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第六章 異変
6ー6 瘴気の原因と除去 その二
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ハーイ、シルヴィでぇす。
現地対策本部の指揮官である将軍が、部下を嗜めるように発言してからは話が進みました。
責任者が良いと判断しているのですから、側近がゴモゴモ文句を言っても何の影響もありません。
会議が終わった後、現地対策本部から1.5ガーシュほど離れた場所に移動しました。
当初は1ガーシュくらいでいいかなと思っていたのですが、実際に現地に赴くと、その先により地盤のしっかりした場所があったので、そこに決めたのです。
勿論、ダンカンさんたち派遣第一斑とクロマルド王国の兵士たちも一緒です。
人の見ている前で大っぴらに魔法を使うのも少々気が引けますが、ここへ来て隠しだてしても仕方がありません。
短期間に何も無いところにかなり大きな倉庫なんかを作っちゃうのですから、仮にその時だけ人目を避けていても、後で確認されたら何をしたかはわかるでしょう。
ということで、人目を気にせず、無詠唱で石と土でできた倉庫をパパっと作っちゃいました。
峡谷の台地の地下深くに存在する魔鉱石の全部を一時的にせよ保管するのですから、かなり大きいんです。
前世の高校の体育館6つ分ぐらいの広さ(概ね60尋×40尋程度≒5400㎡)で高さは3尋ぐらいにしました。
この倉庫が最低でも三つは必要なんですが、とりあえず今日は一棟だけ。
概ね6尋四方に一本、直径60センチほどの柱があって屋根を支えています。
魔鉱石を容れる容器は、石で作った棺桶に近い形状です。
マジックバック(長さ約1.5尋、奥行き高さとも約1尋)の大きさに合わせて、それよりやや大きい程度(長さ1.7尋、奥行き1.2尋、高さ1.3尋)の直方体を呈する石の棺桶状容器です。
この容器を400個近く準備して、倉庫の床に並べたなら取り敢えず受け入れ準備の完了です。
それから、マジックバックに入れておいた魔鉱石を取り出し、棺桶もどきに入れて行きます。
これで四つだけですからね。
考えてみたら、単純計算で240回ほどもマジックバックでの運搬作業を繰り返さなければなりません。
この作業のために、半年ほどもここにくぎ付けになるのは流石に困りますよね。
いくらお金をもらっても嫌です。
そもそもが、もう使い道に困るほどお金があるのでお給金は必要ないんです。
さてどうしましょうか・・・・?
魔鉱石の重さは比重が水の17倍ほどもあります。
金やタングステンよりも軽いですけれど結構重い金属ですよね。
魔晶石に比べてもかなり重いです。
魔晶石は、概ね比重が3から3.5ですから、5倍以上の重さになりますね。
マジックバックのおかげで重さは左程に感じませんけれど、マジックバック一個で約5㎥の容積がありますから、これ一つで魔鉱石は80トン以上もあるんです。
マジックバックが無かったらとても運搬できません。
あ、私は浮揚術でできそうなんですけれど、やっぱり秘密にしておきましょうね。
色々考えた末に出した結論は、対策本部と支援班にマジックバックを大至急でたくさん用意してもらうこと。
それとマジックバックにモノを入れたまま収納できる新たなマジックバックを私が作ることでした。
マジックバックを容れるマジックバックと言う発想はこれまでなかったのか、あるいはマジックバックの干渉をうまく抑えられなかったのか、これまで無かったのです。
でも私は時空間の魔法の使い手ですからね。
少々の問題があっても何とか作り上げる自信があります。
その日夕食後に残業をして深夜までには何とかマジックバックを容れることのできるマジックバックを作り上げました。
そんなものを作り出さなくても私の亜空間魔法で収納できるのはわかっています。
でも、私の亜空間魔法を披歴するには絶対に時期が早いと判断したためです。
権力者に勝手に利用されないよう、隠せるものであれば隠した方が良いのです。
もし亜空間魔法の存在を公表すると絶対にいろんなところから干渉が入ってきます。
私をモルモットに使うなんて絶対に許してなるものですか。
私はその口実でさえ与えたくないのです。
魔晶石ギルドに会員は守られているはずなのに、今の幹部の一部は利に流れやすいようでどうも信用できないんです。
ということでマジックバックを多数収納するマジックバックを作ったわけなんです。
あとは将軍とモリソンさんに言って、マジックバックを大量に用意してもらえば仕事の段取りは終わりです。
現地での第四日目は、取り敢えずマジックバック10個をもっていざ出動です。
マジックバック10個というのは、派遣班と支援班の皆さんの予備分を6個、とりあえずかき集めたのです。
