67 / 121
第五章 黒杜の一族
5ー15 石化の元凶
しおりを挟む
ギルドの屋舎から10キロ圏外の巣穴は取り敢えず放置して様子見です。
研修生の実地研修については、私が以前A136区で見つけて置いたバラ色の魔晶石の露出鉱床が使われる予定(因みに指導員は私)ですが、そこまでの距離は直線距離で1.2キロですから、今回の予防措置をおこなったことで、実地研修の最中にホープランド・ミニに遭遇する可能性は極めて低くなったはずです。
で、ツアイス症候群の犯人の一つが此奴関連かどうかなんですけれど、5日間の観察実験では、ホープランド・ミニの体内にパラサイトと思われる微生物が居るのが確認できました。
しかもホープランド・ミニの口器(蚊の針でーす。)から麻痺毒を流し込む際に、人の身体に入り込みます。
残念ながら、取り敢えず実験に使ったのは人体ではなく、限りなく人体に近いゴーレム?ホムンクルス?なんです。
血管擬き内部の血流を動かしているのは、生身の心臓ではなくって、魔導モーターで動くポンプです。
この人造人間君、魔力で人工血液を動かしてはいますけれど、やっぱり異質なんでしょうね。
人そっくりですけれど、簡単な作りなんで、動けないマネキンみたいなものですから、パラサイトと思しき微生物がびっくりしたのか固まってしまって自ら動こうとはしません。
まぁ、元から他力本願で血流に乗って心臓へ辿り着くのかもしれませんけれど、近傍に辿り着いたら途中下車しなければ心臓の傍には居られないですよね。
だから、どこかで自発的に動くと思っていたんですけれど、ポンプの箇所は通り過ぎてぐるぐると血管擬きの中を周回してます。
ホープランド・ミニから押し出されたのは良いけれど、自分が居るべき場所ではないと気づいたのかもしれませんし、心臓のあるべき場所が見つけられないのかも知れません。
生体の中へ潜り込むのとは状況が違いますからね。
戸惑うのも無理は無いと思います。
脳みそがあるなら、きっとオーバーヒート状態なんでしょう。
でも、これじゃぁ、こいつが犯人なのかどうかわかりません。
またまた、頭を抱え込んでしまいましたが、そこで再びヒントをくれたのがノーム君です。
「そう言えば、ここの略北方向に居る猿人の集落近くにもこいつが居るぜよ。
で、その集落の猿人がかなり犠牲になっておるがよ。」
「ン、犠牲って、どんな風に?」
「あぁ、刺されてしばらくすると死ぬがや。
人間は埋葬したりするけんど、奴らは放置じゃけん。
そのうち全部石に変わるもんと、腐りよるもんに分かれ寄るち。
石に変わり寄った亡骸からはスライムごつもんが染み出てきて、そいつが地面に潜り寄る。
腐りよった遺骸からも同様じゃが、腐敗した方が外に出よるんは早いように思えるな。
今じゃぁ、石化したのは別として遺骸の方はほとんど白骨化しよるが・・・。
そのスライムごつもんが潜った場所が、あの蚊の良い棲み処になりよるんじゃ。
何らかの栄養的なものを与えているんかも知れんで。
オイはよう知らんど。」
私は早速その現場に行きました。
危険はありますよ。
ですから養蜂家が使うような防具で全身を覆った上に、魔法でしっかりと五重の結界を張っての出動です。
いくらチート能力があって、神様からの加護を頂いていると云っても、万が一のことがあるやも知れません。
私は、絶対にあいつに刺されたくはありません。
ついでに私の身体の周囲には冷気を纏わせています。
蚊は熱や二酸化炭素に聡(さと)いようですので、念のために熱をカットです。
二酸化炭素?
うーん、吐く息は仕方ないですよね。
前世にあった二酸化炭素を排出しない循環式酸素ボンベを造るって方法もなくはないですけれど。
時間がかかりそうです。
で、見切りスタート。
ノームに教えられた現場に着いてすぐに石化した猿人を見つけました。
カル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤで遺骸を確認しましたけれど、野外では初めて見る死亡形態ですが、なるほどカル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤの遺骸と同じように全身の細胞が固化しています。
スキャンをかけると心臓のすぐ脇に空洞箇所がありました。
その他の腹腔内と胸腔内は、粗な組織の状態で固化されていますので、あるいは液状のものが固化したのかもしれません。
なのに、心臓部分の裏側にだけ空洞があるんです。
なるほど、ここに潜んでいたわけですね。
腐敗したはずの遺骸も調べましたが、白骨と石化した心臓があるだけで、パラサイトもその寄生の痕跡もよくわかりませんでした。
因みに遺骸のあった周辺の地下をスキャンすると、アメーバー状というのかスライム状というのか、土と同化若しくは融合したような形で存在していました。
大体地下3m程度を中心に直径2mほどの球状になっていますけれど、生きているのかどうかすらよくわかりません。
これがそのまま巣になるんでしょうか?
