魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第三章 魔晶石ギルドの研修

3-8 剣術も始めました

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 第四日目「工の神パイテス」の日である緑曜日は、午前中に剣術の座学及び実技でした。
 指導員は、エリオットさんで、最初にさらっと座学がありました。

 剣術に流派は特に無いようです。
 で、肝心なことなのですが座学では、身体強化の話が出て来ませんでした。

 昨日の格闘術でもそんな話が有りませんでしたから、ここでの教育では身体強化の方法を教えていないようです。
 だって、クラウディアさん、そのために昨年度の試験をふいにしてますもん。

 昨日の訓練を見た限りでは、マリアとハルナも身体強化を使っていません。
 マリアとハルナは加工師候補ですから、それでも良いのかもしれませんが、出来るかもしれないのに試していないのはおかしいですよね。

 これはどこかで、同級生には教えてやる必要がありそうです。
 まぁ、剣術の時間については、加工師候補生は別枠になり、ハンス指導員について貰って、魔晶石加工の勉強が主になるみたいです。

 剣術の授業は、武器の選択から始まりました。
 エリオットさんが、剣術で使うのはロングソードでしたが、研修所にはその他の剣も一応おいています。

 両手で振り回す大剣のクレイモア、幅広でやや短い片刃のファルシオンなどが用意されていますが、何れにしろ日本刀の様に反りを持たせている刀剣はありませんでした。
 大きさの大小はありますけれど、頑丈さを前面に立てている剣が用意されているようです。

 刺すことに特化したレイピアなんかあった方が非力な女性は使いやすい様に思われるのですけれどそちらはありません。
 その代わりに槍は大小取り揃えています。

 但し、ハルバードや薙刀の類はありませんでした。
 魔物や魔獣相手ならば、薙刀なんかも十分有効な武器になると思うのですけれど・・・。

 魔法が発達しているが故の弊害かもしれませんね。
 剣はぶった切る感じ、槍はとにかく突き刺す感じで、遠目から薙ぐという武器の使い方は無いようです。

 更に日本刀のような反りがあって、人を斬ることに特化した武器は無いようです。
 魔境に棲むただでさえ強力な魔物や魔獣を相手にするわけですから、細い刀では確かに無理かもしれません。

 一匹目は何とか切ることができても二匹目は切ることができないかもしれません。
 魔獣、魔物図鑑を頭に入れた私の中では、やっぱり華奢な武器ではちょっと無理みたいに思えます。

 仮にそうした武器を使うとすれば、インベントリにたくさん予備を抱えていて消耗品として使うようにしなければ無理じゃないかと思います。
 まぁ、さっきも述べた通り、剣で殺すにしても、そもそも魔法ありきなんです。

 さもなければ固い魔物や魔獣の表皮を斬ることも突き刺すこともできないでしょう。
 身体強化をかけて尚且つ武器に魔法を付与して攻撃するんです。

 魔物も倒せば、実は小遣い程度にはなります。
 解体して魔石を取り出せば、ギルドで買ってくれます。

 それに魔物や魔獣で魔石以外に有用な部分もあるのですけれど、実は魔晶石採掘師の場合、自衛のために魔獣や魔物と戦うのであって、魔獣や魔物を狩るのが本来の仕事ではないんです。
 だから魔獣や魔物を倒しても、その本体を運搬することに手間暇を掛けてはいられないという事情もあるんです。

 ギルドのビットに持ち込めば解体もしてくれるんですけれど、やっぱりインベントリ持ちが居ないのがネックなのかもしれません。
 それにマジックバックの容量ですけれど、結構小さいようです。

 容量に多少の誤差はありますけれど、概ね一辺2mの立方体程度なんです。
 従ってその中に入れられるものは限られますよね。

 大型の魔物や魔獣なんて全部は絶対に入りません。
 採掘師は、できるだけ魔物や魔獣との戦闘を避けるのだそうです。

 戦闘になれば魔力も使うし体力も使う、ご存知のように活動のためにはかなりの食料を持ち歩かなければなりません。
 まぁ、良い魔晶石が入手できれば、食糧は最低限を遺して、捨ててくることさえもあるそうです。

