魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

文字の大きさ
上 下
3 / 121
第一章 プロローグ

1-3 成人の儀 その三

しおりを挟む
 ウワー、何だか一杯ついてるけれど・・・。
 これが普通なの?

 それとも私だけ特別?
 ウーッ、わかんないよぉ。

 ゼファー様のお言葉から言えば、少なくとも加護の項目だけ特別なのは間違いなしだよね。
 それに八神様の恩寵レベルがオール3は数千年ぶりらしいから・・・。

 魔法の全属性持ちって、ファンダレル王国でも一人しかいないって噂話で聞いたことがあるから多分これも特別だよね。
 まぁ、LVが最低だから今のところショボイけれど、スキルの習得と鍛錬に励めってゼファー様が言ってたようだから、これからきっと伸びるんだろうと思う。

 うーん、先ずは魔晶石採掘師と魔晶石加工師について調べなきゃいけないよね。
 そもそも学校で教わっていないし、私がこれまで聞いたことの無い職業だから。

 魔晶石ギルドの支部が侯爵領内では領都にしかないっていうのは、きっと希少な職なんだろうね。
 だって、私の住んでいるバンデルって結構大きな町なんだよ。

 侯爵領では領都に次いで二番目の大きな町だし、ファンダレル王国でも十指に入るほどの町なんだから、普通のギルドなら何でもある。
 噂では闇ギルドさえあると言われているのに・・・。

 お父さんが宝飾の関係で極稀に魔石も扱ったりするから、ひょっとしたら魔晶石のことを知っているかもしれない。
 家に帰ったら聞いてみよう。

 但し、周囲から妬まれたり、王侯貴族の囲い込みなんかの恐れもあるってゼファー様が言っていたよねぇ。
 普通、お告げの有った職業については友達同士で気軽にお話ししたりもするんだけれど、私の場合は内緒にした方がいいかも。

 そうして司祭様が皆からお告げがあったかどうかだけの確認をして、成人の儀の終わりを告げた。
 因みに、司教様はお告げの有無の確認だけでその内容については全く尋ねませんでした。

 メダリオン教では、お告げは神聖なものであり、みだりに公言してはならないものとされているからです。
 にもかかわらず、皆が立ち上がると隣に居たシェラが、早速私に尋ねてきました。