あれ?じゃぁ、ギルド敷地内の巣は何であそこにあるの?
パラサイトがあそこで抜け落ちたってこと?
いや、いや、そもそも直近であそこに巣ができたとは限らないのかな?
もしかすると、かなり以前にパラサイトが地中に潜り、ホープランド・ミニが棲み付いた?
そもそもここ最近の話ではなくって、そこでホープランド・ミニが繁殖していればそのまま長期間棲み処になるってこともあり得るか・・・。
じゃぁ、パラサイトの本体である球状の泥団子は、己の自らの身体を使ってホープランド・ミニを増殖させると同時に、ホープランド・ミニを運び役として用いて共存しているということかな?
いずれにしろ、中庭付近にあった泥団子ができたのは昨年のことでは無いと思われます。
記録で調べた限り、ギルド内でのツアイス症候群による死亡者は、昨年のヒューム部長を除くと、ここ4年ほど出ていないし、死亡したのは中庭などでは無いようです。
おそらくこの泥団子状の巣穴は一旦できると暫く持つのでしょう。
それでも、パラサイトも生き物だから、例え仮死状態だとしても、ホープランド・ミニに取り込まれて稼働できるようにならないと意味がありません。
可哀想なんだけれど、猿人の集落から6匹ほど実験体を確保しました。
相手の同意は得ていません。
もちろんご本人たちの意志に関わらず強制徴用です。ハイ。
ヒラトップの工房で檻の中に入れて、被検体(モルモット)になってもらいます。
それと他の動物への影響はどうなのかを確認するために、ネズミやモグラそれにウサギを捕まえました。
どれもギルド周辺に生息しているから形は小さいけれど魔物の類いですよ。
羽化したホープランド・ミニに刺された猿人二匹は、一匹はすぐに石化を始めましたが、もう一匹はすぐには石化しませんでした。
ホープランド・ミニの体内からパラサイトと思われる微生物を抽出、これを直接猿人の体内に注射しましたが、この場合は、二匹とも即時石化の症状は現れませんでした。
猿人以外の魔物ですが、まず、ホープランド・ミニがネズミとウサギにはそもそもとりつきませんでした。
対象外となっている理由は今のところ不明です。
一応モグラには取り付いて血を吸っていましたが、実際問題として地中で同じ事をするのはかなり難しそうですよね。
で、当然、ネズミとウサギは刺されていないですから発症しません。
モグラですけれど、これも即時の石化開始は認められません。
うーん、もしかすると、モグラ君に耐性があるのかも。
次いで、パラサイトを直接被検体に注射する方法。
ネズミ、ウサギ、モグラとも全然変化がありません。
一匹ぐらい即時の石化症状が現れてもいいのに・・・・。
ふと思い出して、ホープランド・ミニが刺したときに吐き出す麻痺毒も併用してみました。
効果がありました。
但し、猿人の方ですけれど、二匹のうち一匹が即時石化を始めました。
どうやらホープランド・ミニの持つ麻痺毒との併用で即時石化が開始される場合があるようです。
但し、魔物三種については全く変化なしです。
次いで行ったのは、猿人と魔物三種から事前に採取した血液の分析です。
もちろん事後の血液採取も行って分析を同時並行で行っています。
その結果わかったことがいくつかあります。
まず猿人については、即時石化を始めた個体には、血液中のタンパク質が四種類あります。
このタンパク質、おそらく前世で何とかブリンとか何とかブミンと言うような名が付いていたはずですけれどもともとあまり興味が無かった分野ですし良く覚えていません。
しょうが無いのでAブリン、Bブリン、Cブリン、Dブリンと勝手に名付けちゃいました。
このうちBブリンについて、即時石化した個体の血液では、アミノ基の数が5割増しなんです。
私の顕微視能力で見た途端に数が多いとわかりましたから間違いありません。
アミノ基の数が少ないBブリンをαBブリン、多い方をβBブリンとしたのですけれど、猿人の場合はβBブリンを持つ個体が半数ほどでした。