そうしてその日から同じ作業を繰り返しました。
日に日に多くなるマジックバックは、ついに67個に達しましたが、これで打ち止めです。
当座予備を含めてこれ以上供出する余裕が無いようです。
その間に、安全性の確認は何度も行っています。
結果として、結界と言うか障壁と言うか、瘴気を消滅させる特殊な効果を付与された倉庫の中では。そもそも瘴気は発生しないということがわかりました。
発生しても結界内ではすぐに消滅するのでほとんど感知できないのです。
しかも容器にも同じ付与がかけられていますので、倉庫と併せて二重に付与されていますので、倉庫が破損し、なおかつ容器が破損しなければ、瘴気の発生という問題は生じません。
勿論、人為的にこの結界が破られたり、魔鉱石が盗まれたりすると、不慮の事故が発生しかねませんので、将軍にお願いして倉庫周辺の警備を厳重にしてもらいました。
念のため、倉庫の周囲に壁を築き、その外側に濠を作ったら要塞みたいになってしまいましたが、まぁ、これもやむを得ない措置ですよね。
そもそも魔鉱石自体が有害物質の発生源なんですから、瘴気の漏洩防止はもちろんですけれど、不逞の輩が侵入しないようセキュリティを高めなければならなかったんです。
一応、敷地としては、倉庫が四つ作れるように余裕を見ましたけれど、そもそもが魔鉱石を龍脈の近くに置くのは危ないですよね。
ある意味で断層の上の原発みたいなものですから・・・。
そこで6日目に時間をもらって飛行船で遠出をしました。
目的地は、大地の精霊ノームに聞いたクロマルド王国の隣国で海に面した巨大な商業港を有するベンゼルトン商国の北側にある荒野です。
周囲10ガーシュに人はいませんし、クロマルド王国の周辺ではここが一番龍脈からの影響を受けにくい場所なのです。
場所を確認して、あとはクロマルド王国の外交交渉次第ですね。
結局、ベンゼルトン商国の荒れ地に保管倉庫を建設し、そこに容器ごと魔鉱石を移送し、国際機関で魔鉱石の管理をするようになったようです。
取り敢えずベンゼルトン商国の了承を得て、再度私が倉庫を作ってから後のことは、私たちがギルドに戻りましたので詳細は知りませんが、関係国や国際機関の間でも結構紆余曲折はあったみたいですよ。
魔鉱石については一部を保管して私の秘密基地ヒラトップで研究中です。
だって、そもそもが魔晶石よりも大量の魔素を含んだ特殊金属ですからね。
うまく使えば魔道具にも使えるかもしれません。
但し、結界の付与が絶対に必要ですけれどね。
危険と隣り合わせなので余り広まらないほうが良いとは思いますけれど、例えば宇宙なんかでは龍脈なんて関係なさそうなんで将来的には使えるかもしれません。
捕らぬ狸の皮算用はともかく、魔鉱石については、現地到着後2週間目で全部をクロマルド王国内の仮設倉庫に収納しました。
それまでの間に、当然に倉庫も四つまでに増やしています。
魔鉱石鉱床そのそのものを、取り除きましたので既に新たな瘴気は発生していませんが、これまでに発生した瘴気は、盆地状の峡谷内に溜まっています。
そうして強風が吹くと若干拡散する恐れもありましたので、この溜まっている瘴気を取り除く必要がありました。
そのために、三日かけて結界放射器の魔道具を作成、派遣班(支援班を除く)全員に持たせて、全員で峡谷の周辺及び峡谷内をお散歩です。
最初に峡谷の中央部から南方方面へ向かい、峡谷南端で北へ向きを変えて進軍です。
結界放射器は有効半径50尋ほどですか、球状に広がる結界部分の上部では瘴気が消滅するとその上にある瘴気が自重で下降してきますので、ゆっくり歩けば徐々に瘴気が消滅することになります。
峡谷の大きさは南北におよそ30ガーシュほど、三日で峡谷全部の瘴気を除去できました。
勿論、峡谷低地にいた魔物多数を討伐しながらの作業でした。
そうそう、地中に潜んでいたワームの変異種でキャシング・タナール・ビサール(巨大ワームです。)については、何故か地上に出てこないので、タングステン鉱で長さ4尋、重量35ゲレットの槍を作り、上空2万mから落としました。
まぁ、異世界版のバンカーバスターですよね。
先が尖っていますので、地下40mほどに潜んでいたワームを突き刺し、衝突エネルギーによる高熱で焼き殺しました。
都合5匹のワームを退治しましたけれど、かなり離れたところから殲滅しましたので、衝撃により地震と爆発音は一緒にいた仲間も認知したけれど、誰も詳細は知らないはずでした。
それでも全員が私の方を振り向きました。
「シルヴィ、何をした?」
ちょっと怖い顔でダンカンさんとクレバインさんが私を睨んでいます。
若干引きながらも正直に答えます。
「あ、あの・・・。
地中に大きなワームが居たので討伐しました。
全部で五匹です。」
「ワームだぁ?
