魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第三章 魔晶石ギルドの研修

3-1 魔晶石ギルドへ到着

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 魔導飛空船で王都に向かい、王都で一泊、翌日に別便に乗り換えてワイオブール公国の公都に向かいますが、ほぼ半日かかりますので公都でまた一泊。
 公都からホープランドの魔晶石ギルドまでは河川の水運を利用するのです。

 その日は昼過ぎの船便に乗って、午後のほとんどは川を上る船で過ごし、魔晶石ギルドの岸壁には日没近くに到着の予定なのです。
 そうして旅の間は何事も無く、初秋月28日目の夕刻、私はついに魔晶石ギルドの本部に到着したのです。

 桟橋の脇のゲートで私は支部で貰った書類とIDカードの提示を求められました。
 船の中では個室に入っていましたので気づきませんでしたが、船から降りたのは私だけではなく、他にも三人ほどの男女が居ました。

 年齢的に見てもおそらくは私と同年代なのだと思います。
 ほんの少し私の動きが速かったので、私が最初にゲートで書類等を見せました。

 ゲートの門番さんは書類とカードを確認して鷹揚おうよううなずくと言いました。

「ゲートをくぐって、その先の四阿あずまやで待っていなさい。
 迎えの馬車が間もなくやってくる。」

 私が手荷物を持ってゲート内に進み、その先にある四阿で待っていると他の三人も次々に四阿にやって来ました。
 二番目に入ってきた娘が挨拶をしてきました。

「私は、フェルドランド王国からやってきたマリアン・セイガル。
 魔晶石加工師になるためにここにやって来ましたの。
 貴女の名前を教えてくれますか?」

「私は、ファンダレル王国からやってきたシルヴィ・デルトンです。
 魔晶石採掘師か、もしくは加工師に成れたらと思います。」

「あら、二つの職のお告げを貰ったのね。
 凄いわね。
 最近は二つの職のお告げを貰う方は少ないって、フェルドランド支部で聞いてきたのだけれど・・・。」

 三番目に入ってきた男の子が割り込んできた。

「ほう、君もかぁ。
 僕は、サイルズ・ベネディクト、ザンガス帝国からやってきた。
 同じく、採掘師と加工師のお告げを貰っているけど、帝国支部では5年ぶりだと騒いでいたねぇ。」

 次いでもう一人の男の子が言った

「最後になったみたいだけれど、僕は、アマデル公国からやってきたテリオス・ブライアンだ。
 僕は残念ながら採掘師一択だね。
 研修中に脱落する者も居るらしいけれどお互いに頑張ろうよ。」

 三人とも何となく親しみやすい感じがした。
 当たり障りのないお国自慢などをお互いに話している間に屋根付きの馬車が到着した。

 辻馬車と似ているが造りが違う。
 外観は王都の貴族が使っている様な立派な馬車であった。

 御者の人が後部に荷物を載せて座りなさいと指示したので、四人が一斉に動いた。
 馬車の中は三人掛けの椅子が二つ並んでいて6人乗りのようだ。

 外観だけでなく内部も立派な造りでした。
 私とマリアンが前部席に、サイルズとテリオスが後部席に収まった。

 やがて馬車が夕暮れの中を走り出す。
 道路わきには街灯がところどころにあって、バンデルよりも進んでいると感じられる。

 街路樹はおそらくアグレカエデだと思うのだが、既に紅葉を始めている。
 バンデルで紅葉するのはもう半月は遅い筈だが、やはりここは北の地なのだと実感した。

 四半時ほどで大きな建物に到着した。
 そこで降りて荷物を抱えるとギルド職員が一人出てきて、案内してくれた。

 最初に行ったのは仮採用の手続きだ。
 支部で発行してくれたIDカードを回収して、青みがかった金属のIDカードを渡してくれた。

 その後で別室で個別の面接があった。
 私はここで加護の神様が誰であったのかを聞かれた。

 ステータスの表示は求められなかったが、内容はかなり細かく聞かれた。
 家族の住所、氏名、年齢、職業のほか、私の趣味や嗜好品まで聞かれた。

 ステータス以外は特段隠すものも無いので正直に答えた。
 個別面接が終わると研修寮に案内された。

 取り敢えずの研修は明日からの予定らしいけれど、今夜は寮で割り当てられた部屋から出ないよう指示された。
 食事は、今夜の夕食については部屋に運んでもらえるらしい。

 明日は3の時に起床、4の時に食堂で会食だけれど、その前に注意事項と教員を紹介するとのことだった。
 荷物を作りつけのクロークと思しきものに整理してから、室内の探索を始めました。

 あ、別に不審者を探しているわけじゃないですよ。設備等の確認です。
 部屋はバンデルの家の私の部屋よりも広かった。

 多分十畳間ほどもあるのじゃないかと思う。
 それに驚いた事に、お風呂とトイレが個別についているのです。

 もう一つ、何と、何と、水洗便器が備え付けてあるではないですか。
 但し、残念ながらトイレットペーパーは無いようです。

 トイレに貼ってあった説明書きには用済み後は生活魔法を使えと書いてありました。
 なるほど、ここでは生活魔法は必須のようです。

 部屋に落ち着いて間もなく、職員の方がワゴンで夕食を運んでくれました。
 食器は、洗浄した上で籠に入れてドアの外に出しておくように指示されました。

 私は特に嫌いな食べ物はありませんから、しっかりと夕食を食べて、食器にクリーンをかけ、籠に入れてドアの外に出しておきました。
 その後はお待ちかねのお風呂タイムです。

 何せ11年余りも入ったことも無い・・・、いや、私は覚えていないけれど多分産湯は浸かったのでしょうね。
 とにかく、それ以来のお風呂です。

 クリーンで綺麗になるとはわかっていてもお風呂は別なのです。
 但し、どこを探しても石鹸が無いのです。

 お貴族様は一体どうしているのでしょう。
 仕方がないのでクリーンの泡を一杯出して、身体を一生懸命に自作のタオルで洗いました。

 その後湯船に浸かって、至高の一時を楽しみます。
 思わず「ああーっ」って声が出てしまいましたが、もう完全におばちゃんですね。

 風呂上がりでドライをかけて、髪の毛からつま先まで蘇った感じなんですが、念のためもう一度クリーンをかけてから衣類を着ました。
 兼ねて用意のネグリジェの初お目見えです。

 母に頼んで布地を貰い、自分で縫い上げた逸品です。
 寝るときに使う寝間着と説明すると、母が手に取って色々調べ、このアイデア貰ってもいいかいと聞いてきました。

 勿論独り占めするつもりはありませんので、すぐに了承しましたよ。
 私が出発するまでに何着か作り上げていて、結構売れ行きが良かったのでひょっとするとウチの看板商品になるかもしれません。

 こっちの世界の上流階級は知りませんが、寝間着と言う発想が無かったみたいですね。
 それにしても折角お風呂があるのに石鹸も無し、シャンプーもリンスも無しと言うのはお粗末です。

 そのうち私の錬金術を使って、何とかするつもりでいます。
 その夜は、幸せな気分でおねむの時間になりました。

 あ、部屋に入った時点で、しっかりと部屋の内部にはクリーンをかけていますよ。
 だって、誰が使っていたかわからない部屋ですからね。

 殺菌を含めてしっかりと掃除が必要なんです。

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 この章から暫く一日一話を22時に掲載予定です。
 
   By サクラ近衛将監
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