魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第三章 魔晶石ギルドの研修

3-12 休みの日に遠出しました

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 今日は青曜日、午前、午後とも一般知識の研修です。
 午前中は大雑把な地図を使って、ホープランドとその周辺地域の地理や気候などを教えてもらいました。

 ホープランドは大陸の内陸部にあって、周囲は峻険な山地に囲まれた盆地状の地形です。
 広さはおよそ1万平方ガーシュで、一尋の千倍の長さの正方形の一マスが1平方ガーシュですので、地球の換算で言うと約2万3千平方キロぐらいでしょうか?

 多分面積で言えば、日本の四国よりも少し広い(私、四国の面積を凡そ2万平方キロと覚えていましたけれど、違ったかしら?)ぐらいの面積になるんじゃないかと思います。
 盆地の中も数百尋程度の峰や断崖のある丘が林立する起伏の激しい荒野が連なっている地形であり、多数の地割れがある地形は少し浅めのグランドキャニオンに似ているかもしれません。

 荒野なので植生は非常に少ないようですが、それでも川べりや湖の周辺には小さな森や草原が散在するようです。
 魔物の多くは洞窟や峡谷の中に棲んでいるようですが、昼夜を問わず餌を求めて活発に動き回ることが多いようです。

 ホープランド自体が盆地状ということもあって、日中は暑く夜間は冷え込む気象条件です。
 元々ホープランドは、バンデルと比べると大分北方地域にありますので、どちらかというと寒冷な気候なのですが、夏場の一時期に雨期があり、冬場は逆に乾季があるようです。

 冬場には稀に降雪もあるようですが積雪量はさほど多くはないようです。
 但し冬場の気温は氷点下に下がることも珍しくありませんので、冬場にはしっかりとした防寒用の装備が必要です。

 夏場の方が一日の温度変化が大きく、最高温度が30度を超えるのに夜間の最低温度は5度以下まで下がります。
 温度計は水の氷点と蒸発温度から百等分した目盛りを利用しているようなので、地球の寒暖計と多分ほぼ同じと思います。

 図書館で見た書籍の知識の再確認でもあり、また、新たな知見を得る機会でもあったので、座学研修は本当に楽しいです。
 私は、同級生というか同期生と一緒に学べることが素直に嬉しいんです。

 ホープランドはその大部分が魔境なのですが、ギルドはその南西端の高地にあって、ギルドを訪れるには公都からの水路しかありませんが、公都までの距離は直線で凡そ22ガーシュ、1ガーシュが1.5キロとして、33キロほど離れているということでしょうか。
 ギルド本部の施設から直線距離で20ガーシュほど離れた付近に若干の農地や集落もあるようですが、それらの例外を除いて、魔境の近くには人気のない場所が多いようです。

 因みに水路の途中に桟橋などはありませんので、途中で陸に揚がることは、普通はできないようです。
 公都から最寄り集落までの道路は整備されているようですが、ギルドまでの道路は現在では使われていません。

 二百数十年前に行われたギルド本部の建設に際しては、石畳の取り付け道路が作られたようですが、魔境から道路まで出てくるような魔物が居るために、道路交通の安全性の維持がかなり面倒なことから道路自体はある時点から放置されており、今では獣道以上にひどい状態になっているそうで、この道路を使った往来はありません。
 水路を走る船は、特別仕様であり、仮に水棲の魔物に襲われても大丈夫な造りになっているのだそうです。

 ◇◇◇◇

 今日は銀曜日、午前・午後とも研修の無い休養日なんです。
 昨日の内に、外出が可能なのかどうか、またどこまで可能なのかを確認しています。

 ですから今日は朝食を食べてすぐにお出かけです。
 今の段階で、実際に私達が出かけられるのはギルド構内と通船を使って、公都まで遊びに行くぐらいしかできないようです。

 勿論、魔境の中に勝手に行くことは禁止されています。
 私の今回の外出目的は、秘密練習場の確保ですので、公都へ行くこと自体には実のところ余り意味がありません。

 でも通船で公都までの往復をして、その間の岸辺近くに適当な場所を見つけるつもりなのです。
 ギルド本部に最初に来た時は、貨客兼用のかなりゆっくり動く通船でしたが、今日乗るのは高速客船です。

 公都までは高速客船ならば、アスレオール時間で1時間半ほどです。

 運賃はギルドのIDカードがあれば無料です。
 公都に行ってから買い物をする場合、お金が必要ですが、バンデルを出る際にお小遣いとして結構なお金を頂きましたので、必要があればそれを使う予定です。

 でも今のところは稼ぎの無い状態ですから無駄遣いはしません。
 精々、お昼ご飯を食べるぐらいでしょうか。

 高速客船は6時半にギルド桟橋を出港しました。
 この日、私は客船の中で周囲探査の魔法を駆使して、船内に居ながらにして川の周囲の地形と魔物の生息状況などを探っていました。

 7時少し前、やや水路がカーブしている周辺に三日月湖がありました。
 その近辺には集落もありませんし、魔物の気配もありませんでした。

 そうして三日月湖のさらに西方にはテーブルマウンテンがあるのですが、その周囲が切り立った崖のためにこの三日月湖を含めてその周辺には魔物が近づけないような気がします。
 無論、空を飛ぶ魔物ならば平たい山頂部にも辿り着けますが、単なる岩場に過ぎず、ほとんど植生もありませんので、魔物にとっても休憩場所にしかなりません。