地中にいるものをどうやって攻撃するんだ?
それも離れたところから・・・。」
「あの、その、・・・。
空の高いところに土魔法で作った槍を浮かべて、そこから落としたんです。
衝撃と熱で当たったワームが死にました。」
またまた派遣班全員からすっかり呆きれられてしまいましたが、別に悪いことしてないですよね。
魔物討伐しただけだし・・・。
そんなこんなで魔物討伐(公式には229匹、非公式には十二神将が討伐した400ほどを含めると600以上になります。)と最終的に瘴気の除去が済んだのは魔晶石ギルドを出発してから21日目のことでした。
出発の際に魔鉱石の一部を研究のために持ち帰ることをクロマルド王国には伝えています。
魔晶石ギルド本部も実は龍脈の近くにあるのですけれど、私が扱う限りは結界の中なので問題はありません。
あ、そう言えば、私の誕生日はクロマルド王国滞在中に過ぎていました。
私も12歳になりましたねぇ。
地球の年齢ならば概ね17歳という頃じゃないかと思います。
高校二年生かぁ、・・・。
前世では当然に未成年だったし、何をしていたかなぁ・・・。
ひとしきり感慨にふけりながら飛行船で運ばれる私でした。
帰ってからは報告書を色々と提出しなければなりません。
何しろ私一人で作業をした分が多いので他の人に報告書を頼むわけにはいかないのです。
一応、結界放射器は今回作ったものがそのまま使えますけれど、基本的に倉庫や容器への魔法付与が必要になるだろうとは思いますし、そもそも魔鉱石採掘にはかなりの危険が伴うでしょうから、一般人ではやっぱり無理でしょうかねぇ?
いずれにせよ、今後のためにも、ケアレスミスを防ぐためにもマニュアルめいた詳細な報告書が必要なんです。
現地対策本部の指揮官である将軍が、部下を嗜めるように発言してからは話が進みました。
責任者が良いと判断しているのですから、側近がゴモゴモ文句を言っても何の影響もありません。
会議が終わった後、現地対策本部から1.5ガーシュほど離れた場所に移動しました。
当初は1ガーシュくらいでいいかなと思っていたのですが、実際に現地に赴くと、その先により地盤のしっかりした場所があったので、そこに決めたのです。
勿論、ダンカンさんたち派遣第一斑とクロマルド王国の兵士たちも一緒です。
人の見ている前で大っぴらに魔法を使うのも少々気が引けますが、ここへ来て隠しだてしても仕方がありません。
短期間に何も無いところにかなり大きな倉庫なんかを作っちゃうのですから、仮にその時だけ人目を避けていても、後で確認されたら何をしたかはわかるでしょう。
ということで、人目を気にせず、無詠唱で石と土でできた倉庫をパパっと作っちゃいました。
峡谷の台地の地下深くに存在する魔鉱石の全部を一時的にせよ保管するのですから、かなり大きいんです。
前世の高校の体育館6つ分ぐらいの広さ(概ね60尋×40尋程度≒5400㎡)で高さは3尋ぐらいにしました。
この倉庫が最低でも三つは必要なんですが、とりあえず今日は一棟だけ。
概ね6尋四方に一本、直径60センチほどの柱があって屋根を支えています。
魔鉱石を容れる容器は、石で作った棺桶に近い形状です。
マジックバック(長さ約1.5尋、奥行き高さとも約1尋)の大きさに合わせて、それよりやや大きい程度(長さ1.7尋、奥行き1.2尋、高さ1.3尋)の直方体を呈する石の棺桶状容器です。
この容器を400個近く準備して、倉庫の床に並べたなら取り敢えず受け入れ準備の完了です。
それから、マジックバックに入れておいた魔鉱石を取り出し、棺桶もどきに入れて行きます。
これで四つだけですからね。
考えてみたら、単純計算で240回ほどもマジックバックでの運搬作業を繰り返さなければなりません。
この作業のために、半年ほどもここにくぎ付けになるのは流石に困りますよね。
いくらお金をもらっても嫌です。
そもそもが、もう使い道に困るほどお金があるのでお給金は必要ないんです。
さてどうしましょうか・・・・?
