魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第五章 黒杜の一族

5ー17 既往症対策と臨時講師

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 ハーイ、シルヴィです。 
 一応、メデュセニアとホープランド・ミニへの対応策は取ることができたので、これでわかる範囲での巣の除去・焼却を継続して行けば、ツアイス症候群の新たな発症は抑えられると思うのだけれど、今のところ同期生や前兆の見られないギルド会員は大丈夫としても、既に感染している人に対しての対策なり治療方法が見つかっていない。

 従って、今後は感染者への対策を考えたいと思っているのです。
 但し、私は医者じゃないので、正直なところどこから手を付けたらいいのか全然わからない。

 ワクチンとか対抗薬とか作れればいいんだけれど、そっち方面の前世での経験知識も乏しいんだよね。
 ただ、私のステータス上の職業には、「錬金術師」、「治癒師」、「薬師」があるし、スキルの中で、魔法系のいくつかのスキルが治癒にも対応しているのじゃないかと思っているのです。

 また、同じく、技能系スキルの「創薬・調剤」及び「錬金術」は薬師としての能力を意味しているのでしょう。
 更には、おそらく陰陽術にもなにがしかの治癒系の術はあるのじゃないかと思うのです。

 但し、こればかりは私の召喚妖精や精霊に聞いてもダメみたいで、試行錯誤でやってみるしかなさそうです。
 最初に試みるのは、ホープランドにある薬草を採取して色々と薬を造ってみることでしょうかねぇ。

 出来上がったモノには鑑定を掛ければ効能がわかるはずです。
 何かものすごく効率が悪そうだけれど・・・。

 実のところ、魔晶石ギルドには薬草に関する情報は多少はあっても、それらを使ってポーションや薬を造る関連知識はほとんどなさそうなんです。
 ですから非常手段を取りました。

 公都にある薬師ギルドを秘密裏に訪問(忍び込みともいう?)、資料室に在る各種書籍及び文献を勝手に複製(窃盗なのかな?)させていただきました。
 全部で二千冊(若しくは部)を超える書籍や文献がありました。

 実は、これを調べるのが一苦労なんですが、少しずつ地道にやるしか方法がありません。
 合間、合間にそんなことをしながらも魔晶石採掘師や加工師としての仕事は順次こなしていますよ。

 私が登録している鉱区であるB121区の黒色魔晶石の鉱床は、先日のデカ物の採掘・納品でほぼ取り尽くしました。
 かなり小さい物ならば未だにこの鉱床でも採れるんですけれど、労多くして左程の金額になりませんから効率重視で採掘は止めています。

 で、次はB140区に鉱区の変更申請をしました。
 実はズルをしちゃいました。
 
 大地の精霊ノームに黒の魔晶石を含めて鉱床の在り処ありかを教えて貰ったんです。
 ですから、私のインベントリにはホープランド全体の鉱床がわかる3Dマップがあるんです。

 B140区にはB121区に在ったような単体で大きな魔晶石を採掘できるような鉱床はありませんが、通常のマジックバックに収まるような黒の魔晶石が複数採掘できるような鉱床が三つもあるんです。
 勿論、露出鉱床ではありませんから、これまで発見されていなかった鉱床ですよ。

 この三つの鉱床だけで多分半年(8か月)程度の継続的な納品は可能なはずです。
 さらには、ギルド幹部を納得させるために作ったプレゼン用の大型スクリーンが商品に化けました。

 大型スクリーンだけでは用途も限られますけれど、汎用ソフトとタブレット、それにVTR擬きの撮影機をセットにすると、色々な場面で使えることになります。
 かなりのお値段ですよ。

 ギルドではワンセット5000万ヴィルの値を付けています。
 受注してから制作するのですけれど、現段階では既に他のギルド本部から4セットの発注を受けています。

 ギルドの販売部門とも協議の上で、生産台数は二か月にワンセット作る程度に抑えられていますから、この制作はほんの片手間で差し支えありません。
 それよりも、魔晶石ギルドとしては、通信機としてのセルフォンやタブレット生産の方に力を入れているみたいです。

 私の定常的な仕事としては、採掘や加工関連の仕事以外にも研修生の実習訓練の臨時講師もやらされています。
 ギルドとしては、次代の後継者育成のためにも多くの採掘師に臨時講師をしてもらいたいという意向があるのですけれど、どうしても、採掘師としての一匹狼的な根性が邪魔をするみたいです。

 例外はありますけれど、自分の鉱区に研修生を入れることを極端に嫌う様です。
 おまけに、ギルド指定の白やバラ色魔晶石の鉱床では、当然に臨時講師たちの稼ぎにならないのです。

 まぁ、白やバラについては、能力のある者ならこれまで誰も手を付けませんでしたから、ギルドの指定する実習場になっているのですけれどね。
 そうして、そもそも団体さんを引き連れて行ったなら研修にはなりません。

 そこまでのルートで遭遇する魔物や魔獣への対処法も含めての研修ですから、一人の臨時講師が連れて行けるのは一人だけなんです。
 効率が悪いけれどある意味で仕方がないことではあるのです。

 その意味では、私をわざわざ自分の鉱区に連れて行って魔晶石を自由に掘らせてくれたダンカンさんのような人は本当に珍しいのです。
 因みに専任講師のリカルド・フェンテスさんは、1年間の出向扱いで研修所に勤務しているだけで、今年の秋には採掘師に復帰する予定になっています。

