魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第三章 魔晶石ギルドの研修

3-13 秘密訓練基地ヒラトップです

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 銀曜日14時半(地球時間では略21時45分?)、私は寮の寝室に内側から鍵をかけ、明かりを消して、昼間確認しておいた三日月湖の近くにあるテーブル・マウンテンに転移しました。
 転移は最初に寮の上空に転移し、それからテーブル・マウンテンに転移する方法。

 二度手間にはなるけれど、間違いのない方法であり、私としては何かあった場合に対応もしやすいと思うのです。
 仮にテーブル・マウンテンの転移場所に異常があった場合、すぐに寮の上空へ立ち戻れるからです。

 実は、以前、バンデル郊外の湖の島に転移した時にたまたま鳥がその転移空間を占めていて、私の身体が弾き出されたことが有ったのです。
 物理的な怪我などはありませんでしたけれど、目の前に鳥が一瞬見え、ほとんど重なっていたように覚えていますし、すぐに物凄い吐き気が生じて気分が悪かったのを覚えています。

 本来転移すべき場所(空間)から弾き出された結果、私は元の発動位置に戻ったのですけれど、その際に妙な力がかかり、私はベッドに投げ出されたのです。
 偶々たまたま、ベッドだったから良かったけれど、机とかタンスとかの角に頭でもぶつけていたら怪我をしていたかもしれません。

 思い切り走って来て、ベッドに飛び込むぐらいの衝撃があったように思うのです。
 それもあって次の機会からは、予め身体強化をかけて転移するようにしています。

 転移すべき場所から弾き出された経験はその一度だけですが、注意は怠るべきではないと思います。
 そうしてその夜は何らの異常も無く転移できました。

 真っ暗闇の中、天空の星が綺麗に見えます。
 アスレオール世界は空気が澄んでいますからね。

 夜空も透き通るように綺麗に見えます。
 天の川は地球のものとは違うのでしょうけれど、星の濃い部分とそうでない部分がくっきりと見えるのです。

 ここもやっぱり渦状星雲の中なのかもしれません。
 で、早速、魔法の練習をするための結界を張ってみました。

 このテーブル・マウンテンの頂部の平たい部分は、概ね直径1ガーシュぐらいの広さがある円形の台地になっています。
 下からここに上るにはほぼ垂直に近い崖を100尋以上も登らなければなりません。

 私はこの場所をヒラトップと名付けました。
 安直な名前ですが、私だけの秘密の練習場です。

 今日は取り敢えず結界を二重に張って、そのうち一つは外部から見えないように遮光結界を張りました。
 その上で、今夜は光属性と火属性魔法を七割前後の出力で試してみます。

 ギルドの練習場では、最大でも精々5~6%止まりの出力に抑えているので、ある意味ストレスが溜まってウズウズしていたような気もします。
 まぁ、魔法の撃ちっ放しというのはストレス発散にはいい方法かもしれません。

 概ね40分ほど魔法訓練をしてから寮に戻りました。
 えーっと、攻撃魔法の所為で平トップは、結構表面がえぐれたりしていて、結構荒れちゃいましたね。

 まぁ、でも無人の場所ですし、誰も気にはしないと思いますけれど・・・・。
 あ、そうか、地形が変わっていたりすると、飛空船から見られて不審に思われるかもしれないから、拙いのかな?

 別の機会に魔導飛空船の航路を調べておく必要がありますね。
 仮に余程近いようなら何かカモフラージュを考えましょう。

 日頃の鬱憤うっぷんが晴れたのか、その夜は、すぐに寝付くことができました。


◇◇◇◇


 翌日からは新たな週の始まりです。
 白曜日は、午前中は支援班の座学若しくは実技になります。

 午後からは、いつも通り魔法座学若しくは実技訓練になりますけれど、おそらく実技訓練主体になるでしょう。
 それにしても図書館で魔法関連の書籍在庫を調べてみなければいけないですね。

 魔法ギルドの養成学校で教えている内容が分かればいいのですけれど、無い場合でも高名な魔法師の書き残した書籍ならば何らかの参考になるかもしれません。
 私の魔法ってラノベに出ていたモノの焼き直しで、他にどんな魔法があるのか知らないですもの。

 普通はそういうことを座学で教えたりするものじゃないかって思うのですけれど、アスレールでは違うのかなぁ。
 学園でも魔法は教えていなかったけれど、色々な知識について先生はわかりやすい様にいろいろ工夫して体系的に教えていたように思うけれど・・・・。

 午前中の研修は、支援部門の中でも治癒師部門及び薬師部門の業務説明と見学がありました。
 偶々見学中に怪我をした採掘師の治療が行われることになり、とてもいい見学になったようです。

