のことまでは手に負えないと思うのだが・・・。
それでも瘴気関連ともなれば国際会議でその処置を我がギルドに一任された経緯もあり、全く無視もできない。
だが、正直なところ何を調べたらいいのか皆目見当もつかないのだが、・・・。
シルヴィ君に何か良い知恵は無いかね。」
「詳細を知らずに助言もできませんけれど、流行っている死病というのはどんな病なのですか?」
「よくわからないが、伝染性の病気のようだ。
発症すると高熱を発し、二日ほどで死に至る病気らしい。
傍で看病していた者は全員この死病に取り付かれて亡くなっているので、詳細な症状が良くわからないのだが、未だ高熱を発しないうちに接触していた者まで発症するに至り、現状は汚染地域を封鎖して人の出入りを禁止している状況のようだ。
但し、それでも封鎖しきれておらず、徐々にだが封鎖地域は拡大していると聞いている。
放置すれば複数の国が滅する恐れもある。」
「お話を聞いた限りでは色々と危険な伝染病の可能性が高いと思いますけれど、生半可な知識で対応できるとは思えません。
治癒師ギルドでは対応できないのでしょうか?」
「うん、・・・。
治癒師ギルドでも事態を重視していて何人か治癒のベテランを派遣したらしいのだが、残念ながら彼らも現地で発症し、既に本部から派遣されたベテラン3人ほどが亡くなっているという。
どうも、治癒師ギルドでも手の施しようがないらしい。」
「そんな難題を持ち込まれても対応に困りますよねぇ。
伝染する病に対処するには、最低限度感染を防ぎながら、何が病気の原因なのか特定する必要がありますけれど・・・。
おそらくは伝染病にかかった人との接触若しくは患者の呼気を吸い込むことで発症する可能性が高いです。
仮に病人と接触するならば、相応の防護服が必要ですね。
それなしに近づけばそれだけで病気にかかる恐れがあります。
危ないのは、主として患者の体液で、唾液、涙、汗、血液、排泄物などですが、それ以外に患者の吐く息に含まれる微小な霧状の水分も吸い込むと危険です。
相手は目に見えない極めて微小な毒のようなモノと考えてもらえば良いかも知れません。
最低限度、患者とは一尋半ほどの距離を空けなければいけませんし、密閉された空間に患者と同居するだけで病気が伝染する可能性があります。
また、病人の生死に関わりなく、病人が触れたモノ全てが病気発生の原因になりかねません。
消毒と言って、目に見えない病気の元を殺す必要があるのですが、原因が特定できないとその消毒方法もわかりません。」
「ちょっと待ってくれ。
シルヴィの説明だと目に見えない病気の元があって、それが患者の体液や吐く息を通じて人に感染すると、そういうことなのか?」
「はい、その通りです。
それと大事なことは、患者が死んでもその病気の元はしばらく消滅しないで生き残っているということです。
場合により、風などで煽られると、より遠くへ拡散することもあり得ます。」
「うーん、・・・。
それほど危険なのか・・・。
それを防ぐには何か方法があるのかね?」
「死体や患者が触れたモノは全て焼却すべきですが、その際にも可能な限りヒトやモノに接触しないようにする必要があります。
どうしても止むを得ず接触する場合は、素肌での接触は避け、手袋を着用し、その手袋は使用後すぐに焼却します。
同様に衣服もできるだけ気密性の高いものを着用し、使用後に焼却します。
更には、その作業をする人は、素肌の露出は避ける必要がありますし、呼吸も安全な空気でしなければなりません。
総じてこれまでにない全く新たな装備一式が必要とされると思います。」
「新たな装備って、そんなものがどこに?」
「時間は多少かかりますけれど、私が造ります。
そのために、工房の敷地を一つ準備してください。
適当なスペースが無ければ、水路正門から本館に至る道路脇の敷地を使用させてください。
私がそこに新たな工房を作ります。」
先ごろの遠征で、要塞まがいの倉庫を短期間に作り上げたシルヴィの規格外の能力を知っているので、モリソンはその言葉を疑わなかった。
すぐさま幹部会に報告し、水路口から本部本館へ至る道路脇の敷地を自由に使う許可を貰ったのである。
クロマルド王国とカラス首長国に対しては、今すぐには動けないが現在対処方法を検討中とだけ返事をしておいた。
翌日から、シルヴィは、水路正門をくぐって直ぐ右手側の敷地の森を潰し、比較的大きな工房を作り出した。
感染症対策のP-Ⅳレベルの気密工房を作るのです。
その為の魔道具や特殊材料も色々と開発しました。
ツアィス症候群を調べるためにヒラトップに相応の施設は準備しましたけれど、その際は防護服までは準備していませんでした。
結界で散逸や侵入を防げると思っていたからです。
今回は明らかに死病ですので対応を間違えるとシルヴィ自身も危ない可能性がありますし、外向けに相応の防護装備を見せつける必要もありました。
準備するのは、魔石で動く小型ポンプ(P-Ⅳ施設以内を負圧にするための空気ポンプ)、気密素材になるようなゴム若しくは有機素材(シリコン樹脂系を想定中)、圧縮空気を貯め込む空気ボンベ、そのボンベから吸気を適度の圧力で取り出す調圧装置とヘルメット一体型の防護服になります。
シルヴィも一応前世で防護服などの映像を見たことはあるものの、その構造なんかは詳細に知っているわけではないですから、正しく試行錯誤の連続なのです。
それでも何とか始めてから5日後には、P-Ⅳレベルの実験工房と防護服等装備品一式を生み出すことができました。
ギルド本部での工房利用はともかく、現地でもそれなりの検体採取等の作業を行わなければならないと想定されることから、簡易版のP-Ⅲレベルのテント型移動工房を作り、現地で使用することにしています。
残念ながら碌に感染症に対する知識の無い者に現地調査をやらせるわけには行きませんよね。
シルヴィは危険を承知しつつも、自らが現地調査に赴くつもりでいるのです。
当然のことながら一度の調査で原因がわかるとは考えていませんから、シルヴィはテント型移動工房を三基、防護装備を12セット用意し、それらをマジックバックに収納して、出立の準備を整えています。
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6月20日及び7月18日、一部の字句修正を行いました。
By サクラ近衛将監
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