 高低差から見て、このテーブルマウンテンの頂上が水路から見えない位置にあるのも好都合です。
 周辺地図によれば、人が居そうな農地、集落は、20ガーシュほど南東側に在りそうですが、練習場所を例によって結界で囲ってしまえば、気づかれる心配は無いでしょう。

 一応場所の特定のために、船から一旦転移して場所を確認し、すぐさま船に戻りました。
 船のトイレから転移しましたので、私の移動に気付いた人は居ません。

 動いている船から出て、動いている船に戻れるかどうかちょっと心配ではあったのですが、一旦船の上空を中継地点にすることで無事にやり遂げました。
 見えない場所からの転移って結構難しいのですけれど、上空に転移し、方向などを確認の上転移すると割合に簡単でした。

 もしかして船が進んでいる方向へ慣性力が働くかなとも思いましたが、何故かキャンセルされていました。
 ですから船を離れた時、逆に船に戻った時にも、身体の移動は支障なく出来たのです。

 でも何ででしょうかねぇ。
 物理学の先生には、質量保存の法則とやらで動いている乗り物から離れると、慣性力でこれまで動いていた方向に投げ出されると聞いていましたけれど・・・。

 船から上空に転移した時に、身体がその方向に動くようなことはありませんでした。
 同じく、船に戻った時にも、静止状態からいきなり動いているところに飛び込むわけですから、船が動いている方向とは逆方向に自分の身体が投げ出されてもおかしくはない筈なんですが・・・。

 私の頭では誰かに説明できるような理屈が見つかりませんでした。
 チョット酷いですけれど、敢えて言うとしたなら、「魔法だから。」でしょうか。

 一度、行った場所ならば転移はできる筈です。
 ギルドからテーブルマウンテンの場所までは推測ですが直線で13ガーシュほどだと思います。

 バンデルを出てからも結構魔力が増えましたので、このぐらいの距離の転移に問題は無い筈です。
 今日はギルドに戻ってから夜間に試してみましょう。

 ところで、船の中には同期生が一緒に乗っています。
 最初に出遭ったマリアン、サイルズ、テリオスの三人に加えて、クレアです。

 公都に出かけられると聞いて、彼らも行きたいと言い出し、皆が揃って行くことにしたのです。
 同期生の仲は概ね良い方なのですが、パスカルとモーガンはどちらかというとみんなから避けられている感じ、カイエンはどちらかというと無口で人とつるまない感じみたい。

 カイエンの人柄は悪くないし、パスカルとモーガンも例の差別感さえ問題にしなければさほど悪い奴ではなさそうです。
 まぁ、表面には出していないけれど本人達は色々葛藤がありそうですね。

 ハーフドワーフのハジームとハーフエルフのハルナは、割合珍しい種族ということもあって、公都に出ると好奇の目に晒されるのが嫌で不参加を表明し、今回は参加していません。
 ワイオブール公国も種族差別をしない国だったはずなんだけれど、他で色々と経験してきているのかもしれない。

 8の時に五人そろってワイオブール公国の公都の桟橋に降り立った私たちは、早速市内見物に繰り出しました。
 帰りの高速客船は11の時の予定だから、3時間余りの時間があるのです。

 昼食は、桟橋から左程遠くない公都中心の広場にあると言う屋台村で済ませることにしていました。
 それまでの公都の商店街を眺め、ワイオブール風の建造物を眺め、観光名所などを歩きました。

 同年代の者と楽しく会話しながら異国の街を見物して歩くなんて、ほんの半年前までは予想もしていなかった。
 お告げを受けるまでは、バンデルの街で宝飾加工師になるか刺繍師になると思っていたから、随分な変わりようで驚いてもいるのです。

 まぁ、前世の知識もあるし、神々の加護や恩寵の所為で随分と楽をさせてもらってもいます。
 親友のシェラとは会えなくなったけれど、新しい友人もできました。

 私はここでしっかりと命大事に生きて行く。

 ◇◇◇◇
 
 あ、そうそう、そのための準備を少し、帰りの船でみんなには内緒でやってます。
 四人の同期生から血液をほんの1ccほど頂きました。

 ホープランドに来てからほぼ一週間、私達は未だツアイス症候群の影響を受けていない筈なんですが、これまで私達以上にここへ長く居たはずの先輩達や指導員達の血液も貰って、私の鑑定で比較検証してみるつもりなんです。
 地球で知られている病気とは明らかに違うのですぐにわかるとは思えないけれど、解析を重ねて何とか予防法や対策を見つけたいと思うのです。

 ウィルスのような病原体なのか、放射性物質の影響なのか、或いはよくわかっていない魔素の影響なのか。
 絞り込んで行けば或いは防止策も見つかるかもしれませんからね。

 気長にやってみるつもりですが、余り悠長にはできません。
 この症候群の名前の発端になったツアイス君は研修中に発症していますから、そうした悲劇だけは防ぎたいですね。

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