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第六章 異変
6ー5 瘴気の原因と除去 その一
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ハーイ、シルヴィですよぉ。
クロマルド王国三日目、現地対策本部到着から数えると二日目です。
初日はシーファ・ウーディを含めて総計で80匹以上の魔物を討伐しましたけれど、朝起きてみると、視界の中にちらほらと魔物が見えています。
きっとまだまだ見えない範囲にいるんでしょうけれど、朝食前に間近にいる三匹ほど討伐しておきました。
峡谷の緩斜面から這い上がってきた地竜と巨大蜘蛛2体でしたよ。
朝食を終えると、いよいよ瘴気の発生原因の確認とその除去のお仕事です。
ダンカンさん、クレバインさん、モリソンさんの三人もいずれも渋い顔をしています。
「変本地の術」は永続的なものではなくって、一時的に効果がある術なんです。
完全に意識を操る術もあるのですけれど、そんなことをしたなら奴隷と一緒です。
何を為すにしても自分の意思が持てなくなりますから、まずい方法ですよね。
この分だと明日の朝までには術が解けているかもしれません。
いずれにしろ出発を急ぎました。
準備は既にできています。
当初は、地中深くに存在する魔鉱石全体を安全な場所に転移することで終息させようと思ったのですが、それでは瘴気の発生原因を証明できなくなります。
まぁ、良くわからないうちに瘴気の発生が止まり、瘴気も除去できましたという筋書きもあるかもしれませんが、稀にせよ、瘴気が今後ともどこかで発生する可能性があることを考えると、その瘴気を抑えもしくは除去する才能を持つ者を育成しておく必要があり、その為にも原因を明らかにしておく必要があると思うのです。
そこで、私が持っていたマジックバック4個(採掘師の商売道具の一つですからね、収入が多くなった時点で余分に買い込んでいたものですよ。)に魔鉱石を小分けにして取り込み、現地対策本部から1ガーシュ離れた場所に仮の倉庫を作って保管することにしました。
倉庫はまだ作ってはいません。
取り敢えずマジックバック4個分の魔鉱石を持ち帰ってから、聖属性魔法モドキを付与した建材(今のところ岩若しくは土で作る予定)で倉庫を建設しようと思っています。
因みに、私のステータス上には聖魔法という項目はありません。
瘴気の浄化もしくは障壁は、光魔法と空間魔法それに治癒魔法を融合発動することで得られる特殊効果なのです。
龍脈の影響を受けると瘴気が発生するでしょうから、それを抑えるためには倉庫自体に聖魔法モドキの結界?シールド?障壁?が必要なんです。
私は、独り防護柵を飛び越えて危険地帯に足を踏み入れました。
◇◇◇◇
俺は一級採掘師のダンカンだ。
今、俺は、シルヴィが二重の防護柵を乗り越えて危険地帯に踏み込んで行くのを見送っている。
派遣チームの第一斑班長だというのに、死地に入ってゆくシルヴィの援護もできないことがつくづく恨めしいぜ。
俺の握りこぶしにあんまり力を入れ過ぎた所為で、ぬるっとしたものが生じた。
掌が内出血を起こし、それが破れて少し血がでたようだ。
まぁ、こんなのは放っておいても直ぐ治る。
昨夕は懸命にシルヴィを説得したんだが、力及ばず、逆に俺らが説得させられてしまった。
全く不甲斐ないことだぜ。
シルヴィは、間もなくやってくる晩夏には満年齢で12歳になるはずの娘っ子だ。
俺が採掘師にならずに、ごく普通に結婚でもしていれば、シルヴィよりも年上の娘が生まれていたかもしれねぇ。
そんな俺が、なんで若い娘っ子を危険地帯に送り出さねばならないんだ?
