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第五章 黒杜の一族
5ー16 メデュセニアとギルド対応
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石化の元凶がホープランド・ミニとメデュセニア(シルヴィが勝手に名付けたパラサイトの仮称です。)と分かったのですが、問題はその事実を如何にしてギルド会員に伝えるかですね。
取り敢えず、私がホープランド・ミニとその巣を殲滅してもいいのですけれど、見逃しがあったりすると厄介ですから、少なくともその危険性を後世にも伝えておく必要があると思うのです。
特にこのギルドは古い知識が結構資料として残ってはいても、顧みられないところがあるみたいなので心配なんです。
例えば、普通の蚊がホープランドに入り込んでホープランド・ミニに進化する可能性だって否定できませんからね。
ホープランド・ミニもホープランドという独特の環境で生まれた特異体だと思うのです。
だって、ここ以外には存在しないみたいですものね。
ホープランド・ミニの危険性を伝えるには、目で見える証拠が必要ですが、その点で猿人は優れたモルモットになりますね。
事前に血液型を調べて置けば、目の前で即座に石化が始まるのを見せることができます。
そうして、今一つは石化が心臓の近くで徐々に進む形態ですが、こちらは検証には時間がかかります。
でも猿人の骨とともに残された石化心臓は、ギルド会員でツアイス症候群で亡くなった方との類似性を髣髴とさせますし、準備期間中に行った猿人の解剖録画もありますので、この二つで十分でしょう。
但し、血液の中の成分関係とか色々とこの世界では知られていない知識を情報として伝えなければならないことの方が結構大変なんです。
水源と浄水器利用の問題もありますから、ここではある程度は一気に必要な知識の情報公開もやむを得ないとは思っています。
心臓の傍に在る変性オドがあるいはメデュセニアではないかと疑っているのですけれど確証はありません。
それと定位置が決まると動かないというのも不思議ですよね。
今一つ、肝臓に巣くっていた寄生生物の問題が片付いていないのですが、実はカルバン氏族の人たちには肝臓にへばりつくような寄生体が見つけられませんでした。
一方でギルド職員にはかなりの数でおなかの中に寄生体を飼っている人が居るのです。
何故、その違いが出てくるのかも調べておく必要がありますよね。
水の中に含まれている微細な魔物は、大食漢に関わるものだとはわかっていますが、ある意味でその副作用として変態化して肝臓に寄生する可能性もあるかもしれません。
もう一つ私の感触では、ギルド会員の長命化若しくは若返りの原因は、魔素の濃度差によるものと考えているのですが、そのsために魔素の濃度を測定する機器を開発できないかと思っています。
ホープランドとそれ以外の地域の魔素の濃度の違いがわかればその解明に一役買えるかもしれません。
ホープランド・ミニの殲滅がギルド会員から諸手を挙げて迎え入れられるためには、長命化若しくは若返りの原因が魔素の濃淡によるものという推論の余地が存在できるようにしておく必要があるのです。
これまでも魔境のホープランドの魔素が多いとは推量されては居ましたが、定量的に測った試しがないのです。
従って、魔素の濃度計測機器の開発と、肝臓に巣くうアメーバー状寄生生物の調査研究を進め、概ね盛夏上月を目途に、ギルドに話し合いの場を設けてもらうことを目標とすることにしました。
それまでに、機器開発と解明とが進んでいれば良いのですけれどね。
◇◇◇◇
結果から言うと一月半の間、毎日動き回り、ようやく準備が整ったと思います。
まず、肝臓に巣くうアメーバー状寄生生物ですが、これは驚いたことに単純にアル中に付属する大食漢の症状の一つに過ぎないようでした。
肝臓に巣くって消費しきれないアルコールの消費を手伝っているようで、その意味では益虫に近い寄生体ですね。
男性に多く女性に少ないことも特徴の一つでしたけれど、お腹にこの寄生体を飼っているのは実のところ全員が大酒飲みだったのです。
女性でもアル中が居ないわけでは無いのですが、確率は低いのです。
因みに、公都の大酒飲みを見つけて調べましたが、調べた60名余りのアル中患者にアメーバー状寄生生物は存在しませんでした。
そうしてまた、彼らギルド会員の大酒飲みは、前世で言うところのアブサンやウオッカのような非常に度数の高い酒を大量に飲んでいました。
そうして反対に下戸の人で寄生体を飼っている人は皆無だったのです。
因みにカルバン氏族はと言えば、彼らの里にも酒はありますけれど、かなり度数の低いワイン様のものなので、飲んでもアル中にはなりそうもなかったですね。
従って、肝臓に寄生するアメーバー状寄生生物については、水に含まれる微小な魔物の変性体の可能性があり、対策は特にしないことにしました。
そもそも退治方法が見つからないのも問題ですが、こ奴を退治してしまうと大酒飲みが肝硬変で早死にするかもしれませんからねぇ。
一方、魔素濃度の計測器ですが、こちらもうまくいったものと思います。
魔素とは、そもそも空間の中に含まれるエネルギー媒体であって、それ自体はエネルギーを持たないけれど、魔素を媒介することにより異次元空間から魔法発動のエネルギーを汲みだすことができるようなのです。
その魔素は、地脈の中に大量に流れており、往々にして泉のような地上への湧出ポイントがあるみたいです。
従って、当該『泉』の周辺では地中、水中、大気中に関わらず、魔素が大量に拡散することとなり、魔素の濃度が濃いことになります。
そこで、継続的にごく少量の魔力を使う機器を造り、その発動の速さ、効果の大小からその場所の魔素の濃度を計測できないかどうかを試してみました。
単純に言えばガスを送りこんで火を出すガスバーナーのようなものですから、微量の魔素を使って魔法を放つダミーのような魔法陣はすぐにできましたが、一方でその発動の速さを測定したり、効果の大小を測定する魔方陣の構築の方が非常に難しかったのです。
それでも何とか魔素の濃度を液晶表示で数値化することに成功しました。
とは言いつつも、正確な機器ではなくあくまで簡易測定器の類ですね。
で、ギルド周辺、魔境内のいくつかの観測点、公都におけるいくつかの観測点で測定したものを一覧表にし、同時に気象観測における等圧線のように図面の中に表示しました。
やろうと思えばもっと詳細にはできるのですけれど、適当に端折った観測点だけで表現しても、ホープランドの魔素が高いことが一見してわかるものになりました。
10日前に特別評議会開催を申請し、初夏月27日の当日、お偉方の前で持論をぶちあげました。
特別評議会というのは、ギルド運営に関わる重大事であって、原則として評議員の申し出により開催されるものですが、会員の生命に関わる事項については、ギルド会員からの提唱でも特別評議会を開催できるのです。
因みにこれまでのギルドの歴史の中で、この評議会の開催を申請したギルド会員は誰も居なかったようです。
私はこの時とばかりに新技術をひけらかし、同時にやむを得ないので鑑識等私の能力の一端も御開帳しました。
そうでもしなければ頭の固いお偉方は動いてくれそうにないからです。
私が行った実験の録画を残し、前世での百インチTVに匹敵する液晶画面に高精細の画像で映し出したのです。
そうして、猿人の石化については、会議場で実物の実験を見せました。
そのためだけに前日には猿人を入れた檻を荷車で運び込んだりして、準備が結構大変だったのです。
ホープランド・ミニ一匹と、動けないように拘束している猿人を、ガラス様の板で囲まれた檻に閉じ込め、ホープランド・ミニが吸血のために血を吸う場面を見せたのです。
効果満点の演出でした。
刺されて数秒で、皮膚が石化を始め、凡そ15分ほどで猿人は死亡しました。
それがわかるように、猿人の脈拍の鼓動をオシログラフよろしく表示していますから、心臓が止まったことはその場に居た皆が目にできたのです。
その際には、猿人の身体全部が石化していないわけですが、それから数時間かけて石化してゆく様子は録画したものを見せました。
もう一つ大事なのは、その石化した亡骸から半透明なゲル状生物が染み出てきたのを別の事前の実験で確認できたことでしょうか。
台状の拘束寝台に寝かせた猿人の身体ですが、ベッドの寝床部分は竹のような樹木で編んだ目の粗いものですから、猿人が死亡して凡そ五日経過後にそこから滑り落ちてくる様子がしっかりと捉えられているのです。
生憎と下には土は無く、金属製の大きな受け皿(パン)が置いてあってその中にゲル状生物が捉えられました。
暫くはうねうねと動いていたのですが、受け皿の周囲を乗り越えるほどの活動力は無く、その中で動きを止めました。
これも更に二昼夜すると茶色の物体に固化してしまいます。
因みに、少し深めの受け皿に相当量の土又は砂を用意しておくと、その受け皿の中で土又は砂と同化して扁平の球形上の塊を造ることも見られるようにしました。
更には、冷凍してあるホープランド・ミニの球形の巣の実物もマジックパックで運び込んで見せました。
その上で、ヒトの血液と猿人の血液に在る特定物質により即座に石化するものとそうでは無い者に分かれることも理路整然と説明しました。
少なくともホープランド・ミニ及びそのパラサイトであるメデュセニアが、石化を引き起こす危険な生物であるという認識は共有できました。
その上で、パラサイト・ミニの駆除を進言したところ、案の定、パラサイト・ミニは長命化若しくは若返りと関連性が無いのかどうかという質問がお偉方の一人から飛び出ました。
まぁ、この質問が出ることは予想の範囲でしたから、そこで魔素の濃度分布マップを提示し、公都との違いを説明し、魔素の濃度の差が長命化若しくは若返りに関連するものと推測されると説明しました。
この説明も完璧ではなくって大いに抜けがある理屈なのですが、そもそも魔境の異常性に説明がつくことなので比較的にすんなりと受け入れられました。
尤も、魔素の濃度マップを提示する前に、メデュセニアを媒介するホープランド・ミニに本来食料の提供者である生贄の石化は何らメリットがないにもかかわらず、石化を招く以上、ホープランド・ミニ関連で長命化若しくは若返りの恩恵があるとするのはそもそも誤りだと説明したこと、また、ホープランド・ミニ及びメデュセニアの生体組織には、長命化若しくは若返りに関する如何なる因子も認められなかったという説明が大いに布石になっていたと思います。
その結果として、特別評議会ではいくつかのことが取り決められました。
採掘中に野垂れ死んだ場合を除き、死亡したギルド会員は死亡が確認され次第速やかに火葬に付すこと。
ホープランド・ミニは発見次第可能な限り駆除すること。
ホープランド・ミニの巣を発見した場合、速やかに焼却し、焼却できない場合はその地点をギルドに速報すること。
水源における微小魔物の介在については、過食症の原因であると認め、浄水器の設置により可能な限り、微小魔物の体内取入れを防止すること。
こうして、ギルド会員の健康を守るためにできることは概ね終わりました。
肝臓に巣くうアメーバー状の寄生体が別途突然変異しなけりゃいいのですけれどね。
今回は、注意喚起だけはしておきました。
飲み過ぎはできるだけ止めましょうねぇ。
取り敢えず、私がホープランド・ミニとその巣を殲滅してもいいのですけれど、見逃しがあったりすると厄介ですから、少なくともその危険性を後世にも伝えておく必要があると思うのです。
特にこのギルドは古い知識が結構資料として残ってはいても、顧みられないところがあるみたいなので心配なんです。
例えば、普通の蚊がホープランドに入り込んでホープランド・ミニに進化する可能性だって否定できませんからね。
ホープランド・ミニもホープランドという独特の環境で生まれた特異体だと思うのです。
だって、ここ以外には存在しないみたいですものね。
ホープランド・ミニの危険性を伝えるには、目で見える証拠が必要ですが、その点で猿人は優れたモルモットになりますね。
事前に血液型を調べて置けば、目の前で即座に石化が始まるのを見せることができます。
そうして、今一つは石化が心臓の近くで徐々に進む形態ですが、こちらは検証には時間がかかります。
でも猿人の骨とともに残された石化心臓は、ギルド会員でツアイス症候群で亡くなった方との類似性を髣髴とさせますし、準備期間中に行った猿人の解剖録画もありますので、この二つで十分でしょう。
但し、血液の中の成分関係とか色々とこの世界では知られていない知識を情報として伝えなければならないことの方が結構大変なんです。
水源と浄水器利用の問題もありますから、ここではある程度は一気に必要な知識の情報公開もやむを得ないとは思っています。
心臓の傍に在る変性オドがあるいはメデュセニアではないかと疑っているのですけれど確証はありません。
それと定位置が決まると動かないというのも不思議ですよね。
今一つ、肝臓に巣くっていた寄生生物の問題が片付いていないのですが、実はカルバン氏族の人たちには肝臓にへばりつくような寄生体が見つけられませんでした。
一方でギルド職員にはかなりの数でおなかの中に寄生体を飼っている人が居るのです。
何故、その違いが出てくるのかも調べておく必要がありますよね。
水の中に含まれている微細な魔物は、大食漢に関わるものだとはわかっていますが、ある意味でその副作用として変態化して肝臓に寄生する可能性もあるかもしれません。
もう一つ私の感触では、ギルド会員の長命化若しくは若返りの原因は、魔素の濃度差によるものと考えているのですが、そのsために魔素の濃度を測定する機器を開発できないかと思っています。
ホープランドとそれ以外の地域の魔素の濃度の違いがわかればその解明に一役買えるかもしれません。
ホープランド・ミニの殲滅がギルド会員から諸手を挙げて迎え入れられるためには、長命化若しくは若返りの原因が魔素の濃淡によるものという推論の余地が存在できるようにしておく必要があるのです。
これまでも魔境のホープランドの魔素が多いとは推量されては居ましたが、定量的に測った試しがないのです。
従って、魔素の濃度計測機器の開発と、肝臓に巣くうアメーバー状寄生生物の調査研究を進め、概ね盛夏上月を目途に、ギルドに話し合いの場を設けてもらうことを目標とすることにしました。
それまでに、機器開発と解明とが進んでいれば良いのですけれどね。
◇◇◇◇
結果から言うと一月半の間、毎日動き回り、ようやく準備が整ったと思います。
まず、肝臓に巣くうアメーバー状寄生生物ですが、これは驚いたことに単純にアル中に付属する大食漢の症状の一つに過ぎないようでした。
肝臓に巣くって消費しきれないアルコールの消費を手伝っているようで、その意味では益虫に近い寄生体ですね。
男性に多く女性に少ないことも特徴の一つでしたけれど、お腹にこの寄生体を飼っているのは実のところ全員が大酒飲みだったのです。
女性でもアル中が居ないわけでは無いのですが、確率は低いのです。
因みに、公都の大酒飲みを見つけて調べましたが、調べた60名余りのアル中患者にアメーバー状寄生生物は存在しませんでした。
そうしてまた、彼らギルド会員の大酒飲みは、前世で言うところのアブサンやウオッカのような非常に度数の高い酒を大量に飲んでいました。
そうして反対に下戸の人で寄生体を飼っている人は皆無だったのです。
因みにカルバン氏族はと言えば、彼らの里にも酒はありますけれど、かなり度数の低いワイン様のものなので、飲んでもアル中にはなりそうもなかったですね。
従って、肝臓に寄生するアメーバー状寄生生物については、水に含まれる微小な魔物の変性体の可能性があり、対策は特にしないことにしました。
そもそも退治方法が見つからないのも問題ですが、こ奴を退治してしまうと大酒飲みが肝硬変で早死にするかもしれませんからねぇ。
一方、魔素濃度の計測器ですが、こちらもうまくいったものと思います。
魔素とは、そもそも空間の中に含まれるエネルギー媒体であって、それ自体はエネルギーを持たないけれど、魔素を媒介することにより異次元空間から魔法発動のエネルギーを汲みだすことができるようなのです。
その魔素は、地脈の中に大量に流れており、往々にして泉のような地上への湧出ポイントがあるみたいです。
従って、当該『泉』の周辺では地中、水中、大気中に関わらず、魔素が大量に拡散することとなり、魔素の濃度が濃いことになります。
そこで、継続的にごく少量の魔力を使う機器を造り、その発動の速さ、効果の大小からその場所の魔素の濃度を計測できないかどうかを試してみました。
単純に言えばガスを送りこんで火を出すガスバーナーのようなものですから、微量の魔素を使って魔法を放つダミーのような魔法陣はすぐにできましたが、一方でその発動の速さを測定したり、効果の大小を測定する魔方陣の構築の方が非常に難しかったのです。
それでも何とか魔素の濃度を液晶表示で数値化することに成功しました。
とは言いつつも、正確な機器ではなくあくまで簡易測定器の類ですね。
で、ギルド周辺、魔境内のいくつかの観測点、公都におけるいくつかの観測点で測定したものを一覧表にし、同時に気象観測における等圧線のように図面の中に表示しました。
やろうと思えばもっと詳細にはできるのですけれど、適当に端折った観測点だけで表現しても、ホープランドの魔素が高いことが一見してわかるものになりました。
10日前に特別評議会開催を申請し、初夏月27日の当日、お偉方の前で持論をぶちあげました。
特別評議会というのは、ギルド運営に関わる重大事であって、原則として評議員の申し出により開催されるものですが、会員の生命に関わる事項については、ギルド会員からの提唱でも特別評議会を開催できるのです。