魔鉱石の重さは比重が水の17倍ほどもあります。
金やタングステンよりも軽いですけれど結構重い金属ですよね。
魔晶石に比べてもかなり重いです。
魔晶石は、概ね比重が3から3.5ですから、5倍以上の重さになりますね。
マジックバックのおかげで重さは左程に感じませんけれど、マジックバック一個で約5㎥の容積がありますから、これ一つで魔鉱石は80トン以上もあるんです。
マジックバックが無かったらとても運搬できません。
あ、私は浮揚術でできそうなんですけれど、やっぱり秘密にしておきましょうね。
色々考えた末に出した結論は、対策本部と支援班にマジックバックを大至急でたくさん用意してもらうこと。
それとマジックバックにモノを入れたまま収納できる新たなマジックバックを私が作ることでした。
マジックバックを容れるマジックバックと言う発想はこれまでなかったのか、あるいはマジックバックの干渉をうまく抑えられなかったのか、これまで無かったのです。
でも私は時空間の魔法の使い手ですからね。
少々の問題があっても何とか作り上げる自信があります。
その日夕食後に残業をして深夜までには何とかマジックバックを容れることのできるマジックバックを作り上げました。
そんなものを作り出さなくても私の亜空間魔法で収納できるのはわかっています。
でも、私の亜空間魔法を披歴するには絶対に時期が早いと判断したためです。
権力者に勝手に利用されないよう、隠せるものであれば隠した方が良いのです。
もし亜空間魔法の存在を公表すると絶対にいろんなところから干渉が入ってきます。
私をモルモットに使うなんて絶対に許してなるものですか。
私はその口実でさえ与えたくないのです。
魔晶石ギルドに会員は守られているはずなのに、今の幹部の一部は利に流れやすいようでどうも信用できないんです。
ということでマジックバックを多数収納するマジックバックを作ったわけなんです。
あとは将軍とモリソンさんに言って、マジックバックを大量に用意してもらえば仕事の段取りは終わりです。
現地での第四日目は、取り敢えずマジックバック10個をもっていざ出動です。
マジックバック10個というのは、派遣班と支援班の皆さんの予備分を6個、とりあえずかき集めたのです。
そうしてその日から同じ作業を繰り返しました。
日に日に多くなるマジックバックは、ついに67個に達しましたが、これで打ち止めです。
当座予備を含めてこれ以上供出する余裕が無いようです。
その間に、安全性の確認は何度も行っています。
結果として、結界と言うか障壁と言うか、瘴気を消滅させる特殊な効果を付与された倉庫の中では。そもそも瘴気は発生しないということがわかりました。
発生しても結界内ではすぐに消滅するのでほとんど感知できないのです。
しかも容器にも同じ付与がかけられていますので、倉庫と併せて二重に付与されていますので、倉庫が破損し、なおかつ容器が破損しなければ、瘴気の発生という問題は生じません。
勿論、人為的にこの結界が破られたり、魔鉱石が盗まれたりすると、不慮の事故が発生しかねませんので、将軍にお願いして倉庫周辺の警備を厳重にしてもらいました。
念のため、倉庫の周囲に壁を築き、その外側に濠を作ったら要塞みたいになってしまいましたが、まぁ、これもやむを得ない措置ですよね。
そもそも魔鉱石自体が有害物質の発生源なんですから、瘴気の漏洩防止はもちろんですけれど、不逞の輩が侵入しないようセキュリティを高めなければならなかったんです。
一応、敷地としては、倉庫が四つ作れるように余裕を見ましたけれど、そもそもが魔鉱石を龍脈の近くに置くのは危ないですよね。
ある意味で断層の上の原発みたいなものですから・・・。
そこで6日目に時間をもらって飛行船で遠出をしました。
目的地は、大地の精霊ノームに聞いたクロマルド王国の隣国で海に面した巨大な商業港を有するベンゼルトン商国の北側にある荒野です。
周囲10ガーシュに人はいませんし、クロマルド王国の周辺ではここが一番龍脈からの影響を受けにくい場所なのです。
場所を確認して、あとはクロマルド王国の外交交渉次第ですね。
結局、ベンゼルトン商国の荒れ地に保管倉庫を建設し、そこに容器ごと魔鉱石を移送し、国際機関で魔鉱石の管理をするようになったようです。
取り敢えずベンゼルトン商国の了承を得て、再度私が倉庫を作ってから後のことは、私たちがギルドに戻りましたので詳細は知りませんが、関係国や国際機関の間でも結構紆余曲折はあったみたいですよ。