ほんの少し間違えるだけで死ぬと分かっているのにシルヴィを止められねぇ。
本当に情けなくって、ぎりぎりと歯を食いしばっているんで顎(あご)が痛い。
シルヴィは、速足でもなく至極普通に西南西の方向で峡谷上の大地が途切れる辺りへ歩んでゆく。
その峡谷の台地が途切れる辺りには、当然のように薄紫の瘴気が見えるんだ。
朝の間は背後からの光で少し見えにくいんだが、夕刻間近になると光の加減かも知れないが、少し濃い目の紫色の瘴気が見える。
じっと見ていると、シルヴィは瘴気の端に踏み入れたようだ。
俺はその時に初めてシルヴィの言う聖魔法の障壁ってやつを見た。
それまで見えなかったモノが見えるようになったのは、そこから障壁を張ったというわけではない。
シルヴィは、最初から障壁を張って行くと言っていたからな。
出発前にその障壁を張ったと言うのでシルヴィの肩の辺りに触れようとしたら、シルヴィの身体の周囲に柔らかい壁ができていることがわかった。
物理的に硬いわけじゃない。
だが、力を入れてさらに押し込むと徐々に抵抗が強くなり、俺の握りこぶしほども押し込めずに完全に遮られた。
むろんシルヴィには触れることもできなかったから、確かに見えない障壁ができていたのがわかった。
で、その障壁は今俺の見ている前で光り輝いているようだ。
瘴気がその障壁に触れると瞬時に淡く青く光りながら消滅している。
障壁は見えないけれど、その障壁に触れて消滅する瘴気が見えるんだ。
薄紫の瘴気がこの時ばかりは淡青色に輝いている。
変な話だが、実に綺麗だった。
俺の頭に何となく聖女のイメージが広がったぜ。
そういや、シルヴィには、「黒の救命士」なんて仇名がついていたっけな。
人の命を助ける治癒魔法が使えるくらいだから、まぁ、聖女と言われても不思議はねぇだろう。
そんなことを考えているうちに台地の途切れる辺りにシルヴィが着いたようだ。
そこからは斜面になって徐々にシルヴィの姿が見えなくなる。
シルヴィが振り返り、手を振ったようだ。
戻って来いよ、シルヴィ。
◇◇◇◇
ハーイ、またまたシルヴィですよ。
峡谷の上の台地がほぼ途切れる場所に到着、ここから緩斜面が下に向かって伸びています。
緩斜面とは言ってもスキー場のゲレンデぐらいの角度はあるんですよ。
岩場でほとんど植物も生えていませんし、断崖とは言えない急な瓦礫の坂ですよね
今のところ私の張ったシールド内に瘴気の侵入はありません。
防護柵を乗り越えて少し離れたところでシールドを拡大、私のへそを中心に周囲二尋ぐらいの球状のシールドを張っているのですけれど、ここにきて薄紫色の瘴気がそのシールドに当たると無音で淡青色の光を発して消滅している様です。
だから私の張ったシールドそのままに球状の形で青色に光っています。
このままシールドの範囲を拡げることも可能なのですけれど、原因を除去しないと意味がありませんので、今は魔力の消費を抑えるためにも現状維持のままにします。
あ、左斜め下から大褐猿が群れでやってきました。
これも魔物ですから片付けてしまいましょう。
それと同時に、私が洞窟の中に潜った時に入り口を守ってもらうために十二神将を召喚しました。
この際ですから出し惜しみせずに、12体全部を召喚です。
6体は私の周囲の警護、残り6体には峡谷内にいる魔物の討伐を命じました。
台地の上には行かないよう念押ししています。
人に見られないよう活動することが大事なんです。
で、途中に出てきた魔物を掃討しながらたどり着いたのが小さな穴の前です。
確かに瘴気が噴き出ていますねぇ。
瘴気の方が重いのか下向きに流れていますけれど、この峡谷は盆地状になっていますので、徐々に上に溢れてきているみたいです。
下の方に水辺が見えますけれど、単なる水たまりで出口はないようですね。
そうして、私はそれほど大柄じゃないのですけれど、この小さな穴は頭ぐらいは入っても流石に身体が閊(つか)えそうです。
仕方がないので土魔法を使って穴を大きくしました。