 それぐらいマジックバックの有用性があるということですね。
 肝心の剣術を習うための武器ですが、私は自分で用意したロングソードに長さも重さも似たものを選びました。

 因みに刃引きはしてありますけれど、生身の身体にこれをぶち当てられたら斬れなくても十分骨折ぐらいはしますので、相応に手加減が必要です。
 我が同期生達でまともに剣を扱えそうなのは、身体強化ができる者に限られます。

 及第点をあげられるのは、獣人のクレア、魔族のカイエンの二人でしょうか。
 次点でヒト族のモーガンですが、実のところ戦の神の加護を貰っている割にはショボイです。

 ロングソードよりも短いグラディウス様の剣を使っているんですけれど、それでも剣に振り回されています。
 身体強化はそれなりにできていそうなんですけれど、多分基礎的な足腰が鍛えられていないような気がします。

 パスカル、サイルズ、テリオスは、今のところ話になりません。
 この三人も先ずは身体強化を覚えることから始めないと無理かもしれませんね。

 生憎と講師役のエリオットさんは、そもそも教える項目にないのか身体強化なんて教えようともしていません。
 座学の時間もあるんですけれど、座学で教わったことは剣を扱う際の常識程度の内容ですね。

 エリオットさん、どちらかというと訓練と実戦で学べというタイプの様で、手取り足取り理論から教えてくれる人ではなさそうです。
 うーん、私は講師でも何でもないんですが、同級生が落後して行くのは見過ごせませんから、取り敢えず、パスカル、サイルズ、テリオスの三人をできるだけ訓練相手に選んで身体強化を教えて行こうと思います。

 魔力の循環も左程上手じゃなかった三人ですから、時間がかかりそうですけれど・・・。
 何だか、ため息が出ちゃいますね。

 地球とこの世界の経験年数では既にオバンですけれど、自分では別にオカン体質じゃないと思っています。
 でも、お節介かもしれないけれど、助けられる者は助けたいと思いますので・・・。

 その日の訓練では、クレアが一緒にやりたそうにしていたのですけれど、敢えて初日に馬車で知り合った一人サイルズ君と組みました。
 サイルズ君については、実技をする前にまず身体強化の訓練をさせました。

 少々時間はかかったけれど何とかやり終えて、それからサイルズ君と多少の打ち合いで時間を消化。
 あくまで時間つぶし、だって私がその気になれば一瞬で終わりですもん。

 うん、剣術レベルが高いのはとても有利です。
 何処に打ち込まれても躱せるし、余裕を持っていなせるから、私が対戦相手の攻撃を受けることはまずありません。

 正直に言えば、講師役のエリオットさんと模擬戦をやっても勝ってしまう可能性が高いんです。
 これは今後とも実力隠しと手加減が物凄く大変になりそうです。

 午後はいつものように魔法座学と実技です。
 講師は前回に引き続き、エリオットさんですが他に二人ほどお手伝いがいます。

 私を除いた候補生たちの持つ魔法属性は、光、火、土、無、水、空間の内二つ又は三つを持っています。
 どうも、この六属性の魔法を教えるにはエリオット教官だけでは足りないようです。

 ですから二人ほど応援が来たわけですが、生憎と私の持つ雷、氷、闇各属性の持ち主は居ない様で、エリオット教官からはお前が独自で学べと宣告されてしまいました。
 但し、そのほかの属性魔法も余り参考となる部分はないんです。

 私が無詠唱で発動する方が威力も効果も大きいので無闇矢鱈に披露するわけには行かないところが問題ですけれどね。
 出来るだけ同級生が放つ魔法と横並びの威力や効果で誤魔化していますけれど・・・・。

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