一方で私たちヒト族(ギルド会員及び公都の住民に限る)は、βBブリンを持つ人は皆無です。
その代わりβブリンの亜種であるアミノ基が2割増し程度のγBブリンを持つ人が5%ほどいました。
私が採取できたヒト族の検体数は千件前後ですから、統計的には十分検証にはなる数字と思います。
もう一つカルバン氏族なんですが、彼らは何故かβBブリンを持っている人が9割と猿人よりも多いんです。
これは、閉鎖社会での血族婚の弊害なのかもしれません。
確実ではないかもしれませんが、ギルドの人に即時石化が無いのはβBブリン保有者が居ない所為かも知れません。
一方で、カルバン氏族がホープランド・ミニに刺されると約9割の確率で即時石化が始まることになります。
但し、カルバン氏族全員の血液を採取したわけでは無く、検体数は今のところ25体なので、統計上は当てにならない数値です。
今度、できるだけカルバン氏族の血液採取をして確認してみましょう。
これで、猿人の場合で、即時石化するものと、心臓の石化でいずれ死ぬものとの差が出ることについて一応の説明がつきました。
今一つ興味深いことは、魔物には石化現象が発現しそうにないことです。
以前、過食症のウィルス擬きでも同様のことが起きたのですが、猿人を除く現地生息の魔物には特別な抗体が存在するのかもしれません。
血液中に送り込まれたパラサイトは、ヒト擬きのホムンクルスと同じく、血液中を周回するだけで、心臓付近にとりつく動きを全く見せないのです。
一方で、猿人に取り込まれたパラサイトはαBブリンとβBブリンの血液両方で心臓の周辺に取りついています。
数秒以内に変化がありますから、動きは速いですね。
刺され若しくは注射器で血管内に入れられるとすぐにも心臓周辺に居座ります。
但し、ホープランド・ミニの麻酔毒の併用が無いとパラサイトは正常に動けないみたいです。
ですからパラサイトのみを注射器で送りこんだ猿人の身体には一向に変化が無いのです。
いずれにしろ、パラサイトの元凶を特定できたのじゃないかと思います。
=============================
3月16日、誤字脱字のために修正を行いました。
研修生の実地研修については、私が以前A136区で見つけて置いたバラ色の魔晶石の露出鉱床が使われる予定(因みに指導員は私)ですが、そこまでの距離は直線距離で1.2キロですから、今回の予防措置をおこなったことで、実地研修の最中にホープランド・ミニに遭遇する可能性は極めて低くなったはずです。
で、ツアイス症候群の犯人の一つが此奴関連かどうかなんですけれど、5日間の観察実験では、ホープランド・ミニの体内にパラサイトと思われる微生物が居るのが確認できました。
しかもホープランド・ミニの口器(蚊の針でーす。)から麻痺毒を流し込む際に、人の身体に入り込みます。
残念ながら、取り敢えず実験に使ったのは人体ではなく、限りなく人体に近いゴーレム?ホムンクルス?なんです。
血管擬き内部の血流を動かしているのは、生身の心臓ではなくって、魔導モーターで動くポンプです。
この人造人間君、魔力で人工血液を動かしてはいますけれど、やっぱり異質なんでしょうね。
人そっくりですけれど、簡単な作りなんで、動けないマネキンみたいなものですから、パラサイトと思しき微生物がびっくりしたのか固まってしまって自ら動こうとはしません。
まぁ、元から他力本願で血流に乗って心臓へ辿り着くのかもしれませんけれど、近傍に辿り着いたら途中下車しなければ心臓の傍には居られないですよね。
だから、どこかで自発的に動くと思っていたんですけれど、ポンプの箇所は通り過ぎてぐるぐると血管擬きの中を周回してます。
ホープランド・ミニから押し出されたのは良いけれど、自分が居るべき場所ではないと気づいたのかもしれませんし、心臓のあるべき場所が見つけられないのかも知れません。