間口が狭いのですが、中は意外と広い空間のようです。
亀裂上の隙間が続いていて、魔鉱石の塊まで続いているようです。
下向きに40度近い角度で伸びる岩盤の亀裂ですので、飛行魔法で体を支えながら徐々に潜ってゆきました。
何度か狭い箇所にぶつかり、その都度穴を広げてようやく魔鉱石の近くにたどり着きました。
私の地中センサーで確認しましたけれど、ウーン、これは確かに大きいです。
大きい塊だけで20m四方の大きさに高さが7mほどもありそうです。
それがメインの鉱床で、そこを中心にやや斜め方向に枝葉の鉱床が広がっています。
私は、最初にその枝葉の鉱床を切り出すようにしました。
ついでに魔鉱石以外の余分なものを取り除き、魔鉱石だけを取り出したんですけれど、枝葉部分だけでもマジックバック20袋分ぐらいになりそうです。
取り敢えずは、使用部分の全てを亜空間に収納してしまいます。
このときに注意すべきは崩落が起きないよう色々とつっかい棒を作ること。
鉱石採取には坑道の確保が必要ですよね。
大物は残して、取り敢えずは一旦外に出ましょう。
転移で穴の入り口付近に跳び、クビラ達6体に会合しました。
他の6体は、目下峡谷の低地等で絶賛魔物の駆除中ですが、これも呼び集めて、台地の方へと戻ります。
ようやく大地の上に出て、防護柵が見えました。
その前にクビラ達十二神将はお礼と労いの言葉をかけて送還です。
ようやくお昼を過ぎたころ合いなんですが、防護柵の中で報告とともにこれから保管のための倉庫を作る作業がありますからね。
それで大物を残して早めに切り上げたわけですが、大物を亜空間に放り込むことは可能ですけれど、全部を取り除くと瘴気の発生が止まりますから少なくともいくらかは残さねばなりませんでした。
最初に報告ですね。
早速、ダンカンさん、クレバインさん、モリソンさんそれに現地対策本部長のマチルデス将軍など関係者に集まってもらい、状況説明です。
私からは、障壁により瘴気の侵入を止められ、また、瘴気が障壁に触れると消滅すること。
魔物にも遭遇したけれど適宜殲滅したこと。
瘴気が発生している穴を発見し、その穴を広げて内部の探索をしたこと。
30度から40度の傾斜を有する大地の亀裂のような洞窟であり、その先に紫色の鉱石があったこと。
調査の結果その鉱石が瘴気の発生原因であると分かったこと。
但し、理由は不明だけれど(本当は龍脈と分かっていますけれどそこはオブラートに包みます。)地の底から放射する謎の力により当該紫色の鉱石が変化して瘴気を生むこと。
原因除去のため、当該鉱石を持てる分だけ持ち帰ったこと。
この謎の鉱石を除去すれば当面瘴気の発生は抑えられるだろうこと。
謎の鉱石の埋蔵量から判断して、放置すれば今後10年以上も瘴気発生が継続するだろうこと。
取り敢えず保管のための倉庫を、ここから離れた場所に建設したいがその許可をもらいたいということを順次説明した。
出席者からは、当該謎の鉱石を地表に出して大丈夫なのか、あるいは瘴気が発生しないのかという質問があった。
「私が知覚できている範囲で申し上げますと、この場所でも地底から放射する謎の力が感じられますので、ここへ何の対策も無しに鉱石を放置すると瘴気が発生すると思われます。
従って保管には私は現在身体に沿わせて張っている障壁と同様の役割を果たす結界を付与した容器に入れ、更に同様の結界の付与をなした石の倉に密封しておく必要があります。
因みに地底から放射される謎の力は、中心点がありそうで、私の知覚では地の底を流れる川のような感じですね。
ですから、その川から離れるに従って、影響力が小さくなり遠隔地に置けば瘴気の発生は止まると思われます。
その為にも倉庫を作って、瘴気の漏洩が無いかどうかの確認を行いたいのです。」
「万が一そこで漏れたならどう責任を取るんだ?」
将軍さんの側近が偉そうに聞いてきました。
なので、ちょっと嫌味を言いました。
「さて、どうしましょうね?
今のところ、ここには漏れてはいませんよね?