「私、裁縫師のお告げがあったのよ。
 シルヴィは?」

「うーん、お父さんが、お告げがあったなら無闇に人に話さずに家に戻って両親にだけ報告しなさいって。
 だから、今は内緒。
 ごめんね?」

「お父さんから言われていたら仕方ないわね。
 メダリオン教の教義でもみだりにお告げを言うなとされてるしね。
 聞いた私の方が間違っていたよ。
 ごめんなさい。」

「私へのお告げは言えないけれど、シェラはおめでとう。
 裁縫師がシェラの一番の望みだったものね。」

「うん、ありがとう。
 これで母さんの後を継げるよ。」

 シェラは、私の家の隣にある裁縫店の娘で私の幼馴染なんです。
 シェラとは何でも話せる仲の筈だったけれど、魔晶石の話はちょっとできない。

 嘘をつくのも嫌だし、取り敢えずは内緒で誤魔化すしかない。
 二人そろって家路を辿り、お告げ以外の話で盛り上がり、それから家の前で別れたのです。

 家では相変わらず父と母が生真面目な顔で仕事をしていました。
 それでも私の顔を見ると、父母はすぐに仕事の手を休めて居間に座ってくれた。

 兄は行商人の見習いで旅に出ているから今は家にいないのです。
 父が言いました。

「で、お告げはどうだった?
 いい職業のお告げがあったのかな?」

「うん、お告げの件だけれど、ちょっと特別なのでシェラにも内緒にしている。
 お父さん魔晶石って知っている?」

 椅子に座っていたお父さんが突然立ち上がり、びっくりした表情を見せていた。
 普段、何事にも動じない冷静な筈のお父さんが、こんなに動転しているところは初めて見た。

「魔晶石?
 ひょっとして加工師か?」

「採掘師と加工師の両方だよ。」

 父の顔が少し歪んだ。

「あぁ、何ということだ。
 まさかシルヴィが魔晶石の仕事に携わることになるとは・・・。」

「お父さん、魔晶石って何?
 学園でも魔晶石って習わなかったよ。」

「あぁ、普通の人はまず魔晶石のことは知らないはずだ。
 俺だってよくは知らないんだが・・・。
 シルヴィは、魔石については知っているな?」

「ええ、魔獣や魔物が体内に持っているのが魔石で、年を経るごとに内包される魔力が大きく強くなって行く。
 特に力のある魔石は、色々な魔道具に使われている筈。」

「その通りだ。
 俺がやってる宝飾の関係でもたまに守護を付与した魔石を扱うことが有る。
 だが、そうした魔石に比べて桁違いの魔力を包含しているのが魔晶石と呼ばれるものだ。
 魔晶石の産地は、・・・。
 ウーンと・・・。
 確かどっかの公国の領内にあるホープランドとか言う魔境でしか採掘できないものなんだ。
 魔境だから魔獣も魔物もここら辺で出てくる奴よりも大きくて強い奴が生息している場所だから、そもそも採掘そのものに大きな危険が伴う。
 だから魔晶石採掘師と言う資格を持った特別な人たちが魔晶石の採掘を行っていると聞いている。
 元々そうした能力を持つ者が少ないので、他の職業に比べると現役の魔晶石採掘師はかなり少ないとも聞いているがな。
 また、そうした魔獣や魔物の危険だけではなく、魔晶石そのものにも危険があるらしい。
 俺にはよくわからんが、魔石もなにがしかの力を周囲に放射しているらしい。
 魔晶石は魔石よりもその力が強いゆえに、その放射の影響で人体に影響を与え、寿命が縮むともいわれている。
 採掘師も加工師も齢60歳を超える者はいないらしい。
 魔法師や錬金術師なんぞは100歳を超える者もまま居るというのに比べると寿命が短いよな。
 まぁ、それでも俺たち一般人からすればうらやましい話なんだけどよ。
 筋向いの爺さんが先日亡くなったけれど48歳だったし、裏のマーサ婆さんが亡くなったのは47歳の時だった。
 その意味では60歳まで生きられるってのが、むしろ長命な方なんだよ。
 話が少しそれたが、魔晶石の加工も有資格者でなければできない。
 魔晶石自体が余程のことが無けりゃ傷すらつけられないっていう代物らしいから、仮に手元にあっても俺なら何もできないだろうと思うぜ。
 で、魔晶石採掘師や魔晶石加工師になる者はさっき言った何とか公国まで出かけて行ってそこで修行しなければならんらしい。
 俺が知っているのはそれぐらいだな。」

 母が文句を言った。

「あんたぁ、それじゃさっぱり要領を得ないじゃないか。
 何とか公国がどこかわからなけりゃ、シルヴィが困るじゃないかぁ。」

「オウ、そう言やそうだけど、確か、領都モノブルグに魔晶石ギルドの支部があったはずだ。
 そこで聴けば詳しいことは教えてくれるはずだ。
 何せ、会員自体がめっぽう少ないからな。
 このバンデルじゃ、影も形もありゃぁしない。
 まぁ、どうしても情報が欲しけりゃ魔法ギルドか商業ギルドで聴いてみるがいい。
 そんなに詳しい情報は無いと思うが、それなりに魔晶石関係の魔道具はバンデルあたりでも需要があるからな。
 ほれ、この街の結界石は魔晶石でできているんだよ。
 万が一にでも壊されたりしたら大変だから人目には触れさせないよう厳重にしまってあるけれどな。
 それから領都や王都に出ている定期の魔導飛空船、あいつにも魔晶石が使われているらしいぜ。」