生体の中へ潜り込むのとは状況が違いますからね。
戸惑うのも無理は無いと思います。
脳みそがあるなら、きっとオーバーヒート状態なんでしょう。
でも、これじゃぁ、こいつが犯人なのかどうかわかりません。
またまた、頭を抱え込んでしまいましたが、そこで再びヒントをくれたのがノーム君です。
「そう言えば、ここの略北方向に居る猿人の集落近くにもこいつが居るぜよ。
で、その集落の猿人がかなり犠牲になっておるがよ。」
「ン、犠牲って、どんな風に?」
「あぁ、刺されてしばらくすると死ぬがや。
人間は埋葬したりするけんど、奴らは放置じゃけん。
そのうち全部石に変わるもんと、腐りよるもんに分かれ寄るち。
石に変わり寄った亡骸からはスライムごつもんが染み出てきて、そいつが地面に潜り寄る。
腐りよった遺骸からも同様じゃが、腐敗した方が外に出よるんは早いように思えるな。
今じゃぁ、石化したのは別として遺骸の方はほとんど白骨化しよるが・・・。
そのスライムごつもんが潜った場所が、あの蚊の良い棲み処になりよるんじゃ。
何らかの栄養的なものを与えているんかも知れんで。
オイはよう知らんど。」
私は早速その現場に行きました。
危険はありますよ。
ですから養蜂家が使うような防具で全身を覆った上に、魔法でしっかりと五重の結界を張っての出動です。
いくらチート能力があって、神様からの加護を頂いていると云っても、万が一のことがあるやも知れません。
私は、絶対にあいつに刺されたくはありません。
ついでに私の身体の周囲には冷気を纏わせています。
蚊は熱や二酸化炭素に聡(さと)いようですので、念のために熱をカットです。
二酸化炭素?
うーん、吐く息は仕方ないですよね。
前世にあった二酸化炭素を排出しない循環式酸素ボンベを造るって方法もなくはないですけれど。
時間がかかりそうです。
で、見切りスタート。
ノームに教えられた現場に着いてすぐに石化した猿人を見つけました。
カル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤで遺骸を確認しましたけれど、野外では初めて見る死亡形態ですが、なるほどカル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤの遺骸と同じように全身の細胞が固化しています。
スキャンをかけると心臓のすぐ脇に空洞箇所がありました。
その他の腹腔内と胸腔内は、粗な組織の状態で固化されていますので、あるいは液状のものが固化したのかもしれません。
なのに、心臓部分の裏側にだけ空洞があるんです。
なるほど、ここに潜んでいたわけですね。
腐敗したはずの遺骸も調べましたが、白骨と石化した心臓があるだけで、パラサイトもその寄生の痕跡もよくわかりませんでした。
因みに遺骸のあった周辺の地下をスキャンすると、アメーバー状というのかスライム状というのか、土と同化若しくは融合したような形で存在していました。
大体地下3m程度を中心に直径2mほどの球状になっていますけれど、生きているのかどうかすらよくわかりません。
これがそのまま巣になるんでしょうか?
あれ?じゃぁ、ギルド敷地内の巣は何であそこにあるの?
パラサイトがあそこで抜け落ちたってこと?
いや、いや、そもそも直近であそこに巣ができたとは限らないのかな?
もしかすると、かなり以前にパラサイトが地中に潜り、ホープランド・ミニが棲み付いた?
そもそもここ最近の話ではなくって、そこでホープランド・ミニが繁殖していればそのまま長期間棲み処になるってこともあり得るか・・・。
じゃぁ、パラサイトの本体である球状の泥団子は、己の自らの身体を使ってホープランド・ミニを増殖させると同時に、ホープランド・ミニを運び役として用いて共存しているということかな?