 特に、私の目で、治癒師が発するヒーリング波動を見極められたのが大きな成果でした。
 恐らく同じことが私にもできると思います。

 それから、薬師部門では実際に薬草を使ってポーションを作っているところを見学しました。
 但し、薬研を使ったりして行う地味な作業の連続でしたので、正直なところ余り役に立ちそうなところは無かったかも知れません。

 薬の調剤については、図書館にある書籍である程度のやり方は把握しています。
 我流ながら、魔法や錬金術を使った方がより速く正確に薬品を作れるような気がしているんです。

 因みに薬草の類は、公都から定期的に買い入れているようです。
 このギルド本部周辺は植生が薄いので薬草も入りにくいのだと思います。

 私も図書館にある薬草図鑑二冊と薬草大全なる書籍一冊を鑑定にかけて頭に入れていますので、薬草に関する知識はかなりあるものと思います。
 但し、とある特別な薬草だけはホープランドでしか採取できないそうで、将来採掘師が魔境に入った際にもし見つけたならできれば採取してきてほしいとお願いされました。

 薬草の名は、グエルサリズ草といい、私も図鑑の知識で覚えています。
 どうやら支援班からお願いしても、採掘師には中々薬草を採取して貰えない様な雰囲気です。

 さもなければ未だ右も左もわからないような新人にお願いはしないと思うのです。
 後でミナ・アリステアさんに内緒で聴いたなら、採掘師は魔晶石をとってなんぼのところがあって、薬草などは全然目に入らないようです。

 グエルサリズ草は、これがあった方が効果のある薬が造れると言うだけで、効果が若干落ちる別の薬草もあって、特効薬がこれでしかできないという訳では無さそうです。
 例えば、ラノベに出てくるよう「アムリタ」とか、特別な薬に絶対に必要ということだったら採掘師もあるいは動くかもしれないけれど、報酬がさほどでもない薬草をわざわざ採取してくるようなもの好きは居ないらしいのです。


◇◇◇◇


 支援部門では、四カ月に一度、ギルド職員及び会員の健康診断を行っているようで、その統計資料なども見せてもらったけれど、今のところツアイス症候群の予兆になるようなものは見つかっていないようです。
 本人の申告が間違いなければ、本当にある日突然発症する感じらしい。

 私も今後、一月一回のペースで同期生やら先輩達やらの血液採取を秘密裏に行うつもりです。
 いずれツアイス症候群の患者が出た時点で、その患者との比較で何かが判明することを期待しているんです。

 あくまで可能性の問題だけれど、長寿化の因子、大食漢の因子、心臓石化の因子について、それらの原因は或いは一つかもしれないけれど、取り敢えずは別物と考えて調査することにしているのです。
 このほかに、放射線の有無、ホープランドにおける大気(呼気)の状況、食物及び飲料水の状況、魔晶石に含まれるエネルギーの種類、ウィルス若しくは寄生虫などを含む感染症の可能性なども検討する余地がありそうです。

 魔晶石に関する物理特性なんかは図書館に在りそうですよね。
 公都に行った際に採取した同期生四人の血液を鑑定に欠けたら、ある意味でびっくりしました。

 日本で血液検査を行った時と同じような分類で一覧表が脳裏に浮かんだんです。
 前世の私は医者でもないし看護士でもないですから、そう言った方面の知識はうとい筈だったのですけれど、色々の記号と共に数値が出て来て、ホログラムの中で意識カーソルが記号に触れるとそれぞれの意味と許容数値が出てくるのには本当に驚きです。

 私の頭の中に、血液検査のエキスパートがいるみたいです。
 結論から言うと、四人とも健康そのもの、悪いところはありません。

 そうしてまた、ツアイス症候群の影響を受けつつあるにしてもその兆候は見出せませんでした。
 この感じで言うと長丁場になりそうです。

 そんな状況で、研修生から突然死が出てくるのだけは勘弁してほしいです。
 今日の御昼前に四人を除く同期生全員分の血液をいただきました。

 私ってドラキュラになった覚えはありませんけれど、人の承諾も得ずに勝手に血を頂いていますねぇ・・・。
 決して悪いことには使っていませんので、どうか今後ともご勘弁を。

 今日のお昼休みは、魔晶石の物理特性に関する書籍三冊、本部ギルド周辺の水質及び食糧調達先等のデーターを図書館でチェックしました。
 アスレオール世界は、中世ぜんとしていますので、飲料水については飲用可能かどうかを調べているだけで精密な水質検査はしていないようです。

 ということで、本日夜の宿題は寮内水道の水質検査をすることにしました。
 消去法で行けば或いは原因に辿り着けるかもと淡い期待を持っています。

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