魔鉱石については一部を保管して私の秘密基地ヒラトップで研究中です。
だって、そもそもが魔晶石よりも大量の魔素を含んだ特殊金属ですからね。
うまく使えば魔道具にも使えるかもしれません。
但し、結界の付与が絶対に必要ですけれどね。
危険と隣り合わせなので余り広まらないほうが良いとは思いますけれど、例えば宇宙なんかでは龍脈なんて関係なさそうなんで将来的には使えるかもしれません。
捕らぬ狸の皮算用はともかく、魔鉱石については、現地到着後2週間目で全部をクロマルド王国内の仮設倉庫に収納しました。
それまでの間に、当然に倉庫も四つまでに増やしています。
魔鉱石鉱床そのそのものを、取り除きましたので既に新たな瘴気は発生していませんが、これまでに発生した瘴気は、盆地状の峡谷内に溜まっています。
そうして強風が吹くと若干拡散する恐れもありましたので、この溜まっている瘴気を取り除く必要がありました。
そのために、三日かけて結界放射器の魔道具を作成、派遣班(支援班を除く)全員に持たせて、全員で峡谷の周辺及び峡谷内をお散歩です。
最初に峡谷の中央部から南方方面へ向かい、峡谷南端で北へ向きを変えて進軍です。
結界放射器は有効半径50尋ほどですか、球状に広がる結界部分の上部では瘴気が消滅するとその上にある瘴気が自重で下降してきますので、ゆっくり歩けば徐々に瘴気が消滅することになります。
峡谷の大きさは南北におよそ30ガーシュほど、三日で峡谷全部の瘴気を除去できました。
勿論、峡谷低地にいた魔物多数を討伐しながらの作業でした。
そうそう、地中に潜んでいたワームの変異種でキャシング・タナール・ビサール(巨大ワームです。)については、何故か地上に出てこないので、タングステン鉱で長さ4尋、重量35ゲレットの槍を作り、上空2万mから落としました。
まぁ、異世界版のバンカーバスターですよね。
先が尖っていますので、地下40mほどに潜んでいたワームを突き刺し、衝突エネルギーによる高熱で焼き殺しました。
都合5匹のワームを退治しましたけれど、かなり離れたところから殲滅しましたので、衝撃により地震と爆発音は一緒にいた仲間も認知したけれど、誰も詳細は知らないはずでした。
それでも全員が私の方を振り向きました。
「シルヴィ、何をした?」
ちょっと怖い顔でダンカンさんとクレバインさんが私を睨んでいます。
若干引きながらも正直に答えます。
「あ、あの・・・。
地中に大きなワームが居たので討伐しました。
全部で五匹です。」
「ワームだぁ?
地中にいるものをどうやって攻撃するんだ?
それも離れたところから・・・。」
「あの、その、・・・。
空の高いところに土魔法で作った槍を浮かべて、そこから落としたんです。
衝撃と熱で当たったワームが死にました。」
またまた派遣班全員からすっかり呆きれられてしまいましたが、別に悪いことしてないですよね。
魔物討伐しただけだし・・・。
そんなこんなで魔物討伐(公式には229匹、非公式には十二神将が討伐した400ほどを含めると600以上になります。)と最終的に瘴気の除去が済んだのは魔晶石ギルドを出発してから21日目のことでした。
出発の際に魔鉱石の一部を研究のために持ち帰ることをクロマルド王国には伝えています。
魔晶石ギルド本部も実は龍脈の近くにあるのですけれど、私が扱う限りは結界の中なので問題はありません。
あ、そう言えば、私の誕生日はクロマルド王国滞在中に過ぎていました。
私も12歳になりましたねぇ。
地球の年齢ならば概ね17歳という頃じゃないかと思います。
高校二年生かぁ、・・・。
前世では当然に未成年だったし、何をしていたかなぁ・・・。
ひとしきり感慨にふけりながら飛行船で運ばれる私でした。
帰ってからは報告書を色々と提出しなければなりません。
何しろ私一人で作業をした分が多いので他の人に報告書を頼むわけにはいかないのです。
一応、結界放射器は今回作ったものがそのまま使えますけれど、基本的に倉庫や容器への魔法付与が必要になるだろうとは思いますし、そもそも魔鉱石採掘にはかなりの危険が伴うでしょうから、一般人ではやっぱり無理でしょうかねぇ?
いずれにせよ、今後のためにも、ケアレスミスを防ぐためにもマニュアルめいた詳細な報告書が必要なんです。
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