私が生み出した結界でマジックバックごと瘴気の発生を抑えているからですが、もし私も危ないということでしたなら、ここで作業を中止してギルドへ戻ることにしますが、そちらの判断で作業は完了ということでよろしいのでしょうかネ?」
慌てて将軍が側近を睨みつけながら訂正しました。
「いや、瘴気の原因調査とその除去については、当方から無理にお願いしていると聞いている。
そちらの判断で中止することを我々では止められないが、できるならば、瘴気の発生を抑えるためにこのまま作業を続行願いたい。
倉庫の建設や保管のための作業等必要なことは何でも協力する。
どの場所が適切なのか指示をもらえればすぐにでも許可を出しましょう。」
クロマルド王国三日目、現地対策本部到着から数えると二日目です。
初日はシーファ・ウーディを含めて総計で80匹以上の魔物を討伐しましたけれど、朝起きてみると、視界の中にちらほらと魔物が見えています。
きっとまだまだ見えない範囲にいるんでしょうけれど、朝食前に間近にいる三匹ほど討伐しておきました。
峡谷の緩斜面から這い上がってきた地竜と巨大蜘蛛2体でしたよ。
朝食を終えると、いよいよ瘴気の発生原因の確認とその除去のお仕事です。
ダンカンさん、クレバインさん、モリソンさんの三人もいずれも渋い顔をしています。
「変本地の術」は永続的なものではなくって、一時的に効果がある術なんです。
完全に意識を操る術もあるのですけれど、そんなことをしたなら奴隷と一緒です。
何を為すにしても自分の意思が持てなくなりますから、まずい方法ですよね。
この分だと明日の朝までには術が解けているかもしれません。
いずれにしろ出発を急ぎました。
準備は既にできています。
当初は、地中深くに存在する魔鉱石全体を安全な場所に転移することで終息させようと思ったのですが、それでは瘴気の発生原因を証明できなくなります。
まぁ、良くわからないうちに瘴気の発生が止まり、瘴気も除去できましたという筋書きもあるかもしれませんが、稀にせよ、瘴気が今後ともどこかで発生する可能性があることを考えると、その瘴気を抑えもしくは除去する才能を持つ者を育成しておく必要があり、その為にも原因を明らかにしておく必要があると思うのです。
そこで、私が持っていたマジックバック4個(採掘師の商売道具の一つですからね、収入が多くなった時点で余分に買い込んでいたものですよ。)に魔鉱石を小分けにして取り込み、現地対策本部から1ガーシュ離れた場所に仮の倉庫を作って保管することにしました。
倉庫はまだ作ってはいません。
取り敢えずマジックバック4個分の魔鉱石を持ち帰ってから、聖属性魔法モドキを付与した建材(今のところ岩若しくは土で作る予定)で倉庫を建設しようと思っています。
因みに、私のステータス上には聖魔法という項目はありません。
瘴気の浄化もしくは障壁は、光魔法と空間魔法それに治癒魔法を融合発動することで得られる特殊効果なのです。
龍脈の影響を受けると瘴気が発生するでしょうから、それを抑えるためには倉庫自体に聖魔法モドキの結界?シールド?障壁?が必要なんです。
私は、独り防護柵を飛び越えて危険地帯に足を踏み入れました。
◇◇◇◇
俺は一級採掘師のダンカンだ。
今、俺は、シルヴィが二重の防護柵を乗り越えて危険地帯に踏み込んで行くのを見送っている。
派遣チームの第一斑班長だというのに、死地に入ってゆくシルヴィの援護もできないことがつくづく恨めしいぜ。
俺の握りこぶしにあんまり力を入れ過ぎた所為で、ぬるっとしたものが生じた。
掌が内出血を起こし、それが破れて少し血がでたようだ。
まぁ、こんなのは放っておいても直ぐ治る。
昨夕は懸命にシルヴィを説得したんだが、力及ばず、逆に俺らが説得させられてしまった。
全く不甲斐ないことだぜ。
シルヴィは、間もなくやってくる晩夏には満年齢で12歳になるはずの娘っ子だ。
俺が採掘師にならずに、ごく普通に結婚でもしていれば、シルヴィよりも年上の娘が生まれていたかもしれねぇ。
そんな俺が、なんで若い娘っ子を危険地帯に送り出さねばならないんだ?
