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第五章 黒杜の一族
5ー7 未知との遭遇? その五
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長らしき人物が独り言のように言いました。
「フム、魔封じの腕輪をしておる故、今はできぬであろうが、機会があれば光属性の攻撃魔法とやら見たいものだ・・・。
うん?
いや、・・・。
その魔封じの腕輪は効いておるのか?
何やら其方の身体を流れる魔力のような得体の知れぬものが伺えるが・・・。
いったい・・・、何故じゃ?
ヴァウマンよ。
念のため、今一つ魔封じの腕輪を持って来よ。」
あ、どうやらこの長は私の体内を流れる魔力やら呪力が見えるようですね。
魔法は魔力が必要ですけれど、陰陽術は気と言うか呪力を使って術を顕現させます。
ですから、今の私は魔封じで魔力を封じられているので魔法は使えませんが、魔力ではない呪力を使う陰陽術は使えるのです。
そもそもがアマテラス様が呉れた陰陽術の能力を使えるようにするために、絶対神のゼファー様が代替措置を講じてくれたので、私の使う魔法様の術の9割は呪力を使います。
残り1割がゼファー様が与えてくれた魔力による魔法です。
だから魔封じの腕輪があっても術の行使にはほとんど支障にならないようですね。
それをいち早く察知した目の前の長です。
やはり長になるべくしてなったひとかどの人物と言うことなのでしょう。
衛士と思われる人が、ヴァウマンのわずかな身振りですぐに動きました。
おそらくこの場所には魔封じの腕輪が無いのでいずこかへ取りに行ったのでしょう。
まぁ、通常ならば集落内で危険な行為をさせないようにするための手段でしょうから、入り口付付近で用意してあり、中心部である此処には置いてはいないものと思われます。
その品が到着するまでの間、私は目の前の兵士によって槍の穂先を向けられていました。
魔封じの腕輪で魔法を封じ込めたと思っていたのにそれが効かないとなれば用心しますよね。
目の前の兵士は随分と気張った表情を見せていますけれど、長と呼ばれる人物は内心焦っているかもしれないけれど、そのような素振りは一切表に出さず平静を保っているように見えます。
確かに、武器を突き付けるのも今更の措置ですよね。
仮に私が長を狙う暗殺者なら、既に動いているはずだもの。
その辺を推量して、敢えて無駄な動きををしないのでしょう。
それにしても、私の体内の魔力の流れか、若しくは、陰陽術の発動のため呪力の流れかを外部から読み取れる者が居るというのは、中々油断のならない一族ですね。
ヴァウマンが率いる衛士達は私の呪力の存在に誰も気づいていなかったし、ハシレアも気づいていないようだったから、この長一人のユニークスキルなのかもしれないけれど、ある意味で私にとっては危険だよね。
やがて戻ってきた衛士は魔封じの腕葉を複数個持ってきたようです。
その場で自らに装着して魔法が使えないことを確認の上で解除し、確認済みのモノを空いている私の右手(左手には既に魔封じの腕輪がつけられている。)に嵌めました。
どうやら、魔封じの腕輪を外すには開錠のための魔道具が要るようですね。
その魔力の流れが分かったから、魔道具が無くても魔封じの腕輪は勝手に外せそうです。
魔封じの腕輪の装着を確認してから、改めて長が言った。
「儂の見るところ、そなたに魔封じは効かぬとみたが・・・。
違うかの?」
この長が目で追えているなら、嘘をついても意味が無いですよね。
「そうですね。
魔法は使えないかもしれませんが、違う力は使えるように思います。」
「やはりそうか・・・・。
毒飛龍を撃破した光属性の攻撃魔法とやらは、その状態でも発動できるのかな?」
「試してはいませんが、多分できるのじゃないかと思っています。」
長は呆れたような表情を一瞬見せて、その後苦笑した。
「なるほど、ここへ其方を連れてきたのがそもそもの間違いであったやも知れぬな。
それほどの危険人物ならば、黙ってお引き取り願った方が良かったのじゃろう。
で、そなたにまず確認しよう。
我らカルバンに害をなす意図がありや無しや。」
「私にあなた方を害するつもりは毛頭ありません。
ただ、周辺の国家にも気づかれずに魔境に住んでいる方たちがどのような人々なのか知りたくて見に来ただけです。」
「ほう、我らを観察しに参ったのか・・・。
一体、何時から我らを見ているのじゃ?」
「ここに来たのは今朝が初めてのことです。
この集落から離れた場所で狩りをしている人を見つけ、その後をつけてこの集落の近くまで来た時に、たまたまハシレアたちが飛龍に襲撃されそうな場面に遭遇したのです。」
「其方は、ハボノスが形成する一族の長の命を帯びてここに参ったのか?」
「いいえ、違います。
たまたま、あなた方の一族がこの近辺にいることを知り、私単独の意志で調べに来ただけのことです。
この周辺の国家や組織の意向とは関わりが有りません。」
「単独行なれば、このままここで始末されても誰にも知られることは無いのだが、・・・。
それを承知で申しておるのか?」
「私をこの場で殺害すると言うならば、多少の抵抗をして逃げることにします。」
「逃げられると思うのか?」
「あなた方が、そもそもあの毒飛龍の退治に手こずるようであるのならば、私の退治にはそれ以上の戦力が必要と申し上げておきます。
但し、私の方は挑まれない限り、争いは避けるつもりでいます。」
「ふむ、では、我らに何か望むことはあるのか?
ハシレアを毒飛龍から救ってくれたは、そなたの功績であり我らの恩になる。
その恩に報いるには我らは何をすればよい?」
「お礼を目当てに毒飛龍を撃破したわけではありません。
同じヒト族が困っているのを助けるのは、人として当然のことのように思います。
ですから特に恩賞は要りませんが・・・。
敢えて言うならば、あなた方の知識を教えてください。
近隣の国家では知りえない魔境の情報をあなた方はあるいはお持ちかもしれない。
あなた方は、この隔絶した狭い社会に生きていますので、あるいは外界を承知していないかもしれませんが、私は魔晶石ギルドと言う組織に所属しています。」
「魔晶石ギルドか・・・。
確か、20年ほど前のレドルの報告にあったな。
この魔境の南端地域で活動し、魔晶石を切り出すことで生計を立てている職業の者たちと聞いているが?」
「その通りです。
ここからですと60里以上も離れた魔境の南端に魔晶石ギルドは所在しています。」
「60里?
何故、その単位を知っている。
外の世界ではガーシュと言う距離の単位を使うと聞いているが?」
「あ、さきほどハシレアに教えてもらったばかりです。
ガーシュで言えば、凡そ180ガーシュなのですが、ハシレアの話では10里がおよそ30ガーシュ程になるとか。」
「フム、ではそなた6日以上もかけて魔境を縦断してきたと言うか?」
「いいえ、方法は申し上げられませんが、今朝早くに向こうを発って来ました。」
「フム、中々に秘密の多そうな娘よのぉ。
で、何時向こうに戻るのじゃ?」
「向こうでの用事もありますので、できれば今日中には戻りたいと思っています。
「60里もの距離を半日で行き来するというのか・・・。
とんでもない娘よな。」
それからしばらく長は考え込んでいた。
そうして再度私に話しかけてきた。
「其方が用事があるのを留め置くわけにもわけにも行かぬな。
其方を放免する故、自由に帰るがよい。
但し、この村の外での護衛は付けぬぞ。
そうしてこれは儂からのお願いなのじゃが、我ら一族のことは誰にも口外せぬようにして欲しい。
我らも北のファルデンホーム王国に草を放っており、外の世界の様子はそれなりに承知して居るが、我らの存在を知れば、我らに悪意を向けてくる者が出てくるのは避けられぬ。
我らは孤立してはいるものの、それなりの幸せな生活を営んで居る。
儂はこの安寧を崩したくはない。
それと、恩賞は要らぬと聞いたが、そなたにはこのカル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤへの入域を認めよう。
この指輪を門衛に見せれば、街の中には入れるが、この許可はそなただけじゃ。
其方の連れの入域は一切認めぬ。
儂は、我らカルバン一族に害をなさないという其方の言を信ずることにする。」
長は武骨な印影を象った封蝋用の指輪を渡してくれた。
私を指輪を恭しく頂いて言った。
「随分と寛容なお計らいをありがとうございます。
が、私はここでは異邦人。
そのような特権を与えてもよろしいのですか?」
「止むを得まい。
我らの内で最強の集団が手こずる相手をいとも簡単に打倒した相手なら、相応の便宜を図って争いごとを避けるのが賢明なやりかたというものじゃろう。
必要に応じて我らは武威を示すが、無駄な争いは避けるのが昔からの一族の習いじゃ。
それゆえにこの魔境の中に我が集落を造ったのじゃ。」
「なるほど、分かりました。
私はこの集落のことは誰にも話しません。
また、この集落を訪れるのは次の銀曜日にしたいと存じます。
長は銀曜日がお判りですか?」
「ああ、我らも月日は使うが、曜日は使わない。
だが、銀曜日が8日おきにあることは知っている、
なれば8日後にまた其方が来るということじゃな。
次に来たときには外の話でも聞かせてくれるとありがたい。
ヴァウマン、この者を丁重に門まで見送るがよい。
同時にこの者が8日後に参ったときには、入域に遺漏なきよう警備兵に周知しておきなさい。
特にこの者とは、万が一にも争いごとは起こして欲しくないでな。」
何だか一族の長に恐れを抱かせちゃったかもしれません。
色々と秘密がありそうな異邦人だし、60里も離れたところを半日で往来し、毒飛龍を一撃で倒し、しかも魔封じの腕輪を寄せけない不審人物ですからね。
まぁ、普通に考えて排斥するか歓待するかの二択でしょう。
で、長は至極穏当な方法をとったというわけですね。
私としても没交渉になるよりは、友人付き合いができる方が嬉しいです。
その日の夕刻私は魔晶石ギルドに無事帰りつきました。
あ、ちゃんと二つの魔封じの腕輪はヴァウマンさんに返しておきましたよ。
門の手前で魔道具を使わずに私が勝手に腕輪を外しちゃうのを見て、ヴァウマンさん、顎が外れるほどポカーンと口を開けていましたね。
あ、そういえば最後まで長は名を名乗りませんでしたね。
今度会ったら呼ぶのに「長」でいいのかしらん。
「フム、魔封じの腕輪をしておる故、今はできぬであろうが、機会があれば光属性の攻撃魔法とやら見たいものだ・・・。
うん?
いや、・・・。
その魔封じの腕輪は効いておるのか?
何やら其方の身体を流れる魔力のような得体の知れぬものが伺えるが・・・。
いったい・・・、何故じゃ?
ヴァウマンよ。
念のため、今一つ魔封じの腕輪を持って来よ。」
あ、どうやらこの長は私の体内を流れる魔力やら呪力が見えるようですね。
魔法は魔力が必要ですけれど、陰陽術は気と言うか呪力を使って術を顕現させます。
ですから、今の私は魔封じで魔力を封じられているので魔法は使えませんが、魔力ではない呪力を使う陰陽術は使えるのです。
そもそもがアマテラス様が呉れた陰陽術の能力を使えるようにするために、絶対神のゼファー様が代替措置を講じてくれたので、私の使う魔法様の術の9割は呪力を使います。
残り1割がゼファー様が与えてくれた魔力による魔法です。
だから魔封じの腕輪があっても術の行使にはほとんど支障にならないようですね。
それをいち早く察知した目の前の長です。
やはり長になるべくしてなったひとかどの人物と言うことなのでしょう。
衛士と思われる人が、ヴァウマンのわずかな身振りですぐに動きました。
おそらくこの場所には魔封じの腕輪が無いのでいずこかへ取りに行ったのでしょう。
まぁ、通常ならば集落内で危険な行為をさせないようにするための手段でしょうから、入り口付付近で用意してあり、中心部である此処には置いてはいないものと思われます。
その品が到着するまでの間、私は目の前の兵士によって槍の穂先を向けられていました。
魔封じの腕輪で魔法を封じ込めたと思っていたのにそれが効かないとなれば用心しますよね。
目の前の兵士は随分と気張った表情を見せていますけれど、長と呼ばれる人物は内心焦っているかもしれないけれど、そのような素振りは一切表に出さず平静を保っているように見えます。
確かに、武器を突き付けるのも今更の措置ですよね。
仮に私が長を狙う暗殺者なら、既に動いているはずだもの。
その辺を推量して、敢えて無駄な動きををしないのでしょう。
それにしても、私の体内の魔力の流れか、若しくは、陰陽術の発動のため呪力の流れかを外部から読み取れる者が居るというのは、中々油断のならない一族ですね。
ヴァウマンが率いる衛士達は私の呪力の存在に誰も気づいていなかったし、ハシレアも気づいていないようだったから、この長一人のユニークスキルなのかもしれないけれど、ある意味で私にとっては危険だよね。
やがて戻ってきた衛士は魔封じの腕葉を複数個持ってきたようです。
その場で自らに装着して魔法が使えないことを確認の上で解除し、確認済みのモノを空いている私の右手(左手には既に魔封じの腕輪がつけられている。)に嵌めました。
どうやら、魔封じの腕輪を外すには開錠のための魔道具が要るようですね。
その魔力の流れが分かったから、魔道具が無くても魔封じの腕輪は勝手に外せそうです。
魔封じの腕輪の装着を確認してから、改めて長が言った。
「儂の見るところ、そなたに魔封じは効かぬとみたが・・・。
違うかの?」
この長が目で追えているなら、嘘をついても意味が無いですよね。
「そうですね。
魔法は使えないかもしれませんが、違う力は使えるように思います。」
「やはりそうか・・・・。
毒飛龍を撃破した光属性の攻撃魔法とやらは、その状態でも発動できるのかな?」
「試してはいませんが、多分できるのじゃないかと思っています。」
長は呆れたような表情を一瞬見せて、その後苦笑した。
「なるほど、ここへ其方を連れてきたのがそもそもの間違いであったやも知れぬな。
それほどの危険人物ならば、黙ってお引き取り願った方が良かったのじゃろう。
で、そなたにまず確認しよう。
我らカルバンに害をなす意図がありや無しや。」
「私にあなた方を害するつもりは毛頭ありません。
ただ、周辺の国家にも気づかれずに魔境に住んでいる方たちがどのような人々なのか知りたくて見に来ただけです。」
「ほう、我らを観察しに参ったのか・・・。
一体、何時から我らを見ているのじゃ?」
「ここに来たのは今朝が初めてのことです。
この集落から離れた場所で狩りをしている人を見つけ、その後をつけてこの集落の近くまで来た時に、たまたまハシレアたちが飛龍に襲撃されそうな場面に遭遇したのです。」
「其方は、ハボノスが形成する一族の長の命を帯びてここに参ったのか?」
「いいえ、違います。
たまたま、あなた方の一族がこの近辺にいることを知り、私単独の意志で調べに来ただけのことです。
この周辺の国家や組織の意向とは関わりが有りません。」
「単独行なれば、このままここで始末されても誰にも知られることは無いのだが、・・・。
それを承知で申しておるのか?」
「私をこの場で殺害すると言うならば、多少の抵抗をして逃げることにします。」
「逃げられると思うのか?」
「あなた方が、そもそもあの毒飛龍の退治に手こずるようであるのならば、私の退治にはそれ以上の戦力が必要と申し上げておきます。
但し、私の方は挑まれない限り、争いは避けるつもりでいます。」
「ふむ、では、我らに何か望むことはあるのか?
ハシレアを毒飛龍から救ってくれたは、そなたの功績であり我らの恩になる。
その恩に報いるには我らは何をすればよい?」
「お礼を目当てに毒飛龍を撃破したわけではありません。
同じヒト族が困っているのを助けるのは、人として当然のことのように思います。
ですから特に恩賞は要りませんが・・・。
敢えて言うならば、あなた方の知識を教えてください。
近隣の国家では知りえない魔境の情報をあなた方はあるいはお持ちかもしれない。
あなた方は、この隔絶した狭い社会に生きていますので、あるいは外界を承知していないかもしれませんが、私は魔晶石ギルドと言う組織に所属しています。」
「魔晶石ギルドか・・・。
確か、20年ほど前のレドルの報告にあったな。
この魔境の南端地域で活動し、魔晶石を切り出すことで生計を立てている職業の者たちと聞いているが?」
「その通りです。
ここからですと60里以上も離れた魔境の南端に魔晶石ギルドは所在しています。」
「60里?
何故、その単位を知っている。
外の世界ではガーシュと言う距離の単位を使うと聞いているが?」
「あ、さきほどハシレアに教えてもらったばかりです。
ガーシュで言えば、凡そ180ガーシュなのですが、ハシレアの話では10里がおよそ30ガーシュ程になるとか。」
「フム、ではそなた6日以上もかけて魔境を縦断してきたと言うか?」
「いいえ、方法は申し上げられませんが、今朝早くに向こうを発って来ました。」
「フム、中々に秘密の多そうな娘よのぉ。
で、何時向こうに戻るのじゃ?」
「向こうでの用事もありますので、できれば今日中には戻りたいと思っています。
「60里もの距離を半日で行き来するというのか・・・。
とんでもない娘よな。」
それからしばらく長は考え込んでいた。
そうして再度私に話しかけてきた。
「其方が用事があるのを留め置くわけにもわけにも行かぬな。
其方を放免する故、自由に帰るがよい。
但し、この村の外での護衛は付けぬぞ。
そうしてこれは儂からのお願いなのじゃが、我ら一族のことは誰にも口外せぬようにして欲しい。
我らも北のファルデンホーム王国に草を放っており、外の世界の様子はそれなりに承知して居るが、我らの存在を知れば、我らに悪意を向けてくる者が出てくるのは避けられぬ。
我らは孤立してはいるものの、それなりの幸せな生活を営んで居る。
儂はこの安寧を崩したくはない。
それと、恩賞は要らぬと聞いたが、そなたにはこのカル・ヴァン・タラ・ヴァンセヤへの入域を認めよう。
この指輪を門衛に見せれば、街の中には入れるが、この許可はそなただけじゃ。
其方の連れの入域は一切認めぬ。
儂は、我らカルバン一族に害をなさないという其方の言を信ずることにする。」
長は武骨な印影を象った封蝋用の指輪を渡してくれた。
私を指輪を恭しく頂いて言った。
「随分と寛容なお計らいをありがとうございます。
が、私はここでは異邦人。
そのような特権を与えてもよろしいのですか?」
「止むを得まい。
我らの内で最強の集団が手こずる相手をいとも簡単に打倒した相手なら、相応の便宜を図って争いごとを避けるのが賢明なやりかたというものじゃろう。
必要に応じて我らは武威を示すが、無駄な争いは避けるのが昔からの一族の習いじゃ。
それゆえにこの魔境の中に我が集落を造ったのじゃ。」
「なるほど、分かりました。
私はこの集落のことは誰にも話しません。
また、この集落を訪れるのは次の銀曜日にしたいと存じます。
長は銀曜日がお判りですか?」
「ああ、我らも月日は使うが、曜日は使わない。
だが、銀曜日が8日おきにあることは知っている、
なれば8日後にまた其方が来るということじゃな。
次に来たときには外の話でも聞かせてくれるとありがたい。
ヴァウマン、この者を丁重に門まで見送るがよい。
同時にこの者が8日後に参ったときには、入域に遺漏なきよう警備兵に周知しておきなさい。
特にこの者とは、万が一にも争いごとは起こして欲しくないでな。」
何だか一族の長に恐れを抱かせちゃったかもしれません。
色々と秘密がありそうな異邦人だし、60里も離れたところを半日で往来し、毒飛龍を一撃で倒し、しかも魔封じの腕輪を寄せけない不審人物ですからね。
まぁ、普通に考えて排斥するか歓待するかの二択でしょう。
で、長は至極穏当な方法をとったというわけですね。
私としても没交渉になるよりは、友人付き合いができる方が嬉しいです。
その日の夕刻私は魔晶石ギルドに無事帰りつきました。
あ、ちゃんと二つの魔封じの腕輪はヴァウマンさんに返しておきましたよ。
門の手前で魔道具を使わずに私が勝手に腕輪を外しちゃうのを見て、ヴァウマンさん、顎が外れるほどポカーンと口を開けていましたね。
あ、そういえば最後まで長は名を名乗りませんでしたね。
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