「そういう特別な職業って人の妬みを買ったりしないの?」

「オウ、そういうこともあるかもな。
 何せ、報酬が凄いらしい。
 魔晶石の小さいのを一個持ち帰るだけで大金貨10枚は下らないらしいし、そいつを加工すればさらに大金貨10枚以上の上乗せがあるって話だ。
 これまで最大の代物は採掘して持ち帰るだけで大金貨二千五百枚の価値があったと聞いている
 このご時世で金貨20枚ありゃぁ、優に1年は贅沢な生活ができるってのに、大金貨10枚って言やぁ、その5倍にもなる。
 多分、俺の8年から10年分の収入に近いだろうな。
 そんな大金を稼げるんだから、そりゃ貧乏人にとっちゃ高嶺の花だ。
 妬みもあろうってもんだ。
 採掘師も加工師もギルドに所属しなければ仕事はできないが、その一方で金を持っているお貴族様はそうした採掘師や加工師の抱き込みを図っているという話は風の噂で聞いたことがあるな。
 但し、現役は無理だから怪我をして引退した採掘師や加工師を抱き込むことが有るってぇ話だ。
 未加工のモノならば魔晶石も比較的安いらしいから、それを入手してお抱えの加工師に細工をさせれば多少は安くなるという話だろうな。」

「じゃぁ、余り私のお告げの話はしない方がいいよね。
 変なところに伝わると、妬みが講じて色々と拙いかもしれないし・・・。」

「おぅ、そう言や、そうだな。
 あれ?
 じゃぁ、商業ギルドや魔法ギルドに問い合わせるのも藪蛇になりそうだな。
 だったら、まぁ、次の休みにでも領都に行って魔晶石ギルドから直接話を聞いたほうが確実でいいだろう。
 ギルドも元々会員が少ないんだからお告げがあった者なら絶対に手放さないはずだ。
 そもそもなり手が少ないからな。
 だがよ。
 シルヴィは良いのか?
 加工師はともかく、採掘師は現場に出てなんぼのものだからな。
 良くは知らんのだが本当に危険が多い仕事らしいぜ。」

「それは覚悟しています。
 でもせっかくお告げにあった職だから大事にしたいと思います。
 それにいきなり死地に行かせるほどギルドも馬鹿じゃないでしょう。
 ギルドが利益を得るためには採掘師が魔晶石を持ち帰らなけりゃいけないのだから。
 採掘師の安全を確保するためにきっと最善の努力をしている筈よ。」

「そりゃぁ、そうだが、・・・。
 危険が大きいのも間違いない。
 親としては娘をそんな職業にはつかせたくないのが本音なんだが・・・。
 八神様のお告げなら仕方がねぇよ。
 で、加護はやっぱり、俺や母さんと同じパイテス様か?」

 その問いには一瞬詰まったけれど、両親にだけは正直に話しておこうと思った。

「私の加護は、絶対神のゼファー様だった。
 他の八神様からは恩寵をいただいている。」

 父も母も一瞬呆けていた。
 それはそうだ。
 
 絶対神ゼファー様の加護なんて今まで無かったのだから、それに八神様全部の恩寵と言うのも多分聞いたことがないはずだ。
 だって、魔晶石採掘師と魔晶石加工師にしか必要とされないから・・・。

 普通であれば八神様のうちお一方ひとかたの加護が貰え、付随して職に関連する一乃至ないし二の恩寵がいただけることが有るとされている。
 例えば父と母は、ともに工の神パイテス様の加護を持ち、父は鍛冶の神ルーデス様の恩寵が与えられ、母は芸術の女神ミゾン様の恩寵が与えられている。

 因みに父母共に恩寵のレベルは1だ。
 職によっては恩寵が無い場合もある。

 例えば「農民」は、農業の神アトル様の加護はあるけれど、恩寵が無い人の方が多い。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

処理中です...