ほんの少し間違えるだけで死ぬと分かっているのにシルヴィを止められねぇ。
本当に情けなくって、ぎりぎりと歯を食いしばっているんで顎(あご)が痛い。
シルヴィは、速足でもなく至極普通に西南西の方向で峡谷上の大地が途切れる辺りへ歩んでゆく。
その峡谷の台地が途切れる辺りには、当然のように薄紫の瘴気が見えるんだ。
朝の間は背後からの光で少し見えにくいんだが、夕刻間近になると光の加減かも知れないが、少し濃い目の紫色の瘴気が見える。
じっと見ていると、シルヴィは瘴気の端に踏み入れたようだ。
俺はその時に初めてシルヴィの言う聖魔法の障壁ってやつを見た。
それまで見えなかったモノが見えるようになったのは、そこから障壁を張ったというわけではない。
シルヴィは、最初から障壁を張って行くと言っていたからな。
出発前にその障壁を張ったと言うのでシルヴィの肩の辺りに触れようとしたら、シルヴィの身体の周囲に柔らかい壁ができていることがわかった。
物理的に硬いわけじゃない。
だが、力を入れてさらに押し込むと徐々に抵抗が強くなり、俺の握りこぶしほども押し込めずに完全に遮られた。
むろんシルヴィには触れることもできなかったから、確かに見えない障壁ができていたのがわかった。
で、その障壁は今俺の見ている前で光り輝いているようだ。
瘴気がその障壁に触れると瞬時に淡く青く光りながら消滅している。
障壁は見えないけれど、その障壁に触れて消滅する瘴気が見えるんだ。
薄紫の瘴気がこの時ばかりは淡青色に輝いている。
変な話だが、実に綺麗だった。
俺の頭に何となく聖女のイメージが広がったぜ。
そういや、シルヴィには、「黒の救命士」なんて仇名がついていたっけな。
人の命を助ける治癒魔法が使えるくらいだから、まぁ、聖女と言われても不思議はねぇだろう。
そんなことを考えているうちに台地の途切れる辺りにシルヴィが着いたようだ。
そこからは斜面になって徐々にシルヴィの姿が見えなくなる。
シルヴィが振り返り、手を振ったようだ。
戻って来いよ、シルヴィ。
◇◇◇◇
ハーイ、またまたシルヴィですよ。
峡谷の上の台地がほぼ途切れる場所に到着、ここから緩斜面が下に向かって伸びています。
緩斜面とは言ってもスキー場のゲレンデぐらいの角度はあるんですよ。
岩場でほとんど植物も生えていませんし、断崖とは言えない急な瓦礫の坂ですよね
今のところ私の張ったシールド内に瘴気の侵入はありません。
防護柵を乗り越えて少し離れたところでシールドを拡大、私のへそを中心に周囲二尋ぐらいの球状のシールドを張っているのですけれど、ここにきて薄紫色の瘴気がそのシールドに当たると無音で淡青色の光を発して消滅している様です。
だから私の張ったシールドそのままに球状の形で青色に光っています。
このままシールドの範囲を拡げることも可能なのですけれど、原因を除去しないと意味がありませんので、今は魔力の消費を抑えるためにも現状維持のままにします。
あ、左斜め下から大褐猿が群れでやってきました。
これも魔物ですから片付けてしまいましょう。
それと同時に、私が洞窟の中に潜った時に入り口を守ってもらうために十二神将を召喚しました。
この際ですから出し惜しみせずに、12体全部を召喚です。
6体は私の周囲の警護、残り6体には峡谷内にいる魔物の討伐を命じました。
台地の上には行かないよう念押ししています。
人に見られないよう活動することが大事なんです。
で、途中に出てきた魔物を掃討しながらたどり着いたのが小さな穴の前です。
確かに瘴気が噴き出ていますねぇ。
瘴気の方が重いのか下向きに流れていますけれど、この峡谷は盆地状になっていますので、徐々に上に溢れてきているみたいです。
下の方に水辺が見えますけれど、単なる水たまりで出口はないようですね。
そうして、私はそれほど大柄じゃないのですけれど、この小さな穴は頭ぐらいは入っても流石に身体が閊(つか)えそうです。
仕方がないので土魔法を使って穴を大きくしました。
間口が狭いのですが、中は意外と広い空間のようです。
亀裂上の隙間が続いていて、魔鉱石の塊まで続いているようです。
下向きに40度近い角度で伸びる岩盤の亀裂ですので、飛行魔法で体を支えながら徐々に潜ってゆきました。
何度か狭い箇所にぶつかり、その都度穴を広げてようやく魔鉱石の近くにたどり着きました。
私の地中センサーで確認しましたけれど、ウーン、これは確かに大きいです。
大きい塊だけで20m四方の大きさに高さが7mほどもありそうです。