 彼の場合一級採掘師ですからね。
 講師になる前の三年間の平均収入を補償された上で一年だけ講師になってもらっているようですよ。

 私の場合?
 私の場合は採掘師になって一年未満の新人に課せられる臨時講師ですからねぇ。

 既定の安い報酬しか貰えません。
 ある意味で、巣立った研修所に対する恩返しみたいなもので、皆さん薄給で働かされています。

 仮に私を専任の講師にしようと思ったら、ギルドが大赤字になりますからギルドが絶対にさせないと思います。
 臨時なのでやらせているだけで、幹部クラスからはギルドの収入が減るから私だけは外せという内々のオーダーも有ったとか無かったとか・・・・。

 私の場合、色々と議論の末に最終的に臨時講師は週に二度になりました。
 白曜日に通常の採掘に行き、次の日赤曜日は魔晶石利用委員会、三日目緑曜日が研修所の臨時講師、四日目金曜日は元に戻って通常の採掘、五日目茶曜日は魔晶石利用委員会、6日目橙曜日に再度臨時講師を務め、七日目青曜日は加工師の内職、八日目銀曜日はお休みのパターンです。

 従って、週に二回は同期生を連れて野外実習なわけです。
 ギルドに指定された採掘場所若しくはA136区又はB121区で鉱床が僅かに地表に達している場所を事務局に通知して研修員を案内しますけれど、基本的に、できるだけ魔物・魔獣対応も採掘も研修生にやらせます。

 採掘については手本を一度ぐらいは見せ、危ない時にはアドバイスしますし、場合によっては助けますけれど、手取り足取りじゃぁ無いんです。
 元々採掘師は厳しい職業ですからね。

 無理ならば早めに諦めてもらう方が無難なのです。
 同期生で採掘師候補は6人です。

 サイルズ・ベネディクト、テリオス・ブライアン、パスカル・クレッシェンド、モーガン・ヴェルトン、クレア・レジナンド、カイエン・オブレヒトの6人で、クレアだけが女性ですね。
 一応一月掛けて野外研修に臨んだわけですが、ちょっと採掘師としてはどうかなと思われるのは一人でしょうか。

 パスカルは、魔物・魔獣のハンターとしての技量が劣っていますし、鉱床での採掘もかなり不器用な感じです。
 往路でメガデスボアに遭遇しましたけれど、彼の魔法じゃ退治できないんです。

 メガデスボアって、体長5m、体重約3トン程度の大きさで、かなり弱い魔物の類なんですけれど、それが撃退できないんじゃ、他の魔物や魔獣が出てきたら只管ひたすら逃げるしかないような気がします。
 まぁ、避けられるならそれでも良いのですけれど・・・。
 
 彼の魔法属性は、光と火なのですけれど、私みたいにレザービームのような光線は出せませんし、ファイアボールを放ったら射程が精々30m程度ですから、まともに当たってもメガデスボアがぴんぴんしてました。
 剣、槍、楯はどうかというと、彼の力ではとてもメガボアを仕留めることはできません。

 槍で突いてもほとんどメガデスボアに傷もつけられない状態なんで、彼が魔獣や魔物と戦うのは無理と判断しました。
 それに加工師候補でもあるのですけれど、彼の場合白やバラでかろうじて採掘が可能なぐらいでおそらくは黄や黄緑の採掘を行うのはかなり無理があるように思います。

 実際にやらせてみたら、あがり症なのか、切り出しの音程が途中で変わって失敗したり、何とか切り出しができても、本来10若しくは9の姿で切り出すべきところをせいぜい7か5程度の切り出しで、しかも歪なものですから、加工師の手に預けると更に1割か2割は削らねば製品になりません。
 これは歩留まりが悪いですよね。

 採掘師は、鉱床の中の魔晶石の大きさを見切ってできるだけ大きめに切り出しをしなければならないんです。
 彼については、加工師になってもらい、白やバラを対象に液晶造りをしてもらった方がいいかもね。

 無理に採掘師になれば、近場ならまだしも、魔物に襲撃されて大怪我をするか死亡するのが目に見えてます。
 報告書にはかばうことなく正直に記載しておきました。

 あとは研修所の教官たちの判断でしょう。
 他の五人は、まぁまぁ合格でしょうか。
 
 自分の鉱区設定から鉱床を見つけるまでが大変だと思うけれど・・・。
 実は採掘師になって一番大変なのが、鉱区を指定してその中で露出鉱床を見つけることなんです。

 私みたいに地中の探索ができるならば問題ないのですけれど、通常は、地表の性状から地層を読み取り、露出鉱床がありそうな場所を只管探し回る羽目になるのです。
 その間、もちろん魔物や魔獣に襲われることもありますから決して気を抜けません。

 そんな試練に打ち勝って這いあがって来た人が二級採掘師であり、一級採掘師なんです。
 うーん、私はオカンじゃないけれど、将来的には地中レーダー的な魔道具の制作を検討してもいいかもね。

 前にも言ったかもしれないけれど、採掘師がかなり魔境の奥にまで入り込んでいるから、三級採掘師がそこまで入り込むのはほとんど不可能なんで、禁止されています。
 そんな事情もあって、魔晶石の採掘量が頭打ちになっている。

 やっぱり、どこかに山小屋的な避難所を造るのが一番いいのかも。
 現場で寝泊まりができれば、探索範囲も広がるからね。

 尤も水や食料、それに支援の問題はあるよね。
 さてさてどうしたものかなぁ。

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 3月28日、及び4月28日に一部字句修正を行いました。

   By サクラ近衛将監
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