因みにこれまでのギルドの歴史の中で、この評議会の開催を申請したギルド会員は誰も居なかったようです。
私はこの時とばかりに新技術をひけらかし、同時にやむを得ないので鑑識等私の能力の一端も御開帳しました。
そうでもしなければ頭の固いお偉方は動いてくれそうにないからです。
私が行った実験の録画を残し、前世での百インチTVに匹敵する液晶画面に高精細の画像で映し出したのです。
そうして、猿人の石化については、会議場で実物の実験を見せました。
そのためだけに前日には猿人を入れた檻を荷車で運び込んだりして、準備が結構大変だったのです。
ホープランド・ミニ一匹と、動けないように拘束している猿人を、ガラス様の板で囲まれた檻に閉じ込め、ホープランド・ミニが吸血のために血を吸う場面を見せたのです。
効果満点の演出でした。
刺されて数秒で、皮膚が石化を始め、凡そ15分ほどで猿人は死亡しました。
それがわかるように、猿人の脈拍の鼓動をオシログラフよろしく表示していますから、心臓が止まったことはその場に居た皆が目にできたのです。
その際には、猿人の身体全部が石化していないわけですが、それから数時間かけて石化してゆく様子は録画したものを見せました。
もう一つ大事なのは、その石化した亡骸から半透明なゲル状生物が染み出てきたのを別の事前の実験で確認できたことでしょうか。
台状の拘束寝台に寝かせた猿人の身体ですが、ベッドの寝床部分は竹のような樹木で編んだ目の粗いものですから、猿人が死亡して凡そ五日経過後にそこから滑り落ちてくる様子がしっかりと捉えられているのです。
生憎と下には土は無く、金属製の大きな受け皿(パン)が置いてあってその中にゲル状生物が捉えられました。
暫くはうねうねと動いていたのですが、受け皿の周囲を乗り越えるほどの活動力は無く、その中で動きを止めました。
これも更に二昼夜すると茶色の物体に固化してしまいます。
因みに、少し深めの受け皿に相当量の土又は砂を用意しておくと、その受け皿の中で土又は砂と同化して扁平の球形上の塊を造ることも見られるようにしました。
更には、冷凍してあるホープランド・ミニの球形の巣の実物もマジックパックで運び込んで見せました。
その上で、ヒトの血液と猿人の血液に在る特定物質により即座に石化するものとそうでは無い者に分かれることも理路整然と説明しました。
少なくともホープランド・ミニ及びそのパラサイトであるメデュセニアが、石化を引き起こす危険な生物であるという認識は共有できました。
その上で、パラサイト・ミニの駆除を進言したところ、案の定、パラサイト・ミニは長命化若しくは若返りと関連性が無いのかどうかという質問がお偉方の一人から飛び出ました。
まぁ、この質問が出ることは予想の範囲でしたから、そこで魔素の濃度分布マップを提示し、公都との違いを説明し、魔素の濃度の差が長命化若しくは若返りに関連するものと推測されると説明しました。
この説明も完璧ではなくって大いに抜けがある理屈なのですが、そもそも魔境の異常性に説明がつくことなので比較的にすんなりと受け入れられました。
尤も、魔素の濃度マップを提示する前に、メデュセニアを媒介するホープランド・ミニに本来食料の提供者である生贄の石化は何らメリットがないにもかかわらず、石化を招く以上、ホープランド・ミニ関連で長命化若しくは若返りの恩恵があるとするのはそもそも誤りだと説明したこと、また、ホープランド・ミニ及びメデュセニアの生体組織には、長命化若しくは若返りに関する如何なる因子も認められなかったという説明が大いに布石になっていたと思います。
その結果として、特別評議会ではいくつかのことが取り決められました。
採掘中に野垂れ死んだ場合を除き、死亡したギルド会員は死亡が確認され次第速やかに火葬に付すこと。
ホープランド・ミニは発見次第可能な限り駆除すること。
ホープランド・ミニの巣を発見した場合、速やかに焼却し、焼却できない場合はその地点をギルドに速報すること。
水源における微小魔物の介在については、過食症の原因であると認め、浄水器の設置により可能な限り、微小魔物の体内取入れを防止すること。
こうして、ギルド会員の健康を守るためにできることは概ね終わりました。
肝臓に巣くうアメーバー状の寄生体が別途突然変異しなけりゃいいのですけれどね。
今回は、注意喚起だけはしておきました。
飲み過ぎはできるだけ止めましょうねぇ。
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