それがメインの鉱床で、そこを中心にやや斜め方向に枝葉の鉱床が広がっています。
私は、最初にその枝葉の鉱床を切り出すようにしました。
ついでに魔鉱石以外の余分なものを取り除き、魔鉱石だけを取り出したんですけれど、枝葉部分だけでもマジックバック20袋分ぐらいになりそうです。
取り敢えずは、使用部分の全てを亜空間に収納してしまいます。
このときに注意すべきは崩落が起きないよう色々とつっかい棒を作ること。
鉱石採取には坑道の確保が必要ですよね。
大物は残して、取り敢えずは一旦外に出ましょう。
転移で穴の入り口付近に跳び、クビラ達6体に会合しました。
他の6体は、目下峡谷の低地等で絶賛魔物の駆除中ですが、これも呼び集めて、台地の方へと戻ります。
ようやく大地の上に出て、防護柵が見えました。
その前にクビラ達十二神将はお礼と労いの言葉をかけて送還です。
ようやくお昼を過ぎたころ合いなんですが、防護柵の中で報告とともにこれから保管のための倉庫を作る作業がありますからね。
それで大物を残して早めに切り上げたわけですが、大物を亜空間に放り込むことは可能ですけれど、全部を取り除くと瘴気の発生が止まりますから少なくともいくらかは残さねばなりませんでした。
最初に報告ですね。
早速、ダンカンさん、クレバインさん、モリソンさんそれに現地対策本部長のマチルデス将軍など関係者に集まってもらい、状況説明です。
私からは、障壁により瘴気の侵入を止められ、また、瘴気が障壁に触れると消滅すること。
魔物にも遭遇したけれど適宜殲滅したこと。
瘴気が発生している穴を発見し、その穴を広げて内部の探索をしたこと。
30度から40度の傾斜を有する大地の亀裂のような洞窟であり、その先に紫色の鉱石があったこと。
調査の結果その鉱石が瘴気の発生原因であると分かったこと。
但し、理由は不明だけれど(本当は龍脈と分かっていますけれどそこはオブラートに包みます。)地の底から放射する謎の力により当該紫色の鉱石が変化して瘴気を生むこと。
原因除去のため、当該鉱石を持てる分だけ持ち帰ったこと。
この謎の鉱石を除去すれば当面瘴気の発生は抑えられるだろうこと。
謎の鉱石の埋蔵量から判断して、放置すれば今後10年以上も瘴気発生が継続するだろうこと。
取り敢えず保管のための倉庫を、ここから離れた場所に建設したいがその許可をもらいたいということを順次説明した。
出席者からは、当該謎の鉱石を地表に出して大丈夫なのか、あるいは瘴気が発生しないのかという質問があった。
「私が知覚できている範囲で申し上げますと、この場所でも地底から放射する謎の力が感じられますので、ここへ何の対策も無しに鉱石を放置すると瘴気が発生すると思われます。
従って保管には私は現在身体に沿わせて張っている障壁と同様の役割を果たす結界を付与した容器に入れ、更に同様の結界の付与をなした石の倉に密封しておく必要があります。
因みに地底から放射される謎の力は、中心点がありそうで、私の知覚では地の底を流れる川のような感じですね。
ですから、その川から離れるに従って、影響力が小さくなり遠隔地に置けば瘴気の発生は止まると思われます。
その為にも倉庫を作って、瘴気の漏洩が無いかどうかの確認を行いたいのです。」
「万が一そこで漏れたならどう責任を取るんだ?」
将軍さんの側近が偉そうに聞いてきました。
なので、ちょっと嫌味を言いました。
「さて、どうしましょうね?
今のところ、ここには漏れてはいませんよね?
私が生み出した結界でマジックバックごと瘴気の発生を抑えているからですが、もし私も危ないということでしたなら、ここで作業を中止してギルドへ戻ることにしますが、そちらの判断で作業は完了ということでよろしいのでしょうかネ?」
慌てて将軍が側近を睨みつけながら訂正しました。
「いや、瘴気の原因調査とその除去については、当方から無理にお願いしていると聞いている。
そちらの判断で中止することを我々では止められないが、できるならば、瘴気の発生を抑えるためにこのまま作業を続行願いたい。
倉庫の建設や保管のための作業等必要なことは何でも協力する。
どの場所が適切なのか指示をもらえればすぐにでも許可を出しましょう。」
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「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
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