いずれにしろ、中庭付近にあった泥団子ができたのは昨年のことでは無いと思われます。
記録で調べた限り、ギルド内でのツアイス症候群による死亡者は、昨年のヒューム部長を除くと、ここ4年ほど出ていないし、死亡したのは中庭などでは無いようです。
おそらくこの泥団子状の巣穴は一旦できると暫く持つのでしょう。
それでも、パラサイトも生き物だから、例え仮死状態だとしても、ホープランド・ミニに取り込まれて稼働できるようにならないと意味がありません。
可哀想なんだけれど、猿人の集落から6匹ほど実験体を確保しました。
相手の同意は得ていません。
もちろんご本人たちの意志に関わらず強制徴用です。ハイ。
ヒラトップの工房で檻の中に入れて、被検体(モルモット)になってもらいます。
それと他の動物への影響はどうなのかを確認するために、ネズミやモグラそれにウサギを捕まえました。
どれもギルド周辺に生息しているから形は小さいけれど魔物の類いですよ。
羽化したホープランド・ミニに刺された猿人二匹は、一匹はすぐに石化を始めましたが、もう一匹はすぐには石化しませんでした。
ホープランド・ミニの体内からパラサイトと思われる微生物を抽出、これを直接猿人の体内に注射しましたが、この場合は、二匹とも即時石化の症状は現れませんでした。
猿人以外の魔物ですが、まず、ホープランド・ミニがネズミとウサギにはそもそもとりつきませんでした。
対象外となっている理由は今のところ不明です。
一応モグラには取り付いて血を吸っていましたが、実際問題として地中で同じ事をするのはかなり難しそうですよね。
で、当然、ネズミとウサギは刺されていないですから発症しません。
モグラですけれど、これも即時の石化開始は認められません。
うーん、もしかすると、モグラ君に耐性があるのかも。
次いで、パラサイトを直接被検体に注射する方法。
ネズミ、ウサギ、モグラとも全然変化がありません。
一匹ぐらい即時の石化症状が現れてもいいのに・・・・。
ふと思い出して、ホープランド・ミニが刺したときに吐き出す麻痺毒も併用してみました。
効果がありました。
但し、猿人の方ですけれど、二匹のうち一匹が即時石化を始めました。
どうやらホープランド・ミニの持つ麻痺毒との併用で即時石化が開始される場合があるようです。
但し、魔物三種については全く変化なしです。
次いで行ったのは、猿人と魔物三種から事前に採取した血液の分析です。
もちろん事後の血液採取も行って分析を同時並行で行っています。
その結果わかったことがいくつかあります。
まず猿人については、即時石化を始めた個体には、血液中のタンパク質が四種類あります。
このタンパク質、おそらく前世で何とかブリンとか何とかブミンと言うような名が付いていたはずですけれどもともとあまり興味が無かった分野ですし良く覚えていません。
しょうが無いのでAブリン、Bブリン、Cブリン、Dブリンと勝手に名付けちゃいました。
このうちBブリンについて、即時石化した個体の血液では、アミノ基の数が5割増しなんです。
私の顕微視能力で見た途端に数が多いとわかりましたから間違いありません。
アミノ基の数が少ないBブリンをαBブリン、多い方をβBブリンとしたのですけれど、猿人の場合はβBブリンを持つ個体が半数ほどでした。
一方で私たちヒト族(ギルド会員及び公都の住民に限る)は、βBブリンを持つ人は皆無です。
その代わりβブリンの亜種であるアミノ基が2割増し程度のγBブリンを持つ人が5%ほどいました。
私が採取できたヒト族の検体数は千件前後ですから、統計的には十分検証にはなる数字と思います。
もう一つカルバン氏族なんですが、彼らは何故かβBブリンを持っている人が9割と猿人よりも多いんです。
これは、閉鎖社会での血族婚の弊害なのかもしれません。
確実ではないかもしれませんが、ギルドの人に即時石化が無いのはβBブリン保有者が居ない所為かも知れません。
一方で、カルバン氏族がホープランド・ミニに刺されると約9割の確率で即時石化が始まることになります。
但し、カルバン氏族全員の血液を採取したわけでは無く、検体数は今のところ25体なので、統計上は当てにならない数値です。
今度、できるだけカルバン氏族の血液採取をして確認してみましょう。
これで、猿人の場合で、即時石化するものと、心臓の石化でいずれ死ぬものとの差が出ることについて一応の説明がつきました。
今一つ興味深いことは、魔物には石化現象が発現しそうにないことです。
以前、過食症のウィルス擬きでも同様のことが起きたのですが、猿人を除く現地生息の魔物には特別な抗体が存在するのかもしれません。
血液中に送り込まれたパラサイトは、ヒト擬きのホムンクルスと同じく、血液中を周回するだけで、心臓付近にとりつく動きを全く見せないのです。
一方で、猿人に取り込まれたパラサイトはαBブリンとβBブリンの血液両方で心臓の周辺に取りついています。
数秒以内に変化がありますから、動きは速いですね。
刺され若しくは注射器で血管内に入れられるとすぐにも心臓周辺に居座ります。
但し、ホープランド・ミニの麻酔毒の併用が無いとパラサイトは正常に動けないみたいです。
ですからパラサイトのみを注射器で送りこんだ猿人の身体には一向に変化が無いのです。
いずれにしろ、パラサイトの元凶を特定できたのじゃないかと思います。
=============================
3月16日、誤字脱字のために修正を行いました。
5
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる